61列車 初頭
年度が替わって数日4月6日。新しい学期がスタートする。
「今日から新学期かぁ。宿毛とは同じクラスだし、今度は木ノ本と醒ヶ井とも同じクラスだからなぁ。」
歩きながらつぶやく。新しい年度のクラス編成はというと前述した通り。木ノ本と醒ヶ井、宿毛は同じクラスの2年6組。佐久間は2年5組。留萌は2年7組。箕島は2年4組だ。それ以外は何も変わらないという状況。
涼ノ宮駅から歩いて、2年6組の教室に入ってくる。まず扉のところに座席表が貼られていた。出席番号は去年とあまり変わらず。席の位置は前から3番目。いい位置とも悪い位置ともいえないところだ。
「ん。」
ふと声が出た。気になったのは自分のすぐ後ろに座っていた女の子の名前だった。
「・・・。」
そこには永原萌と書かれている。
(永原萌かぁ。・・・。似ていすぎるな。)
この時僕の頭の中には写真の裏に書いてあった「将来の結婚相手」という文字が浮かんでいた。結婚すればしょうが変わる。つまり坂口萌は永島萌に変わるのだ。似ていすぎて何とも言えない状況だ。
教室の入ってみると、一人。もうすでに座席に腰掛けている人がいた。どこかで見たことがあるような顔なのだが思い出せない。
(窓側2列目の3番席・・・。)
その人が座っているのは4番席。
(なるほど。あの人が永原萌なんだな。)
心の中で確信した。
その頃宗谷学園では・・・、
「今度は全員同じクラスなんだね。」
薗田がヤッターと言わんばかりの態度をとっている。
「あのなぁ・・・。」
あきれているのは黒崎のほう。
「でも安希。こうなると梓に教科書忘れたときに貸してもらえなくなってそんじゃない。」
「・・・。すぐに貸してもらおうなんてこと考えるんじゃないの。」
クラスの中からそう言うのが聞こえた。
(今年はみんな同じクラスなんだよなぁ。・・・。鳥峨家君も同じかぁ。梓。もし席替えして鳥峨家君の隣になったらどうするんだよ。)
自分もよく永島の隣になったことはあるが、黒崎ほどの恥ずかしがり屋ではなかったためそんなに気にしてなかった。休み時間はふつうに話してたためそんなこと思う余裕もなかったのだろう。
「萌。おはよう。」
磯部が気付いてこっちにおいでと手を振った。
「おはよう。まずは・・・夏紀今年もよろしくお願いします。」
(ここにもいたよ。安希と同じような人が・・・。)
「梓じゃないけど・・・そうすぐに人を頼るな。頼るんだったらあたしじゃなくて永島君を頼れ。彼のほうがあたしより頭いいんだから。」
(へぇ。前鳥峨家と瓜二つって言ってた人頭いいんだ。)
「鳥峨家君とは少し違うって思ってるんでしょ。」
すかさず薗田が冷かしてきた。
「え・・・別に思ってないってば。」
「説得力ないつうの。」
「うるさい。」
「・・・。」
黒崎と薗田のやり取りを唖然とした表情で見ていた。そして運が悪いことに・・・。
「あっ。危ない。鳥峨家君伏せ・・・て。」
と言った時には遅かった。黒崎の投げた黒板消しは思いっきり鳥峨家をヘッドショットしてしまった。
「あっ・・・。」
しばらくすると起き上がって、当たったところを撫でている。
「黒崎。」
怖い顔で黒崎をにらんだ。
「ごめんなさいー。」
「・・・。」
「あーあ。梓やっちゃった。」
「お前のせいだー。」
「・・・。」
と双方始業式の日はこんな感じだった。
翌日。4月7日。この日は入学式で2・3年生は授業がない。この日は休めるが8日からは休めなくなる。
その4月8日。
「はい。それではみなさんこれを受け取ってください。」
アド先生からプレゼントされたのは一枚の紙。目を通してみると絶対にこの通りにやらない予定表だった。見てみれば今年は5月からイベントがあるらしい。学校が主催する「クリエイト展」と静岡貨物で行われる展示だった。
「えー、説明します。」
と言ってアド先生が説明を開始した。
「まずあるのは「クリエイト浜松」での展示です。」
(えっ。どこ・・・。それ)
「分からない人もいるかと思いますから説明します。ここは遠州鉄道の遠州病院前の・・・。」
「今は遠州病院前じゃなくて遠州病院です。」
空河が口をはさむ。
「あっ。今は遠州病院っていうの。」
感心してからまた説明を続ける。
「今場所は言いました。遠州病院の近くです。ここには学校の前を通っているバスで市役所前というところまで行って市役所から東に向かって遠州鉄道の高架が見えるところまで来ればいいです。自転車で行く人は自己流の道を通って行ってください。」
(なるほど。遠州病院の近くかぁ。)
次はその下にある貨物での展示。
「今年はOBの稲沢君が静岡貨物でも伝二をやってくれと言ってきたので、もしかしたらこちらの展示にもいくことになるかもしれません。」
(なるかもしれない。)
この言い方はどうしてかと思ったがすぐに説明があった。静岡貨物までバンにモジュールを乗せて運ぶということはしないらしい。そのためにその稲沢さんが岸川高校鉄道研究部のためにコンテナを1個貸し切ってくれるように言っているらしいが、まだ回答が返ってきていないからだそうだ。
「まず「クリエイト展」は確定です。」
その説明が終わったら・・・、
「じゃあ、鷹倉君。私としては3人は入部してほしいんです。だから、その3人を呼び込むためのアッピールをお願いします。」
(アッピール・・・。)
ちょっと笑えてくる。腹を抱えて笑っていたわけではないが、部室中が笑いの渦になった。もちろん普段笑わない箕島もだ。
「3人って。この部活に3人も入ってくるんですか。僕は入ってこないと思いますがねぇ。去年も9人入ったんだし、それほどのことがなければ廃部にはならないと思いますが。」
「何台。その言い方は。部長がそんなんじゃ入ってくれないぞ。」
「・・・。」
「去年サヤ先輩って何か言ったんですか。」
「いや、サヤさんのことなら部活動紹介が終わったところで部活動にはバトルアーマーファンもいますからっていうの忘れてたっていう感じだろうぜ。」
バトルアーマーとは簡単に言うとロボット戦記のこと。
「バトルアーマーファンって。この中にそんなファンいるんですか。」
「俺だよ。」
ハクタカ先輩が手を挙げた。
(へぇ。普段バトルアーマーの話とかしないからそう見えないのに・・・。)
「ってそんな話どうでもいい。」
と言いながらハクタカ先輩は岐路に着いたので、今日の部活はここで終了。そして翌日。ハクタカ先輩が部活動紹介で何と言ったのかは定かではないがまた部活。
「はい。みなさんプレゼントです。」
と言って渡されたのは部活どう勧誘のポスター。
(これは駅で配ってるおっさんみたいに配るのか・・・。)
と思ったがそうではないらしい。1年生の教室と中学1年生の教室がある南棟の1階から2階と1階と2階に分かれている昇降口。そして、そのほか目につきそうな場所。新入生が通りそうな場所にはるという。
「窓にはセロハンテープではなくメンディングテープで貼ってください。」
「メンディングテープ。」
おうむ返しに聞き返した。
「メンディングっていうのはこれのことだよ。」
と言って楠先輩がその現物を見せてくれた。一見セロハンテープにも見えるが透明ではない。そして、セロハンテープほどの粘着力もないそうだ。
「それでは2人組でこれを校舎に貼ってきてください。」
ということで部室から出る。
部室から出て写っている写真を確認して見た。遠州鉄道30系51号。遠江急行2000系。371系「ホームライナー」。373系「特急伊那路」。EF210。「寝台特急出雲」。211系。313系にE231系。模型の写真もあった。名鉄「パノラマデラックス」と「パノラマカー」。E217系の「横須賀線色」。キヤ95「ドクター東海」。787系「特急つばめ」。キハ58形ディーゼルカー。223系1000番台・・・。
(これって俺の・・・。いつ撮ったんだよ。)
背景から暁フェスタの会場であることだけは読み取れた。
「永島さん。ここに1枚。」
朝風に呼ばれてそこに急ぐ。窓の開かないほうだということを確認して、メンディングテープを貼る。さらに階段の踊り場にも1枚。そして1年6組の教室前にも1枚。今年1年生は去年と同じくらいの8クラス分入った。もちろんそのうち2クラスは20人くらいの特進コース。残りが40人クラスの特進コースと普通コースだ。
持っていたポスターすべてを貼って部室に戻った。
そして、帰り際・・・、
「永島。部活に何人入ってくると思う。」
木ノ本が話しかけてきた。
「えっ。入って5人くらいじゃないか。まぁ、それぐらいがちょうどいいけど・・・。」
「・・・。」
もちろん理想はうまくいかないのが現実・・・。
4月12日・・・、
(鉄道研究部かぁ。・・・。もうほかの部活なんて入ってもきついだけだな。)
張り紙を見てそう思っているのは・・・。
今回からの登場人物
2年6組クラスメイト
永原萌 誕生日 1993年7月20日 血液型 B型 身長 157cm
今回からの設定の修正
諫早轟輝 身長 159cm→161cm
空河大樹 身長 151cm→154cm
朝風琢哉 身長 147cm→151cm
これより高2編です。
ようやっと高校2年生の変に突入しました。これもまた長いと思われますが、頑張ってこのシリーズも終わらせます。
ですので読んでくださる方よろしくお願いします。
なお、おととい日別アクセス数最高の199を記録しました。ユニーク数は惜しくも1とどかず13でした・・・。