181列車 年越し
冬休み期間中も離れにこもって模型を走らせていたのは当然。これ以外することがないといっても過言ではないからだ。冬になるとこの離れの中もひんやりと冷えている。この冷たい空気を暖めてくれるのがエアコンだけど、冬場にエアコンを使うということがほとんどない。カーテンを開けて中に日光を取り込む。窓が大きいわけではないからそこはよく萌と取り合いをしたものだ。ただ、それに駿兄ちゃんが入って来て、よくその場所を取られたりしていた。しかし、僕たちの方だってそれで終わっていない。駿兄ちゃんの上に乗っかって休んでいたということだってあった。時期は12月31日になった。
「萌。帰らなくていいのか。」
聞いてみた。
「えっ。だって今日はお母さんに一日中ナガシィ家にいるつもりだからって言ってあるんだけど。」
「・・・。お前今日一日中ここにいるつもり。」
「えっ。いいじゃん。大晦日なんだし。」
(いや。そういう問題じゃないけど・・・。)
「ふぅん。じゃあ、夜もごちそうになるつもりなんだな。」
「うん。」
そう言った萌の顔を少しうれしそうだった。中学生の時はこういうことできないからだろうか。小学校の時僕はすぐに寝るように言われていたし、1月1日をある意味寝正月で迎えていた。萌は起きていても僕の家に行くことは当然許されず。中学の時も同じ。そして、高校の時はここに足を運ぶこと自体一度しかなかったからだ。
「初めてだよねぇ。ナガシィと年越しするの。」
「そこまでいるつもり。・・・俺のほうは紅白終ったらお参りに出かけるから、そこまではいれないと思うけど。」
「えっ。喪中じゃないの。」
「家のは・・・よくわからないや。まぁ、行ってもいいってこと。」
(・・・いい加減。まぁ、それがナガシィかぁ。)
「・・・分かった。さすがにお母さんに帰って来いって言われたら帰るよ。」
それからしばらくの間二人で模型をいじっていた。
「駿兄ちゃんって今日も仕事でしょ。休みないって大変だよねぇ。」
「おいおい。もうすぐ俺たちもそうなるんじゃないのか。まぁ、休みがないなんて始めからわかりきってるけど。」
「・・・。」
「昨日駿兄ちゃんここに来たなぁ。「「アケオメ」言えないから、あけてないけど「よろしくお願いします」はいま言っとく」って。」
「おかしくない・・・。」
「おかしいね。」
するとドアが開いた。そこに立っていたのは和田山さんだ。僕はそれで察した。ごはんだ。食卓まで足を運んで、並べられている料理を食べ、また戻ってくる。
「ナガシィ。紅白見ないの。」
離れに歩いている間に萌が話しかけてきた。
「ああ。俺は歌だけの番組のどこが面白いのか分かんない。あれ見てるより、向こういじってたほうが時間の経ち方が速いし。」
「まぁ、それは分からないってわけじゃないけどね。」
(さて、出しっぱなしにしといたのは0系、100系、300系、500系、700系、N700系、200系と200のH編成とE1系とE4系の「MAX」とE2系「はやて」とE3系「こまち」「つばさ」。新幹線はほぼ全部出てるなぁ・・・。在来のほうは永鷹貨物に黒いワム45両とコキ26両(コキ100形)と20両(コキ50000形)とワム34両出してあったなぁ。後は車両基地のほうにJR東の連中がいうじゃうじゃかぁ・・・。)
次に走らせる車両のことを迷った。在来線の車両基地のほうにはJR東日本の車両をたくさん留置した。しかし、必ずしも首都圏で統一しているわけではないから新潟のほうで使われている115系もあるし、青森のほうの「リゾートしらかみ」も出ている。ここは間を取って、「あけぼの」でも出しておくかぁ・・・。
離れに入ると僕はすぐに車両庫に行った。ここに入っている「あけぼの」に使う24系とその牽引。EF64とEF81を持ってくるためだ。タグがついているからどれを持ってくればいいのかはすぐに分かる。それを見て、こっちに持ってきた。
「ねぇ。「あけぼの」510(アオカマ・カシカマ)で牽引しない。」
「えっ。」
「迂回運転やった時にあったんだって。510牽引の迂回「あけぼの」。ねぇ、それやろう。」
「・・・。」
家にある鉄道ファンで見たことがあるけど、あれは本当にシュールだった。EF510は「北斗星」も牽引しているから次位が24系でもおかしくないのは分かるのだが、シュールだった。
「やるのはいいけど、何に牽引させるつもりだよ。」
「えっ。505号機でいいじゃん。あれちょうどヘッドマーク付いてないし。つうか、1日は担当したの505だったわけだし。」
「・・・。」
牽引できないことはない。家にある24系と14系はTOMIX製。それに対応する機関車も同じ会社ではないと連結できないからという理由でTOMIX製にすべて統一してある。だから505号機もTNカプラーにカプラーをつけ変えればいいだけで「あけぼの」牽引に化けることができる。
「うーん。やっぱりやるんだったら別なのにしない。例えばE231系の2階建てが4両とか。」
「何。くそシュールな光景は・・・。ていうかあったの。それ。」
「あったらしいよ。」
僕は僕はこう答えたけど、写真が証明している。鉄道ファンに載っていたのだ。
「なっ。」
「・・・。これはやめとこうよ。だって2階建ての数が・・・足らないことはないのかぁ・・・。でも、やめとこうって。」
「・・・。じゃあ、「あけぼの」をなにもいじらずに走らせるかぁ。」
「ただ、面倒なだけでしょ。」
「よく分かってるじゃん。」
僕はそういうと115系(新新潟色)を置いている線路を開け、「あけぼの」を「オハネフ」から順番に並べ始めた。編成的に言えば青森行きである。順番に12両。これは繁忙期の態勢。その前に「カニ」を置き、EF64を置いた。これで上野駅に進入する形ができた。これができたら、今度はコントローラーのところに戻り、EF64を本線に押し出す作業だ。「あさかぜ」を代表する東京から発車する寝台特急は「オハネフ」から並べた場合「オハネフ」の前に機関車を置く。そして、新永島2番線まで回送。回送したら「オハネフ」との連結を解除。1番線を通って「カニ」の前に行き、連結。そして発車。この作業がこのごろ面倒になっているから、寝台特急は全部推進運転での回送に切り替えている。
身を乗り出して、停車位置を見る。その位置に来たと思ったらブレーキを賭けて、止めた。今回もうまく停止位置に止まらなかった。だが、非常ブレーキは使っていない。ひどいときは非常ブレーキを使って無理やり止めるようにしているからある意味進歩かなぁ。
「2番線に停車中の列車は「寝台特急あけぼの号」青森行きです。」
「ウソです。」
「ウソ言ってどうするんだよ。」
「言ってみたかっただけ。」
しばらくたってから、
「2番乗り場から、「寝台特急、あけぼの号」。青森行きが、発車いたします。ドアが閉まります。ご注意ください。」
「ピィィィィィィィ。」
「プトゥ。コォォォォ。バン。」
「戸閉、点。出発進行。」
そう言ったらブレーキを解除。マスコンを入れて、常点灯を入れる。動いたことを確認したらすぐに常点灯を切る。
「2番線。列車発車しております。」
萌が合わせた。黄色い線の外側に出ようとしている客でもいるという設定だ。
「うーん。「あけぼの」だとタキかワムだよねぇ・・・。」
萌の独り言が聞こえた。何を走らせるのか迷っているみたいだ。
「萌。俺の鉄研なんか迷ったら単機回送っていう奥の手があるぜ。」
「えっ。単機回送・・・。むなしくない。」
「いや、ただ単機回送するんだったらむなしいけど、それを超高速でやったら面白いって。」
「だんだんそのツボが分かんなくなってきたよ。」
離れの時計をふと見た。まだ7時にもなっていない。今日の夜は長い。
それから、せっかく東北に行ったんだからと言うことで新幹線のほうは「つばさ」E3系と「MAXやまびこ」E4系の併結と「こまち」E3系と「はやて」E2系の併結をすることになった。それから新しく模型化された「はやぶさ」E5系を走らせたり。しかし、「こまち」との併結はやらせなかった。「こまち」が拒絶しているように見えたからだ。「こまち」は「はやて」のほうが好きらしい。
「これも在来線の方に入っていけるようになってたら面白いのにね。」
萌はそんなことを言った。僕は前々から思っていたことだが、じいちゃんがそうしなかったのだ。父さんは「はやて」と「こまち」をそれぞれ二つずつ持っている。それぞれ会社は違うがKATO製は新幹線専用。TOMIX製の「はやて」は「はやて」単体で、「こまち」は「こまち」単体で動くようになっている。同じ理由でE4系と「つばさ」のE3系も二つずつあり、それぞれ会社が違う。
「「あけぼの」そろそろお疲れでいいよねぇ。」
EF81に牽引が変わってから結構時間がたっている。
「私に言うことじゃないと思う。」
「おい。外走ってるEH500(金太郎)のワム34両も休ませてやれよ。」
「・・・。」
「さて、俺も貨物でも走らせよう。」
コントローラーに面と向かいブレーキを賭けた。まずは「あけぼの」をホームに止めることである。さっきと同じように身を乗り出して、どこにいるのかということを確認する。ホームに入る直前にポイントが1番線に開いていることに気づきあわてて2番線にした。入ってくることを確認して、だんだん減速する。停止位置に来たところでブレーキをさらにかけて、停車させた。
「停止位置。よし。」
「プ。トゥゥゥゥゥ。」
「ポイント1番線開通。」
1番線に列車がいくようにポイントを変える。そうなったことを確認して、
「貨物待避線1番線ポイント開通。」
コキ26両が止まっている線路にポイントを開き、本線に通じるようにさらにポイントを開く。そこにおいてあるEH500(金太郎)を置こうと思ったら、
(うわっ。マジかよ・・・。)
「もしかして、ナガシィこっちのほうがよかった。」
萌がそう言った。さすが僕の好みを分かっている人だといいたくなったけど、今それはワム34両を牽引して走っている。
「あー。お前。わざとやったな。」
「わざとじゃないですよ。」
「わざとにしか見えない・・・はぁ。しょうがない。1次で我慢するかぁ。」
(3次はないんだ・・・。)
どこがどう違うのかというとライトの位置、塗装、仕様。なんだそれだけかではない。ここ結構重要なところだ。僕は2次車がEH500(金太郎)の中ではお気に入りだ。
ふと時計を見てみたらもう9時過ぎている。もう2時間以上たったのだ。するとまたドアが開いた。そこに立っているのは和田山さん。今度は年越しそばだ。食べて戻ってくるとまたその続き。山登りのための緩勾配線のほうにポイントを開通。貨物列車は全てこっちを通る。あまりモーターに負荷をかけないためとこっちの方が上りやすいからだ。
「出発進行。発車。」
そう言ってからは同じ手順で貨物列車を発進させた。本線に出きったところで貨物駅のほうに入ってこないようにポイントを変えた。そして、本線を走って行く貨物列車に見入った。
「おい。運転手。運転台離れていいのか。」
「模型だからいいじゃん。」
こんなことで注意されたくない。
やがて、貨物列車は緩勾配線のほうに入っていくところに来た。緩勾配線はループ線になっている。ポイントを越えて新幹線の下を通る。大きな円を描いている線を一周する間に他の線路が位置する同じ高さに持っていく。この間が模型を見るというところで美しい場所でもあるのだ。またしばらく走って、新永島を通過する。またしばらく走れば一周する。
今何時か。またふと時計を見た。時間はすでに23時30分を過ぎていた。何という速度で時間がたっていくのであろう。今日1日ここで遊び倒したが、これに飽きないというのがすごいと素直に感じた。
「もうすぐ明けましておめでとうだね。」
「そうだな・・・。そろそろ片づけるかぁ。」
僕はそう言い。1000番台(223系)が駅に来て、車両基地まで回送したら片づけることにした。その時はすぐに来て、レイアウト内に出ていたすべての車両をケースに片づけた。そうしている間に15分過ぎた。15分経ったらお参り。普段は2つ言っているけど、今年は一つ。戻ってくるとさっきの片づけの続きをやった。片づけし終わると疲れがどっと出た。部屋に入ってパジャマに着替えて、寝た。
翌日。1月1日。いや、模型の片づけをやっている時点ですでに1月1日かぁ。
「明けましておめでとうございます。」
「来るのはえぇ。」
「ナガシィだって9時からここにいるんでしょ。昨日あれだけ遊び倒したのに。よくまたこの時間から来ようと思えるよねぇ。」
「うるさい。」
「さて、初走りは何にするかなぁ。」
「1000番台(223系)いい。」
「ダメ。」
「えー。初走りだよ。1回くらいいいじゃん。」
「ダメですよ。」
「初いじりやられたい。」
「いじる無し。」
今年のスタートはこんな感じだった。
本編中に出てくる記事は引用しました。
現在88万2253文字。原稿用紙2206枚分(空白なし)。読了1765分(毎分500文字目安)。一話文字数平均4874文字。
予定。あと3話。(これは・・・)