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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
31/184

31列車 裏切りと「トワイライト」と死亡

 9時48分。米原(まいばら)に到着。2番線に入線すると反対側3番線にはすでにシルバーの車体が(かま)えていた。構えていたといってもドアが開いているわけではなかった。

(発車時刻でもないのに、なんでドアが閉まっているのだろうか。)

と思いながら、313系から降りた。隣に行くと、なるほどと納得できた。隣にいる223系に乗り込む人は一様にドアの横にあるボタンを押して乗車していった。ここでは半自動(はんじどう)でドア開閉(かいへい)を行っているらしい。

 9時49分。僕の班が全員いることを確認した。

 9時50分。ティントゥーン、ティントゥーン。開いたままだったドアが一斉(いっせい)に閉まった。ドアが閉まると甲高(かんだか)い息抜きのような音がした。ブレーキが解除(かいじょ)される音だ。この音が頭の遠くで聞こえるようになると、床下のモーター音を発し始めた。音階(おんかい)が少し変わろうとしているころには(すで)に米原のホームを後にしていた。

 (かたわ)らに「300X(エックス)」「WIN350(ウィンサンゴーマル)」「STAR(スター)21」が見えてくるころ、大阪(おおさか)までの途中停車駅(とちゅうていしゃえき)()げられた。この案内の途中に新快速(しんかいそく)は右にかじを切り、新幹線(しんかんせん)の高架橋をくぐって、次駅(じえき)彦根(ひこね)へと急いでいた。

「ナヨロン先輩。さっきのこと聞いとけばよかったと思いました。」

足の裏が少し痛かった。

「だから言っただろ。新快速(しんかいそく)は結構需要があるって。大阪(おおさか)までこのままだって思っといた方がいいぞ。」

ナヨロン先輩にはそう怒られた。

 この先、この新快速(しんかいそく)に揺られること83分。11時13分に大阪(おおさか)駅に(すべ)り込んだ。この列車にはそんなに長い間乗っていたという感覚(かんかく)がなかった。むしろ、新快速(しんかいそく)の方が新幹線(しんかんせん)よりも速いのではないかと錯覚(さっかく)したくらいだった。

 ホームに降り立つと衝撃的(しょうげきてき)な事実が目に飛び込んできた。

(ウッ・・・ウソだろ・・・。)

後ろに連結されていたのは僕の好きな223系。1000番台。

(そんな・・・。1両後ろだったら、こいつに乗れていたのか・・・。)

何も言うことができなかった。

 11時15分。1000番台の後姿を見送って、全員が集合しているところに行った。

「聞け諸君(しょくん)。12時発の新幹線(しんかんせん)に乗るからな。みんなここに集合しろよ。」

善知鳥(うとう)先輩が右手を上げてみんなに教えている。

新幹線(しんかんせん)・・・。新快速(しんかいそく)じゃなくて・・・。)

「それでは、皆さんお昼にしてください。ええ、ここには11時55分ごろに集合してください。」

アド先生の説明を受けて解散した。

「なあ、善知鳥(うとう)。今お前新快速(しんかいそく)じゃなくて、新幹線(しんかんせん)って言ってただろ。」

「まあいいんじゃないか。俺達には間違えられても通じるし、どんなバカでもここから乗る列車(やつ)新幹線(しんかんせん)じゃないってわかるから。」

耳の遠くで聞こえている。

永島(ながしま)、「トワイライトエクスプレス」見に行かないか。」

誰かにそう話しかけられる。

永島(ながしま)。」

木ノ本(きのもと)が僕を(のぞ)き込んだ。その時になって今話しかけてきたのが木ノ本(きのもと)だと分かった。

「なっ・・・何。」

「何じゃないよ。「トワイライト」見に行かないかってこと。」

「ああ、「トワイライト」かぁ。うん、見に行こう。」

僕はすぐに賛成(さんせい)した。

 11時30分ごろだっただろうか。大阪(おおさか)駅の10番線に「寝台特急(しんだいとっきゅう)トワイライトエクスプレス」が入線してきた。編成はEF81-113号機を先頭に10両の24系寝台客車が続く。この列車も寝台特急と呼ばれているため、ブルートレインの仲間である。しかし、その車体はブルーではなく深緑(ふかみどり)で、ブルートレインと呼ばれた時の面影(おもかげ)は車内で寝ることができる以外残っていない。

永島(ながしま)。これ乗りたいって思わない。」

「ああ・・・。」

(できれば(あいつ)と一緒に・・・。)

いつか乗りたいと思いながら、先頭のEF81を携帯(ケータイ)に収めた。

木ノ本(きのもと)達も来てたのか。」

その声が「トワイライトエクスプレス」の方からした。ナヨロン先輩とアヤケン先輩だった。

「はい。」

「「トワイライトエクスプレス」。いつか乗りたいよなぁ。」

「やっぱり乗るんだったら、一番後ろですか。」

「そうだな。乗るんだったら一番後ろだな。」

一番後ろの車両はスイートルームと言って「トワイライトエクスプレス」に二つしかない部屋の一つがある。

「まあ、その前に名寄(なよろ)は彼女ができるかどうかだけどなぁ。」

「うっさい。」

木ノ本(きのもと)、俺たちは行こうか。」

「あっ、うん。ナヨロン先輩達も早く戻ってきてくださいね。もう集合まで5分くらいしかありませんよ。」

木ノ本(きのもと)がそう言っているのが聞こえた。

 4番線に足を運んでいると向こうから走ってくる人影があった。サヤ先輩と善知鳥(うとう)先輩だった。

「あっ、ナガシィ・・・「トワイライト」今停まってる・・・。」

「はい、停まってますよ。」

「そう、ありがと。行くぞ。」

「サヤ()ってよ。」

そんな後姿を見送った。

「サヤ先輩達って何してたんだろう。」

「さぁ。お昼でも食べに行こうとして、それで失敗したみたいな感じだよなぁ。」

そう話しながら、4番線に通じる階段を上った。

 12時00分。大阪(おおさか)を発った。ここからはまた223系新快速(しんかいそく)にお世話になる。この新快速(しんかいそく)播州赤穂(ばんしゅうあこう)()き。途中で乗り換えをしなくても相生(あいおい)まで行くことができる。

 この列車に乗り込んで見ると、座れる席が全くなかった。僕たちはアド先生の誘導(ゆうどう)で空いているごくわずかな席に座った。僕が席に掛けるときにはドアが閉まり大阪(おおさか)を発車していた。この新快速(しんかいそく)に乗って30分くらいがたった。兵庫(ひょうご)を通過したくらいだっただろうか。ふとした拍子(ひょうし)に意識が飛んでしまった。

 目が()めた。今走っているところがどこなのか。それが気になった。外に目を向けてみる。当然のことだが、僕の知っている建物は一つもなかった。次に、車内に目をやった。僕の位置(いち)から見て(ひだり)(なな)め後ろ。佐久間(さくま)諫早(いさはや)空河(そらかわ)醒ヶ井(さめがい)が固まって座っていた。だが、全員寝てしまっている。

(他の人はどこにいるんだろう。)

と思って車内を見回す前に次の停車駅が目に入った。

(かっ・・・加古川(かこがわ)っ。)

「ご乗車ありがとうございました。加古川(かこがわ)ー、加古川です。・・・。」

(イカン。神戸(こうべ)発車してから寝ちゃった。)

そう寝てしまった自分を()やんだ。

 僕の座っている2号車の座席には夏の太陽がギラギラと入ってきている。まだ(まぶた)が重い。こういう状況だとまたいつ寝てしまうか分からない。そのため、ドア付近の椅子(いす)の背もたれに取り付けてある、補助椅子(ほじょいす)に掛けようかと思った時、加古川(かこがわ)に到着した。

 加古川(かこがわ)では何人もの客が()りていった。そのうちの一人が荷物を忘れて取りに来ていたが、取りに来た直後にドアが閉まってしまうという災難(さいなん)()っていた。

 加古川(かこがわ)を発車すると僕は補助椅子の方に移った。

 補助椅子を前に引き倒して座る。

「なんじゃこりゃ。」

つい声が出てしまった。この補助椅子(ほじょいす)には何か空洞(くうどう)の様なものを感じた。座るとそこにクッションがないかのように沈みこんだ。そして、そこには金網(かなあみ)の様なものしかないという感覚しか生まれなかった。

 13時01分。姫路(ひめじ)に到着。ここから新快速(しんかいそく)は堂々(どうどう)の12両編成から8両編成になる。僕達の乗っている基本編成(きほんへんせい)がそのまま播州赤穂(ばんしゅうあこう)まで行き、おいていかれる付属編成(ふぞくへんせい)新快速(しんかいそく)か普通として大阪(おおさか)方面に折り返していくのであろう。13時06分。新快速(しんかいそく)播州赤穂(ばんしゅうあこう)()きが姫路(ひめじ)を発車した。

 途中(とちゅう)相生(あいおい)に着いたのは13時24分だった。降りて見ると何とも小さな駅である。とても新幹線(しんかんせん)の停車駅とは思えないくらい小さかった。相生(あいおい)のホームに降り立つとまた乗り換える。13時30分発。普通(ふつう)三原(みはら)()きに身を(まか)せて途中の糸崎(いとざき)まで()られる。車両は113系だった。

体質改善車(ダイエットしゃ)かぁ。」

()まっていた113系を見てナヨロン先輩が言っていた。

「ダイエットって。」

「だってこの車両は延命手術(えんめいしゅじゅつ)を受けてダイエットに成功したんだよ。」

「あのナヨロン先輩。それダイエットじゃなくてリニューアルって言うんじゃないんですか。」

体質(たいしつ)改善(かいぜん)したら、全部ダイエットしたんだよ。」

読者の皆様にとってはこんなことどうでもいいだろう。しかし、僕達にはどうでもいい問題ではない。これから2時間以上普通に揺られるのである。いくら電車好きといっても2時間以上普通に乗っているというのは抵抗(ていこう)がある。これが新快速(しんかいそく)とかだったら話は変わるのだが・・・。

 13時30分。相生(あいおい)を発車する。この列車で前述したとおり2時間以上揺られるのだ。

 何分だっただろうか。岡山(おかやま)に着いた。

(まだ岡山かよ。)

心の中でそれを(なげ)いた。いくらなんでも長過ぎる。これなら、サヤ先輩が言っていた博多(はかた)まで行って、病院(びょういん)に行くという意味が分かった気がした。

 さらに1時間がたった。今いる駅は大門(だいもん)。まだ1時間以上乗車していなければならない。ふと周りを見回してみた。ほとんどの人が眠りに()いていた。

(できることなら、俺も眠りたい・・。)

 そこから41分が経過した。ようやっと乗り換え駅、糸崎(いとざき)到着(とうちゃく)する。

(やっとここまで来たのかぁ。)

降りると同時にため息をついた。ここからは少しは楽になるのだろうか。16時14分発の「快速(かいそく)シティーライナー」に期待(きたい)することにした。

 だが、その期待もすぐに打ち(くだ)かれてしまった。「快速シティーライナー」に充当されている車両はさっきまで乗っていた113系。好きでも嫌いでもないが、また同じ車両というのには抵抗(ていこう)がある。

 16時14分。「快速シティーライナー」糸崎(いとさき)発車。

そこから何分経っただろうか。瀬野(せの)まで来た。ふと外に目をやると見たことのないオレンジ色の電気機関車(でんききかんしゃ)が止まっていた。

「なんだ。これ。」

誰かに問いかけたわけではないが、ナヨロン先輩が反応してくれた。

「EF67。瀬野峠用(せのとうげよう)後押(あとおし)機関車(きかんしゃ)だよ。「セノハチ」って聞いたことないか。それがここのことだよ。」

「「セノハチ」。」

首をかしげた。

「ああ、知らないんだ。永島(ながしま)なら知ってると思ったんだけどなぁ。そうか。永島(ながしま)でも知らないことがあるのか。」

自分に言い聞かせるように言った。

山陽本線(さんようほんせん)敷設(ふせつ)した山陽鉄道(さんようてつどう)が、ここだけは経済性(けいざいせい)優先(ゆうせん)しましょうって作っちゃったんだよ。そしたら、22.6‰(パーミル)の急勾配(きゅうこうばい)になっちゃってね。この勾配は山陽本線(さんようほんせん)を走ってる貨物列車(かもつ)は上ることができない。だからああいうのが走るのを手伝ってくれてるってこと。」

そう教えてくれた。

この列車が途中の広島(ひろしま)に着いたのは17時28分であった。


まだまだ。この先は飛ばせたからいいですけど・・・。

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