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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
75/184

75列車 ここだけの話

 時計が3時59分58秒を指す。ふと目が覚めた。体を起こし、寝台の中で少しの間もそもそと体を動かした。自分のはめている腕時計に目をやると4時00分10秒を過ぎたところだった。4時代。こんな時間に起きている人はふつういない。寝台列車(やこうれっしゃ)にでもなればなおさらである。だが、どこからともなく聞こえてくる声がするのが分かった。カーテンを開けて寝台を抜け出す。声のする方にゆっくりと歩いて行った。声のする寝台の区画(くかく)をのぞいてみた。話をしていたのは柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)であった。柊木(ひいらぎ)がのぞいている顔に気付いて、

木ノ本(きのもと)先輩。」

と声をかけた。(はやぶさ)も気づいたようで、

「お・・・起こしてしまいましたか。」

遠慮(えんりょ)がちに言っている。

 木ノ本(きのもと)はすかさず首を横に振り、

「ううん、自分で起きただけ。」

といった。

 二人の顔はどうも疲れている。「ずっと徹夜(てつや)していたんだな」ということを察した。

「あっ、座りますか。」

「んっ。いいよ。そこに座らなくても座る場所はあるから。」

通路の壁に取り付けられている補助いすを引き出し、そこに座る。

 腰かけるとあることに気付いた。すぐに(はやぶさ)も気づいたようだ。窓枠に手をかけ、顔を壁につけた状態で柊木(ひいらぎ)が寝入っていた。もう眠気には耐えられそうになかったようだ。

 起きているのが女の子同士になったため、(はやぶさ)がいきなりこんな話をした。

「そう言えば、榛名(はるな)先輩って好きな人いるんですか。」

「えっ。」

顔が赤くなった。確かに好きな人はいる。だが、その人には好きな人が別にいる。そうなると何か言いづらい。

「い・・・いるにはいるよ。」

(だれ)ですか。」

(はやぶさ)が目を光らせている。

「・・・。」

やはり言いづらい。そう思っていると、

「もしかして、ナガシィ先輩ですか。」

と言われた。あたっていただけに動揺(どうよう)を隠せなくなった。

「な・・・何で分かったの・・・。」

「あっ、そうなんですね。」

(はやぶさ)はどうも(かん)で言ったらしい。少し間をおいて、

「いつもふつうに話せてますし、(コク)ルチャンスはいくらでもあると思うんですけどね。」

「ゆ・・・結香(ゆうか)。」

次に続く(はやぶさ)の言葉をさえぎるように言った。

「確かに永島(ながしま)のことは好きだよ。気持ちの・・・本物を開いてくれた・・・。」

「なら、なおさら・・・。」

「だけど、その人には好きな人がいるの。小学校の時から思っている好きな人が・・・。それに、もう約束してるんだって。お互い夢がかなうまでは全力で夢に打ち込むんだって。それもただの純愛(じゅんあい)じゃないんだって。彼女の方も永島(ながしま)と一緒になりたいって思ってて、私のメアドを聞いてまで永島(ながしま)と同じ進路に行きたいって思ってるんだよ。だから、私がそんな(なか)に飛び込む隙間(すきま)なんてないよ・・・。」

肩が落ちてくるのが自分でも分かった。

「怖い愛ですねぇ・・・。」

「てか、なんでそんなこと聞くわけ。」

「えっ、ちょっと気になったから・・・。」

「ふうん。じゃあ聞くけど、結香(ゆうか)の好きな人って(だれ)。」

同じような反応を(はやぶさ)もした。

(つばさ)・・・かな。」

冗談(じょうだん)半分で言ってみる。

「あ・・・当たり・・・です。」

「あたるとは思わなかったわ。」

予想外だった。

 この話が終わった後、木ノ本(きのもと)(はやぶさ)は昨日調達した朝御飯のパンにかじりついた。そうこうしている間に時間は4時50分をまわった。またカーテンの開く音がする。13番席から人影が通路に出てきた。

「おそくない。」

木ノ本(きのもと)が声をかける。

木ノ本(きのもと)が早すぎるだけじゃん。いつ起きたんだよ。」」

起きたての永島(ながしま)が目をこすりながら言う。

「4時。」

「確かに。その時間から見ればおそいかもな。」

 寝台側からすれ違った列車の音がかすかに聞こえてきた。すれ違う時の揺れで目が覚めたのか、柊木(ひいらぎ)が目を開ける。

「おはよう。(つばさ)。」

(はやぶさ)柊木(ひいらぎ)の顔を覗き込んだ。

「あれ。俺寝ちゃったのか・・・。」

ため息をついた。柊木(ひいらぎ)は起きている顔ぶれが一つ増えていることに気付き、

「あっ。ナガシィ先輩おはようございます。」

挨拶(あいさつ)をした。

 6時過ぎ。この時間になるまでにほとんどの人が起きた。まだ寝ているのは(くすのき)佐久間(さくま)醒ヶ井(さめがい)諫早(いさはや)新発田(しばた)の5人だけである。全員朝に強いのかただ眠ることができなかったのか・・・。しばらく経つと車内に今日最初のアナウンス、おはようアナウンスが流れ、しばらくすると一戸(いちのへ)に到着することが告げられた。

 おはようアナウンスが終了すると柊木(ひいらぎ)が何か思い出したように言った。

「ナガシィ先輩。今日「スーパー白鳥(はくちょう)」に乗るじゃないですか。その時に、もし寝てしまっていたら、起こしてもらえませんか。」

頼みづらいようではあった。

「うん、いいよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、ナガシィ先輩。私もお願いできますか。」

(はやぶさ)が便乗したように言う。

「分かったよ。起こすから。」

と返事をした。

 7時00分。「寝台特急(しんだいとっきゅう)はくつる」八戸(はちのへ)発車。ここから青森(あおもり)までは1時間15分の道のりである。もうすぐ終点の青森(あおもり)に到着する。1時間以上ある行程は寝台を椅子(いす)代わりにして外を眺めていた。ほんの数本、上り普通が隣を通過していき、多数の貨物列車がEH500型電気機関車(金太郎(きんたろう))にひかれ走り去っていった。

 8時15分。「寝台特急(しんだいとっきゅう)はくつる」青森(あおもり)到着。青森(あおもり)についてまずやりたいことは、「はくつる」の前に上野(うえの)を発った「寝台特急(しんだいとっきゅう)あけぼの」と「はくつる」よりも37分遅れて発車する「寝台特急(しんだいとっきゅう)ゆうづる」の撮影(さつえい)である。「あけぼの」は前紹介したので、今回は「ゆうづる」を紹介しよう。「寝台特急ゆうづる」は「はくつる」「あけぼの」と同様上野(うえの)青森(あおもり)間を結ぶ寝台特急である。ただしこの3本の列車はお互い走る区間が違うため、それぞれがその役割を分担(ぶんたん)している。「ゆうづる」は上野(うえの)から常磐(じょうばん)(せん)に入り太平洋(たいへいよう)(おど)り出る。「はくつる」は東北本線(とうほくほんせん)をひたすら北に走る。「あけぼの」は高崎(たかさき)(せん)に入り日本海側(にほんかいがわ)針路(しんろ)をとる。分業(ぶんぎょう)しているので、お(たが)いを(つぶ)さずに()んでいるのだ。

 8時20分。アド先生から解散(かいさん)命令(めいれい)が出て解放される。すぐにも先頭が緑の車両をとるためにそのホームに向かう。

先頭は黄緑色(きみどりいろ)をした高運転台(こううんてんだい)の車両。運転台の横付近にHEAT(ヒート)789のロゴが入っている。「スーパー白鳥(はくちょう)」に充当されている789系だ。この列車は盛岡(もりおか)青森(あおもり)函館(はこだて)を結んでいた「特急はつかり」の運転区間変更により登場した列車。「白鳥(はくちょう)」の元の名前は大阪(おおさか)青森(あおもり)間を走っていた特急列車の名前で、2002年この列車は廃止(はいし)されている。使われる車両が変わったこと以外は、この名前がただ北に移っただけなのだ。そしてこの列車は世界一長い海底(かいてい)トンネル。青函(せいかん)トンネルを時速140km/h(キロ)()()ける。僕達も北海道に(わた)るためにはこの列車に乗るしかないのだ。

8時57分にこの列車を見送ってから「ゆうづる」まではまだ53分ある。青森(あおもり)駅の外に出ても仕方ないが、まずはここまで来た切符を自分のものにしたい。後、「スーパー白鳥(はくちょう)」「白鳥(はくちょう)」の割引(わりびき)切符(きっぷ)も確保しなければならない。シナ先生に(うなが)されて改札を出る。改札を出るときに、乗車記念のスタンプを押してもらった。次は、特急列車の割引切符である。1人5500円の青函(せいかん)往復割引切符。シナ先生が一人一人から5500円を徴収(ちょうしゅう)して緑の窓口に買いに行く。僕たちはその間青森(あおもり)駅の待合室(まちあいしつ)で待った。待合室の大きなモニターには去年街に繰り出したねぶたの写真がスライドショーみたいに流れていた。だが、僕には何の興味もわかなかった。ただ、すごいと思っただけにすぎなかった。東北の三大祭りが見れると臨地研修(りんちけんしゅう)の前から(さわ)いでいたのは佐久間(さくま)だけ。木ノ(きのもと)留萌(るもい)も、お祭りは関係ないらしく、青森(あおもり)で泊まるホテルがとれなかったことに腹を立てていた。高校1年生はというとこちらもそのことで腹を立てている。中学生の方はというとどうも分かりづらい。ただ、新発田(しばた)だけはねぶた祭りが見れることが嬉しいらしい。そして僕はというと、根っからの祭り嫌いの少年である。

9時50分。「寝台特急(しんだいとっきゅう)ゆうづる」がEF81-90号機にひかれ入ってきた。この8分後には上野(うえの)を先発した「寝台特急(しんだいとっきゅう)あけぼの」が入ってくる。青森(あおもり)に到着した「ゆうづる」はすぐにEF81-90号機が24系寝台客車(しんだいきゃくしゃ)から外され、カニ24形の顔とその真ん中に掲出(けいしゅつ)する、2羽の(つる)と「ゆうづる」の文字が入ったトレインマークがその姿(すがた)を現した。

9時58分。「寝台特急(しんだいとっきゅう)あけぼの」が青森(あおもり)に到着した。上野(うえの)青森(あおもり)間の寝台特急(しんだいとっきゅう)では一番長い旅路(たびじ)の終了である。長岡(ながおか)青森(あおもり)まで「あけぼの」を引っ張ってきたのはEF81-139号機。先頭にある、双頭連結器(そうとうれんけつき)とごちゃごちゃした連結器部分(れんけつきぶぶん)がなんとも(いさ)ましい。こちらもEF81-139号機はすぐに「あけぼの」から外され、カニ24形(電源車(でんげんしゃ))の前にDE10型ディーゼル機関車が連結され、青森(あおもり)の車両区へと回送されていった。

そうこうしている間に10時01分発の「スーパー白鳥(はくちょう)95号」が出ていってしまったため、次の「スーパー白鳥(はくちょう)1号」を待つことになった。青森(あおもり)出発は11時19分。函館(はこだて)到着は13時14分だ。


タイトル関係するの最初だけですね。

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