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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
76/184

76列車 「スーパー白鳥」で渡る

11時13分。「スーパー白鳥(はくちょう)1号」が青森(あおもり)駅に到着する。「スーパー白鳥(はくちょう)」を待っている人は多い。それはホームをざっと見てすぐに分かった。黄緑色の扉部分と客室窓の間には本州と北海道のイラストが入っており、目標(ターゲット)津軽海峡(つがるかいきょう)をロックしていた。

ドアが開き、どっと客がホームにあふれる。降りる乗客が途切(とぎ)れるのを待って車内に入る。車内はほぼ満席だった。赤いシートに混じって青いシートもあったがそのほとんどが()まっている。客室に入ってすぐの席に腰をかけるようシナ先生に言われ腰をかける。僕の隣に来たのは木ノ本(きのもと)で、後ろの列に座ったのは柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)。あとは開いている席に押し込む状態だった。

11時19分。「スーパー白鳥(はくちょう)1号」函館(はこだて)行き発車。数分経ってから車内放送が始まり、ご丁寧(ていねい)にも青函(せいかん)トンネルの突入時刻(とつにゅうじこく)と、青函(せいかん)トンネル最深部(さいしんぶ)通過予定時刻(つうかよていじこく)()げられた。その車内放送の間に昨日(きのう)「カシオペア」を牽引(けんいん)して行った「アオカマ」EF510-513号機、「北斗星(ほくとせい)」を牽引した「アオカマ」EF510-504号機の姿もある。ついでと言っては何だが、ラッセル車の姿もあった。それを横目に789系は津軽海峡線(つがるかいきょうせん)へと(かじ)を切る。

津軽海峡線(つがるかいきょうせん)はほぼ単線(たんせん)である。周りは畑しかなく、目立った人家(じんか)はどこにもない。見晴らしがとてもいい。時折駅を通過し、「間もなく蟹田(かにた)に停まる」と車内放送がある。

蟹田(かにた)停車。蟹田(かにた)から先はJR北海道の管轄(かんかつ)になる。(境界駅は中小国(なかおぐに)だが、「スーパー白鳥(はくちょう)」・「白鳥(はくちょう)」は停車しないため。)そのためここで乗務員の交代もある。蟹田(かにた)を過ぎれば青函(せいかん)トンネルに突入し、世界一の海底トンネルをくぐって北海道渡島(おしま)の大地に(おど)り出る。そして30秒ほどの停車を経て発車した。

蟹田(かにた)を出て一番最初のトンネルに入る。

青函(せいかん)トンネル・・・。」

留萌(るもい)がつぶやく。

「まだ、青函(せいかん)トンネルじゃない。」

僕が誤解(ごかい)()く。「北斗星(ほくとせい)3号」に乗った時は多い数のトンネルに何回フェイントをかけられただろうか。

 2本目のトンネルに突入する。まだ違う。3本目、4本目・・・。青函(せいかん)トンネルは蟹田(かにた)から8本のトンネルを抜いてから(ひか)えている全長53.85km(キロ)のトンネルだ。

 だんだんその本命が近づいてくる。車内の電光掲示板(でんこうけいじばん)が今通っているトンネルを示している。

 トンネルに入るとその電光掲示板が変わった。

 そしてついに来る。「(つぎ)青函(せいかん)トンネルです」の表示。

 定刻通りに青函(せいかん)トンネルに突入。

 密閉(みっぺい)されている車内にトンネルの轟音(ごうおん)容赦(ようしゃ)なく(おそ)った。

 「はくつる」での約束を思い出し、すぐ後ろの席にいる柊木(ひいらぎ)に声をかける。

「おい、青函(せいかん)トンネル入った・・・。」

「んっ。どうした。」

木ノ本(きのもと)が声をあげたので、口に前に人差し指を立てた。木ノ本(きのもと)も気になったのか後ろを(のぞ)き込んだ。

 柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)も寝てしまっていた。

「「はくつる」の中で徹夜(てつや)してたみたいだからな。」

木ノ本(きのもと)が理由(その訳)を言った。

「トンネルが多いからその暗さでやられたのかな。」

「たぶんね。」

といってから、ポケットから携帯(ケータイ)を取り出した。

 真っ暗闇の青函(せいかん)トンネル。車窓の暗闇が少し黄色に光り、だんだんとその光が近づいてくる。目の前をEH500が通り過ぎ、その後ろに続くコンテナ貨車が確認できた。

 もうすぐ、青函(せいかん)トンネル最深部を通過する時刻になった。最深部には緑と青のライトが壁に取り付けてある。前で見ればものすごい迫力に口が開かなくなるのだろう。長い暗闇にそのライトが通り過ぎ、寝ぼけた頭で最深部を通過したことを確認する。最深部を5分程度で駆け抜け、今度は26km(キロ)の1km(キロ)ごとに12m(メートル)上る急勾配を駆け上がる。途中に吉岡海底駅(よしおかかいていえき)がある。その時だけ暗闇がまた明るくなり、白で照らされる。

また10分程度たち、周りが一気に明るくなった。青函(せいかん)トンネルを抜けたのだ。

トンネルを3本抜けて、木古内(きこない)に滑り込む。

 信号所で上りの「特急白鳥(はくちょう)」と入れ替えを行い、一路函館(はこだて)を目指す。

 「間もなく、終点。函館(はこだて)函館(はこだて)です。・・・」

終点を()げる車内放送が入る。青函(せいかん)トンネルの時から寝入っている柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)を眠りから()まさせた。

「もうすぐ()くぞ。」

柊木(ひいらぎ)に言うと、柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)の頭がぶつかりあい、二人が目を覚ました。

「えっ・・・。青函(せいかん)トンネルですか・・・。」

といった。まだ、寝ぼけているようだ。

 函館(はこだて)のホームに降り立つ。当然だが、柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)機嫌(きげん)が悪い。

「なんで、起こしてくれなかったんですか。」

「えっ。起こしてほしかった。」

「当然ですよ。気持ちよく寝てても起こしてください。そういう時こそたたき起こしてくれればよかったのに・・・。」

(はやぶさ)の方も機嫌の悪さを木ノ本(きのもと)にぶつけている。

「ナガシィ先輩ったら・・・。」

「でも、可愛い寝顔だったよ。」

木ノ本(きのもと)が言うと、(はやぶさ)それはどういうことという顔をした。だが、次第(しだい)に顔が赤くなった。

「ま・・・まさか、・・・。」

(つばさ)とのツーショットとか・・・()っていませんよね。」

声を小さくした。木ノ本(きのもと)が笑いだした。フォトを再生し、(はやぶさ)に見せた。二人の寝顔が写っている。頭は寄り添った状態になっていた。

「もう、そんな写真消してください。」

声を張り上げた。

「どうしようかな。」

 柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)が声をあげた理由を知りたいようで、

「どうかしたのか。」

と声をかけた。

「つ・・・(つばさ)は見ないで・・・。」

(あわ)てて、木ノ本(きのもと)携帯(ケータイ)を折りたたむ。

「どうしたの、結香(ゆうか)。顔真っ赤だよ。」

留萌(るもい)にそのことを()かれる。

「もう・・・。榛名(はるな)先輩のせいですよ・・・。」

(はやぶさ)は目を細めた。

 函館(はこだて)の改札を出る。函館(はこだて)の改札でも、乗車記念のスタンプを押してもらい、自分の(ふところ)に入れる。

「ここまで来たんだし、ラーメン()いに行こうぜ。」

佐久間(さくま)がそう言い、全員でそのラーメン屋に行く。ラーメン屋は行列ができており、少しの間待った。海峡通(かいきょうどお)りを行く、函館市交通局(はこだてしこうつうきょく)の市電が何両も通り過ぎていくのが見えていた。

 お昼を食べ終わると、14時をすでに過ぎていた。予定より大幅(おおはば)に遅れている。青函連絡船(せいかんれんらくせん)摩周丸(ましゅうまる)」をのぞいてから帰ろうと思っていたが、それをするにはちょっと時間がない。

「次どこ回るってなってる。」

シナ先生にそう聞かれたとき、

「「摩周丸(ましゅうまる)」を見に行くってなってますけど。」

「じゃあ、行ってみようか。」

といって、一行は青函連絡船記念館(せいかんれんらくせんきねんかん)摩周丸(ましゅうまる)」によることにした。よるといってもその外をざっと見るだけである。

 青函連絡船(せいかんれんらくせん)青函(せいかん)トンネルが開通する前1988年まで青森(あおもり)函館(はこだて)の間を往来(おうらい)していた連絡船である。青森(あおもり)函館(はこだて)を4時間かけて結んでおり、本州側と北海道側はその連絡船の運航(うんこう)(そく)したダイヤで運行をされていた。だが、青函(せいかん)トンネルの開通で状況が変わる。それまで4時間かかっていた間が、2時間程度に縮まったのである。用がなくなった連絡船は、その役目を終え、廃止(はいし)された。現在函館(はこだて)に「摩周丸(ましゅうまる)」、青森(あおもり)に「八甲田丸(はっこうだまる)」が保存されている。

 摩周丸(ましゅうまる)停泊(ていはく)している岸壁(がんぺき)の後ろに回り、鉄道が出入りした扉を見てみる。

「どうやって電車を乗せたんだろうな。」

北石(きたいし)がぼそっというのが聞こえた。

 その後は、函館(はこだて)ドックに停泊している自衛隊(じえいたい)のイージス艦の写真を撮って函館(はこだて)駅に引き返した。駅に引き返すとみんなお土産(みやげ)を買いにはしった。木ノ本(きのもと)と、留萌(るもい)はお土産のことは頭にないらしく、駅の電光掲示板に目を()らしていた。お土産ほとんどの人は白い恋人、もしくは函館(はこだて)ラーメン、佐久間(さくま)は地域限定のお菓子を買っていた。

 お土産(みやげ)を買い終わるとホームに上がり、「特急スーパー北斗(ほくと)」を写真に収めるため、7番線に急いだ。7番線にいたのは15時37分函館(はこだて)着の「特急スーパー北斗(ほくと)12号」だった。789系に似たデザインで、全面は黄緑ではなく青。また、この車両は電気ではなくディーゼルである。また全面横に書かれているFURIKO(フリコ)281のエンブレムがひかっていた。

 「特急白鳥(はくちょう)32号」の発車まではまだ40分くらいある。この時5・6番線の付け根から歩いてくる3人の顔ぶれが目に入った。ハクタカ先輩と(くすのき)先輩、新発田(しばた)達だ。ハクタカ先輩達が函館(はこだて)のどこをまわってきたかは分からない。朝の時に触れていなかったが、サヤ先輩、善知鳥(うとう)先輩、アヤケン先輩に、ナヨロン先輩、箕島(みしま)空河(そらかわ)以外は全員函館(はこだて)に来ている。

 16時18分。6番線に「特急白鳥(はくちょう)32号」が入ってくるとアナウンスがあった。ホームの向こうに目線をやると(あざ)やかな黄色に白いハイビームのライトがひかる車両がゆっくりとこちらにやってきているのが見えた。みんなとっさにカメラ、携帯(ケータイ)起動(きどう)し、写真に収めようとスタンバイする。キハ281系(スーパー北斗)の隣に485系3000番台が入線、停車した。

 ドアが開き、自由席を素早く確保する。今度は朝風(あさかぜ)が僕の隣だ。発車まではあと12分。この12分の間は短くて長い。暇なため電光掲示板に目をやり流れる言葉を読む。

「この列車は特急、白鳥(はくちょう)、32号、八戸(はちのへ)行きです。途中停車駅は木古内(きこない)青森(あおもり)浅虫温泉(あさむしおんせん)野辺地(のへじ)三沢(みさわ)です。」

日本語が終わると次は英語だ。

「・・・stop(ストップ) at(アット) Kikonai(きこない) Aomori(あおもり) Asamusionsen(あさむしおんせん) Noheji(のへじ) and(アンド) Misawa(みさわ).」

途中から朝風(あさかぜ)と一緒になって読んでいたが、「and(アンド) Misawa(みさわ).」の読み方が不思議とうけた。


ラッセル車は除雪車の一種ですが、このラッセルといういわれはラッセル社が作った車両という意味があるんですよ。もはやギャグですね。

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