19列車 運び屋
6月8日。岸川寮に集合。
「おーい、諸君。運ぶぞー。やれーっ。」
サヤ先輩がみんなに指示を出した。するとまずアヤケン先輩が動いて、
「はーっ。」
相談室4から裏声。するとアヤケン先輩はとても大きく口を開けた木の箱を持って相談室4から出てきた。
「おめぇらもやれー。」
アヤケン先輩に促されて僕達も相談室4に入る。相談室4にはさっきアヤケン先輩が運んで行ったのと同じ箱が5つ。1年生は2人ずつでこの箱を運び出す。だが、必ずと言っていいほどドアから出るときに問題になるのだ。箱を長いほうのままドアを抜けようとすると閊える幅。縦に持つと今度は自分達が閊える。でも何とか抜けることができる。抜け出したら階段を下って寮の玄関まで輸送する。これをこの後何度も繰り返す。2階に戻ると今度は大きな箱の代わりに衣装ケース。部活では白い箱で通じている。これには引き出しの代わりにモジュールが入っている。それを2・3年生は2段。もしくは3段。1年生は1個ずつ運んでいく。
しばらく同じ動作を繰り返していたが、モジュールを乗せる岸川のハイエースの荷台が満タンになったため、まずこれを学校に運んでいくことになった。
「えーと。一人乗ってください。」
先輩達は行きだそうとしない。むこうで何があるか分かっているのだ。
「えーい。全員右手を上げろ。」
何が始まるのか・・・。
「最初はグー、ジャンケン、ポン。」
何が始まるのかと思えば、ジャンケンかよ。
「はい、ハクタカ行ってらっしゃい。」
「マジかよ。」
「じゃあ北斎院君。上にしまってあるモジュール全部出してください。」
「へーい。」
ハイエースが寮から出ていったところで、僕達は2階に戻ってさっきから出している白いケースを下に運んでくる。玄関には白いケースが7段くらいになった山が2個くらい。
「おーい。こんなに積むんじゃないよ。」
アヤケン先輩が注意する。
「アヤケンその持ってる奴また上にのっけようぜ。」
「やるなつうの。」
「おっ、ナガシィいい所に来た。乗せろーっ。」
言われるがままに乗せる。
「バカ。下ろせ。もう乗せるな。」
「アケ先輩注意もいいですけど、運んでくださいね。」
しばらくすると第2陣でハイエースが戻ってくる。またハイエースが満タンになると第3陣に持ち越し、第3陣が来ると運び出したものはすべて乗りきった。荷物が全部乗ると僕達は歩いてホールのところまで向かう。
鉄道研究部が展示を行うホールは僕達1年生が授業を受けている南棟ではなく北棟というところにある。ここの1階なのだ。
ホールの北側には第1陣で連れてかれたハクタカ先輩と第2陣で連れてかれた楠先輩が運びいれたものが詰まっている。僕達は第3陣が到着するまで待っている。待つこと数分。第3陣のハイエースが到着。後ろから荷物を降ろして、いっしょに運んできた車両も運び出した。
今日の部活はここで終了。これからの1週間はずっと文化祭の準備である。
翌日6月9日。今日部活動はない。6月10日。今日から本格始動。
「まずは作ったモジュールを運びこんでください。」
アド先生の指示で部室にある作ったモジュールを運びこむ。運びこんだら8日に運び入れたところにまず入れる。
「ええ、次は・・・。名寄君。1年生ひきつれて特教6の机をここに運んで来てくれる。あと事務室に頼んで昇降口下の長机も出して。」
「分かりました。おーい1年生と中学生行くぞ。」
まずはアド先生に言われた長机から。ナヨロン先輩曰くめんどくさいらしい。その長机を運び出すと佐久間がこういうことをやった。
「永島。バズーカ隊用意。ズドーン。」
「おいおい。」
それをホールに運び込む。軽いには軽いのだが、何回も往復すると手が痛くなる。3往復目で長机がなくなる。次は南棟1階の一番東の部屋特別教室6から机を運び出す。ここには2段重ねで学習机がぎっしりと埋まっている。
「うわぁ。ゴミっていうけにあるなぁ。」
「ゴミかよ。」
「とりあえずこれ運んで。一人2つずつでいけるだろ。・・・よし、行けーっ。」
今度は学習机を抱えて何往復。もう何回行ったり来たりしたかなんて数えてられない。ふつうなら軽い机でもずっしりと重く感じられた。
学習机が必要数に達すると次はモジュールが並ぶように机を並べていく。一つはホールにある長机とさっき運び出した長机で収まる。もう一つは学習机が長机の代わりになる。
「永島。その机こっちに持ってきて。」
「アヤケン先輩。これはどっちに持ってたら。」
「木ノ本。まだモジュールはいい。・・・ああ。あとそのゴミ落としてもいいから。」
「ハクタカ。これ中にいれるから受け取って。」
「んっ。バカ。箱ごと中にいれようとするな。」
「ナヨロン。部誌間に合いそう。」
「サヤのバカ。なんで進めとかないんだよ。」
「おーい、ナガシィ。この・・・アヤケンこれなんだったっけ。」
「えっ。ああ、ゴミ2号だよ。」
「このゴミ2号をむこうのほうに運んどいて。そんでもってサメちゃん。このアヤケンのゴミ3号はあっちに運んどいて。」
「あっ。アド先生。313系の5000番台のギアボックスください。」
「ナヨロン裏切るなー。」
「絢乃。フィーダーこの向きでここにいれといて。」
「はいはい。」
「こっち一般人通行不可ね。」
「なんですか。そのハルヒ的な。」
「あっ、そうだサヤ。今年はみんなでコスプレする。」
「いいよ。コスプレなんかしなくても。まあ帽子だけはかぶりたいけどな。」
「じゃあナヨロンは全身ね。あとは帽子だけでいいか。」
「勝手に決めんなよ。」
「大丈夫。あれ着て似合いそうなのは1年生の中にもいるし。それにナヨロンが着るとなんか渋くなるんだよね。SL好きっていうのがその渋さを後押ししてる感じで。」
「どういうやつじゃ。それ。」
「ねぇちょっと1年生集まって。」
善知鳥先輩に言われて、ひとまずサヤ先輩達のところに集合する。
「ねぇ、みんな乗務員が着てる服、着てみたいって思わない。」
ちょっと考えるところがある。なおこの問いについては醒ヶ井と箕島はヤダ。木ノ本、僕、諫早、空河、朝風は帽子だけならと回答。
「でも、一つだけ問題があるんだよねぇ。今回は帽子だけっていってもこの数ないんだよね。去年作ったから8人分しかなくて。」
「善知鳥もよくやるよなぁ。」
「逆を言うと家庭以外ダメダメだからなんだけどなぁ。」
「それは今関係ないだろ。でも何人でかぶるかなぁ。女子のやつはあたしのアヤノンの分しかないし・・・、男子のやつは6人分しかないもんな。うーん。よし。あたしの独壇場で決めよう。えーとサヤはかぶるでしょ。アヤケンは外回りってことが多いからいいでしょ。ナヨロンは向こうの内勤だからかぶって、ハクタカもかぶる。あとはナガシィかな。でもあと一人余ってるなぁ。・・・じゃあ残りはサメちゃんでいいか。」
「ここまで考える頭があるんだったらもうちょっと進路のこと深く考えろよ。」
「うるさいなぁ。いいだろ。で、あとは女子のほうか。ハルナンがかぶりたいって言ったから・・・。アヤノン別にかぶらなくてもいいよねぇ。」
「はい。」
「うーん・・・。やっぱりかぶせよう。」
「や・・・やめてください。あれかぶってるとなんか冷やかされそうで。」
「よし。かぶせよう。」
「嫌です。」
この時今まで部誌に取りかかっていたサヤ先輩が何かに気付いた。
「お前ら何やってんだよ。ちゃんと仕事しろ。」
「おいおい。それ今気付いたのかよ。」
「サヤ。本当に眼科か精神科医に行ったら。ヤバいよ。」
「眼科か精神科医に行くのはナヨロンだろ。この知識量と今更教師になりたいっていうこの頭どうにかし・・・。」
ポカッ。
「黙ってやれよ。」
「はい。すみません。」
今日はホール入り口手前に凹の集会を完成させるところまで進んだところで解散。この次は次の日にまわる。
6月11日。今日は真ん中に設置する大周会の二つ目。この周回は長方形で組成させる。
「ナガシィ。この「綾瀬車両区」をむこうに運んで。」
ここで呼ばれた「綾瀬車両区」とはモジュールに付けられたタイトルらしい。
「で、ハルナンはこっちの「青木海岸」を運んでって。それで、ミッシィは「青木海岸」の片割れ運んで、サメちゃんはそこの「ピザ」お願い。」
ちなみに「ピザ」とは45cm四方のコーナーのことである。
「あのう、善知鳥先輩。このコーナー・・・。」
「コーナーじゃないって言ったでしょ。「ピザ」よ「ピザ」。どこでもいいから運んどいて。」
本人はどうしてもコーナーのことを「ピザ」と呼びたいらしい。
「それで、・・・ハクタカ。お前の作った「鷹電」のやつってどこにある。」
「それだったらもう使いましたけど。」
「ここに1枚余ってんだけど。」
「善知鳥先輩バカですか。それは「鷹電」じゃなくて「貨物駅」ですよ。目玉あんのか。」
「ナガシィごめんね。ちょっとハクタカ待てー。」
「まったく。子供かよ。永島。この「貨物駅」持ってって。セッティングは俺がやるから、仮置きだけでいいよ。」
とまぁごたごたがありながらも何とか完成。ここで今日の活動も終了。続きは6月12日に持ち越しである。
気づいたら文字数がえらいことに・・・。
このままいったら最終回までに文字数と読了時間が・・・。
自分でもこれはすごいと感心します。
あと展開が遅くてすみません。
それでも読んでくれる人には感謝です。
これからも根性で続けていきたいと思います。