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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
39/184

39列車 寝たら死ぬぞ

 14時30分。朝言われた集合場所に(おもむ)いた。

「サヤ先輩と善知鳥(うとう)先輩何してるんですかねぇ。」

(つか)れた言い方で今二人を待っている状態である。

「特にサヤの方は時間守った(ためし)がないもんな。」

「それ8日の朝も言ってました。」

しばらくするとサヤ先輩達が戻ってきた。

「ちゃんと時間を守ってくれないと困ります。」

とアド先生に(しか)られていた。まあ、当然のことだろう。

「遊ぶのもいいけど、程々にな。」

アヤケン先輩がそう言っているのが嫌でも聞こえてきた。

 14時43分。大阪(おおさか)駅のホームに再び戻ってくる。今日何時間見たホームだろうか。ハッキリの光景を見るのは嫌になった。だが、来る車両によりその光景も新鮮になる。

 14時58分。いくら車両でも新鮮に感じられなくなった大阪駅(おおさか)を後にする時間がやってきた。

 最後に乗るJR西日本の車両である。その車両に目を向けた。

(マジ・・・。)

飛びはねたくなった。僕達の乗る新快速(しんかいそく)長浜(ながはま)()きは223系-1000番台だったのだ。

「運が良かったな、自分の好きなやつに乗れて。」

後ろでナヨロン先輩が僕の(かた)を叩いて言ってくれた。

 乗り込むと人でいっぱいだった。12両編成のはずではあるが、こんなに混むものなのだろう。

ティントゥーン、ティントゥーン。14時59分。223系のドアが一斉(いっせい)()まる。15時00分。223系がブレーキのストッパーを外した。ここから米原(まいばら)まで81分。浜松(はままつ)まで264分の行程のスタートである。

 新快速(しんかいそく)は130km/h(キロ)米原(まいばら)を目指す。14時55分発の快速(かいそく)米原(まいばら)()きとは途中の長岡京(ながおかきょう)でごぼう抜きした。京都(きょうと)までコマを進めると乗客の入れ替えがある。ここで運転席の(みぎ)(なな)め後ろ。一番前の補助席を確保した。

 その後は、運転手と同じ目線で前を見つめていた。12両編成ということもあって僕の視界は人で(さえぎ)られていない。そのためゆっくりと前の視界を楽しむことができた。走っている途中、何本もの旅客列車(りょかくれっしゃ)と数本の貨物列車(かもつれっしゃ)とすれ違い、そのたびに空河(そらかわ)と「何か来たな。」と言い合っていた。

 16時20分。

「ご乗車ありがとうございます。米原(まいばら)ー、米原(まいばら)です。」

このアナウンスで耳に残るものがあった。

「なお、ドア付近にございます、ドア開閉ボタンを押して、お降りください。」

「ドア開閉ボタン。」

ドア付近にあると言っていたボタンを探した。見つけると何とも分かりやすいものである。

「僕が押します。」

空河(そらかわ)が緑色の「開く」ボタンに手を添えた。

「おう、(まか)せたよ。」

 16時21分。米原(まいばら)の6番線に入線。停車するとドア開閉ボタンの上にあった黒い部分に赤くドアという文字が()かんだ。この合図で空河(そらかわ)がボタンを押した。

 ティントゥーン、ティントゥーン。聞きなれた音を立てて、ドアが両側に開く。開き切るのを待たずに、ホームに飛び出した。

 ホームには他のドアから降りた人もいる。真ん中のドアから降りるアド先生を視界の(すみ)(とら)えてから、階段のある方向へ歩いて行った。

 次の列車は16時30分発。普通(ふつう)大垣(おおがき)()きだ。この列車はすでに8番線に(ひか)えている。それに向かって階段を駆け上がり、人の波をかいくぐって8番線に向かう。新快速(しんかいそく)から大垣(おおがき)行きの普通列車の乗り換えは案外多い。行く手を(はば)まれながら向かった。

 8番線に来るとオレンジ色のラインの入った白い車体があった。117系という車両であることはすぐに分かったが、中身はよく知らない。

117系(イイナイイナ)かぁ。)

と思って片側に2枚しか付いていないドアから乗り込んだ。車内をざっと見まわしてみれば、ほとんどの席が()まっていた。その中で空いている席を見つけ、そこに陣取(じんど)った。

「おい、永島(ながしま)。そこ私と変われよ。」

顔を上げてみれば、木ノ本(きのもと)の顔がそこにあった。

「なんでだよ。」

「私、新快速(しんかいそく)の中でずっと立ってたんだからね。足が棒になってるから変わって欲しいなぁって事。」

「・・・。」

「なぁ、お願いだよ。」

「分かったよ。」

木ノ本(きのもと)に席を(ゆず)り、僕は立つことにした。この列車は途中醒ヶ井(さめがい)近江長岡(おうみながおか)と終点大垣(おおがき)までの各駅(かくえき)に停まって行く。さっきまでの新快速(しんかいそく)とは違いゆっくりとコマを進めていく。そのため、この区間はクソがつくほど長く感じてしまう。

「あーあ、さっきまでスッゲーカットンで来たのに・・・。」

さっきの223系の姿が脳裏(のうり)によみがえる。確かに大阪~米原(あのあいだ)は早すぎるのだ。110.5km(キロ)を81分で結んでしまうのだ。他だったら考えられない距離(きょり)通勤(つうきん)可能(かのう)区域(くいき)にしてしまっているのだ。

「まあ、しょうがないだろ。」

「そりゃ、分かってますけど・・・。」

諫早(いさはや)がさっき発車した柏原(かしわばら)の方向に目を向けた。

 17時04分。117系に乗車するのはここまでだ。大垣(おおがき)到着(とうちゃく)する直前局地的な雨に見舞われたもののホームの屋根の下にいる僕達には関係のないことである。

17時09分。今度はJR東海の新快速(しんかいそく)の出番である。この313系の新快速(しんかいそく)で終点豊橋(とよはし)まで揺られる。僕は途中の木曽川(きそがわ)までは起きていた。木曽川を過ぎると空いている席にフラフラと歩いて行った。ちょうど(くすのき)先輩の(となり)が空いている。

(くすのき)先輩。隣いいですか。」

「んっ。いいよ。」

窓側に行きたいと言ったわけではないが、(くすのき)先輩は窓側の席を開けてくれた。

「ナガシィすごく(つか)れてるみたいだけど、大丈夫。」

「大丈夫です。」

「そう。なら・・・い・・・。」

(くすのき)先輩の声がはるか遠くで聞こえていた。

 18時30分くらいだろうか。

「・・・シィ、ナガシィ。」

身体(からだ)をゆすっているのは誰だろうか。

「どうしたんですか。」

「ああ、榛名(はるな)。次で乗り換えだから起こそうとしてるんだけど、起きないんだよ。」

(くすのき)先輩の隣に目を向けると窓に頭を押し付けた状態で寝ている永島(ながしま)が視界に入った。

(夜行バスの中で寝れなかったって言ってたもんな。ここで()()たか。)

「なんかいい方法ないかな。」

ちょっと考えてから、

「入れ知恵してくれる人だったらいるかもしれません。」

携帯電話(けいたいでんわ)を取り出し、ある人にメールを送った。

 1分後その内容の答え返ってきた。

「ナガシィが寝ちゃった時は、くすぐってやれば一発だよ。」

メールはこうなっていた。

(マジかよ。)

「で、どうだって。」

(くすのき)が聞いた。

「ああ、知ってる人が言うにはくすぐってやれば起きるって。」

「はっ。くすぐるって・・・。」

「んっ。どうかしたんですか。」

「いや、どうもしないけど・・・。」

「じゃあ、早くしてくださいよ。」

「間もなく終点豊橋(とよはし)ー、豊橋(とよはし)です。乗り換えのご案内をいたします。・・・。」

車内に聞きなれたアナウンスが流れる。

「もうすぐ豊橋(とよはし)に着くんですから早くしてください。」

なかなかやりだそうとしない(くすのき)()かす。

榛名(はるな)、変わって。」

「えー。」

「早く。お願い。」

「わ・・・、分かりました。」

(くすのき)と場所を変わり、永島(ながしま)の横に行く。

(本当に起きるんだよねぇ。)

ためしに彼女の言っていたたたき起こす方法を(ため)してみた。すると、

「な・・・。何。」

(起きた・・・。)

豊橋(とよはし)だよ。降りるんだから、早く準備しろよ。」

「あっ、もう豊橋(とよはし)かぁ。」

と言って伸びをした。だが、一つ引っ掛かることがある。

(今の起こし方って、(あいつ)しかやらないはずだけどなぁ。うーん・・・。まあいっか。)

18時38分。313系は終点豊橋(とよはし)(すべ)り込み、僕達はここまで運んでくれたことに礼を言い313系と別れた。

 次に乗る列車は18時50分発。新快速(しんかいそく)浜松(はままつ)()き。これが、最後である。

「はぁ、ようやっと戻ってきたー。」

「そうだな。」

(なが)かったですね。特に今日。」

「本当だよ。ほとんどの時間ホームにいたんだもん。」

「そうか。私はそんなに永くなかったと思うけどなぁ。」

「そりゃ、木ノ本(きのもと)が月に何回もそういうことしてるからだろ。」

「おい、醒ヶ井君(さめがいくん)が知らないかい。」

アド先生が僕達に聞いた。

「ナニナニ、サメちゃんがどうかしたって。」

いつの間にか善知鳥(うとう)先輩達が僕の後ろに立っていた。

「まさか、乗り(おく)れたとかっていうことないよな。」

「いや、()り忘れたかもしれないぜ。」

精神(せいしん)が負けたか。」

「おい、みんな手を合わせろ。」

「えっ。」

ハクタカ先輩に言われるがまま、名古屋(なごや)方面に手を合わせる。横目で3年生を見てみると同じように手を合わせていた。ざっと確認したところ、手を合わせてないのは(くすのき)先輩と箕島(みしま)だけだった。佐久間(さくま)はというと、ここにはいない。別の車両にいる。

「バカ。何勝手に後輩殺してんだよ。」

「えー、後輩殺しちゃいけないよ、ハクタカ先輩。」

するとアド先生の携帯(ケータイ)が鳴った。

「サメちゃん今どこだって。」

「今、蒲郡(がまごおり)にいるそうです。」

「あいつバカだな。降り忘れて313に蒲郡まで連れてかれたのか。」

「なんだ、死んだんじゃなかったのか。」

「ハクタカって後輩殺すの好きだな。」

列車の中でこういうことを話しながら、終点浜松(はままつ)に19時24分に着いた。

「ウーン。アッ。」

313系から降りて、ほかの乗客の邪魔(じゃま)にならない位置まで行って伸びをした。

「戻ってきたー。」

 改札を出て、ようやく解散のはずだったが、醒ヶ井(さめがい)がいないとなるとそういうわけにもいかないだろう。そう思っていた。

「1年生と中学生は帰ってもいいよ。サメちゃんだったらあたしたちで何とかするから。」

善知鳥(うとう)先輩にそう言われたが、帰るつもりもなかった。

「いえ、いますよ。」

「そうか。じゃあ、今ここに残ってる人は私と同類だな。」

満面(まんめん)()みで言っている善知鳥(うとう)先輩が少し怖かった。

醒ヶ井(さめがい)のやつ電車の知識0だよなぁ。」

ナヨロン先輩が分かりきっていることを言う。

「へぇ、私と同じかぁ。でも、私は帰ってこれたけど。」

「あのなあ、それは俺がいたからであってだなぁ・・・。」

「大丈夫。何とかなるって。私でも何とかなってるんだから。」

「サヤ、(あきら)めろ。何言っても無駄(むだ)だ。」

「このやろう・・・。」

その後20時13分まで浜松駅(はままつ)在来線(ざいらいせん)改札前(かいさつまえ)醒ヶ井(さめがい)を待った。この時間から推測すれば、豊橋(とよはし)どまりの新快速(しんかいそく)浜松(はままつ)まで直通する新快速(しんかいそく)を乗り継いできたようだった。

「お帰り。サメちゃん。」

「まったく。2日目みたいに精神的(せいしんてき)に死んでくれば面白いのに。」

アヤケン先輩が2日目に精神的にまいっていた時のことを言う。

「まったく。本当に死んでくれば面白いのに。」

「アヤケン先輩もハクタカ先輩も心配じゃなくてそんなこと考えてたんですか。」

すかさず醒ヶ井(さめがい)のツッコミが飛んだ。

「はいはい、人を勝手に殺さない。」

「あっ、面白がってる途中なのに。」

(あーあ・・・。)

ハクタカ先輩と(くすのき)先輩は醒ヶ井(さめがい)が来るとすぐに帰って行った。まあ、ハクタカ先輩にしてみれば強制的(きょうせいてき)に帰らされたと言った方がいいだろう。

「よーし。サメちゃんも帰ってきたことだし、私達も帰るか。」

善知鳥(うとう)先輩が伸びをする。

「はぁ、ようやと終わりかぁ。よし、遠江急行(こうきゅう)班も帰るか。」

ナヨロン先輩が帰ろうと言う。

「はい。」

「じゃあ、アド先生。さようなら。」

「あっ、永島君(ながしまくん)。18切符返してくれないかな。」

「あっ、はい。」

うっかり忘れるところだった。

「あれ、ナヨロン先輩は返さないんですか。」

「んっ。俺は何かと使うからね。」

アド先生に今回お世話になった18切符を(わた)す。

「後、返してもらうのは醒ヶ井(さめがい)君だけだね。」

この言葉を後ろに受けながら、歩いて行った。


臨地研修がようやっと終了しました。これからは9月などまた活動に入っていきます。


一つ思いましたが、これって説教してるように見えますかねぇ。説教してると思った方には謝ります。

とにかくここまで読んでくれた人には感謝。

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