62列車 直感
去年文化祭に見に来た時僕が聞いた人はこういいました。
(「俺みたいなバカでも入れる。」確かに。僕みたいなバカでも入れた。ここにこういう部活があるって早く気が付いてよかったなぁ・・・。)
ポスターに写っている223系を見てちょっと笑った。
(223系かぁ。前面を見るためには絶好の車両。この上ないアングルから見れる前方は他のやつの頂点に立つ。部活内にもわかってくれる人はいそうだな・・・。)
思っていることは半分どうでもいい・・・。
放課後・・・、
「今日鉄道研究部に入った人を紹介します。」
シナ先生が紹介した。そういうのを待っていたかのようにシナ先生の後ろから一人の少年が顔を出した。
「1年A組。大嵐響です。よろしくお願いします。」
その顔を見た時僕はどこかで会っているような気がした。向こうは僕のことを覚えていたみたいで、
「あっ。あなたは。文化祭の時の。」
と言ってきた。だが、僕はそう言われても誰だか思い出せない。
「えっ。いつの・・・。」
「去年の文化祭で223系直してたじゃないですか。」
ここまで言われてようやっと記憶の糸がつながった。223系を復旧させているときに話しかけてきた小学生である。
「あの時あなた「俺みたいなバカでも入れる」って言ってましたよねぇ。それ当たりましたよ。」
というとすかさず2年生からクレームが飛んだ。
「お前そんなこと言ってたのかよ。」
「どこがバカだよ。バカじゃなくて天才だろ。」
「うーん。天才ボケって言えばつじつまが合うかも。」
「何じゃそりゃ。」
「天然ボケの番台だよ。天才ボケ。テストじゃいい点叩き出すけど根はバカ。」
「納得。」
(するなよ。)
(俺みたいなバカって。まさか・・・。)
ちょっと汗が流れてくる。
「まぁ、歓迎するよ。」
楠先輩が大嵐をこっちにおいでと促す。
「あの。小さいからって子ども扱いすることだけはやめてください。僕は先輩のおもちゃじゃないんです。」
「・・・。そうするつもりはないよ。」
(もし善知鳥先輩だったら・・・。ソッコウでいじったよね。)
(はっきりしてるなぁ。)
「・・・。話変えるけど、大嵐君何か詳しいものとか、好きなものあるの。」
大嵐の答えはソッコウで返ってきた。
「もちろん。乗務員室の後ろにかじりついて、そこから離れないことです。」
(純鉄道少年だ・・・。)
「まぁ、ふつうのことをやってるだけですけど。」
(ふつうのことかぁ。まぁ車窓鉄からしてみればふつうか。)
僕には前面にかじりついてそこから離れないという人はマニアとしてどういうジャンルに入るかわからないので、ここでは車窓鉄ということにしよう。
「じゃあ、そういう人からの視点で何が一番好き。」
留萌が口を開く。何というのはおそらく車両のこと。これにもすぐに答えが返ってきた。
「そんなの決まってるじゃないですか。223系に決まってます。あいつなら立っていなくても前面眺望が楽しめるじゃないですか。」
(あっ。まぁ分かってるな。)
223系とはよく出てきているが関西を走っている通勤電車の一つ。窓はものすごく広く、下は大人の腰の高さより低い位置にある。そして乗務員室のすぐ後ろに補助席を備えている。(備えていないものもある)そこに座れば、大嵐が言ったとおり立っていなくても前の風景を見ることができる。
「まっ、僕の前に立つ人は当然ハジキで殺しますけど・・・。」
(いうことがひどい・・・。)
「これも当然のことですが、225系が来た日にはプラスチック爆弾で破壊しますけどねぇ。1京tの。」
(全員敬遠するんだ。あれ。)
「1京tって。どこから集めんだよ。その量のプラスチック爆弾。」
「作るに決まってるじゃないですか。それ以外でどうやって1京tのプラスチック爆弾を集めると・・・。」
(いうことが一つ違う・・・。)
留萌はしばらく考えてこう質問してみることにした。
「新幹線とかは興味ないのか。」
「新幹線は、「乗務員室に入らせろー」って言いたいですね。」
(それは言いたいけどさぁ・・・。)
「間違っても言うなよ。」
「分かってますよ。」
言っていいことと言ってはいけないことの区別はちゃんとついているらしい。
「留萌。話済んだ。」
それを確認してきた。もう済んだというと楠先輩が部活について説明する。
「とりあえず、日程はこの通りだけど、この通りやらないってことを思っといて。」
「最悪ですね。こういう部活で。」
「・・・。」
「分かりました。ようは皆さん時間ルーズってことですよね。何日かかるかわかんないけど、そういう身体作ってくることにします。次は明日でいいんですか。」
全員時間にルーズと聞いた時には腹が立ったが、今はそういう場合ではない。小さくうなずくと、
「了解です。」
と言って部室から出て行った。彼が部室からいなくなるとどっと疲れが出てきた。
「はぁ。またすごいのが入ってきたな。」
ハクタカ先輩が去年もあったみたいなことを言う。
「結構はっきりしてるやつだったな。」
「あそこまではっきりしてると223系以外好きな車両ってないかも。・・・。そんなわけはないか。北海道のキハとかもいけないわけないかぁ。」
「さくらは何検証してるの。」
「・・・。」
これから大嵐みたいなのが入ってくるのだ。
翌日。高校2年生の柊木は鉄道研究部の部室に行ってみることにした。
体育館職員専用入口のところまで行くと一人中に入りずらそうにしている人がいる。
「北石。」
と声をかけてみる。北石と呼ばれた人がこちらを向いた。
「どうした。バスケ部でも見に来たのか。でも、男子はあっちだぜ。」
「バスケ部見に来たじゃねぇよ。鉄研身に来ただけ。どこで活動やってるかわかんねぇから、ここにいたようなもんだけど。」
ちょっと怒り気味の口調で言った。
「北石も。ちょうど俺も見に行こうって思ってたところなんだけど。」
「へぇ。どこに部室あるか分かってるのか。」
「いや。」
「意味ないじゃん。」
「いや、でも意味はある。ここに来たって意味が。」
「たどり着いてなきゃ、意味ないだろうが。」
北石は牙をむき出すくらいの声で怒鳴った。
そこに一人中学生がやってくる。その人は職員用のドアから入っていく。しばらくするとステージのほうに現れた。
「もしかして、あいつ鉄研部員じゃないのか。」
柊木が話しかけた。その頃にはステージの向こう側に消えようとしている。
「行ってみるか。」
と行って北石も腰を上げた。その庫が言ったように言ってみるとステージの向こうに階段があった。その階段を上って途切れるところまで行ってみる。踊り場に立ってみると向こう側の壁に鉄道グッズが飾られているのが目に入った。そして、中から聞こえてくる笑い声。どうやら目的の場所はここらしい。
(400系にSLかぁ。読みづらいけどC58って書いてあるな。)
階段の手すりにかけてあるものにも目を通す。貼ってあるカレンダーにはキハ85「特急ひだ」。そして前のポスターは「特急伊那路」の宣伝ポスター。いつのものだとツッコみたくなるものがいくつもあった。
それらに目を通し終わったら部室の前に立ちドアを開けてみた。すぐに僕たちには気づいた。
(なんだよここ。純マニアの聖域じゃねぇかよ。)
(なんだよ。このテンション。付いてけないかも。)
部室の中にはEDOの曲が流れている。とてもじゃないが鉄道研究部の部室とは思えなかった。
「部活動見学。」
楠先輩が話しかけた。
「あっ。はい。」
これには右にいた男の子が答えた。
「鉄道研究部ってここで活動してるんですか。」
今度は左の男の子だ。
「うん。そうだよ。」
「じゃあ、これから皆さんと同じ部活になるんですね。」
「・・・。」
「1年6組。柊木翼です。よろしく。後E3系を馬鹿にする人は無差別で攻撃するから気を付けてください。」
(名前が翼で好きな新幹線がE3系。もはやギャグじゃん。)
(・・・。いるんだな。自分の名前にほれ込んだやつ。)
これがこう思われる根拠は一つ。東京~山形・新庄間を走っている新幹線の名前が「つばさ」。そしてそれに使われている車両がE3系。
「そっちの子は。」
今度は僕の右の男の子だ。
「あっ。僕はただ見学に来ただけなので・・・。」
とだけ返答した。
その後。そんなに話さず全員のやり取りを聞いていたが、ほとんどの人がいい加減なのだ。これで真剣に活動をする気があるのだろうか。
「あのう。僕他の部活動の見に行きたいんですけど。」
「そうか。もし入りたかったらまた来いよ。」
ハクタカ先輩がそう言った。
「うん。待ってるぜ。北石。」
「・・・。」
そういう言葉を背中で受けて部室を出た。
(もし入りたかったらかぁ。もしかしたらその気が起きないかもしれないけど、なんだよ。この遊び部。)
ゆっくり階段を下りた。そのあと他の部活もまわってみたが、自分がこれと思ったものがない。
(なんでだ。去年はこれでも陸上部やってたのに。今は何にも感じねぇなぁ。ただきついだけの刃になっちまったなぁ。・・・。やっぱり。隠すのは無駄なのか。これは少しは受け入れてったほうが・・・。)
その頃部室では・・・、
「本当にギャグだよねぇ。あんたの名前。」
「そうですか。僕は今までそんなこと考えもしませんでしたけど。」
「いや、ふつう考えるって。」
「ダメだ。おかしい。」
「・・・。」
「ヤバい。ヤバい。」
「・・・。なぁ永島。何がそんなにおかしいんだよ。」
醒ヶ井には何も伝わっていないらしい。
「だって笑えて来ない。名前が翼で、好きな新幹線がE3系。」
「つけた親も親だよなぁ。どこまでギャグりたいんだよ。」
(名前だけでここまで笑える人って一体・・・。)
「お前ら、頭どうかしたんじゃないのか。」
とツッコまれた。
それからというもの今年部活登録のあった新入生はこれまで2人。北石が戻ってくることを期待しながらもむなしく日数が過ぎていった。それと引き換えに中学生からさらに2人の登録があった。
「1年A組。新発田紗奈です。よろしくお願いします。」
名前は男の子っぽいが女の子だ。鉄研部に入った理由は旅行ができるからだそうだ。
「1年A組。夢前つばめです。よろしくお願いします。」
理由は昔から電車が好きだからだそうだ。
と、さらっと触れておくことにしよう。
その翌日・・・、
(はぁ。まだだれも来てないのかぁ。早く鍵開けないと。)
という思いでいつもスリッパに履き替えている所のドアを開いてみた。すぐに一つ革靴があるのに気が付いた。まだ真新しい。1年生の靴だろう。恐らく柊木のものだろう。
(なんだ。開いてるじゃん。)
と思いながらステージを横切り、階段の踊り場まで来た。すると一人の人影が目に入った。その人は何か見られてはいけないものを見られてしまったようにあわてている。別にスカートの中は見えていなかった。まぁスカート丈であり得ないことだが・・・。
その人は荷物をまとめてどこかに行こうとした。
「ちょっと待って。何してたのかわからないけど、鉄研部見に来たわけ。」
その人に話しかけた。理由は何か似ているところがあったからだ。
今回からの登場人物
柊木翼 誕生日 1994年11月1日 血液型 O型 身長 150cm
北石正斗 誕生日 1994年11月24日 血液型 A型 身長 152cm
夢前つばめ 誕生日 1997年7月15日 血液型 AB型 身長 146cm
新発田紗奈 誕生日 1997年9月20日 血液型 A型 身長 141cm
大嵐響 誕生日 1997年11月29日 血液型 O型 身長 139cm
女の子の感じが全員同じように・・・。
僕は一人称の通りですから。書きずらいです。
自分でもわけわかんない後書きになっちゃった・・・。
パソコンだけでのユニーク数が311。永島の誕生日になりました。