81列車 ふつうじゃない
交流電化区間最後の駅。黒磯。ここまで来てもしりとりは続いた。何回巡回しただろうか。まだ全員ネタには尽きていないようである。ただ、ラ行が来ると全員がてこずった。黒磯でここまでずっと揺られてきた701系から211系に乗り換える。途中この211系によく似た車両にあったが、あれは719系という車両らしくこれとはまた別らしい。分かりやすく説明するなら、211系は直流区間専用。719系は交流区間専用ということだろう。まぁ、裏を返せばそれしか違わないのだ。
211系でこの普通の終点宇都宮まで出る。宇都宮まで来ると昼過ぎになっていた。この時間になるとおなかも空いてくる時間になる。宇都宮に到着した211系から降りたところで第1回鉄道シバリしりとり大会は終了である。何分続いたのだろうか。そんなことをここにいる誰かに聞いたら、後ろから声がした。
「2時間42分。よくやるなぁ。」
そう答えたのは醒ヶ井だった。どうやら計っていたらしい。
「パスした回数が、隼が2回、大嵐が1回、柊木が1回、潮ノ谷が1回、北石が2回、空河が2回、朝風が1回。留萌と永島、木ノ本にシナ先生は0回。どこにそんな知識あるんだよ。」
あきれたように言っていた。
宇都宮の在来線改札を出て一番近いラーメン屋に入った。ここでラーメンや宇都宮餃子を食べて店の外に出る。出ると在来線の改札に向かい、また上野を目指していく。たが、ここまで来て問題が浮上した。案の定時間がおしているのだ。乗ろうとしていた列車はとうの昔に宇都宮を発車してしまったのだ。過ぎている時間はしょうがないので、14時13分発。普通上野行きに乗車した。この列車に乗ると、
「あれ、これにグリーン車って連結されてるっけ。」
シナ先生がそのことを疑問に思った。
連結されていると思って僕が見てくると言って9号車から5号車の方へ向かう。ドアどちらか片方か取り付けられていない連結部を越えて見に行ってみる。6号車の上野側まで来ると窓の付いていないグレーの扉が現れた。真ん中には四葉のクローバーがあったので、グリーンは連結されているというのが決定づけられた。そのことをシナ先生に伝えて、自分は席に座る。だが、時間が時間だ。だんだん眠くなってくる。たが、ここで寝てはいけない。その思いで自分から席を立った。
「どうした。」
シナ先生に話しかけられた。
「いや、どうしても眠ってしまうそうで・・・。」
瞼の重さが伝わってくる気がした。
「というか、シナ先生、鉄道シバリのしりとりの決着をつけましょうよ。」
「そうだねぇ。永島とは決着をつけておきたいからねぇ。」
シナ先生もそれに乗った。
第2回は今起きている人たちでやることになった。僕を先頭に、木ノ本、留萌、柊木、北石、シナ先生、潮ノ谷、朝風、隼、大嵐、空河の順に回ることになった。結局第1回に参加した人全員である。ただ、14時という時間がかさんで、寝入ってしまうという名の脱落はあったが、スリーパスでの脱落はなかった。さすがに大宮まで来ると、ほとんどの人が眠気に負けてしまったり、すでに飽きていたりでゲームにならないためやめた。
しりとりが終了すると木ノ本は確保していた席について電車でGO!をやり始めた。
「何やってんの。」
醒ヶ井が横から覗き込んだ。
「電車でGO!寝台特急だけど、やる。」
「いや、やりはしないけど・・・。でも、電車でGO!って難しいっていうじゃん。」
醒ヶ井のその言葉を聞くと木ノ本は「えっ。」と声をあげた。
「えっ。難しくないの。」
醒ヶ井が木ノ本の「えっ。」に反応する。
「難しいやつは難しいけど、だいたいは簡単だよ。」
その会話を聞いていたら口はさみたくなった。
「お前もこれやってるんだ。」
「うん。POKETシリーズは全部持ってるし、全部クリアしてるし。」
「マジ。じゃあ、あの超難しい「カシオペア」札幌までいったの。」
「ああ。ノーミスじゃなかったけど、ノーコンではクリアしたよ。」
「何でミスした。」
木ノ本が聞いた。
「発車直後のマスコン操作でひかれた。」
「やっぱりそこかぁ。どうすれば減点されないんだかわかんないよねぇ。」
「ちょ・・・ちょっと待て。」
醒ヶ井が会話に割って入る。
「マスコン操作しただけで減点されるの。」
「何バカな事言ってるんですか。」
近くでこの話を聞いていた隼があきれた声で言った。
「お前なぁ、マスコン操作しただけで減点される電車でGO!があるか。バトルゲームとかだったら、自分が動くと同時にライフポイントが0(ゲームオーバー)になるのと同じじゃないか。」
留萌が分かりやすい例えをした。
「マスコンを乱暴に操作するから減点されるんです。特に深夜帯は乗客が寝てるから引っ張っている客車に走り出した時の振動がいかないように発車しないといけないんですから。寝台特急編のカシオペアがそういう面で一番キチクなんです。」
隼がその中身を説明した。
「他のLv.5なら普通に歯がたつんだけどなぁ。カシオペアだけわけが違うもん。同じLv.5のトワイライトエクスプレスが簡単に見えてくるわ。」
ゲームデータをセーブして木ノ本がPFPの電源を落とした。
「あれ製作者側がレベル設定ミスったな。カシオペアだけLv.5じゃなくてLv.10とかだろ。」
留萌が寝台特急編のことをぼやいた。
「なぁ、さっきからお前らマスコン操作がどうのとしか言ってないけど、他で減点されないの。」
醒ヶ井が聞いた。
「ふつうにミスしないよ。」
木ノ本が言う。
「制限速度・信号は余裕で守れるし、停車位置は0cm近くに止めれるし。ほかじゃ減点されないね。」
僕も言った。
「へぇ。じゃあ聞くけど、お前ら何cm以内ならふつうに止められる。」
「±(プラマイ)30cm。」
全員の声がそろった。
「てゆうか、±30cmってふつうじゃないですか。」
隼にそこをつっこまれた。
「どんな精度で操れるんだよ。お前らやりこみ過ぎだろ。」
「やりこんではないよな。これが普通だし。」
醒ヶ井の頭が下がって全体が影で覆われる。
(だめだ。こいつらの言っている普通はごくごく普通の一般人には絶対無理だ。普通を問いた俺が間違っていた。)
と思った。
なお、電車でGO!寝台特急編はどこからも発売されていません。
横に田端の車両基地と尾久の車両センターが姿を現す。ここまでくれば上野はもうすぐである。尾久の車両センターには24系寝台客車やE231系通勤電車などここを拠点に動く車両が、田端には「寝台特急カシオペア」「寝台特急北斗星」「寝台特急はくつる」などの北行きの寝台特急の先頭にたつ機関車が配置されている。今のっているE231系から見えたのはEF510型電気機関車、EF81型電気機関車、EF64型電気機関車である。尾久の車両センターには昨日札幌を発車して今日の9時25分に上野に到着したE26系寝台客車が既に発車の準備をして待っていた。今日「寝台特急カシオペア」を引っ張る電気機関車がEF510の北斗星色であるのは車内から見ることができた。
15時15分。上野に到着。また東京に戻ってきたのだ。E231系から降りてホーム上の自由通路に足を運ぶ。全員が自由通路に上がりきった時、
「あっ、E231の中に忘れ物してきた。」
朝風が声をあげた。
これはシナ先生が解消しようと向かっていき、僕たちは自由通路で待っていることにした。そして、僕はこの間にお土産を買った。買ったのは東京土産ではなく東北土産。ちょうど目の前で東北のお土産祭りをやっていた。これはラッキーと思って買った。
土産を買って戻ってくると木ノ本の姿がなかった。
「あれ、木ノ本はどこ行った。」
「ああ、木ノ本先輩だったら、翼たちもつれて「カシオペア」見に行きましたよ。」
自分達の荷物を見張っていた北石そう教えてくれた。見てみると、木ノ本だけでなく留萌の姿も柊木の姿も潮ノ谷の姿も一緒にいた中学生の姿もなかった。残っていたのは醒ヶ井と北石だけだった。
「まったく、こういう時に何やってるんですかね。「カシオペア」だったら1日目見たのに・・・。」
「こりゃ、シナ先生達が戻ってきても、あっちが戻ってきそうにないな。」
と醒ヶ井がつぶやいていた。案の定シナ先生が戻ってきても木ノ本達は戻ってこないため、1日目に走りに走った13番線に足を運んだ。そうそう、朝風が忘れていったものはちゃんと取り返すことができたようだった。
13番線に行くと、1日目と同じようにシルバーのかがやく車体がそこにあった。木ノ本達を探しながら、前に出る。前にしかいないと思っていた。「寝台特急カシオペア」の機関車の前まで来てみると、留萌達の姿はあったが、肝心の木ノ本の姿がなかった。どこにいるのかと聞いてみると隣の14番線に端にいた。
結局13番線には16時20分までいた。今日の「寝台特急カシオペア」の牽引はEF510-508号機だった。北斗星色であることは歓迎するが1日目も撮った車両である。そう何枚も撮るものではないと思っていたが、数えてみると「カシオペア」の写真だけで24枚に膨らんでいた。「カシオペア」を取りに行った木ノ本は「おしいなぁ。」と言っていたため、EF510のカシオペア色を狙っていたんだなということがうかがえた。ちなみに、客車のE26系と同じ塗装のEF510は509号機と510号機の二つだけである。それ以外は全部「北斗星色」と呼ばれる塗装である。
「寝台特急カシオペア」を見送ってから僕たちは京浜東北線で東京まで向かうため地上ホームから階段を上り、高架ホームに足を運んだ。
ここから先は京浜東北線でも山手線でも行ける。山手線は読者の皆様全員が分かっているかの有名な環状線の一つである。この路線を走るのはE231系。さっきと同じ車両ではあるが、姿かたちはさっきのってきたのとは似ても似つかない。ヘッドライトは上の方にちょこんとあるのではなく下にどっしりと構えている。このライトの形がどことなく丸みのかかっていない鎌のような形をしていてカッコいい。このE231系と競争して走るのが京浜東北線のE233系と209系である。E233系はJR東日本が製作した新たな通勤電車で京浜東北線はだんだんこの車両の独壇場になる。209系はそれまで京浜東北線で活躍していた103系を置き換えた車両で僕としてはこの車両はお気に入りである。この209系はそれまでの車両にかかるコストを半分に抑えた新たな車両作りの先陣をきった車両である。
ホームに行ったときちょうど京浜東北線の209系が入ってきたため、この車両に乗った。東京まで出るなら、快速運転を行っている京浜東北線の方が早いような気もする。京浜東北線(209系)を追うようにE231系が隣に来る。その時にはホームに発車メロディーが流れ、「ドアが閉まります。ご注意ください。」と告げられ、209系のドアが閉まった。E231系の方もすぐにドアが閉まり、209系を追ってきた。御徒町までE231系との競争状態が続くが、E231系が減速し始めると、209系はそれを振り切り、御徒町を通過した。
東京には7分余りで到着した。後で時刻表を見て分かったことだが、この間の所要時間は両者とも同じらしい。東京で209系を見送り、1日目にアド先生に言われた「銀の鈴」のあるコンコースに向かう。「銀の鈴」にはすでに常磐線組が到着していた。先に行ったはずのハクタカ先輩と楠先輩、そして盛岡まで「こまち」の連結開放を見に行ったであろう佐久間、諫早、夢前の姿が見えなかったが、そのうち来るだろうと思った。
ハクタカ先輩たちは時間通りに戻ってきた。どうやら、郡山辺りで時間を潰していたら、時間がなくなってしまったため、新幹線を使って戻ってきたらしい。
「まったく、ハクタカって後先考えてるのかな。」
楠先輩はそう言っていた。僕が思うに、ハクタカ先輩は後先のことなんて考えていないだろう。ただ、佐久間達は戻ってこなかった。
電車でGO!はやってればふつうに上達します。このぐらい。もしくはこれ以上にね。