65列車 突飛とグレードアップ
4月30日。
「柊木。」
教室の外から柊木を呼ぶ声がする。髪は結構長い。声も女の子っぽいからどう考えても女子だろう。
柊木はその人のほうに歩いて行った。
「翼。俺、やっぱ鉄研入ることにした。」
「そうするなら最初からそうしろつうの。まだ、間に合うから早く出してきなよ。」
「ああ。そうする。・・・。俺で何人目。」
「新入部員としては7人目。」
「あっ。結構入ってるんだな。」
その人は意外な顔をした。
「でも、お前も入ってくれてありがとな。」
「・・・。入りたいから入るに決まってるじゃん。」
そう言ってその人は自分の教室のほうへ歩いて行った。
「翼。今の誰なんだ。」
隼は疑問に思ったらしく聞いてきた。
「おい。そういうこと聞いて・・・。」
「幼馴染だよ。」
北石の言葉を遮ってそう説明した。
(幼馴染・・・。)
隼にはちょっとこの言葉が痛かった。
その放課後。
(えっ。)
北石と隼は心の中でハモった。意外だったのは服装だった。
「女子が男子の制服着てる。」
二人で声を合わせてしまったほどだ。
「女子の制服着た男子がいるかつうの。純粋に男子だよ。」
そうツッコまれてしまった。
「えっ。でも、一見裏声にしか思えない・・・。」
「デフォルトがこれなんだよ。」
相手は怒った口調で話しているのか笑っている口調で話しているのかわからない口調。恐らく怒っているだろう。しかし、彼の言葉からはそれが感じられないのだ。
「ツッコむのはそれぐらいでいいか。」
柊木が聞く。北石と隼はまだツッコみ足りないところもあったが、今は驚きのあまりそういう場合でもない。
「俺の幼馴染の潮ノ谷あまぎ。まぁ、こういうやつだから・・・。」
柊木もそれ以上は説明しずらいらしい。
「ていうか、今日部活あるのか。」
潮ノ谷は柊木に聞いた。
「ああ。先輩たちは部室言ってから紹介する。」
と言って潮ノ谷を部室に案内した。部室に着くと誰もいないことを確認した。
「さて、誰かが鍵取りにいかなくちゃいけないけど。」
北石が言いだすと、
「お前が取りに行って来いよ。」
「なんだと。貴様ら。時にはお前らの誰かが取り行け。ここんとこ俺が3回連続で取りに行ってるじゃないか。」
「言いだしたやつが取りに行くって言うのは鉄則だろ。」
「・・・。」
それからというもの3人でいがみ合っていた。
すると下から駆けあがってくる音がした。下からのぞいた顔は木ノ本先輩だ。
「やっぱりこっちに来てたかぁ。今日は寮で部活だから。」
木ノ本はそう言いながら息を整えた。上を見上げると3人からまた一人増えていることがすぐに分かる。
(また女子かぁ。)
と思った。
「早くしてよ。」
とりあえずその人のことは後だ。柊木たちを促して、自分はさっさと外に出て寮への道のりを歩いて行った。
(また新しい人入ったんだ。これで今年は7人目かぁ・・・。)
と思いながら来た道を戻った。
しばらくすると木ノ本が戻ってきた。
「呼んできたよ。」
と言って学習室に入り口入ってすぐのところに崩れた。
「やっぱりこのごろ運動不足だ。体力落ちた。」
と続けた。
それに続いてきた柊木たちもどんどん入口にたまっていく。全員息切れしている。
「き・・・今日は部室じゃないんですか。」
北石が言う。
「だから、この部活じゃあ予定表なんて意味ないって言ったじゃん。」
それには木ノ本が答えた。
このころには全員1年生の数が一人増えていることに気付いている。
「柊木。その人は誰。」
箕島が柊木の後ろにいた人のことを問いた。
「あ・・・。新入部員の潮ノ谷あまぎです。」
そう紹介されると潮ノ谷という人は近くに荷物を置いて、
「今日からお世話になります。1年8組、潮ノ谷あまぎです。よろしくお願いします。」
とあいさつした。
「潮ノ谷君ね。よろしく。」
その後ろから声がした。潮ノ谷という人は振り向いてみる。後ろにいたのはアド先生だ。
「アド先生。その背後霊みたいにあらわれるのやめてください。心臓に悪いです。」
ハクタカ先輩が冗談を言った。
「何。鷹倉君はもう心臓が悪いの。それは病院に行ったほうがいいんじゃないかなぁ。」
アド先生は真に受けたのか知らないがそう言葉を発した。
「いや、そういう意味じゃ・・・。」
「ハクタカ。行ってくるなら今のうちだよ。」
楠先輩がハクタカ先輩の肩に手を置く。
「絢乃。お前怖いぞ。」
「おーい。みんな聞いてください。」
アド先生が口を開いた。冗談を言い合う時間はここで終了である。全員学習室の真ん中に正方形上に並べられた長机の周りか、壁際に置いてある椅子に腰掛けた。
「はい。それではこれからの予定について説明します。」
と言った。この後アド先生から今後の予定について語られる。前に正式決定ではなかった静岡貨物での展示が正式に決まったこと。そして、今日稲沢さんが来るということを聞いた。
4時を回るころ、その稲沢さんがやってきた。と言っても稲沢さんの顔はこの中にいる人は誰も知らない。
「うーん。こんなかには俺知ってる人がいないんだよなぁ。」
稲沢さんは腕組みをしてうなった。そして、かけている眼鏡に手を当て、
「アド先生。コンテナに積むときに今までのモジュールを入れてる箱の強度が必要なんですけど・・・。」
と向こうの話に入っていった。
その間僕は稲沢さんのことをじっと見ていた。どこかであった気もするのだが、その場所が思い出せない。稲沢さんの第一印象は初対面ではないと思ったことだ。そして、どことなく誰かに似ている・・・。
向こうの話が終わったみたいで稲沢さんはこちらを向いた。
「アド先生から苗字くらいは聞いてると思うから俺のこと分かるとは思うけど、自己紹介しとく。稲沢直人。よろしく。」
相手はそういった。そのあとはハクタカ先輩の位置から順番に自己紹介していくことになり、僕はその順序で一番最後だった。
「永島智暉です。よろしくお願いします。」
(永島・・・。ああ、南の言ってた従弟かぁ。)
「よろしく。」
名前も聞いても僕の中では記憶の糸はつながらなかった。
そのあと模型の連結器を変える授業が稲沢さんによってなされることになった。
稲沢さんについてきたのは箕島、僕、柊木、北石の4人。他のメンツは模型をいじらなかったりして、こういう教習は必要ないということからだ。
「アド先生。なんか車両持ってきてください。」
稲沢さんはそう頼んだ。しばらく待ってアド先生が持ってきた車両は115系の横須賀線で働いていた車両だった。上が青でしたがクリームの色の塗装。色違いの湘南色をしているこの塗装は別名「スカ色」という。
「まずだなぁ。こいつの台車のねじをあーって取る。」
稲沢さんも「あー」というときは裏声だった。いつからこの部活の「あー」は裏声だったのだろうか。
「取ったら今度はここについてるこの字形みたいなふざけたアーノルドカプラーを90度ねじって、上にあーって引っこ抜く。」
さらに説明を続ける。
「ここまで来たらこのカプラーを組み立てる。」
稲沢さんが手に持っているのはKATOが発売しているカプラーの交換パーツだ。これの連結器がついているほうと下のフックのついているほうを組み合わせることで一つのカプラーとして機能するようになる。説明書のくみ上げ方を見てくみ上げ、これをさっきとは逆の手順で車両に戻すと完成だ。案外簡単なものである。僕は自分の持っている模型のカプラーは全部直したが、自分が持っているのはTOMIX製なのでこれとはまた別の方式でカプラーを変えることになる。
2個、3個と交換していくうちに全員作業に慣れてくる。作業になれたらまた別の車両。学校の車両庫から787系「特急つばめ」を出して、同じ作業をする。だが、これには一つだけ違うところがある。115系にはあったアーノルドカプラーが取り付けられていないのだ。その代りに自動連結器を模したカプラーがついている。自動連結器とはフックのような形状。連結すると左手と右手をひっかけた状態になる。これを鳥のくちばしのような形状をしたカプラーに交換するのだ。このカプラーの本物は密着連結器という。
下から引っ張るようにして自動連結器を模したカプラーをとる。今度はここに刺さるようになっている密着連結器型のカプラーを差し込んで完成。今度はさっきみたいな面倒な作業はない。他にも253系「特急成田エクスプレス」のカプラーも交換した。
それが終わるともうすでにあたりは暗くなっている。その頃になって部活は終了した。自分たちが荷物を置いていたところは完全に真っ暗になっていた。
「おいおい。下のオッチャンに電気つけてって言いにいかなかったのかよ。」
稲沢さんはあきれたように言った。
部活が終わると暗いも何も関係ないらしい。暗い学習室から僕たちはすぐに出た。
今回からの登場人物
潮ノ谷あまぎ 誕生日 1994年10月1日 血液型 A型 身長 155cm
日本貨物鉄道社員
稲沢直人 誕生日 1983年8月5日 血液型 B型 身長 171cm
本当にギャグ設定にしか思えないキャラクターが・・・。
自分で作っててすごいのができてしまったと思いました。だから僕には考える能力がもっと必要なんです。
昨日携帯のみのユニーク数100突破・・・。