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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
57/184

57列車 運んで 瓜二つ やっちゃった

 11月6日。今日は体育館のステージ裏に置いてあったプラレールの山を青木(おおぎ)さんたちが取りに来るという。

「だから、1年生が外に行ってグリーンベルトのところまで運んどいて。あたしたちが下すから。」

善知鳥(うとう)先輩がみんなに命令する。今日いるのは木ノ本(きのもと)箕島(みしま)、僕、醒ヶ井(さめがい)。僕たちが外に出て体育館の裏に回るころには北側の窓の下に大きな紙袋が3つほどおかれていた。中を見てみると高架線用セット。エスエルの大きな駅。スチームロコセット。昔駿(しゅん)兄ちゃんの家で遊んだものなど。同じものがたくさん入っていた。紙袋を持ち上げてみると意外と重い。そのまま取っ手を持ったのでは重みに耐えられずちぎれてしまいそうなくらいだ。そんな紙袋、クリアケース。車両収納ボックス、プラレール・トミカの建物の箱を運んで何往復もしているうちに車が1台入ってきた。

 その車から降りてきたのは青木(おおぎ)さん含め3人。後の2人は知らない人だ。そのうち一人は青木(おおぎ)さんよりも背が高くてすらりとしている。もう一人は青木(おおぎ)さんが所属する部活動・サークルの顧問という感じの人だった。

「こんにちは。」

「おいーす。」

こんな感じで簡単に挨拶。車に乗っけて体育館の裏まで戻ってみると青木(おおぎ)さんが善知鳥(うとう)先輩と話している。

「だから、そんなの無いって言ってるでしょ。」

「本当にないのか。まさか無くしたとか言うんじゃないだろうな。」

「それはないって。」

「何バカ言ってるんだよ。あるじゃねぇか。」

「・・・。」

「ちゃんと探せよな。」

と言ってから青木(おおぎ)さんは善知鳥(うとう)先輩に人差し指をぴんと伸ばし、

「女子がそこまでいい加減っていうのもどうかと思うがな。」

「それがあたしのクオリティーよ。」

「なんでもいいわ。それパス。」

と言って下ろされてきたのも紙袋。中身は何だかわからなかった。だから深入りしないことにする。

 この作業が完了すると今日は解散。青木(おおぎ)さんたちとプラレールを乗せた車も僕たちが帰るころまでにはいなくなっていた。

 その頃遠州鉄道の車内では・・・、

鳥峨家(とりがや)君って遠州鉄道で帰ってるんだ。」

「ああ。家はこっちの芝本(しばもと)のほうが近いところにあるから。」

「ふぅん。」

坂口(さかぐち)と話しているのは黒崎(くろさき)が好きという鳥峨家(とりがや)という人だ。顔つきはまるでナガシィ。うり二つなのだ。

(顔つきは似ててもナガシィとは大違い。私のタイプじゃないかも。)

「よく端岡(はしおか)たちと話してるの聞いてるけどさぁ、電車のことよく知ってるな。女の子なのによく知ってると思うよ。」

「そうかなぁ。これくらい分かってふつうって思ってるけど。」

「分かってふつうかぁ。分かってる人から言うとそうなるよなぁ。」

「・・・。」

(ナガシィからすれば・・・逆に分かってない人は何っていうよなぁ。)

ふと頭の中で自分が好きな人の像と照らし合わせる。

「そういえば、坂口(さかぐち)って将来こういうのになりたいって思ってるのか。」

鳥峨家(とりがや)が急に話題を変えてきた。

「えっ。まぁ。」

「そうなのか。やっぱり好きなものになるんだよなぁ。」

(好きなものかぁ。)

列車が減速を開始する。今乗っている2001は「フォーン」という音を発しながら速度を落としていく。40km/h(キロ)位になると「ファー」という音に変化する。あとは停車までその音のまま。車掌が小走りに(しん)浜松(はままつ)寄りの乗務員室の戻ってくる。車掌が乗務員室に入るころ列車は停車。胸くらいの高さにある銀色の物体に鍵を差し込んでレバーを上げる。そうするとドアのロックが解除され、ドアが開閉できる。この鍵がない場合ドアはロックされたままで開けることはできない。もちろん非常時を除けば。

 自分がいる位置から見て右側の席が空いた。

坂口(さかぐち)さん座れば。」

(ナガシィだったら絶対俺がそっちにいくって言うのに。ちょっと面白みに欠ける。・・・)

「いいよ。鳥峨家(とりがや)君が座れば。」

「えっ。」

「いいって。これくらい慣れてるし。」

「・・・。」

鳥峨家(とりがや)は戸惑い気味に席に腰掛ける。そのあとは何も言葉を交わさないまま芝本(しばもと)まで走ってきた。

「オツ。2001。」

2001から降りてそう言葉を発する。

「えっ。2001って。」

鳥峨家(とりがや)にはこの意味は分からなかったそうだ。人差し指を立てて口の前に持っていく。

「フュー。シュシュシュシュシュシュフウィー。」

2001は静かに息を吐いて、その後は断続的にきれいな歌声を発する。ある程度のところまで行くとその声は太くなる。あるところでその声が途切れて、ジェイント音をたたく音だけになる。また歌声を聞くころになると列車はポイントを越えているところでスピードを上げていくのだ。

「・・・。」

右手の人差し指と中指を立てて、おでこまで持っていく。持って行ったら手首を使って軽く一振り。「さよなら」と「ありがとう」の意を込めてあいさつだ。鳥峨家(とりがや)はそれがなんなのかわからないためキョトンとしている。こうなるのも無理はないだろう。これをやってすぐに通じるのはナガシィと駿(しゅん)兄ちゃんだけ。よく駿(しゅん)兄ちゃんがやることをナガシィと自分で真似しただけなのだ。

「あっ。特に意味はないよ。」

と説明すると、

「・・・そうなんだ。」

ちょっと唖然とした表情だけは抜けてなかった。自分はすぐに駐輪場のほうに歩いて行って鳥峨家(とりがや)を置き去り状態にして別れた。

「分からないわけじゃないんだけどね。さっきの意味。」

独り言を言ってさっき2001がいたほうの線路を見た、

 11月13日。この日は寮で折尾町(おりおちょう)の展示に使うモジュールをハイエースに乗せる作業。翌日14日。この日に折尾町(おりおちょう)公会堂(こうかいどう)にモジュールを搬入する。

「はい小楠貨物(おぐすかもつ)。」

小楠貨物(おぐすかもつ)。」

今日はシナ先生も手伝いに来ている。

「了解。小楠貨物(おぐすかもつ)搬入です。」

小楠貨物(おぐすかもつ)ね。」

全員で意味のない伝言ゲーム。もちろん伝言ゲームになってないのは承知の上だ。ハイエースから必要な荷物を下ろして、次は机運び。公会堂(こうかいどう)の2階にある会議室っぽいところから長机を運んで下ろしてくる。これを何往復かして、モジュールを並べるところに置いていく。それが終わったらさっき公会堂(こうかいどう)1階の隅に置いたモジュールを組み立てる作業。それが完了したらいつものように通電テストだ。

「あっ。電車が走ってる。」

公会堂(こうかいどう)のところには数人子供がいる。展示は今日ではなく明日だが好奇心旺盛な子供はそれがいつであろうと寄ってくる。会場はほんの数人による展示会場になってしまうのだ。

「アド先生。内回り、通電オーケイです。」

EF210が一周してきたことを諫早(いさはや)が報告する。

「それじゃあ編成ものやってください。外回りのほうはどうですか。」

「・・・。」

外回りは留萌(るもい)が担当しているが・・・、

永島(ながしま)。これってどうやればいいの。なかなか乗らないんだけど。」

留萌(るもい)が手こずっていたのはEF66を線路に乗っけることだ。3つの台車がついているEF66などの機関車はなかなかいうことを聞いてくれない。両側2つの台車が線路に乗っても真ん中の台車が線路に乗っていなかったり、真ん中の台車を乗せたことで他の台車が脱線してしまったりするのだ。

「いいよ。俺が変わる。」

留萌(るもい)からバトンタッチして、EF66の言うことを聞かせる。すぐに線路に乗っけて、発車させた。ぎこちなくところは電気がよくいっていないところ。そこをレールクリーナーできれいにすれば問題はない。

木ノ本(きのもと)。そこレールクリーナーやって。」

「そこってどこだよ。」

「そこの駅があるとこ。」

僕は展示場のターミナルから右手(内側から見て)向かったほうにある一番近い駅を指差した。

「綿棒とレールクリーナーどこ。」

木ノ本(きのもと)さん。行きますよ。」

朝風(あさかぜ)がレールクリーナーを投げるそぶりをする。2・3回それをやって木ノ本(きのもと)に投げる。木ノ本(きのもと)はそれをキャッチして、

「ナイスパス。」

と言った。綿棒のほうは入っている箱ごと今の動作をした。

 走行テストのほうはというと順調に進んでおり、今はターミナルの左手すぐのモジュールまで来ている。一周したら列車を止めて、後ろに車両をくっつける。取り出した箱は「TOMIX(トミックス) Limited(リミテッド) Sleeping(スリーピング) Cars(カーズ) Series(シリーズ) 14 type(タイプ) 15 AKATSUKI(あかつき)」。「寝台特急(しんだいとっきゅう)あかつき」の車両セットだ。これの特徴は一番下に入っているレガートシート車。寝台特急(しんだいとっきゅう)の中では異色の存在だ。これをEF66のすぐ後ろに連結し、そのあとに客車を続ける。全部並べきったところでEF66を発車させる。

 ターミナルから見て右斜め後ろ。「安曇川城(あどがわじょう)」のコーナーに行ったところで事件は起こった。

 なにあらプラスチックのものが落ちる音がする。その音とともに外回りのコントローラーを出力0にする。現場に行ってみると床には「寝台特急(しんだいとっきゅう)あかつき」の客車が3両ある。その傍らでしまったという表情をしているのが木ノ本(きのもと)だった。

「ヤバい。どうしよう。」

事情を聴いてみる。どうやら木ノ本(きのもと)は使った綿棒をゴミ袋に入れるため中に入ろうとしたらしい。中に入るまでは順調だったのだが、起き上がるタイミングを誤ったらしく上にあるモジュールを押し上げる形になったのだという。恐らくそれで脱線し、元に戻ったところでさらにバランスを崩したのだろうというのが見解だ。

 一つ一つを拾って元に戻しているとあることに気が付いた。「あかつき」の「オハネ15形(機関車から数えて5両目)」の洗面所よりのカプラーが欠けていることに気が付いた。本来ここにはこの字のようになったカプラーがついていなければならない。欠けたカプラーは書き順で言うと1画目しかない状態になっている。

「カプラーかけてるじゃん。」

僕が声を発した。

「何カプラーが欠けてる。」

その声に諫早(いさはや)が反応する。諫早(いさはや)は僕からその「オハネ15形」を取り上げると、

「このカプラー変えちゃいます。」

と言ってすぐに作業に取り掛かった。前自分が寝台特急(しんだいとっきゅう)の模型のカプラーを換装したような手順だ。あっという間にカプラーを交換し終えると「あかつき」の6両目にその車両を戻した。こうなったら再び発車だ。何周化して異常がないことを確認。他の編成ものを走らせて今日の作業は完了。車両は2階のさっきの部屋に置いて、僕たちは解散した。


今回からの登場人物

鳥峨家(とりがや)大希(だいき) 誕生日 1993年10月1日  血液型 O型 身長 161cm

自分が覚えている漫画のフレーズで恋愛ものを書く場合主人公たちがずれていたら、それにツッコむ人・ふつうの恋愛をしている人を出したほうが面白いと書いてありました。


僕にはその普通が分からないのですみません。

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