175列車 学園祭
翌日。確かに。天気が言ったとおりウソのように晴れた。僕は遠州病院まで遠州鉄道でいき、その先はアド先生の車に乗った。僕と一緒に来た人は誰もいない。もう向こうのほうに行ったのだろう。展示部屋にいくと北石、朝熊、青海川、牟岐がいた。
「おはようございます。永島先輩今日は何持ってきたんですか。」
朝熊には興味があるみたいだ。カバンのほうを覗き込んできた。
「今日持ってきたのはコキ26両とワム34両と機関車。EF210(モモちゃん)とEF200、EF510(レッドサンダー)、EF81、EF65、EF66、EF64の重連、ED75の重連、EH500(金太郎)、EH200(ブルーサンダー)、ED76、EF510-505(アオカマ)、DF200(レッドベアー)だ。」
「機関車ばっかり結構持ってきましたね・・・。えっ。このEH500(金太郎)、1号機と2号機の初期型じゃないですか。それにED75は後期型の1034号機と1039号機・・・。1039号機は津波にのまれましたけど・・・。」
「ああ。そう言えばネットに載ってたなぁ。」
北石がつぶやいた。
「ああ。津波にのまれたゴミの中に一つだけでしょ。あれはシュールですよ。」
「・・・。待ってくださいよ。その話はどうでもいいとして、ここにある機関車全部走ると・・・室蘭本線で、函館本線で、津軽海峡線で、東北本線で、日本海縦貫線で、東北本線で、常磐線で、中央本線で、東海道・山陽本線で、鹿児島本線かぁ。こっちの方がシュールにもほどがあるように気がしますね。」
「えっ。それってこれ貨物が走ってるほとんどのところ再現できるってことですよねぇ。」
青海川が驚いた顔で言う。
「ああでも、広島更新色のEF64-1000番台ないし、A更新色でも何でもいいけど、エンジングレードアップしたDD51もないし、全部ってわけじゃないな・・・。」
「えっ。どこまで「忠実に」をしようと思ってるんですか。」
「アハハハハ。まぁ、これだけじゃないって。今日は1000番台(223系)も持ってきたし、2000番台(223系)の「湖西線経由敦賀行き」もある。」
(完全網羅しちゃいそうだ・・・。)
「他にもキハ183の国鉄色で「おおとり」も持ってきたし、ああ、そうそう。キハ183の「オホーツク」も持ってきた。」
「「おおとり」。」
「おおとり」に反応できるのは北石と空河だけだろう。他の人はポカンとした顔になるのは当然だ。「おおとり」だって新しい存在じゃない。名前は東海道新幹線が開業する前の東海道本線にまでさかのぼるのだ。そして、東海道新幹線が開業すると名前は北海道に移って、その後も運転され、現在では「オホーツク」が同じ立場である。
「うわっ。この「オホーツク」スハネフ14くっつけてるし、これ「オホーツク9号・10号」ようでしょ・・・。」
「・・・。ていうかお前ら最初何走らせるんだ。最初から貨物ていう手もあるけど、どうする。今日はまた313系スタートでいったほうがいいと思うけどなぁ・・・。」
「最初から貨物。行きましょう。」
「オールライト。やるぞ。」
並べていると客がだんだん入ってくる。僕のほうはこれで結構な時間持たせられるが、ずっとこのままでは面白くない。ある程度たったら変えるが、今はこれでいいだろう。先頭はEF210-112号機。外回りは211系を先頭に313系と併結した普通だ。
「ねぇ、列車走らせて。」
並べている間に人が集まってきた。そしてしきりにその子供が言うのだ。両数的に外回りが先に完成する。先にそっちのほうで時間を稼いでもらい、こっちの1300t級の貨物を出すのだ。25両目のコキを線路上に置くと、
「間もなく2番線から、貨物列車が発車します。黄色い線まで下がってお待ちください。」
青海川がマイクを片手にそう言った。敦賀を真似して言っているのだ。26両並べ終わったら、僕が運転台についた。そして、コントローラーのつまみをまわした。電気を取ったEF210がゆっくりと走りだす。だんだんとスピードに乗せて行って、しばらく立ったら後は放っておくだけ。いつも家でやっていることだが、つまみタイプのコントローラーで本線上を走ったことがないから、その加減が難しかった。
貨物列車が走り始めると子供たちは短い旅客列車より長い貨物列車のほうに集まる。貨物列車のほうを追っては旅客列車のほうにと移動を繰り返すのだ。そして、しばらく走らせたら、今度は223系に変えるという話になった。
「青海川、置くの手伝ってくれないか。」
「えっ。いいですけど・・・。」
「じゃあ、この2000番台(223系)を前がVで後ろがWになる方においてくれないか。」
「あっ。敦賀行きですもんね。」
西日本の車両のほうが詳しい青海川にはこれで通じた。僕のほうは1000番台(223系)をV(4両)+W(8両)という編成で線路上に置く。これで姫路行きのほうも完成だ。後は貨物列車と普通を止めて、これに置き換えればいいだけである。
「貨物止めて。」
僕は北石にそう言った。貨物を機関車がホームギリギリのところまで詰めて止めても後ろ10両くらいはホームから飛び出す。この10両ほどを素早く線路からどけて、1000番台(223系)が止まっている3番線にポイントを開いた。
「永島先輩。ここからはあなたの仕事です。」
「あっ。そういうことね・・・。」
何なのかすぐに読めた。
「3番乗り場から、新快速、姫路行きが発車します。ドアが閉まります。ドアにご注意ください。4番乗り場から、新快速、湖西線経由、敦賀行きが発車します。ドアが閉まります。ドアにご注意ください。」
僕はそうアナウンスすると青海川のほうも列車をスタートされた。僕のほうも列車をスタートさせる。
「ご乗車ありがとうございます。この列車は新快速湖西線経由、敦賀行きです。途中加古川、西明石、明石、神戸、三ノ宮、芦屋、尼崎、大阪、新大阪、高槻、京都、山科、大津京、比叡山坂本、堅田、近江舞子、近江舞子から終点敦賀までの各駅に止まります。列車は12両編成です。お手洗いは前より9号車(クハ222形2000番台)と後ろより1号車(クハ222形2000番台)にございます。なお8号車(クモハ223形2000番台)から9号車の間。車内からの通り抜けできません。あらかじめご了承ください。携帯電話は音の出ないマナーモードに設定のうえ通話はご遠慮ください。次は加古川、加古川です。加古川と出ますと西明石に止まります。」
どこまで運転できるかは別にして、こういうところに止まるということだけは言っておこう。自分のほうが運転する1000番台のほうは何も言わなくてもいいわけではないが、言わないでおく。ここまで行ったら本当に回らなくなってしまいそうだ。
「永島さんの223って8号車と9号車ライト付いてますよねぇ。」
「ああ。家で遊んでる時につけたんだ。家にはこれより大きいレイアウトがあるから、真っ暗にして楽しむことも可能だぜ。」
「だから車内灯入ってるんですか。」
「暗くするんだから、それぐらいの演出は必要だろう。」
僕はそう言った。しばらく走っているとお互いどこを走っているのかということを気にした。
「間もなく4番乗り場を列車が通過します。危ないですから、黄色い線まで下がってお待ちください。間もなく列車が通過します。ご注意ください。」
「間もなく3番乗り場のほうは言わなくて大丈夫なんですか。」
「えっ。ツッコんできたら、ツッコんできた人が悪い。」
「それはそうですけど・・・。」
お互い一駅目は通過した。僕のほうは2周目で停車。青海川のほうはまだ停車しないとのことだった。僕はそれからもこまめに停車して、客を拾っているという設定。青海川のほうはガンガン飛ばして、大阪のほうに近づいている設定だ。
「永島さん。次停車です。」
「了解・・・。間もなく5番乗り場に、新快速、湖西線経由、敦賀行きが12両で参ります。黄色い線まで下がってお待ちください。足元白色、三角印、1番から12番で2列に並んでお待ちください。前より4両、新快速敦賀行き。後ろより8両、新快速近江今津行きです。」
僕はそう言うと自分のほうの列車がどこにいるのかを確認した。こまめに止まっていたからまだ駅の反対側にいる。だが、2000番台(223系)が駅を発車するまでの間に駅は通過してしまいそうだ。
「永島さん。」
「了解・・・。5番乗り場から、新快速、湖西線経由、敦賀行きが発車します。ドアが閉まります。ドアにご注意ください。」
僕がそう言うと2000番台は駅から発車していった。それとほぼ同時ぐらいに1000番台が駅を通過した。
「新快速が止まるのに、新快速が通過する駅なんてありますかねぇ。」
「あるわけねぇだろ。」
新快速で遊ぶことが終わったら次は何にしようか。そろそろネタ切れというわけではないが、どうするか・・・。
「次はそろそろ「カシオペア」っていうところでしょ。」
「「カシオペア」。「カシオペア」あるのか。」
「はい。ありますよ。」
それには北石が答えた。
「じゃあ、「カシオペア」やるのはいいとして、牽引機は持ってきてないぞ。」
「えっ。さっきの機関車の中にEF510(アオカマ)ありましたよねぇ。」
「あれは505号機で貨物仕業。ヘッドマークはつけてない。」
「ヘッドマークなし・・・。」
「あっ。永島先輩こういうことでどうでしょう。」
朝熊が提案してきた。
「E26を引いて試運転をやったのは502号機でしたけど、ここにそこまで知る人はいないはず。505号機で代用しちゃうってどうでしょう。」
(代用かぁ・・・。んっ)
「学校にある「カシオペア」ってKATOだよなぁ。KATOは引っ張れないんだよ。家のTOMIXだし、アーノルドだから。」
(あっ。希望完全に消えましたね。)
というのは学校の「カシオペア」はカプラーの根本が違うからだ。別の会社の車両とは連結できない。鉄道模型のここが関係するのだ。
「「カシオペア」がダメとなるとどうしますか・・・。また貨物でもやりますか。」
「おい。俺26両用意するの大変なんだぞ。」
(のわりにはいつも26両一人で並べてますよねぇ・・・。)
「別に26両じゃなくてもいいじゃないですか。17両ぐらいでも十分貨物列車は貨物列車です。」
(あっ。いいこと思いついた。)
結局貨物でやろうという話になった。僕が講じたのはまず11両コキを並べる(編成内容コキ107+コキ103+コキ102+コキ102+コキ103+コキ106+コキ104+コキ105+コキ105+コキ107+コキ104)。そしてその6両目コキ106にコンテナを一つだけ積載する。
「永島さん。やめてください。落ちすぎてます。」
「うーんじゃあ、俺たちが朝見たEF510でたった2両コキつなげた貨物でもやるか。」
「それ引く510のほうがすねるんじゃないんですか。」
「・・・。」
結局この貨物をやったりと何とかアイディアを出して、展示を終了させた。片付けている最中に膳所さんが顔を出してきた。
「もしかしたら、グランプリになったかもしれんということで声がかかってきたんだけど、まだ時間じゃないから、こっちの片づけが終了したら、こっちの方手伝いに来てください。」と言っていった。何か選考してますんでという感じの人たちは始まる前に来たけど・・・。
僕たちは膳所さんたちの展示のほうに赴いた。こっちも交通サークルの人たちでいっぱいだ。全員片付けにおわれている。僕たちがやらされたことはここの机をここのものと違う部屋のものに分けること。膳所さんからどこにしまえばいいというのは言われ、同じことを繰り返した。何度もやっている間に腕が痛くなった。広げてあったプラレールを半径の同じカーブレールごと。同じ長さの直線レールごとに振り分けてしまうなどした。
「えーと。ちょっと手を止めてくれるかなぁ。」
大津さんが声をかけた。
「えーと18時から展示会のほうのグランプリ発表があるんですが、恐らくそれに入ったと思うので、18時前に体育館のほうに来てくださいと言われました。なので、みなさん作業を一度中断してそちらのほうに行ってください。」
体育館のほうに行ってみると中は暗くなっており、どこぞのライブ会場のようになっていた。ちょっと季節を先取りしているのではないかというような衣装で踊りを披露しているグループが今ステージの上にいる。
「オギッチ。」
そう声をかけられた青木さんが返事をした。
「はぁ。「オギッチ」ってやめてほしいんだけど・・・。」
青木さんはため息をついていた。
僕たちは体育館の後ろのほうに固まった。そして時間が来るまで待ったのだが、なかなかそう呼ばれる時が来ない。ステージの上では落し物があったりとかいろんなことを言っているけど、そんなことどうでもいいからと言いたくなってきた。結局何もないまま体育館から出てきた。何しに体育館に行ったんだよ・・・。
それからまた片づけ。交通サークルの部室は違う建物にあるためそこまで走って荷物運びが行われた。
「青木さん。これってなんかの消防訓練ですかぁ。」
「消防訓練かぁ・・・。いい考えかもしんねぇな。」
「あの、そんなこと言いながら階段上んないでください。」
「だけど、この消防訓練疲れるなぁ。」
「疲れない訓練はないと思います。」
「逆に疲れない訓練ってどんな訓練ですか。」
「さぁな。でもまだ俺たちは3往復くらい消防訓練しなきゃいけないぞ。」
「いい加減ですね。この訓練。」
青木さんは3往復くらいって言ったけど、荷物の関係で結果的に5往復。上り階段を3階まで上ったために足が棒になった。そして交通サークルがつかっていた机に張られているシールをすべてはがして、だいたい終わった。ここまで来ると時間は19時になっていた。その結果高校生と中学生は返されることになり、僕たちも帰った。
アド先生のウィッシュに遠州病院まで揺られ、帰りは遠州鉄道の2004に乗って帰った。このことを萌に話したら、死んでといわれた。
本編の未来バージョンもだんだん固まってきました。登場するキャラクターの名前として「光」が決定してます。(男の子です)