表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
47/184

47列車 持久走

後期に入って最初の金曜。10月2日。

「今日は持久走かぁ。」

隣に座っている宿毛(すくも)がため息をついた。今は遠江急行(こうきゅう)1000系第4編成の中。

「そうだな。お前制服の下に体操服着てるのか。」

「着てねぇよ。その代りっていう感じでシャツは着てるけど。」

「それって駄目だよなぁ。校則的に。」

「・・・。かたいこと言うなって。ていうより俺は持久走よりも四ツ谷(よつや)が今日もノート出せって言わないかっていうほうが心配。今日はやってきてないから。」

「あっ。まだそれやってたんだ。」

「我ながらよく続いてると思うよ。」

「・・・。」

 今日はまず学校ではなく持久走を行う。岸川(きしかわ)学園では新体力テスト持久走は学校ではなく別な場所で行っている。浜松球状の近くにそのグラウンドがあるらしいが。

 その場所は江急(こうきゅう)上島(かみじま)が一番の最寄り駅。その数百メートル東に遠州鉄道(えんてつ)上島(かみじま)がある。上島(かみじま)で1004から降りて、改札を出て、駅の外に出る。駅を出るとすぐに道にぶち当たる。その道は幹線道路から外れているので車の数も少し少ない。

「そういえば、今日ふつうに金曜日だったな。」

その光景を見た宿毛(すくも)が自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 グラウンドのある方向に歩いていくとすぐに坂がある。その坂を上ると片側2車線の道路が現れる。確か名前は飛龍街道だったはずだ。僕は道には全く詳しくない。覚えている道といえば家から駅まで行く道と学校まで通う道だけである。

 数分すると目的地であるグラウンドが見えた。そこにはまだだれも来ていない。来ていたのは陸上部の人だけ。クラスの陸上部員希望(のぞみ)君も来ていた。すると希望(のぞみ)は僕たちのことが目に入ったみたいでこちらに歩いてきた。

「よーす。お前ら早いなぁ。」

誰もが言ってくる第一声がこれなっている気がするが・・・。

「ああ。電車混むしな。」

「学校もいつもこれくらいに来てるのか。」

「うん。そのあとの混むから。4号車でも。」

「・・・。なるほどな。さすが鉄研(てっけん)だ。」

そういうと希望(のぞみ)は後ろの観覧席らしきところを指して、

「あっちの席のところに俺たちの座る場所があるからそこ行っときな。」

と言った。

 希望(のぞみ)が言ったところに行ってみると1組から順番に紙が貼ってあった。ここに座れという意味である。全席指定であるというのはちょっと気に食わないが・・・。

 8時30分になるまでの間に1年生が集合しきったと思う。でも、自分がそう思っているだけに過ぎない。ふつうに遅刻してくる連中はまだいる。その人たちの集合が終わってようやっと本題である持久走に入った。

 最初は当然のことだが準備運動。準備運動をしたら一周走る。もちろんアップなので飛ばす必要はない。それが終わると観覧席に戻って人休憩。その頃には最初に走る特進コースの男子が準備していた。

「はぁ。走るのダルい。」

「だるいとも言ってられないんじゃないか。これクリアしないと体力テストいい結果なんかでないぜ。」

「結果なんてどうでもいいよ。だって走れば問題ないんだもん。途中で歩いたりしなければいいだけじゃん。」

「・・・。根本はそこかもしれないけど。」

「1年5組と1年6組男子の前半。移動しなさい。」

アナウンスが入って僕の周りにいる男子が席を立ち始める。

「俺たちも行くか。」

宿毛(すくも)が促した。

 観覧席からフィールドに降りて、今走っている1組男子・2組男子・3組男子の前半の邪魔にならないようにトラックの真ん中に入る。

「1位は間違いなく希望(のぞみ)だよなぁ。」

独り言を言った。

希望(のぞみ)かぁ。そうだろうな。早そうだもん。」

そう言っていた会話は希望(のぞみ)には聞こえていたらしい。

「そうとも限らないってことはこの世の中多いんじゃないか。俺の予想じゃ1位は新城(しんしろ)だな。」

「なんで。」

「俺どちらかというと短距離だから。長距離苦手なんだ。だから1位は新城(しんしろ)。」

なんか意外だった。

 3組男子の後半と4組男子が走り出したところで次が僕たちの番。それまでの間僕は宿毛(すくも)と話していた。その中身は何のたわいのない話。その話の間にこのグループのトップがゴール。記録は5分を切ったらしい。しきりにそういうのが聞こえた。

 次は僕たちの番だ。スタートラインに並ぶように促される。

「これってビリっていうのとトップっていうの嫌だよなぁ。」

「お前はクラストップなんだからこれでもクラストップ取りに行けよ。そうすれば女子にモテモテだぜ。」

「そんなことしたくねぇよ。目立つから。」

(いや。今でも十分目立ってると思うけど・・・。)

その会話を交わした直後。スタートの号砲が鳴った。

 それと同時に全員が走り出す。この中では比較的前のほうにつけた。そのあとは前の人を見据えてただ引っ張られていくだけ。どこまでついていけるかは持久戦だ。

 1周で400メートル。2周で800メートル。1500メートルある持久走はこれを3周と4分の3周する。ゴールは観覧席の一番南寄り。ここまで走って順位表をもらい先生に提出する。それが僕たちのタイムとなる。

 1周目は少々速いペース。2週目からペースがだんだん落ちてきて、3周目ではへとへとの状態。これは自分の配分が悪いだけだ。そう自分に言い聞かせた。何とか走り切ってゴール。タイムはゴールする前にチラッと見た。5分58秒。

 ゴールすると態勢が崩れた。ももに手を置いて息を整えようとするが、こんなすぐに息が整うわけない。足を動かそうとすると思うように動かない。とても足が重いのだ。そんな足で何とか記録員のところまで行って9と書かれたカードを提出。そのあとは周回遅れの邪魔にならないように観覧席側に戻る。

 戻っている間に宿毛(すくも)が話しかけてきた。

「はぁ。永島(ながしま)。お前何位。」

「9位。」

「そうか。7位。」

「そもそも体力テストで勝負って無理じゃん。俺よりお前のほうが成績いいんだから。」

「そうでもないだろ。数十秒くらい差があるんだったら別だけどこんな僅差で得点が違うってことはありえないんじゃないのか。」

「ありえねぇけどさぁ。ボール投げとか俺致命傷なのが多いしそういうところで逆転とか無理ってこと。」

「ハハハ。」

ところどころ途切れながら肺の中に酸素を送り込む。僕は靴のつま先をずりながら観覧席のところまで行った。

「はぁ。疲れたー。」

自分の荷物が置かれている席に座ると大きな声を出した。

「他がびっくりするだろ。ちょっと抑えろって。」

「はぁ。」

宿毛(すくも)がそう言ってもとうの自分にはその気はさらさらない。吐く息のついでに声も出した。

「ああ。この後授業だろ。」

「そうだな。」

「ああー。だるーい。なんで持久走走った後に授業あるんだよ。なくていいじゃん。帰らせろ。」

「・・・。今日部活とかないのか。」

「ないよ。」

だが、すぐにあることに気付いた。

「あっ。て。明日だった。なんで今日ないんだよ。」

すぐにだれた。

 11時ごろ。ようやっと持久走が終了。ここから帰れると思うのは大間違い。何度も言っているが午後は授業があるのだ。

永島(ながしま)。学校までどうやってく。やっぱりバスか。」

宿毛(すくも)が提案してきた。路線バスはこれまで出雲工業(いずこう)のオープンキャンパスに行って以来使ったことがない。実に1年以上路線バスに乗っていないのだ。観光バスはというと臨地研修の時に乗った。そんな話はどうでもいいか。

「なんでバスなんか使うんだよ。混むじゃん。」

「そういう理由でバス使いたくないって落ち。」

「うん。」

「・・・。あっ、そう。じゃあ学校まで歩いてくのか。」

「まぁ歩いてくけど・・・。」

(そう言えば上島(かみじま)から涼ノ宮(すずのみや)って3分かかったなぁ。そんなに距離があるようには見えないけど結構あるのかなぁ。だったら上島(かみじま)まで戻って電車で行くっていうのも手かぁ。・・・。まてまて。確か今日は1000系に乗ってきたんだよなぁ。もしここでまた1000系が来たら。それに当たらないためにはこのまま歩いていくほうが賢いかぁ。)

「まぁ、どうした。」

「なんでもない。よし歩いて行こう。」

(これ絶対何か考えてたよなぁ。)

いつものこと。そう思った。

 1組から順番に会場を出ていく。会場の西側はちょっとした坂になっている。その坂を上りきると道が西へ延びている。それを曲がらずにまっすぐ行くと学校に通じている道に突き当たる。その交差点を左に曲がる。近くには欅町西(けやきちょうにし)のバス停がある。そこにはさっき出て行った人たちの姿もあった。バス停には帰りの岸川(きしかわ)高校前みたいに人があふれていた。

「あすこまでしてバスに乗る気が起きるのが信じられないな。」

(おいおい。)

「バスは二酸化炭素を吐き出して地球温暖化(ちきゅうおんだんか)貢献(こうけん)してるんだぞ。そんなのに乗るなぁ。」

(そこまで言うか。)

「・・・。地球温暖化(ちきゅうおんだんか)貢献(こうけん)してるって。確かに二酸化炭素を排出してるならそういうことになるかもしれないけど貢献(こうけん)って。俺が思うにその貢献(こうけん)度数が一番高いのは車とかバスじゃなくて飛行機だと思うが。」

「よし。じゃあ、飛行機を核爆弾で・・・。」

「お前の破壊論は核爆弾以外ないのか。」

「えっ。他にもあるよ。ロケットランチャーとか対戦車ライフルとか火炎放射器とかマシンガンとかレーザーキャノンとか。」

(こいつにまともなんて言葉はないかぁ。俺がバカだった。)

 ずっとこんな話をしていたわけではないが、話をしながら学校を目指す。学校へ歩いている間に数回バスに追い抜かれていったがそのバスはほとんど岸川(きしかわ)の生徒で込んでいた。そのたびに僕は「地球温暖化(ちきゅうおんだんか)貢献(こうけん)している。」という話をした。

 そんなことで30分ほど。岸川(きしかわ)学園に到着した。1年5組のクラスにすぐに向かった。クラスには自転車で先に着いている佐久間(さくま)の姿もあった。

永島(ながしま)。お疲れ。」

「ああ。疲れたよ。」

「そうだ。お前何位だった。」

「えっ。9位だけど。ていうか佐久間(さくま)もともと陸上部だったんだし、お前のほうが速いんじゃないのか。」

「そんなことないって俺は21位。」

「ウソ。俺より遅いんだ。」

「お前気づいてなかったのか。俺たちがゴールした後に佐久間(さくま)が走ってたこと。」

その時を思い出してみる。

「あっ。そういえばそうでした。」

「・・・。」

「俺時々わからなくなるんだよなぁ。こいつ本当は天才なのか。それともバカなのかって。」

「ハハハ。」

「だからそれはバカって・・・。」

「まぁ、そうなんだろけど。」

僕の言葉を遮るように宿毛(すくも)が言った。

「ハハハ。早いところ弁当くったらどうだ。」

「ああ。そうするよ。」

「あっ。」

その声に反応して佐久間(さくま)宿毛(すくも)が僕のほうを見る。

「弁当持ってくるの忘れてた。」

「・・・。」

「それヤバいじゃん。」

「まぁいいや。昼くらい一度抜いたって死にはしないからなぁ。ハハハ。」

「・・・。」

(どういう考えで生きてるんだ。こいつは。)

これで新体力テストも終了。次は明日ある部活どうだ。


今回からの登場人物

希望(のぞみ)

ある教科担当の人は言いました。

「テキスト(文字)としてとらえるよりピクチャー(絵)としてとらえたほうが覚えやすい。」

最もですね。この中に登場する車両・列車はすべて実在した。または実在しているものです。今はインターネットで簡単に調べられますから、本作のテキスト(説明文)をピクチャー(写真)としてとらえてください。写真を見たりすれば、少しはどこを説明しているのかつかめるのではないんでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ