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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
73/184

73列車 暇と期待

 8月2日。この日は5時に起きなければならないのだが、4時に目が覚めた。

 携帯電話(けいたいでんわ)に目をやると受信を知らせる青いランプがゆっくりとした周期(しゅうき)で光っていた。目を通すと、木ノ本(きのもと)からだった。メールの届いた時間は4時06分。メールの内容は「寝台特急(しんだいとっきゅう)カシオペア」のことであった。

「EF510-500番台 北斗星色(ほくとせいしょく)かカシオペア(しょく)どっちがひいていたら(うれ)しい。」

と書かれていた。

「寝台特急カシオペア」にはEF510という電気機関車に交代した。そのEF510には二つの色があり、一つは青を主体とする通称「北斗星色(ほくとせいしょく)」。もう一つはE26系(寝台特急カシオペアの客車)と同じシルバーをまとっている「カシオペア(しょく)」である。僕は「当然北斗星色(ほくとせいしょく)の方がいい。」と返信をした。

 集合は浜松(はままつ)駅コンコース東海道本線(とうかいどうほんせん)改札前。集合時間6時45分。時間ぎりぎりには行くわけにはいかないと思うどころか早く青森(あおもり)に行きたいという気でいっぱいだった。浜松(はままつ)駅に着いたのは6時21分だった。改札前に行くとすでに見なれた顔が4つあった。木ノ本(きのもと)留萌(るもい)柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)だった。

「おはようございます、ナガシィ先輩。」

柊木(ひいらぎ)にそう声をかけられた。

「よーす。」

僕も返事をする。

 集合時間が近づいてくるとだんだん部員が集まってくる。ただ集まっている人は鉄研部員だけではなかった。OB・OGの顔もある。アド先生からは聞いていたが、やはり本当に来るとなると・・・。

 6時50分。佐久間(さくま)が5分遅刻してきたものの、部員全員が集まった。集まるとアド先生が「青春18切符」を全員に配布する。全員が「18切符」を持つとシナ先生が、

「それじゃ、改札を通って、ホームに行って。」

と声をかけた。

 浜松(はままつ)駅の1・2番線ホームに上がると、1番線にはもうすでに373系が6両編成で控えていた。

 7時05分。「ホームライナー静岡(しずおか)4号」はカクンと小さく()れ、浜松(はままつ)駅1番線から(すべ)りだした。

発車してからというもの僕はただ外を流れていく景色を楽しんでいた。

永島(ながしま)。そこカーテン閉めて。」

醒ヶ井(さめがい)が目を細めながめ、手でカーテンを閉めてという動作をやる。

KY(ケーワイ)な。)

僕は醒ヶ井(さめがい)の言い分を無視した。

 「ホームライナー」は定刻通りに東海道本線(とうかいどうほんせん)を飛ばす。そして8時04分。静岡(しずおか)に定刻で到着した。静岡(しずおか)からは東海道本線(とうかいどうほんせん)の各駅停車で熱海(あたみ)までいく。

 8時07分。ピンポーン、ピンポーンという音とともに片側に3枚あるドアが一斉(いっせい)にしまった。

「ナヨロン。オヒサァ。」

善知鳥(うとう)先輩たちが名寄(なよろ)先輩に気付いたのか声をかけた。

「久しぶり。」

それからはそれぞれの近況を話す話に入って行った。

 今のっている普通は313系-2500番台と211系-5000番台の6両編成。この溺愛(できあい)の列車は東静岡(ひがししずおか)草薙(くさなぎ)清水(しみず)と各駅で客を拾って熱海(あたみ)を目指す。由比(ゆい)まで来るとこの列車は本線から外れて待避線(たいひせん)に入り5分程度停まった。

醒ヶ井(さめがい)、この停車は何の意味があるんだか解る。」

突然ではあるが、醒ヶ井(さめがい)に聞いてみた。

「わかんねぇよ。なんか意味あんの。」

「たぶん「ふじかわ」が抜いていく。」

醒ヶ井(さめがい)の知識のなさにはあきれるが、しょうがない。数分経()つとさっき「ホームライナー」で使われていたと思われる373系が313系と211系の普通を抜いて行った。

 富士(ふじ)沼津(ぬまづ)三島(みしま)主要駅をだんだんとやり過ごしていく。函南(かんなみ)を発車して全長8キロあまりある丹那(たんな)トンネルに突っ込む。丹那(たんな)トンネル内で下り列車とすれ違い見ずらいトンネル内に車内灯の白と黄色っぽい色が流れていった。そして終点熱海(あたみ)が近づいてくる。

永島(ながしま)、降りる準備しろよ。」

木ノ本(きのもと)に言われ、腕を通したままでいたバックを背中にまわし、ブルーのロングシートから腰を上げた。

(つばさ)、ひどい。」

という声がした。後ろの方を見てみると(はやぶさ)がとても不機嫌な顔をしていた。

「何があったの。」

(くすのき)先輩が聞く。

(つばさ)、後ならいい音聞けるよって言ってたのに・・・。よりによって界磁(かいじ)チョッパ制御(せいぎょ)のモーター音聞かせやがって。」

「だまされる方が悪い。」

「はいはい、言い合いはそこまでにして。だます方も悪いよ、(つばさ)。」

(くすのき)先輩が仲立ちに入りこの事態は沈静化したみたいだった。

 9時56分。|現金自動預け払い機(ATaMi)に到着。この駅で管轄がJR東海からJR東日本に移る。この先は各駅停車でもJR東海の普通列車とはわけが違う。15両の編成でグリーン車を2両連結している。さらに片側には56枚のドアが存在し、首都圏の人の多さをさばき切る。しかし、その人の多さから15両編成の普通列車が頻発(ひんぱつ)しても車内には必ず立っている客がいるほどだ。ステンレスのボディーに緑とオレンジのラインが入った車両がいるのを横目に5番線をEF210(桃太郎(ももたろう))が牽引する貨物列車が通過していった。そして、普通は前を行く貨物列車を追って熱海(あたみ)を発車する。

 次に乗る列車は東海道本線(とうかいどうほんせん)快速(かいそく)列車「快速(かいそく)アクティー」だ。快速(かいそく)と言っても、名古屋圏(なごやけん)快速(かいそく)や、関西圏(かんさいけん)新快速(しんかいそく)のように通過駅が多いわけではなく、快速(かいそく)と言うよりはもはや「準急(じゅんきゅう)」に近い。

 「アクティー」に乗るとすぐに暇になった。ここから先は1時間程度かかる。

榛名(はるな)。暇じゃない。」

留萌(るもい)も暇なようだ。

「まぁ、ただ乗っているだけじゃ暇だねぇ。何かしない。」

「何しようか。」

二人が考え込む。

「何しようかって言っても、やることがないなぁ・・・。」

留萌(るもい)には何もネタがないようだ。

「しりとりでもしない。」

「しりとり。」

オウム返しに留萌(るもい)ガ聞く。

「そう。鉄道シバリでどこまで続くかやってみない。」

留萌(るもい)はちょっと考えてから、

「うん。面白そう。」

と答えた。

 木ノ本(きのもと)たちがしりとりを始めてから何分たっただろうか。国府津(こうづ)まで来た。国府津(こうづ)に来ても何か変わったことがあるわけではない。そのため僕も柊木(ひいらぎ)もボーっと外を反対側の席から眺めていた。すると、上にオレンジ下に緑色をまとった何か事業車(じぎょうしゃ)のようなものが前を通り過ぎていった。少し眠気(ねむけ)に襲われていたが、その眠気が一気に吹っ飛んだ、

「さくら。今のなんだかわかる。」

木ノ本(きのもと)たちも気づいていた。

「あれじゃない。たぶん、国府津(こうづ)の近くの車両区に所属()るクモヤ143とかっていう奴じゃない。」

事業車(じぎょうしゃ)までよくわかるもんだよな。」

本当だ。留萌(るもい)の知識は半端(はんぱ)ではない。国府津(こうづ)でクモヤ143形を見てからは木ノ本(きのもと)たちのしりとりも停戦していた。そして、そのまま東京(とうきょう)まで来てしまった。

「それでは、今から自由行動にしますが、3日目はこの「銀の鈴」の前に5(17)時に集合してください。」

アド先生が3日目の集合場所の説明を聞いてから解散である。

「さて。おい、永島(ながしま)まずは(めし)にするか。」

佐久間(さくま)が自分たちを誘い、東京(とうきょう)駅のコンビニに行って、お(ひる)御飯(ごはん)の調達を(うなが)した。僕はそばを佐久間(さくま)はカップラーメンを買った。木ノ本(きのもと)達や柊木(ひいらぎ)達も同じようだった。

 昼を食べ終わると、

「みんなどこ行きたい。」

佐久間(さくま)が全員に行きたい場所を聞いた。なぜなら、自由行動のほとんどを佐久間(さくま)と行動することになったからだ。

「僕は埼玉の鉄道博物館に行きたいです。」

柊木(ひいらぎ)がまずそう言った。柊木(ひいらぎ)以外で鉄道博物館に行きたいと答えたのは、(はやぶさ)大嵐(おおぞれ)だけだった。他はお台場か列車に乗ったままどこかまできまぐれに行ってくると言い佐久間(さくま)木ノ本(きのもと)と別れた。

 箕島(みしま)は一足先に上野(うえの)駅にいた。

名寄(なよろ)先輩。ここからどこに行くんですか。」

常磐線(じょうばんせん)にでも乗ってどっかまで行ってくるか。」

名寄(なよろ)箕島(みしま)空河(そらかわ)にそれでもいいかというように聞いた。

「僕は別にかまいませんよ。」

空河(そらかわ)が答えると箕島(みしま)もこれを認めざるを得ない。

「分かりました。いいですよ。」

と答えた。

 常磐線(じょうばんせん)に揺られて何十分も時間がたった。ゆっくりと揺られているだけでは何ものうがないが、箕島(みしま)たちは去年博多に行った時もこのような感じだったらしい。箕島(みしま)は眠気が極度の位置に達しておりいつのまにか寝てしまった。空河(そらかわ)は寝てなるものかという思いで外に目をやり続ける。ずっと目を()らしていると、上り線の貨物列車とすれ違った。

「あっ。」

ふと声が上がる。

「どうした。空河(そらかわ)。」

常磐線に乗った後ずっと目を閉じていた名寄(なよろ)空河(そらかわ)に聞いた。どうやら眠っていたわけではないらしい。

「今の貨物列車を牽引してた機関車、カシオペア(しょく)でしたよ。」

と答えた。

「そっか。じゃあ、今日は期待(きたい)できそうだな。」

名寄(なよろ)は独り言のようにつぶやいた。


これは雑学ですが、阪神淡路大震災で被災した東海道本線が完全復旧するのにかかった期間が73日です。


日本の人たち頑張るとすごいことを生みますね。


おとといユニークアクセス数500突破。

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