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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
45/184

45列車 乗務員服

発言だけですが・・・。

 9月の末。岸川(きしかわ)学園では体育祭が行われる。

「もうすぐ体育祭かぁ。やらなくていいのに。」

ため息が出る。

「本当だな。体育祭やる暇があるなら、車撮に行ってたほうがまだまし。」

木ノ本(きのもと)が続ける。

 今日は部室に集合がかけられている。そのため部員全員が集められているのだ。

「肝心の善知鳥(うとう)がまだ来てないけど。」

「前やらせたコスプレレースでもやらせるんだろ。俺出るの嫌だからな。」

「なんでだよ。ナヨロンは3年連続で出ればいいじゃん。お前のあれ結構似合ってたぜ。」

「恥ずかしいんだよ。クラスの全員がいる前であの格好は。」

「確かに。俺ももうあの恰好だけはしたくないなぁ。」

アヤケン先輩も続ける。すると部室のドアが開いた。

「お待たせー。」

息を切らしている善知鳥(うとう)先輩の姿がそこにある。片手には岸川(きしかわ)のバッグではなく紙袋を提げている。

善知鳥(うとう)先輩。それなんですか。」

「えっ。ああ。これ。」

そういうと紙袋の中に手を突っ込み帽子を取り出した。ただの帽子でないのはすぐに分かる。

「ジャーン。」

そういうとあからさまに僕の頭のそれをかぶせた。前かぶせられた時と同じような感覚がある。前オープンキャンパスに来たときにかぶせられた制帽だ。

「・・・。これって運転手とかの制帽ですよねぇ。」

木ノ本(きのもと)が問う。

「そうだよ。膳所(ぜぜ)さんが持ってたやつ借り手あたしたち用に作ったやつ。男子のやつばっか大量生産してたからほとんど男子のだけど、女子のもあるよ。ほら。」

「・・・。」

「いくら得意教科が家庭科しかないって作りこみすぎ。これ凝っていすぎるんだよ。」

サヤ先輩が口をはさむ。

「しょうがないじゃん。部活やってる日以外暇なんだもん。」

「高校3年生になってそう言うのはよそうぜ。」

「あのう。善知鳥(うとう)先輩。これをどうしろと。」

「えっ。決まってるじゃない。体育祭の文化部対抗リレーの時これかぶってレースに出るのよ。」

「・・・。」

「当然1年生がね。」

ちょっとの間自分に渡された制帽を見る。

(これをかぶって走るのかよ。)

「ああ、あと体育祭の時は冬服持って来いよ。」

「えっ。暑いですよ。」

「バカ。伝統事業だぞ。ワイシャツ着て、ネクタイしめて、冬のズボンで走る。これ鉄研(てっけん)の定番だからな。」

(知るか。)

(やっぱり私入る時期間違えたかも・・・。)

(よく絢乃(あやの)先輩これやったよね。)

(・・・。)

(マジかよ。)

(なんで冬服。ふざけんな。)

「そういえばさぁ、去年の体育祭の部活どう対抗リレーって誰が出たっけ。」

善知鳥(うとう)先輩が問題を振る。

「えっ。去年は俺とナヨロンとアヤケンとハクタカと膳所(ぜぜ)さんと上野(うえの)さんが出た。」

その問いにはサヤ先輩が答えた。

「あれ。アヤノン出てなかったっけ。」

「出てないよ。制服の上がワイシャツでネクタイでも下はどうしたってスカートなんだからさ。それ以前にアヤノン出たくない出たくないってさんざん言ってたじゃん。それで膳所(ぜぜ)さんと上野(うえの)さんが出たくない人を無理に出させるなって言ったんだぜ。」

「あれ。そうだったっけ。」

「去年のことぐらいちゃんと覚えとけよ。」

「まぁいいわ。で出るやつは・・・、ナガシィとミッシィとサメちゃんとユウタンとイサタンとソラタンとアサタンは出ること決定か。」

「おい。多すぎ。6人で十分だって。6人で。」

「あの。僕実行委員で運営とかの方に回らなきゃいけないので、多分出れません。」

箕島(みしま)が断りを入れる。

「じゃあ、これで6人じゃん。これでいいよ。」

「ちょっと待って。」

そういうと善知鳥(うとう)先輩は木ノ本(きのもと)留萌(るもい)に最接近した。

「ハルナンとルモタンは出たくないの。」

「出たくないです。とてもじゃないけど恥ずかしすぎて・・・。」

まず留萌(るもい)が答えた。

「恥ずかしいって。将来運転手とかになったらいやでもこの格好しなきゃいけなくなるんだよ。」

「いや、そうじゃなくて。友達の前でこれをかぶらされるっていうのが・・・。」

「去年アヤノンだってそう言ったって。」

(なんの説得にもなってない・・・。)

「ハルナンは。」

「私だって出たくないです。」

(そりゃそうだよなぁ。部活入るときにも女子が入っていいのかって思った部活だよ。こんな格好できるわけない。(らん)にもみられるじゃん。)

「なんだ。二人とも出たくないのかぁ。よーし。ちょっと男子全員外に出てくんない。」

「何やらせるつもりだよ。」

「着替えさせるの。だから男子全員外に出てって言ってるの。それとも、女の子の裸が見たい変態どもしかいないのか。」

「・・・。」

「ヘイヘイ。とりあえず全員外でろ。」

サヤ先輩が促して、部室の中は善知鳥(うとう)先輩と(くすのき)先輩と木ノ本(きのもと)留萌(るもい)だけになる。

「さてと、男子がいなくなったところで着替えさせるか。えーとまずは、アヤノンから。」

「なんでまたあたしからなんですか。」

「いいだろ。こういうときはいつもアヤノンからって決まってるんだから。」

「そんな方程式ありません。」

「ていうか善知鳥(うとう)先輩。冬服もないのにどうやって着替えさせるつもりなんですか。まさか下着だけになれとは言わないですよねぇ。」

「それは言わないよ。これを見ろ。女子の制服はあたしが大阪(おおさか)に行っている間に作ったんじゃー。徹夜して。」

(恐ろしい能力だな。)

その頃部室の外では・・・、

(さっきからの会話筒抜けだよ。)

「アヤノンってうざいんだよなぁ。あたしよりちょっと胸大きいでしょ。ハルナンはどう思う。」

「そこに注目しなくていいです。」

「早くこれ着ろ。」

絢乃(あやの)先輩似合ってますねぇ。」

「本当は今ここにいる全員にも見られたくないんだけど・・・。」

「ちょっと写メらせて。そしてこの写真をハクタカに送る。」

「やめてください。こんな格好バカタカにも見られたくないです。」

「よし。次はハルナン。アヤノンそれ脱いで。でハルナン。ハルナンもポロシャツ脱いでね。」

「さらっと脱げって言わないでください。」

「何。もしかしてノーブラ。ノーブラじゃ見られたくないよねぇ。」

「そういうわけじゃありません。」

「・・・。」

「ああ。耳が痛くなる。」

「・・・。」

「なんか鉄研(てっけん)の男子肩身狭いですね。」

ナヨロン先輩に振ってみる。

「そうかもな。善知鳥(うとう)がハイテンションすぎるんだって。まぁ、あのハイテンションだけならムードメーカーとしての作用は抜群なんだけどなぁ。」

ナヨロン先輩は相当迷惑そうな顔をした。

「うわ。ハルナンもあたしより胸大きい。もしかしたら鉄研(てっけん)一貧乳かも。」

「これ絶対外まで聞こえてます。」

「・・・。」

善知鳥(うとう)のやつ。後輩はお前の着せ替え人形じゃないつうの。」

 また10分くらいたつと部室に入っていいといわれた。部室に入ってみると留萌(るもい)がさっき言っていた格好をしている。服の色は黒だから冬服だろう。

「サヤどう思う。」

「まぁ。かわいいんじゃない。」

とうの留萌(るもい)は顔が真っ赤だ。こっちを見ないでと言わんばかりに目線をそらした。

「・・・。」

こういう描写はちょっと前に自分も経験したことがある。ちょっと前といってももう1年位前のことだが・・・。

「ナガシィ。ちょっとこっち向いて。」

「えっ。」

振り向いてみるとそこには(もえ)端岡(はしおか)磯部(いそべ)の顔がある。

「うわ。(もえ)マジでナガシィ君デコっちゃってるよ。」

「顔つきがちょっと女の子よりだから一見したら女子に見えるかも。」

二人がそう言っている。

「何。俺の顔に何かついてるのか。」

「えっ。まさか、ナガシィ君気づいてないの。」

そういうと磯部(いそべ)がカバンから手鏡を取り出し、

「あっ。」

鏡に映っていた自分は目のあたりまでかかっていた前髪をヘアピンで分けられていた。その時(もえ)が僕の後ろに回って後頭部のあたりを指でなぞった。

「気づいてないとは思わなかったよ。ナガシィって結構鈍感なんだね。」

そう言われて後頭部に手を当ててみる。すると何か髪を束ねられている感覚がある。当てた手をずらしていくと束ねてある根元があることに気付いた。

「おい。(もえ)。これいつやった。」

「朝のバスの中。ナガシィ寝たまんまで起きないんだもん。」

ということは・・・。今は16時。つまり僕は7時間以上このままでいたことに気付かなかったのである。

「お・・・お前。」

「ハハハハ。怒んないでね。」

「・・・。怒りたくなるわ。ていうか。俺、この格好で写ってる写真ってないよなぁ。」

そっちのことが心配になった。この格好はよく家ではされているが、外でやられたのはこの時が初めてだ。

「さっき法隆寺で、学級写真撮ったわけだし、卒アルにはこの格好で載ることになるね。」

「こらー。」

「ハハハハ。ホテル着くまで取らないでよ。」

こういわれた時。僕は初めて(もえ)と話してて恥ずかしいと思った。

「・・・シィ。ナガシィ。」

「えっ。」

「何ボーっとしてるの。制服のルモタンにうっとりしてたのか。」

横から怒ったような顔で善知鳥(うとう)先輩の顔がのぞいている。

「してませんよ。」

(ていうかさくらにほれてたら問題だよなぁ。永島(ながしま)の好きなやつさくらじゃないし。)

「ウソだろ。」

「ウソじゃありません。」

こういうときには口調が少し焦るだろう。しかし、なぜか口調が焦らなかった。淡々と返答して、

「いいんじゃないですか。似合ってると思うし。」

「よかったな。ルモタン。みんな似合ってるって。」

「・・・。」

「さぁ。もう一度男子全員外に出てよ。これからルモタン脱がすから。」

善知鳥(うとう)先輩に押し出される形で部室の外に出る。

「さぁ、ルモタン脱いでね。脱ぐの大変だったらあたしも手伝うよ。」

「別に手伝ってもらわなくても・・・ちょっ。善知鳥(うとう)先輩パンツまで脱げちゃいます。」

「大丈夫だよ。脱げちゃうって言っても現実脱げてないから。」

「そういう問題じゃないでしょ。これじゃあ善知鳥(うとう)先輩が変態なんじゃないかって思っちゃうじゃないですか。」

「何。アヤノン。あたしは変態じゃないぞ。女子が女子を脱がしてどうするんだよ。」

「どうするんだよって・・・。今現実にそれをやりましたよねぇ。」

「スカートはいたから次は上か。ワイシャツ脱ぐときはあたしの視界に入らないように脱いでね。もしそうしなかったらブラ取るから。」

「そういうことが変態に等しいです。」

「だってみんなあたしより胸大きいんだもん。なんかイタズラしたくなるんだよねぇ。」

「・・・。」

もちろん着替えているときの会話も筒抜けだった。


どこの鉄道会社もそうだと思いますが、乗務員の制服は男女ともワイシャツ・ネクタイ・上着・ズボンなんです。もちろん夏服・冬服の違いはあります。

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