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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
37/184

37列車 大阪にて

 時計を見てみる。指していたのは2時56分。

(あと4時間くらいどうすればいいの・・・。)

今この時間まで起きていたことは初めてだ。どっかで記憶(きおく)が飛んでくれればいいのだか、なかなか思っているようにならない。僕はいつになったら(ねむ)れるのだろうか。下手(へた)をすると電車の中で()てしまうことになる。どうしてもそれだけは()けたい。

 後ろを見てみる。僕は夜行バスの真ん中くらいの通路側の席に座っている。後ろは真っ暗だった。(きり)(つつ)まれているわけではないのだが、何だか(こわ)く感じた。そんなに臆病(おくびょう)なつもりではないのだが・・・。

 それから何分経っただろうか。夜行バスはどこかのサービスエリアに入った。車内灯(しゃないとう)がつけられたが、起きたのは僕だけだった。

 バスの外に出て伸びをする。ずっとバスという監獄(かんごく)の中にいたのだ。エコノミー症候群(しょうこうぐん)になる人の気持ちが分かる気がする。

「ああ、(ねむ)い。」

ふと声が()れた。

(こんなんで()えられるのか。)

自問自答(じもんじとう)した。

 5時00分。今いるところがどこかは分からない。バスの進行方向に夏の太陽が(のぼ)り、バスの中を少し明るくした。

(早く着いてくんないかなぁ。)

今がとても暇な僕に5時という時間は(きば)をむいていた。

 6時34分。大阪(おおさか)の中心部に到着(とうちゃく)する。本当はこんなに早く着かないのに・・・。

(みな)さん。ここに14時30分に集合してください。」

バスを降りて少し歩いたビルの下で集合場所の説明がある。この集合の説明を受けたら、また自由行動だ。

永島(ながしま)。「きたぐに」でも撮りに行くか。」

木ノ本(きのもと)が誘ってくれた。

「うん。早く行こうぜ。」

「あのう、「銀河(ぎんが)」も見れるんじゃないんですか。」

「ああ、「銀河(ぎんが)」もあったか。」

説明しよう。今話しに出てきた「銀河(ぎんが)」とは、東京(とうきょう)大阪(おおさか)間を走っている夜行列車の名前である。24系客車という「寝台特急(ブルートレイン)」に使われている車両が充当(じゅうとう)されている。また、日本に数少なくなってしまった急行列車の一員でもある。

もう一つの「きたぐに」とは、大阪(おおさか)新潟(にいがた)間を走っている夜行列車の名前である。この列車も「銀河(ぎんが)」と並ぶ急行列車で、今も定期運行をしている貴重(きちょう)な存在である。この「きたぐに」に充当(じゅうとう)されている車両は583系。日本ではもうこれでしか味わうことのできない3段寝台も備えている。なので、この意味でも貴重な存在なのだ。

「何言ってるんですか。「銀河(ぎんが)」撮れるわけないでしょ。大阪(おおさか)着7時19分なんですから。」

朝風(あさかぜ)が入れ知恵する。

「あれ、「銀河(ぎんが)」ってそんなに到着する(くる)の遅かったっけ。」

「ええ。それに7時19分に大阪(おおさか)にいたら「彗星(すいせい)」をゆっくり見ることができませんよ。」

「うーん。「銀河(ぎんが)」か、「彗星(すいせい)」か・・・。」

考え込む。

「僕だったら断然「彗星(すいせい)」ですね。「銀河(ぎんが)」だったら浜松(はままつ)でも見れますから。」

朝風(あさかぜ)が言う。

「夜遅いけどな。・・・。やっぱ「彗星(すいせい)」かな。「彗星(あいつ)」は大阪(おおさか)でないと撮れないからなぁ・・・。」

「て、お前らがそんなことより、まず「きたぐに」だろ。」

やれやれ。僕がこの仲を仲裁(ちゅうさい)していなかったら「きたぐに」も見れなくなってしまう。

 大阪(おおさか)駅4番線に到着すると、

「「銀河(ぎんが)」、撮れないのかぁ。」

木ノ本(きのもと)不機嫌(ふきげん)な顔をしてぼやいている。

「まったく。「銀河(ぎんが)」も「彗星(すいせい)」もKY(ケーワイ)なんだよ。」

(いや、「銀河(ぎんが)」や「彗星(すいせい)」に「空気読め」っていう方が無理なんじゃ・・・。)

「そんなこといいじゃないですか。「きたぐに」が見れるんですから。」

ちょっと考えてから、

「それもそうだな。」

銀河(ぎんが)」のことは()()れてくれたのだろう。笑いながら、カメラを取り出していた。

 6時49分。4番線に「急行きたぐに」が入線する。入線してくる間、「きたぐに」をずっと見ていれなかった。黄色く光るヘッドライトがとても(まぶ)しかったからだろう。「きたぐに」はゆっくりと入線し、僕達の少し手前でブレーキをきしませ、停車した。

583系(ゴハサン)かぁ。一度は乗ってみたいですね。」

朝風(あさかぜ)は目を細めて、583系の体を触っていた。

朝風(あさかぜ)、ちょっとどいて。」

その声を聞くと朝風(あさかぜ)が583系から離れた。朝風(あさかぜ)の姿がカメラに(うつ)らないことを確認して、シャッターをきった。

「よく()れたか。」

シャッターをきり終わると木ノ本(きのもと)が話しかけた。

「まぁ。」

「へぇ。」

木ノ本(きのもと)携帯(ケータイ)を覗き込むと、

「彼女か誰かに送ってやれよ。」

彼女という言葉に面喰(めんくら)った。

「バッ、送んねぇよ。つうか、送ったところで分かんねぇよ。」

「それもそうか。」

冷やかしだろう。木ノ本(きのもと)は少し笑っていた。

「あっ、そうだ永島(ながしま)。「きたぐに」に使われてるあの車両。なんていうんだ。」

木ノ本(きのもと)のその言動(げんどう)にはよろめいた。知らないはずはないんだけど・・・。

「さっき朝風(あさかぜ)が言ってただろ。583(ゴハサン)って。」

「へぇ583系(ゴハサン)っていうんだ。私はてっきり「雷鳥(らいちょう)」とかの485系(ヨンパゴ)だと思ったよ。」

「まあ、無理もないよな485系(ヨンパゴ)583系(ゴハサン)ってよく似てるもんな。」

「よく似てる恰好(かっこう)してて、中身がすごく違うんだろ。ああ(おぼ)えづらい。」

その後独り言のように、

「ダメだ。結構長い間電車と(はな)れてたから、記憶が何かと混ざっちゃってる。」

と言っていた。こういうわけは、自分の趣味を長い間隠(かく)していたからである。4月の時に言っていたが、僕ら以外で木ノ本(きのもと)の電車好きを知っているのは親と親友だけらしい。そして、その数は10人もいないと言っていた。

「まあ、そのうちまた覚えるって。国鉄ほど覚えやすいもんのないから。」

「ナヨロン先輩からの受け売りか。」

「まあ、そんなとこ・・・。」

 その後は「きたぐに」も車庫に回送されるまで写真を撮り続けた。そして、回送される時は全員でその後ろ姿を見送った。

 JR西日本色(にしにほんしょく)の583系が隣を通り過ぎていく。

「行っちゃいましたね。」

朝風(あさかぜ)名残惜(なごりお)しそうに言った。

「できれば、国鉄色の方がよかったなぁ、俺あれの方が好きなんだけど・・・。」

その国鉄色という色は窓周りが青でそれ以外のところがクリーム色になっている塗装だ。

(こいつ、彼女いるのに「好き」とか「嫌い」とかふつうに言ってるよな。絶対、彼女に勘違(かんちが)いされるぞ。)

「どれくらい。やっぱ彼女くらいか。」

「そんなの比べられないよ。」

腕組(うでぐみ)をして目を閉じた。

「一つ言えるのは、100系以下だってことだな。」

100系(ヒャク)好きだな。」

「うるさいな。好きなんだからしょうがないだろ。」

(・・・。)

 勘違いされるかどうかは別として話を進めよう。

永島(ながしま)さん。今度は何車撮するんですか。」

「うーん、ちょっと待ってね。」

ポケットから臨地研修(りんちけんしゅう)のために持ってきたカンニングペーパーを取りだした。このペーパーには電車の発車時刻だけが記されている。

「えーと次は・・・、「彗星(すいせい)」だ。」

「「彗星(すいせい)」来たー。」

朝風(あさかぜ)のテンションがハイになる。僕にも分からないわけではない。

 読者の皆様に説明しよう。「彗星(すいせい)」とは、新大阪(しんおおさか)と九州の南宮崎(みなみみやざき)を結んでいる寝台特急(しんだいとっきゅう)の名前である。使用客車は24系寝台客車で、さっき見た583系が充当(じゅうとう)されていた時代もある。

「「彗星(すいせい)」かぁ。名前的にはカッコいいよな。」

「それどういう意味だよ。」

「まあ、そりゃおいといて・・・、新大阪(しんおおさか)まで移動しないといけないのか。」

「でる方法だったら、いくらでもありますけどねぇ・・・。」

「「サンダーバード(とっきゅう)」使わない。」

「はっ。佐久間(さくま)バカだろ。」

ここにいる全員の声がそろう。

「そんな一区間だけ「サンダーバード」使うって。新快速(しんかいそく)快速(かいそく)、ましてや、普通(ふつう)でも所要時間(しょようじかん)変わらないのに・・・。」

空河(そらかわ)が文句を言ってると、

「分かってる、分かってる。使わねぇよ。」

「んじゃあ、7番か8番線に行くか。」

 木ノ本(きのもと)が全体を促してくれる。こういうときは撮り鉄として頼りになるのだろうか。それとも・・・。

「ちょうどいい列車がないのか。」

来てみるとこのありさまであった。ほんのちょっとではあるが、発車する列車(かいそく)を待つことになった。

「早くしないと、「彗星(すいせい)」来ちゃうじゃん。もう電光掲示板(でんこうけいじばん)にも出てるし・・・。」

「まだ、大丈夫だって。」

7番線を諫早(いさはや)が指差した。

「すぐに発車する列車あるじゃないですか。一区間だけだし、我慢(がまん)して乗りますか。」

諫早の指の先にはステンレスの通勤電車が止まっていた。207系という車両だ。

「そうだな。ここは207系(あれ)に我慢して乗るか。」

「はぁ。しょうがないかぁ。」

「7番のりばから、普通・・・。」

「ヤベ。もう発車しちゃうじゃん。」

「早く乗るぞ。飛び乗ろうが、滑り込もうがなんでもいいから。」

4枚あるドアに流れ込んだ。さすが、この時間帯(通勤ラッシュ)だと思った。車内は人でいっぱいだ。関西(かんさい)の人も多さをあからさまに見せつけられた。


この物語には自分の理想も含まれてます。特にこんなにたくさんのあれがあったらなぁ・・・。


自分でも創作で鉄道会社を作ったりしていますが、そこに必ずあるのはあれなんですよ。寝台特急という響きだけで夢を感じます。

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