2列車 見に行きます 文化祭
6月14日。岸川高校の文化祭に向かった。岸川高校は遠州鉄道の助信から西へ歩いて25分ほど。岸川の正門についた時刻は9時03分だった。もうすでに受け付けは始まっている。受付をスルーしてからはすぐに鉄道研究部が展示を行っているというホールに向かった。
ホールは人でたくさんだ。その人が集中しているところには建物が建っているとても小さい風景が見える。家の離れでよく見なれたレイアウトだ。
「家のより小さいな。」
「ナガシィ家のは大きすぎるだけじゃないの。」
「いや、そうかもしれないけど・・・。」
「ほら、なんか走って・・・。」
汗が出てきそうだった。そう言う頃には他の子供に混じってかじりついてそれを見ているからだ。でもいつものこと。萌にとっては普通のことと受け止めた。永島を追ってモジュールところにした。
「313系だ。これ東海とかで走ってる車両だぜ。」
「これだって毎日走らせてるじゃん。新快速だか、普通で。知ってるよ。」
「ああ、そうだった、そうだった。」
今度は313系の走っていった方向からまた列車がやってくる。前面が白くオレンジと緑のラインが入っている。湘南色という塗装だが、その車体にはステンレスボディーの部分が多い。211系という車両だ。
(211系でシングルアーム。こんなの見たことないけど・・・。)
カーブを曲がりきってきた6両編成の車両の後ろにはさっき走っていった313系がくっついている。こんな編成あるのだろうか。僕は初めて見る編成に少し違和感がある。だが、走っている車両にそんなことは関係ない。他の子供がやっているように列車の進行方向に先回りする。ここで見ていたいなぁというところに来たら、しゃがんで電車が走っている高さに目線を合わせる。こうやってみると模型でも本物の様に迫力を感じるのだ。その時萌は僕の背中側にある方に目線を向けていたらしい。先にあっちの列車が来たみたいで肩をつついた。
「「サンダーバード」だよ。」
目線をそっちに替えて、「サンダーバード」を見る。だが、その列車は「サンダーバード」と違って顔が赤い。
「「サンダーバード」じゃなくて「スノーラビット」だよ。「はくたか」、「はくたか」。」
「えっ「はくたか」ってこんなに顔真っ赤の車両もあるの。」
「ああ。北越急行が持ってる車両は顔真っ赤だよ。」
「へぇ。そうなんだ。」
理解しているのかどうかは知らないけど・・・。目線を戻して、さっきの列車が通過するのを待った。通過すると走り去った方向に顔の向きを変えて次のカーブを曲がって姿が見えなくなるまで見送る。見送り終わるとまたつつかれた。
「「雷鳥」。「しらさぎ」。どっち。」
むこうから走ってくるのは485系という特急電車。この手の車両には先頭にこの車両は「特急○○」と掲げている。そこを見ればいい。けど、今走ってくる車両にはそんなのどこにもない。おまけに流線型の顔をしている。
「お前、今分かってて聞いただろ。」
「えっ。・・・はぁ。「雷鳥」でしょ。パノラマだったから分かりやすかったよ。」
「だったら聞くなよ。」
「いいじゃん別に。ナガシィに比べたら鉄道知識ないんだから。」
「いや、そうだけどさぁ・・・。」
すると今度は、
「おい、ハクタカ。「雷鳥」編成違う。4号車と5号車と8号車ドアの向き逆。」
後ろから声を張り上げられる。
「今更いいじゃないですか。そこまで見てる人いませんよ。」
さっきの人にハクタカと呼ばれた人が答える。すると、さっきの人とは別の人が「雷鳥」に手を出した。走っていた車両を手で捕まえ、モーターがはいっていると思われる車両を抜き取った。それを抜き取るとそれまで走っていた「雷鳥」は動かなくなり、その人はさっき後ろの人が指摘していた車両の向きを正常な向きに直していった。そして一番最後にモーター車を線路上に戻して、分離した車両を連結しなおしていた。
「膳所さん。そこまでしなくても・・・。」
「ハクタカの場合はあそこまでしてやんないとダメ。名寄もこれからそうすればいいじゃん。」
さっき「雷鳥」を直した人は膳所、編成が違うと指摘した人は名寄というらしい。
「はぁ・・・。」
「名寄。次「立山」行くから、内回りにこれ並べて。」
「うわ。来たよ「立山」。」
今まで313系が走っていた方は「立山」という列車に置き換えるらしい。この名前も初めて聞く列車だ。だが、並べているところをよく見ていると見たことのある車両だった。家の車両庫にある「急行ゆのくに」というのと同じ車両だ。
「ちゃんと並べろよな。」
「まあ、ハクタカとは違って編成間違うことないだろ。」
「いや、名寄の場合は間違い方がひどい。上野でもよく解るぜ。」
「あっ。外回りあっち向きなのをこっち向きで入れちゃった。」
「ほらな。」
「ハハ。そう言うことか。」
ちょっとの間中のやり取りを聞いているといろんなことが分かる。名寄という人は鉄道のことはよく解っているがケアレスミスが多い。「立山」を渡した上野という人は鉄道にはそんなに詳しくないらしい。膳所という人はパーフェクト・・・。そんな具合だろう。
また今度は、
「ナヨロン、そっちに313系の「ムーンライトながら」ある。」
女子の声だ。この部活には女子もいるみたいだが、言ってることは全然違う。313系はいくら使われても特別快速まで。「ムーンライトながら」に充当されるわけがない。そして、今言いたかった車両は・・・。
「「ムーンライトながら」って373系で運転してるよねぇ。」
当の本人も萌にツッコマれるとは思っていないだろう。
「そんなのはないぜ。」
「あれないっけ。」
すると後ろからまた別な人が出てきて、
「313系の「ムーンライト」・・・じゃなかった。えーと313系の・・・あーもう。373系の「ムーンライトながら」。」
ようやっとその答えにたどり着いた。
「違うって分かってるのに2回も間違うかな。」
「さぁな。あの二人は天然ってところかなぁ。まああれでマニアだったらただのバカだけど。」
「・・・。ナガシィ。他のところも見に行かない。なんか面白いのやってると思うし・・・。」
「ヤダ。終わるまでここにいる。」
(やっぱり・・・。)
しばらくの間同じところにしゃがんでみていたため足が痛くなってきた。座ろうとしても電車のほうがさせてくれない。今名寄と上野という人たちのほうは489系の「特急あさま」と「特急白山」がEF63という機関車にプッシュプルしてもらって走っている。この情景はかの有名な碓氷峠でしか見れない光景だった。一方ハクタカという人がいる方は883系の「特急ソニック」と787系の「特急つばめ」が走っているが、その「ソニック」のほうだけ「クソニック」と呼ばれているのはなんでだろうか。
「さっきから「クソニック」ってよく言ってるけど「ソニック」ってそんなにクソなのかなぁ。」
言い終わると叫び声が聞こえる。
「ああ。この「クソニック」また架線柱に喧嘩売りやがって。」
「本当にクソだな。つうか誰だよ。内回りに「クソニック」出したの。そいつ処刑だ。」
「あのう僕ですけど、何かいけないんですか。」
「犯人ハクタカだってさ。ダメに決まってるだろ。内回りに置いたら「クソニック」が架線柱に喧嘩売りにいって自分から脱線するから。「あずにゃん」もそう。」
「じゃあ、なんで「スーパーおおぞら」は内回りに出しても何も問題ないんですか。」
「あれはKATOの振り子機構が少ししか働かないからいいんだって。だけど「あずにゃん」と「クソニック」と「しなっちの副作用」はマジで副作用するからダメ。」
「「あずにゃん」と「クソニック」は何言いたいか分かりますけど、最後の「しなっちの副作用」ってなんですか。」
「えっ、「しなっちの副作用」は「しなっちの副作用」に決まってんじゃないか。」
「全然答えになってません。つうか善知鳥先輩それ遠回しに解らないって言ってますよね。」
こういうやり取りが聞こえてきた。
「あの人が言ってる「しなっちの副作用」って「しなの」のことだよねぇ。」
「ああ、多分な。」
なんか分かってはいけない気がするのはなんでだろう。
ずっとホールにいて2時間。もうほとんど終わってしまった。昼でも食べに行こうかと誘われて、他の展示に行ってみる。そこで見たのはポケットモンスターに変装した人や、気ぐるみを着ている人。今の高校生というのはこういう感じなのだろうか。そんなことを思いながら、あるクラスのクラス展に入って焼きそばを買ってまたホールに戻った。
戻ってみると名寄・上野周回のほうには貨物列車が走っていた。その先頭に立つのはEF210。桃太郎。後ろに続いているコンテナ貨車は17両。貨物列車としてはふつうであるが、家で走らせている26両の高速貨物列車と比べてしまえば少し短い。その隣に走っているにはEF66が牽引する寝台特急。ヘッドマークは「あさかぜ」となっていた。編成は7両。正規の14両の半分であるが、ツッコマないことにしておこう。一方のハクタカチームはEF510が牽引する「寝台特急カシオペア」と「寝台特急北斗星」が我が物顔で走っている。どちらかといえばこちらのほうが客の目を引いている。
「あーっ。ハクタカっ。「カシオペア」止めてっ。」
叫び声がした。その叫び声はさっきギャグを言っていた人だ。止めてと言った「カシオペア」を見てみると、機関車の動輪が線路から外れており、その車輪の下に何かを巻き込んでいる。
「止めました。」
「ちょっとサヤ。「北斗星」も止めてっ。ぶつかるっ。」
と言った時にはもう遅かった。「北斗星」は「カシオペア」が待ちこんだ謎の物体Aに突っ込んで乗り上げる形で脱線した。そのおかげで「北斗星」を牽引していたEF510は少しばかり態勢を崩した。次の瞬間。EF510は観客側にグラっと倒れて落下していった。
すかさず手が出た。落ちていくEF510をダイレクトキャッチ。床に落ちる手前で受け止めた。その頃には部員の人が脱線した「カシオペア」と「北斗星」の復旧に駆けつけており「カシオペア」を復旧させていた。それに混じってEF510を「北斗星」が走っていた外回りの線路に乗せて、
「あの。お手を触れないようにお願い・・・。」
そう聞こえた時には六つある車輪を次々と乗せていった。
(なんだ。こいつのなれたような手つきは。家で模型やってるとしか思えない・・・。これは将来期待できるかも・・・。)
「触れちゃいけないのは分かってますけど、EF510(こいつ)を助けたついでです。」
全ての車輪を乗せ終わってから口を聞いた。その現場には少しいづらくなったため、萌を促して場所を移動した。
「毎日やってるからって。あれは将来来るって勘違いされたんじゃない。」
あきれられた。でも、その顔には決めつけているというのも垣間見た。
「いいじゃねぇかよ。やっちゃったもんはやっちゃったんだから。それよりもここで「北斗星」が来るの見てよう。」
永島に続いてしゃがもうとすると、対角線のコーナーで同じようにしている人を見た。明らかに中学生。そういう人だった。
(同じような人もいるんだなぁ。ナガシィと同類・・・。)
「北斗星」を見て目を輝かせている永島を見てふと笑いがこぼれた。
「どうした。何か笑えることでもあったか。」
「いや。なんでもない。」
「何でもないわけないだろ。笑えることが何もないのに笑うっていうのは変人の証。」
「変人とも限らないんじゃないか。思い出し笑いっていうのがあるんだから。」
「・・・。」
「ほら。そっち向いてなくていいのか。「北斗星」が来たぞ。」
萌に言われて振り向いてみると「北斗星」はすでに僕の前ではなくカーブを曲がっていってしまっていた。
「あっ、この野郎。」
「ハハハ。引っかかった。」
「・・・。」
「抑えろって。家でいっぱい見れるだろ。」
「見れるけどさぁ。EF510の北斗星色での「北斗星」はここでしか見れない気がして。」
「なんで・・・。あれ、ナガシィ家の「北斗星」って私のあげたカシオペア色のほうだっけ。」
「そうですよ。萌からもらったカシオペア色ですよ。」
「あれ、そうだったっけ。「北斗星」のJR北海道仕様のやつはあげたの覚えてるんだけど、他の何かとごっちゃになってわかんない。」
「確か。お前からもらったやつは「北斗星1号・2号」のセットと「北陸」の客車セットと「能登」の9両セットと「EF510のカシオペア色」だった。」
「あれ・・・。なんかナガシィにワムの34両セットあげた記憶があるのは・・・。」
「それ当てたのは駿兄ちゃん。駿兄ちゃんがそれもってきた時に見せてって最初に言ったのが萌だった。それだけ。」
15時近くになると他の客をひいてきて、だんだんいづらくなってくる。ちょっと前にホールを出て、家への帰路についた。
文化祭が終わるとすぐに片づけに入る。今まで大きなモジュールとプラレールで埋め尽くしていたホールは何もない状態に早変わりしていく。
「今年は優秀賞かぁ。去年グランプリだったけどおしかってね。」
「まったくだ。生物部死ねばいいと思う。」
「おいおい。過ぎたこと悔やんでもしょうがないだろ。それより片付け手伝え。」
「ねえ膳所さん。生物部に聞こえるように死ねって叫んでいいですか。」
「やめろ。それやる前に片付けろよ。」
「じゃあ片付け終わったら叫んでいいんですね。」
「いや、そうじゃなくて。」
「おい、善知鳥。話してばっかで手が止まってるぞ。」
「ごめんねアヤケン。気をつけるよ。」
ふつうの学習机を「はーっ」という声とともに持ち上げる。
「でも、今日絶対岸川くるっていう人見つけたよ。」
「誰だよ。」
「あの「北斗星」が脱線したときに、EF210(モモチャン)を危機から救った人。」
「えっ。善知鳥の言ってた従弟じゃないのかよ。」
「だって海斗はもう大阪で行く高校も決めたって言ってたし。それに今日はちょっと見に来ただけだから。」
「にしては最初から最後までいたよな。あいつと同じで。」
「その人がここに来るっていうのか。でもそれは併願じゃないか、併願校落ちたらの話だろ。」
「そうだけどさぁ・・・。なんか単願できそうな気がするんだよねぇ。」
「こらッ。机持ったままそこで話してたら同じだろが。」
「あっ。すみません。」
その頃、
「ナガシィ。今日楽しかったね。」
「ああ。・・・萌。俺、行く高校あすこに決めた。」
「他の高校とか見てから決めた方がいいんじゃない。」
「いや、俺にはあすこしかない。それに・・・あすこだったら楽しめそうだ。」
7月。
「文化祭を見に行った後はテストかぁ。」
萌は小さくため息をついた。
「ナガシィはいいよねぇ。勉強しなくていいんだからさぁ。」
「さすがにそれは無理。1時間くらいは勉強しないと。」
「それでもいいじゃん。塾行き始めたら定期テストふつうに200点いくようになったし。何か覚える秘訣とかあるの。」
「秘訣なんてないよ。それに萌がこれやったら死ぬと思う。」
僕がやっている勉強法とはテスト1時間ぐらい前になってパニクッテいる状態でノートもしくは教科書に目を通すこと。ここではそれだけやって数学の問題集などはあらかじめやっておき、ここで目を通す。といった具合。もちろんこれができるのは1時間目のテストだけで2時間目、3時間目のテストは10分間の休み時間だけでこの作業をする。
「そりゃ死ぬと思うよ。ナガシィのやり方で覚えれる人のほうがすごいと思うから。」
「人をエスパーみたいに言うな。」
「永島。今度のテスト勝負しようぜ。」
そう話しているときに話しかけてきたのは友達の宿毛佑真だった。彼とは中学校からの中で、定期テストでは毎回勝負している。勝敗は五分五分。塾に行く前は負け続けていたが、塾に行き始めてからは勝ち続けている。
「宿毛も懲りないよねぇ。勝てっこないよ。」
「いいだろ。それに勝負する前から負けるって思うのは嫌だ。今回は俺も自信あるんだ。合計点勝負しようぜ。」
「ああ、いいよ。」
「ねぇ、宿毛。宿毛ってテストの時どうやって覚えてる。」
「えっ。俺の場合は、とにかく実践かなぁ。問題集かなんか買って、まずその問題集にやらずにノートにやる。やり終わったら採点して、次に問題集にやって、また採点。そんな感じかなぁ。」
「その方法でナガシィに負けてるってどうよ。」
「まぁ、少し腹立つけどな。でも、結果がそうだったんなら、もっと頑張ればいいだけの話。」
「もっと頑張っても勝ったことないじゃん。」
「あのなぁ。もっと長い目で見ろって。永島の場合はすぐに忘れる。短期記憶に頼ってテスト乗り切ってるんだから。」
「それに、学調とかじゃ、あれ完全に負けてるから。国語19点とか取ったことあるし。」
「それ1年の話だろ。2年生の時は26点取れてたじゃん。」
「上がったには上がったけど、国語が弱点ってことには変わりないじゃん。」
「お前はもっと本とか読もうぜ。そうすれば読解力上がるから。」
「なんか今更って感じするんだよなぁ。俺の場合本はアニメにして読んでるからなぁ。」
「・・・。ナガシィの場合本を読むと想像力が発達するから。別に悪いやり方じゃないんだけどね。」
「そうだったな。永島サスペンス系以外は速く読めないもんな。」
「ふつうおかしいよねぇ。」
「おかしくて悪かったな。」
「まあまあ。じゃあ、永島。テストの時待ってるぜ。」
宿毛はそう言い残して、自分の席に行った。
「ナガシィ。今からもテスト期間も勉強せずに離れにコンツメでしょ。私なんかそれ出来ないからいいよなぁ。」
「憧れるんなら、ずっと「デュエモ」とか「バトルアーマー」のゲームやってればいいじゃん。」
「見つかったら没収されるんだけど。」
「・・・。そ、そりゃドンマイ。」
数日後。
「永島。国語何点。」
「37点。」
「ハハ。国語では勝った。38点。」
「勝ったって。まだ国語だけだろ。この後どうなるかだって。勝負は合計点だろ。」
「そうだったな。わりぃ。」
そう言い残すと自分の席に戻っていく。
「ナガシィ37点か。私23点。」
「あと2点で半分じゃん。せめて半分取ろうぜ。」
「まぁ、この調子なら合計110点ぐらいだと思うし、またゲーム解禁かな。」
「よかったな。」
「あっ、そうだ。ナガシィ。電車でGO!の新快速姫路行き。あれどうしても尼崎で数秒遅れちゃって高得点でないんだよねぇ。ナガシィだったらやりこんでると思うから、今度やってくんない。」
「マジかよ。それ俺も苦手なんだ。特に尼崎。あれって塚本で早く通過しそうになってわざと速度落とすと痛い目見るんだよなぁ。停車位置550mまで130km/hでツッコんで一気に減速っていうことやらないと間に合わなくなるからな。」
「でもそれやるとどうしても±(プラマイ)30cmに収められなくならない。」
「いや。そこはうまくやればどうにでもなる。後は時間との闘いってところか。」
「ナガシィ。それで何点いった。私23万。」
「24万。」
「あっ。じゃあナガシィでも私の記録更新無理かぁ。」
「無理だな。」
そのまた数日後。
「えー、これはオープンキャンパスに行った時の感想を書く用紙です。この夏の間に公立を少なくとも2校。私立も1校見て・・・。」
その説明が終わるとあくびと声が出た。
「あーあ。決まってるのに公立も見に行かなきゃなんないのかよ。」
「面倒くさそうだね。」
「できればずっと家にいて模型いじってるほうがずっと楽しいんだけど。」
「アハハ。ナガシィらしいね。」
「そういえば、萌はどこに行くか決まった。」
「えっ・・・。公立はいける学校だったらなんでもいいんだけど、私立なら宗谷にでもしようかなぁって・・・。」
(何言ってんだよ。私。)
「へぇ。萌らしいな。夢に近づくためなら宗谷に行くのが一番か。」
(ダメだ。私も岸川行きたいなんて到底言える状態じゃない。)
「うん・・・。」
「自信持てって。実をいうと俺のほうが受かるかなぁって思ってる。」
「それ絶対無駄。ナガシィ内申点高いに決まってるじゃん。」
「それでも心配になるときない。」
「そりゃ少しはあるけど、ナガシィは大丈夫だって。ナガシィの進路はみんなが意外に思うほどレベル低い進路なんだから。」
「・・・。」
「そうでしょ。」
「それもそうか。変な心配かもな。」
笑っている永島の顔がなぜか遠くの人のように思えた。
この回からの登場人物
宿毛佑真 誕生日 1993年4月7日 血液型 B型 身長 164cm
これにはタイトルの前に○列車と冠していますが、大して意味はありません。ただ、順番が分かりやすければと思ったからつけました。もしほかのシリーズになったら○Mに変わるかもしれません。