30列車 浜松~米原
8月8日。ついにその日がやってきた。
(今日から行ってくるのかぁ。)
それを思いながら萌にメールを打った。
「今日から、博多に行ってくるよ。」
文面はそれだけにした。
6時21分。浜松駅の改札前に到着する。集合時間は6時45分。まだたっぷりと時間がある。
「おーす。永島・・・。」
木ノ本が既にそこにいた。
「木ノ本早いな。」
「だって4時に目が覚めたんだもん。」
「早っ。」
「早って。しょうがないだろ。」
「・・・。」
「お前ら、早すぎだぞ。」
横から声がした。ナヨロン先輩だ。
「ナヨロン先輩。おはようございます。」
「つうか、永島気付かなかったのか。同じ列車に乗ってたのに。」
「あっ、そうだったんですか。」
「張り切ってるなぁ1年生諸君。」
今度は善知鳥先輩の声だ。
「そう言う善知鳥も張り切ってるなぁ。」
「だって博多(HKT)いけんだよ。そりゃあワクワクするって。」
「まあ、新幹線ではいけないけどな。」
「ああ、そこだけ嫌だな。」
「・・・。」
6時40分までの間にサヤ先輩と佐久間以外は全員そろった。
「サヤのやつ何してんだろう。」
「いつものことだろ。サヤって時間通りに来た例ないじゃん。」
アヤケン先輩と善知鳥先輩がまだ来ないサヤ先輩に文句を言っていた。その会話を聞いている傍らでナヨロン先輩がその姿を探した。
「あっ、来た、来た。おーい、サヤこっちだぞ。」
そう呼ぶとサヤ先輩が走ってきた。
「ナヨロン。俺そこまでバカじゃないぞ・・・。」
集合場所まで来るとそう言っていた。
6時51分。佐久間が6分遅刻してきた。だが、これで全員集合する。全員の集合が確認できるとアド先生が全員に「青春18切符」を渡した。
「18切符」を渡されるといさんでホームに向かった。よく聞くことだが、「18切符」には年齢制限があるみたいなことを思っている人が多いらしいがそんなことはない。それを補足しよう。ここから7時06分発。普通岐阜行きに乗車する。ホームに上った時間は6時55分。まだその列車は4番線にいない。
「永島。」
ホームに上がると佐久間が聞いてきた。
「何。」
何のことだろうと思った。
「列車まだ。」
「・・・。」
何を言うのかと思えば・・・。
「まだに決まってるだろ。乗る電車が出るの7時06分だろ。まだ11分あるし。」
醒ヶ井のツッコミが入った。
7時05分。4番線に列車が入線してきた。東京方面に顔を向けていると、黄色っぽいヘッドライトの車両がこっちに入ってきた。
「311系だ。」
入って来る列車を知っている僕はただつぶやいたつもりだった。だが、そうとう声が大きかったらしい。皆からはどうしたというような顔で見られてしまったが、そんなことは関係ない。
「へぇ。311系っていうんだ。211系かと思ったよ。」
これには驚いた。撮り鉄の木ノ本なら分かっていると思ったからだ。
「えっ。木ノ本しらないんだ。」
「私、こういう奴あんまり知らないんだ。313系は分かるんだけどね。」
と言っていた。
311系が4番線にブレーキ音を立てて止まった。停まって1秒くらい経つとドアが開く。その開いたドアから降車する客を待って車内に乗り込んだ。車内は半分くらいの混みだった。311系の転換クロスシートはほぼすべて埋まっており、僕達は仕方がなく、ドア付近に固まった。
「4番線ドアが閉まります。ご注意ください。」
「東海道線、下り、普通列車岐阜行きです。ドアが閉まります。ご注意ください。」
ピンポーン、ピンポーン。発車前のやり取りが聞こえてくる。ドアが閉まると311系はカックンと揺れて浜松駅を発車した。ここから終点博多までは12時間の工程である。
7時38分。まずは豊橋までコマを進めてきた。ここ豊橋では特別快速米原行きに乗り換える。そのために移動をしなければならない。そのためにドアの前にスタンバイした。
7時39分。豊橋に到着。311系が入線したホームは8番線。ここからダッシュで隣の5番線に行く。
ピンポーン、ピンポーン。ドアが開いた。ドアが開き切るのを見計らって飛び出した。
8番線を見ると始まったばかりのマラソンのように人でいっぱいだった。
(サヤ先輩達は。)
考えながら足を動かす。何秒たっただろうか。ハクタカ先輩の姿をとらえた。その後ろ姿をおって階段を駆け上がる。階段も人でいっぱいだ。走って上るのは少しきついくらいはいるだろうか。ハクタカ先輩の姿を見失わないように走ってその後を追った。
階段を上るとハクタカ先輩の姿が左に消えた。特別快速の発車するホームは5番線。5番線は7番線の北側にある。僕も階段を上りきると左にかじをきった。そのころにはハクタカ先輩は5・6番線に通じる階段を降りようとしていた。そこの階段へ僕も急ぐ。こっちの階段はほんの少し空いていた。人の間をかいくぐり、階段を駆け足で降りた。階段の中腹。踊り場まで来ると5番線に停まっている特別快速が姿を現した。その時、ハクタカ先輩がそこに吸い込まれるように入っていった。
5番線に停まっていたのは313系という通勤電車だった。この車両はJR東海の通勤電車でその顔と言っても過言でないほどの車両が在籍している。今のった車両は5000番台という区分で、車両と車両の間に車体間ダンパを装備している。そうそう、さっき降りた311系はこの313系が登場する前の特別快速に充当されていた車両である。そのため、この二つは内装が非常によく似ている。
車内に乗り込むと開いている席を急いで探した。もう40%(パーセント)くらいの席が埋まっている。乗り込んだドアから一番近い席に腰を下ろした。
「永島さん。隣いいですか。」
空河に声をかけられた。ずっと僕の後ろをおっていたのだろう。僕は「窓側はいい」と言って空河に譲った。
7時49分。313系のドアが閉まり、軽快な音とともに動き出した。列車は車体をよじって上り線から下り線へと入って行った。この時に途中停車駅の案内があった。
蒲郡、岡崎、安城と停車していく。安城まで来ると立っている客が僕達の前の視界を遮った。このころになると、何となく席を立ちたい気分になった。
「んっ、ナガシィどうした。」
「いや、何となくたっていたくなっただけで・・・。」
「座っとけって。こっから長いぞ。」
サヤ先輩の言うとおりだ。まだ1時間くらいしかたっていない。
「いえ、サヤ先輩達も座っといた方がいいですよ。」
「いいよ。後輩に言われて座る先輩がどこに・・・いた。」
サヤ先輩の顔が引きつっていた。見てみるといつの間にか善知鳥先輩が僕の座っていたところに座っていた。
「いいじゃん。立ってるの疲れたんだから。」
「いや、そうじゃないだろ。」
「いえ、いいです。僕は次ので座りますから。」
「永島、そう思っとかないほうがいいぞ。」
僕から見ると左側にいたナヨロン先輩がそう忠告した。
「えっ、なんで。」
「関西の新快速って結構需要あるみたいだから、座れないかもよ。」
「223系なら座れなくてもいいって。」
(何、すべては車両。)
「ふうん。永島って223系好きなんだな。」
「はい。僕が一番好きな車両ですから。」
「じゃあ、一つ聞いていいか。」
「なんですか。」
「223系なら「関空快速」か「新快速」か。どっちがいい。」
「断然223系1000番台です。」
その後ナヨロン先輩とはこんな話になった。
8時37分。名古屋に到着する。名古屋では客の入れ替えがあり、僕は自分の席に戻った。善知鳥先輩はというと開いた他の席に移っていった。
木曽川あたりに差し掛かったころだっただろうか。隣をグレーとオレンジのラインが目立つ車両が隣を通った。
(「しなの」かなぁ。でも、なんでここに・・・。)
頭の中に考えを巡らせていた。
9時09分。大垣に到着。ここで後ろにくっついていた313系を切り離して、さらにその先を目指した。この列車が終点米原に到着したのは9時48分だった。そして、この先にコマを進めるためには2分後に発車する新快足姫路行きに乗車しなければならなかった。
今回は結構説明文が多くなってすみません。後これまでより作風が固いと思われますが、読んでくれる人には感謝。