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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
33/184

33列車 聞けない

 ふと目が覚めた。体を起こし、(ねこ)のように体を伸ばす。

(今何時だ。)

と思って携帯の端末(たんまつ)を開いた。

(5時48分かぁ。)

もう少しで6時だ。もう寝てしまうのは二度寝の原因になると思って、少しの間部屋の中でゆっくりした。その間にメールが一通来た。確認してみると、木ノ本(きのもと)からだった。それともう一通来ていることに気付いた。誰なのかと思って確認してみる。

(んっ。)

迷惑メールとかいう奴でもチェーンメールとかいう奴でもなかった。だが、すぐに閉じてしまった。

 6時55分。そろそろ朝御飯を食べに行こうと思って下の階に行った。今日は前に考えた自由行動を実行する日である。

「オッハー。ナガシィ。」

途中(とちゅう)エレベーターで下に行こうとしている時善知鳥(うとう)先輩とばったり会った。

「おはようございます。」

「そんな堅苦(かたくる)しくなるなって。」

肩を叩いて気持ちをほぐそうとする。

「そいえば、ナガシィ達どこに行くんだっけ。」

熊本(くまもと)です。」

「そっか。熊本(くまもと)かぁ。何もないこと(いの)っといた方がいいよ。」

僕にはこういった意味が分からなかった。

7時41分。僕達の班はいつでも出発できる状態になった。といっても乗る列車まではまだ31分ある。その間ホテルのロビーで暇をつぶし、7時50分ごろ。ホテルを()った。

5分くらい歩いて、博多(はかた)駅に来た。在来線の改札口を通り、僕達がのる快速(かいそく)荒尾(あらお)()きを待った。8時07分。快速(かいそく)荒尾(あらお)行きが博多(はかた)駅の5番線に入線した。すぐに車内に乗り込み自分達の席を確保した。席を確保すると、みんなで入線した車両を取りに行った。この快速(かいそく)に充当されている車両は813系。JR九州のベーシック通勤電車だ。

「「赤い子」だったな。」

木ノ本(きのもと)が車両を取りに行ってきた僕達に向かってそういった。

「「赤い子」。」

「だってそうだろ。前面(かお)赤いじゃん。」

「ああ、納得。」

納得していいのかどうかは分からない。でも、一つ言えることがある。僕と木ノ本(きのもと)が考えていたことはさほど変わらないということだ。

 その後、この列車が発車する8時11分まで「特急ソニック」、「特急かもめ」に充当されている885系、813系と並ぶ通勤電車811系などを見た。ひっきりなしに電車が来るというのは、博多(はかた)という九州の中枢(ちゅうすう)だからだろう。そう思った。

 この快速(かいそく)列車は南福岡(みなみふくおか)まで各駅に停まる。そして、南福岡(みなみふくおか)を過ぎると快速(かいそく)運転になり、鹿児島本線(かごしまほんせん)主要駅(しゅようえき)にしか停車しなくなる。

 雑談をしている間にも、813系は南福岡(みなみふくおか)までコマを進めてきていた。ここ南福岡(みなみふくおか)ではちょっと長い間停車していた。昔はこんなことも気にも()めなかったのに。今となってはこの小さな停車にも意味があるというのを理解できる。

「あっ、「つばめ」だ。」

ずっと外を眺めていた朝風(あさかぜ)がつぶやいた。僕もその方向へ目線を移す。すると視界にシルバーの車体が特徴の787系が通過していくのが見えた。

佐久間(さくま)、あれに乗ってったのかなぁ。」

ふとそんなことを思った。

 その後は「つばめ」が通って行った方向とは逆の方向に目を向けていた。ずっと景色を眺めていたのである。今でも流れていく景色(けしき)を見ることは楽しいと思っている。しかし、なぜこれが楽しいのかと聞かれると答えられなくなる。たぶん、理由にできない楽しさがあるのだろう。南福岡(みなみふくおか)の次。春日(かすが)を通過すると春日(かすが)の前に広がる広場が目に入ってきた。たくさんの人が何かの準備をしていた。たぶん、お祭りか何かだろう。準備中(じゅんびちゅう)の屋台と上に()けられた提灯(ちょうちん)を見て直感した。

 春日(かすが)を通り過ぎると見るものが何もないわけではないが、ボーっとしている以外することがなくなった。ゲームとかはしないのと思っているだろう。ゲームなんて電車に乗ってするものではない。僕は電車に乗ってすることは景色を楽しむことだけでいいと思っている。暇ではないかと思っているかもしれないが、案外暇ではない。

 9時16分。快速(かいそく)列車に揺られるのはここまでである。ここは終点の荒尾(あらお)ではなく一つ手前の大牟田(おおむた)。ここで列車を乗り換え、目的地の熊本(くまもと)まで行く。

「まずはここまで来たな。」

大牟田(おおむた)のホームに降り立って体を伸ばす。

「なんで、荒尾(あらお)まで行かないんですか。」

空河(そらかわ)はこの途中下車について疑問に思っているようだった。

荒尾(あらお)まで行っても、ここで降りても同じだからさ。」

僕はそう説明した。

永島(ながしま)さん。次の「特急つばめ5号」がやってきますよ。」

電光掲示板に目をやっていた朝風(あさかぜ)が教えてくれた。

「おお、787系が見れるじゃん。写真()ってこう。」

「まあ、熊本(くまもと)に行ってからでも見れるんだけど・・・。」

見れるんだけど。いずれ見る列車である。いつ見ようが関係ないか。そうは思ったが携帯(ケータイ)は撮りださなかった。もっとしっかりと収めるためである。

 9時27分。1番線に「特急つばめ5号」西鹿児島(にしかごしま)()きが入線してきた。綺麗(きれい)なシルバーの車体。これが9両連なっている。到着するとホームにアナウンスが流れる。

大牟田(おおむた)ー、大牟田(おおむた)です。」

「クドイー。」

空河(そらかわ)がこのアナウンスを聞いてこういった。さっきも聞いたのであるが、何か言い方がクドイ。

「ああ、確かにクドイなぁ。」

「まあ、お客さんに分かりやすいようにしてあるだけだからしょうがないだろ。」

「いや、それは分かるんだけどね・・・。」

9時27分。「特急つばめ5号」西鹿児島(にしかごしま)行き発車。787系の後姿を見送って、僕達はまた自分達がのる列車を待った。

 何分か()つと1番線に僕達の乗る9時40分発。普通熊本(くまもと)行きが入線した。

「今度はどんな子かなぁ。」

入線してくる車両を凝視(ぎょうし)する。

「うーん・・・。「赤いようで赤くない子」かなぁ。」

「どういう奴だよ。」

「だってそうじゃない。」

「確かにそうだけどさぁ。」

「「赤いようで赤くない子」。」

中学生の方にはすぐにこの呼び方が浸透(しんとう)した。

 今「赤いようで赤くない子」と僕が命名した車両は815系。813系や811系と同じ通勤電車ではあるが、編成は3両、4両編成ではなく2両編成。僕は地元を走っている遠州鉄道(えんしゅうてつどう)通称(つうしょう)赤電(あかでん)」のでっかいバージョンを見ている気になった。

 ドアが開き、車内に入った。815系の車内はこれまで乗ってきた813系とは違い横1列に座席が並んでいた。こういうシート配置のことを「ロングシート」と呼ぶ。いくら鉄道に興味がないとはいえこれくらいのことは覚えてほしいものである。

「変わったロングシートだな。」

木ノ本(きのもと)が「ロングシート」に目をやった。

「確かに変わってるな。」

そういうのはこれが今までに見たことのある「ロングシート」ではないからだ。僕達が思っている「ロングシート」はベンチが並んでいるようになっているもの。しかし815系の「ロングシート」は椅子(いす)が横1列に礼儀正(れいぎただ)しく並んでいる状態(じょうたい)だった。「こんなことを考えているとすぐに席が埋まってしまう。」と思い腰をかけた。

 9時40分。普通(ふつう)熊本(くまもと)()きが大牟田(おおむた)を発車した。どのくらい席が埋まるか分からなかったが発車するとその答えが出た。席は埋まるどころか空いているのが目立つくらいだった。

「次は、荒尾(あらお)ー、荒尾(あらお)。」

大牟田(おおむた)を発車するとお約束のアナウンスである。

荒尾(あらお)では、ホーム(がわ)(すべ)てのドアが(ひら)きます。」

「何今の・・・。」

「ふつう言うか。あんなこと。」

浜松(あっち)の方では聞いたことのないアナウンスを聞いた。

 荒尾(あらお)駅に近づいた。

「間もなく、荒尾(あらお)ー、荒尾(あらお)です。荒尾(あらお)ではホーム側の全てのドアが開きます。」

「さっきのあれといい、これもクドイですねぇ。」

「全部開くんだったら、言わなくていいじゃん。開かない駅だけ言えばいいのに。」

「これって、現実にそういう駅があるってことだよなぁ。」

「じゃあ、乗ってる間に全部開かない駅があるっていうの。」

「たぶんあるんじゃない。」

「それだったら面白いなぁ。」

ドアが開かない駅がある。そのことだけに期待(きたい)した。

「次は南荒尾(みなみあらお)ー、南荒尾(みなみあらお)南荒尾(みなみあらお)ではホーム側の全てのドアが開きます。」

次は違った。

「次は長洲(ながす)ー、長洲(ながす)長洲(ながす)ではホーム側の全てのドアが開きます。」

次も違った。

 その後も全部開かない駅があるかと思っていたが、「一番前のドアのみ開きます。」の様なアナウンスは僕の記憶では来なかった。

 10時15分ごろ。

「間もなく植木(うえき)ー、植木(うえき)植木(うえき)ではホーム側の全てのドアが開きます。」

「いい加減にしてくれませんかねぇこのアナウンス。」

「何言っても無駄(むだ)だろうなぁ。この列車ワンマンだからアナウンスは全部コンピューターがやってる。コンピューターぶっ(こわ)さないと(だま)らないね。」

「もういいでしょう。」

「うん、どうでもいいよ。つうか、「ホーム側の全てのドアが開きます」って完全にウケ狙ってるだろ。」

(いや、ウケ狙ってるはないと思うけど・・・。)

「1枚目と3枚目のドアが閉まります。ご注意ください。」

「んっ。どうかしたのかなぁ。」

「何か通過する(おいぬく)んじゃないんですか。ほら、本線の出発信号機(しゅっぱつしんごう)(しんこう)になってますし。」

朝風(あさかぜ)が本線の信号を()した。

 数分経つとさっき大牟田(おおむた)で見た787系が放たれた矢のごとく通過していった。僕達のいる進行方向右側の席からは西鹿児島(にしかごしま)へと急いで行く787系が見えた。その姿を見えなくなるまで僕達はその姿をおった。

 787系が通過してから1分くらいがたった。僕達の815系も植木(うえき)を発車する。ここ植木(うえき)を出ると終点熊本(くまもと)までは4駅である。

 さっきと同じくすることがないのは変わらない。僕はボーっと外を見ていた。

(もえ)もつれてきたかったなぁ。・・・。)

「えっ。」

なぜか木ノ本(きのもと)が反応した。心の声ではなく、本当の声になっていたようだ。

「なっ・・・何か言ってた。」

(顔が赤い・・・。)

「別に、何も言ってなかったけど。」

「そっ・・・そう。ならいいや・・・。」

(知ってるよ・・・。私よりも好きな人いるって・・・。でも、すごいもんだよなぁ。学校離れちゃったらふつう終わるって。永島(ながしま)坂口(さかぐち)さんの間は一言じゃ語れない恋だよなぁ・・・。そう言えば、坂口(さかぐち)さんから永島(ながしま)の進路聞きだしてって言われてるけど、まだ考えてないよなぁ。いや、考えてるはずがないかぁ・・・。)

 10時32分。熊本(くまもと)到着(とうちゃく)した。


エクセルの書いてある設定表を見てみたら、アヤケン先輩と永島は眼鏡をかけていました。文中にその描写がなくてすみません。


なお、今回みたいに場所が変わるとこういうこともあるんだということはよくある話だと思います。この話みたいに「すべてのドアが開かない時にそう言えよ。」とも言いたくなることがたまにありませんか・・・。

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