20列車 文化祭前日
6月12日。いつものように朝学校に登校する。
「はぁ。永島いいよなぁ。部活でクラス展の準備逃げられるんだから。」
「何。逃げたかったらお前も鉄研とかに入ればよかったのに。」
「いや。俺はもう部活には入る気なかったからな。こういう時に限ってそういうのが裏目に出るとは。」
「そういえば、俺たちのクラスってどんなクラス展やるの。」
「お前ホームルームの時に言ってたやつすぐに忘れてんだな。そこまではっきりした頭だったら俺も持ちたいよ。・・・お菓子みたいなの作って売るんだって。」
「へぇ。」
「でも、永島の場合は来れないの前に来たくないだよなぁ。クラス展より部展のほうが楽しいだろうから。」
「まぁ、確かに。」
「ならこっちから見に行くか。その時は差し入れ持ってってやるよ。」
「気持ちだけにしてくれ。」
「分かった、分かった。気持ちだけってことで投票は鉄研部に入れとくからな。」
「えっ、何。投票って。」
「本当にはっきりした頭だな。何も聞いてない。ある意味感心するよ。」
「いやあ、それほどでも。」
「ほめてないってこと分かってるよねぇ・・・。」
「そりゃ当然。」
8時30分。普段通り点呼。9時00分。文化祭準備開始。部活としての集合は10時00分。それまでの間クラス展の準備をほんの少しだけ手伝う。9時55分。南棟3階の部屋から目の前の階段を使ってホールに赴く。ホールにはもうすでに部隊は終結済み。僕達が最後に集まった。
昨日とおとといで模型を走らせる周回は完成している。今日やるのはこれから設置するプラレールの展示と周回に電気を流すための配線作業をすることだ。
「おーい1年生。むこうの武道場とかっていうところからベニヤ板持ってきて。」
サヤ先輩の命令でまずはベニヤ板。それを持ってくると次は学習机を等間隔で並べその上にベニヤ板をかぶせ、シートをさらにかぶせる。だが、このシートをかぶせる作業が以外と疲れる。
「ねぇ、善知鳥先輩。ここ机ありますか。」
今机の上に乗っているが、足を降ろすところを間違えば机に頭を打つ。
「大丈夫。そこにはあるよ。」
善知鳥先輩が机の下に入って上にいる僕に安全だと信号を送る。それが終わったところでゆっくり足を降ろす。下の地盤がかたい。机の上だ。端まで来て、飛び降りる。もちろん端まで机があるわけではないので、ここも踏み外したら机に頭を打つ。とりあえず何の事故もなく完了。
次はOBが持っているというプラレールを設計図通りに敷設すること。設計図にはレールに当たるところが線で示されており分かりやすい。そしてその線に少し交差するように書かれているのは継ぎ目のことだという。
「とりあえずやるかぁ。青木さんもここもうちょっと詳しく書いてくれれば分かりやすいんだけどなぁ。」
「まあそれでもやるしかないだろ。今日は青木先輩手伝いに来れないんだから。」
「んじゃあ。ナガシィ。このレール類とにかくつなげまくって。直線レール5本。」
プラレールは鉄道ファンたる者全員が通る道。いつもの手つきでレールを繋げていく。一方その時サヤ先輩達はプラレールをガンガン繋げていく。だんだん形ができてきて真ん中あたりに橋脚を10個くらい積み上げたタワーが完成した。
「おーい、サヤ。そっちから何人か引き抜いていい。」
「ああ、いいよ。」
「永島、箕島。ちょっとこっち来て。」
ナヨロン先輩に呼ばれて凹の周回にやってくる。
「これから配線ってやるんだけどさぁ。それやってくれない。そんでやって覚えろ。以上。」
「あの。名寄先輩。それじゃよく解んないですよ。」
「さすがにいい加減すぎたかな。」
と言って床に置いてある黒い箱を手に取って僕達に見せた。そこには青と白のコードの先端に端子が1個ずつついているコードとうける端子が3つついているコードの2種類が入っている。またそのコードの中には赤と黒だったり茶色と白だったりと色にバリエーションがあった。
「これをフィーダーってところにつないで、コントローラーのあるところまでつなげる。永島だったら分かるよなぁ。」
「ああ、まあ。」
「それで繋げる時にやっちゃいけないのは内回りと外回りをごっちゃに結線すること。そうしたらどっちかが逆走することになるからな。そこだけ気をつけてやれ。」
これだけ指示された。ようはつなげばいいのだ。
フィーダーというのはだいたいどういう恰好をしているかというと3パターンあると言っていい。まず一つ目は線路にコードの端をくっつけているタイプ。二つ目は線路に電気を流せるようになっている専用の線路にくっつけるタイプ。あともう一つは線路の特定の場所に差し込んでくださいというタイプ。学校にあるのは2番目にいったタイプ。このタイプのフィーダーはこの周回の中に4ヵ所。コントローラーの位置からは柱の陰になってしまう部分。その次は一つ目のフィーダーのあるコーナーの反対側のコーナー。三つ目は二つ目のフィーダーがある一の反対側のコーナー。ここがコントローラーから一番近い位置にある。そして四つ目のフィーダーは三つ目のフィーダーの反対側のコーナーに設置してある。ここからさっきナヨロン先輩が見せてくれたコードをバンバンつないでコントローラーに結線した。
結線が終了したら次は電気が流れるかどうかのテスト。前にナヨロン先輩と選んだ中からEF210を取り出して外回りの線路に乗せる。アド先生曰く機関車とマイクロエース製の車両が滞りなく走れば問題ないそうだ。
コントローラーの電源投入。ディレクションスイッチを前進にいれてコントローラーのつまみをまわした。だが、EF210はピクリとも動かない。ライトもついていない。
「どうしたんだよ。こいつ。」
「あっ。永島。そいつはゴミだ。モーターがいかれてるから。EF510(レトサン)にして。」
「あっ、はい。」
EF210を線路から外し、ナヨロン先輩が持ってきたEF510を線路に乗せる。気を取りなおして、再び電源投入。するとEF510は少しピクッと後ろに動いた。このままでは逆走になる。ディレクションを前進から後退にしてまたつまみをまわす。今度はちょっと前に進んですぐに滑り出した。コントローラーから離れて少しの間EF510の走っている姿に見入る。家でいつも見ている光景と分かっていても飽きない。
とりあえず何の滞りもなく一周。次はマイクロエースの箱を探してその車両を走らせる。とりあえず手に取ったのは783系という九州の特急車両。それを外回りに並べて同じ動作を行った。すると少しばかり突っかかってしまうところがある。そこを木の板で修復しながら、783系を何周かさせる。その間に問題も解消。次は貨物列車などの編成もの。これが途中で連結を解除しなければ完了。なのだが、毎回どこかで貨物列車は開放すると言ったので、これに完璧を求めることはできないようだ。
とりあえず貨物列車も何の滞りもなく1周。これで電気系統は完了だ。
この時にはプラレールのほうも50%がたで完了している。ふと時計を見ると12時13分となっていた。昼ごはんの時間だ。昼ご飯には持ってきた弁当。食べるのが面倒くさいと思いながら、流しこんで13時05分作業再開。午後はプラレールの準備。遊びながらやっていたため15時ちょっと前に作業を完了。次は、体験運転のコーナーの設置である。
「諸君集まれ。」
善知鳥先輩が全員を衣装ケースが積まれている前あたりに集めた。
「これから体験運転のやつを組み立てるんだけど、時間ないから全員でやろう。」
「だから、あれさっさと片付けとけって言ったのに。」
「さっさとっていう前に青木さんいなかったからどう組み立てていいかわかんなかったじゃん。」
「てめぇら、時間がないならはじめようぜ。そんなところで時間くってるなよ。」
アヤケン先輩が話に歯止めをかけて、全員に複線の高架レールを手渡した。
「まずはそのレールつなげ。」
全員に行きわったたのを確認して指示を出した。
「あっ、待った。まだダメじゃん。おい、善知鳥。白い子ない。白い子。」
「えっ、白い子。」
「ほら、アヤケン。白い子。」
「サンキュー。」
ナヨロン先輩から渡された箱の中には横2cmくらいしかない直方体の白い物体がたくさん入っていた。アヤケン先輩はその1個を取り出して、
「まず、この白い子を高架レールの下の子の部分に取り付ける。2個くらい取り付けて、取り付け終わったらほかの高架レールをつなげる。これやって。後、下についてる突起下になるように取り付けなきゃダメだぞ。でないと、あーってなるから。」
「あーってどうなるんですか。」
「深入りしなくていいから、まずはやれ。」
さっき言われた動作を行って高架の直線レールをつなげていく。それを10何人でやると20本くらいの束が一気にできる。
「全員で直線レール量産してんじゃねぇよ。こんなにいらないって。」
そのことに気付いたアヤケン先輩が量産を止める。
「カーブレールだれかやれよ。カーブしない体験運転所作ってどうすんだよ。運転面倒になるだけじゃないか。」
「あたしそんなこと知りませーん。」
「知っとけ。」
「アヤケン先輩これどうするんですか。」
「多分6ペアぐらい、12本は使うかなぁ。それの束ねたやつをもう一度束ねて、4本にしたやつを俺にパスして。そのあとはどうにでもなるから。おい、善知鳥。橋脚のやつどこにあるかわかる。」
「橋脚ってあのラーメンみたいなやつか。」
「そう。食えるラーメンのやつ。それどこ。」
「お前の足元にあるだろが。」
「あっ、あった。ごめん。」
「アヤケン先輩。言ったとおりにやりましたよ。」
「あっ、サンキュー。うわっ、バカたれ。マガンなボケ。」
それを受け取ったら、新幹線のよく見る橋脚を3つ取り出し、線路の継ぎ目に取り付けてる。「カチャ」という音を立てて、何かがはまる。1個取り付ける作業が完了したみたいで、アヤケン先輩がその位置から手を放した。すると橋脚は継ぎ目のところに礼儀正しくはまっている。さっきの音はこれがはまる音だったらしい。他の2か所も同じ作業で、はめ終わると、体験運転コーナーになるところの一番奥に置いた。
僕たちもただ見ているわけではない。僕は箕島が4本にした高架レールを受け取って同じように橋脚を取り付ける作業を行った。
「アヤケン先輩。他のもやっておきますか。」
「いや、これはもういいよ。ていうか、そっちに駅作ってくんない。」
「何駅がいい。綾瀬駅とかでいい。」
「何でもいいけど、綾瀬駅はやめて。出来ればサヤ駅とかのほうがいいんじゃない。」
「それ関係ないだろ。はぁ。木ノ本。多分その箱の中に駅舎の建物があると思うから、それとって。」
サヤ先輩が指差した箱の中を探してみる。すると汚れた白い駅が出てきた。それの看板には「新大阪」と書かれている。どこをモチーフにしているかはすぐ分かるが、本物とは似ても似つかない。
「ありました。」
「サンキュー。後、そん中に白いプレートみたいなのがいっぱいあると思うからそれもとって。それに空いてる溝の部分にさっきの白い子を逆向きで入れて、ほかのプレートとドッキングさせる。それやって。」
サヤ先輩に促されて作業を開始。プレート同士をさっきのレールと同じ要領で取り付け、ほかのプレートを取り付けていく。それが4枚くらいになったところで善知鳥先輩に手渡し、そのプレートをさっき掘り出してきた駅舎の上に設置した。さらにその上にレールとホームを設置。1面2線の島式ホームが現れた。
「よし、こっちは終了・・・。」
すかさずナヨロン先輩がツッコんだ。
「なわけないだろ。駅舎を境にして両方に垂れ下がってる高架駅がどこにあるって言うんだよ。」
「狭い日本でも、そういうところくらいあるよ。」
「あるかもしれないけど、これはないだろ。駅舎過ぎたらすぐに地面まで下がるのかよ。実物にしても40メートルくらいしかないぞ。」
「なぁ、善知鳥。ボケるのもいい加減にしようぜ。こんな駅ないことには変わりないんだからさぁ。」
この駅舎から急速落下するプレートの下に橋脚を設置して、垂れ下がりをなくす。これで、さっきからアヤケン先輩がつなげていた高架橋と連結。1周する体験運転コーナーが完成。すぐに配線がなされ、カーブの下にあるフィーダー専用取付口に高架線用のフィーダーを取り付け、コントローラーと結線。E1系新幹線「MAX」と800系新幹線「つばめ」をそれぞれ3両ずつおいて、電気が通ることを確認。両方ともスムーズに走ったため走行テストも完了した。そして、なんとか前夜祭に間に合わせた。
話を作っていくとだんだんキャラクターに個性が・・・。
自分にはもうちょっと文才と考える能力が必要だと感じます。
なお次の話でも文化祭前のことなので・・・。本当に展開が遅くてすみません。この状態だと8月のイベントまで行くのにいったい何日かかるんだか・・・。