34列車 熊本市電
10時32分。熊本に到着した。
「さて、こっからどうしようか。」
「とりあえず、市電に乗ってこないか。だいたいここにきて乗る目的がそれしかないだろ。」
「そうだったな。んじゃあ行こうか。」
皆を促して改札口を抜けた。
「市電に乗るのはいいですけど、どこまで行くんですか。」
「とりあえず、終点までだろ。」
「そうだな。」
「全区間乗りつくしはできないにしても、一番長い系統乗りつくししよっか。」
熊本の駅舎を出て最初に飛び込んでくる路面電車の電停に向かう。
「あっ、あの車両は。」
空河が入ってきた白い車両を指差した。
「超低床車(LRT)かぁ。」
「何系とかそういうのは分からないけど、ああいうのもあったなぁ。」
話しながら、電停まで足を運んだ。
電停まで行くと、最初に来た健軍町行きの路面電車に乗り込んだ。車内に乗り込むとほぼ一番乗り状態だった。僕たちは誰も座っていない運転席の後ろの席を占拠した。
「超低床車(LRT)に乗れて感激です。」
「これだけで感激してもどうだろうか。」
「そんなことより、財布の中身確認したか。」
「なんでですか。財布ならちゃんと持ってますし、パクられてもいませんけど・・・。」
「そうじゃなくて、150円しっかりあるかってことよ。もし500円とかで運賃出したらお釣りが返ってこないぞ。」
「あっ、そっか。」
皆財布の中身を調べた。その後両替をしたのは僕と空河だけであった。木ノ本と朝風はちゃんと150円あったらしい。
路面電車に揺られて42分。熊本市電の終点健軍町に到着した。
「ちょうどいい時間だし、お昼にしない。」
「そうだな、どっかマックスでも探して食べちゃうか。」
「いや、マックスはどうだろうか。せめてでもコンビニだろ。」
「うーん、そうか。空河、朝風。どっか行きたい所ある。」
「僕は昼が食べられればどこでも。」
「僕もどこでもいいです。」
(これだ・・・。)
「うーん、仕方がないからそこらへんでコンビニでも探すか。」
「探すって言ってもどうするんですか。ぱっと見、このあたりにはコンビニとかもないと思いますけど。」
「あっちのアーケードの方とかないのかなぁ。」
「ないと思うけどなぁ。パチンコ店ならあるけど・・・。」
「じゃあ、どうすんのよ。」
「さっきマックスがありましたけど。」
「ああ、じゃあそこにするか。」
というわけで健軍町の一つ手前健軍交番前まで歩いて行くことにした。しかし、そこにたどり着いてみると、
「なあ、永島。こんなに人たくさんいて、入りたいって思うか。」
「うん、確かに思わないな。」
「ここまで並んで物を食べるっていう人の気がしれませんね。」
「ここまで並んでると、食べる気を失せますねぇ。」
「うーん、じゃあどうしようか・・・。」
「まず、ここから出よう。それから考えればいいよ。」
なのでここにいたのは10分くらいだったかもしれない。
「そう言えば、交通局前とかっていうところに車庫があったろ。あれ見ていかないか。」
「ああ、いいね。空河、朝風。どう思う。」
「別にいいですよ。」
「はい。」
全員一致。交通局前で途中下車することにした。
「そういや、乗務員の交代もここでやってたよなぁ。」
「ああ、そうだったな。」
そういう雑談をしながら、交通局前まで戻ってきた。
「案外暇なところだな。」
「何言ってるんですか。木ノ本さんの提案でしょ。」
「いや、そうだけどさ・・・。」
「でも、熊本市電っていっぱい車両あるんだな。一枚くらい写真撮って行くか。」
遠くに留置されている熊本市電の車両を携帯に収め、すぐに交通局前に戻った。
「で、こっからどうするつもり。」
「そうだな・・・。」
「もういいですよ。熊本駅戻っちゃいます。」
「熊本城とか行かないのか。」
「楽しめる人は楽しめますけど、僕たちじゃ楽しめませんよ。」
「まあ、それで集まったようなもんだしなぁ。」
「んじゃ、熊本に戻って昼飯でいいか。」
「それでいいよ。」
「確か構内にコンビニありましたよね。」
「ああ、あったね。」
「それで決まりでいいか。」
結局健軍町までいった意味は熊本市電に乗りたかっただけでしかなかった。
熊本に戻ってきて、お昼を食べて12時47分。ホームに入り、車両撮影を行うことにした。たぶん僕たちなら乗りきることができるだろう。
「永島、13時07分に「特急くまがわ」って言うのが来るけど、これ知ってる。」
「「くまがわ」。知らないけど。」
「あっ、それキハ185で運転されてる特急です。」
「空河詳しいなぁ。」
「この位常識ですよ。木ノ本さん。」
「あれ、キハ185ってJR四国の車両じゃなかったっけ。」
「確かに四国の車両です。でも九州に走っているキハ185は九州が買ったやつなんです。」
「へぇ。そうなのか。」
「空河、本当に詳しいな。」
「これでも知らない方ですよ。僕が一番知っているのは北海道のディーゼルカーですから。」
「そこまで知ってれば困らないって。」
13時07分。「特急くまがわ」を撮影。その後は4・5番線に行って、僕達がのる列車をゆっくりと待った。
「おーい、隣に「つばめ」が止まってるぞ。」
「あっ、本当だ。」
「撮りに行かないのか。」
「もう、間に合わねぇよ。」
「ああ・・・。それもそうだな。」
それから何分経っただろうか。
「永島さん。あすこに787系いますけど。」
「どうせ、「有明」か「つばめ」だろ。」
「いや、そうじゃなくて・・・。」
僕の肩を叩いて、こっちに来てという動作をする。
「ホームに入らずに止まったままなんです。」
研修の2日目。これって作ってくと研修じゃなくて完全な旅行になるんですよねぇ。まぁ、実際がそうだったというところもありますから・・・。