172列車 パワー
翌日。11月13日。折尾町展示。そのためにまず学校に集合する。来たのは青海川と隼と朝熊と汐留だった。他の人は来ていないというか押し付けたと言ったほうがよかったかもしれない。
「ナガシィ先輩。おはようございます。」
隼が声をかけてきた。
「にしても、今日はみんな来ないですねぇ。」
「ああ。知ってるからじゃない。展示の大変さ。」
「えっ。知ってるって言っても去年は折尾町の展示やってませんよねぇ。」
「やってないけど、おととしはやったの。大変だったよ。特にガキが。」
「えっ。まさか子供がいろいろとうるさいんですか。列車が動いてないとか。あのガキと同じですねぇ・・・。」
確かに。いえるなぁ・・・。「止まっちゃったよ、この電車」なんて言われた時にはクソ腹立つ。そういう文句しか言わないなら電車に乗るなと言いたいが・・・。今回のレベルもそんなんじゃないかもしれない。
隼と話している間にアド先生のウィッシュが来た門のほうから入って来た。それに乗り込んだら、
「アド先生。大嵐と榛名先輩はもう向こうにいるって言ってます。」
「あっ。はい。分かりました。」
アド先生はそう言うとウィッシュをスタートさせた。折尾町まで走って行くにはまず、学校の前にあるバイパスを北に行かなければならない。東名高速道路をまたいでちょっと走ったところの信号を左に曲がり、脇道に入る。そのあとは空き地ッポイ駐車場に車を置いて、公会堂のほうまで歩いていく。公会堂のほうまで来ると準備が進められている。甘酒・・・。僕はこういうものは飲んだことがないから、飲む気はない。中に入ると確かに。そこにはすでに木ノ本と大嵐がいた。
「アド先生、おはようございます。」
二人が気付いて同時に挨拶をした。僕たちのほうは中に荷物を押し込み、自分たちが入った。
「永島先輩。永島先輩はおそらくコキ26両持ってきたと思うんで、内回り担当してください。僕は外回りのほう担当します。」
「確かに。コキ26両持ってきたけど、一人じゃさすがに回んない。誰か・・・。」
「大嵐に手伝うように言ってます。心配ありません。」
「・・・。じゃあ、やっぱり一番最初は東海か・・・。」
「そうですねぇ。東海ですねぇ。汐留。313系の2500番台取ってくんない。」
「えっ。・・・分かった。」
そもそも汐留に313系2500番台が分かるのか・・・。分からなかったら僕が探せばいいこと。しかし、汐留もそこまでバカではなかった。ちゃんと箱に書いてあったからだ。
「よし。こっちは5000番台(313系)で新快速でもやるかぁ。」
僕はそうつぶやいて、5000番台(313系)の箱と0番台(313系)の箱を探して、持ってきたう。このうち0番台のほうから300番台を2両取り出し、5000番台と連結。8両で豊橋行きだ。方向幕は大垣行きになってるけど・・・。
「永島。発車するまでちょっと待ってよ。」
木ノ本のそういう声がする。
「フィン、フォン、フォフォフォフォン、フォン、フォフォフォン。ドアが閉まります。ご注意ください。」
後ろにおいてあるパソコンから音がした。そして、木ノ本が笛を吹いた。
「ピッ、ピッ、ピー。」
「ピィポーン、ピィポーン。プトゥゥゥゥゥゥ。」
(なるほどなぁ・・・。)
僕はそう思いながら、コントローラーのつまみをまわした。これで5000番台のほうが電気に反応して、発車していく。木ノ本は反対側の211系5000番台と313系2500番台の普通豊橋行きの方にも同じことをやった。
「東海道線、下り、普通列車、豊橋行きです。ドア閉まります。」
「ピッ、ピッ、ピー。」
「ピィポーン、ピィポーン。プトゥゥゥゥゥゥ。」
「戸閉め点。時刻よし。浜松。発車。」
朝熊はそう言ってからブレーキを解除。そして、211系を先頭に駅を発車させた。
なるほど。やりたいことというのはこういうことか。忠実すぎるかもしれないが、これは面白い。僕たちが面白がってどうするというところはあるが、そんなことどうでもいい。
「隼先輩。アナウンスってどうすればいいか、分かりますか。」
「えっ。アナウンス・・・。分かるけど、どうして。やってほしいの。」
「はい。出来ればお願いします。」
「何やればいいわけ。」
「東海道線の、普通豊橋行きのほうお願いします。」
「・・・。ご乗車ありがとうございます。今日もJR東海ご利用いただきまして、ありがとうございます。この列車は東海道線、下り、普通列車、豊橋行きです。終点豊橋までの各駅に止まってまいります。列車は6両編成です。お手洗いのございます車両は1号車・・・。」
「隼先輩。1号車(クハ210形5000番台)にトイレなんかありません。」
「えっ。じゃあ、どこにあるのよ。」
「・・・。隼。変われ。俺がする。」
僕がマイクを受け取って、その続きをやった。
「失礼いたしました。お手洗いのあります車両は4号車(クハ312形2300番台)です。運転手、朝熊。車掌、永島が終点豊橋までご案内をいたします。次は高塚。高塚です。」
僕はさらに続けて、
「ご乗車ありがとうございます。この列車は新快速、浜松行きです。二川、新所原、鷲津の順に終点浜松まで各駅に止まってまいります。次は二川、二川です。」
「8両で新快速で、各駅ですかぁ。いまいちですねぇ。」
「そうだな。ここら辺の快速って言ったら「ホームライナー」ぐらいしかないからな・・・。」
そうなのだ。浜松を中心に考えると東も西も各駅に止まっていく。いくら西に行く列車が特別快速だろうが新快速だろうが豊橋までは各駅に止まっていく。競争する私鉄がないからだ。東も同じ理由で普通しか走っていない。しかし、東には「ホームライナー」という列車が走っている。しかし、終日走っているわけではないので、結果的に言うとほとんど変わらない。
「あっ。永島先輩。アナウンス。」
「おっ。ああ。ご乗車ありがとうございました。間もなく高塚、高塚です。降り口は左側です。ドアから手を放してお待ちください。・・・間もなく二川、二川です。降り口は右側です。ドアから手を放してお待ちください。」
「ウオッ。スゲェ。電車走ってる。」
近所の子供だろう。だんだん人が集まってきた。ここからが大変なのだ。折尾町の展示はほかの展示と違ってここから先が違ってくる。いつもはほのぼの遊んでても構わないけど、遊べないというのがある。
しばらく時間がたってから、僕たちは次に走らせるものを考えた。僕の頭の中にあるのは1000番台(223系)のことだけ。なので、内側にはそれを用意した。
「浜松に行ってる新快速で、それに接続ってありえないですけどねぇ。」
「よし。じゃあ、今から折り返して、米原に行ったという設定を加えればいいわけだな。」
「本当にそこまで行くとも限らないじゃないですか。」
「ご乗車ありがとうございました。間もなく終点、浜松、浜松です。乗り換えのご案内をいたします。到着しましたホーム向かい側に停車しております。新快速長浜行きはお乗換えです。」
(スゲェいい加減だ・・・。でたらめだ・・・。)
「・・・。2番乗り場から、新快速、米原方面、長浜行きが発車いたします。ドアが閉まります。ご注意ください。」
「ティントゥーン、ティントゥーン。」
コントローラーのつまみをまわした。
「そうですねぇ。じゃあ、こっちもスタートさせますかぁ。」
朝熊がそう言うと、
「4番乗り場から、快速、姫路方面、網干行きが発車いたします。ドアが閉まります。ご注意ください。」
「ティントゥーン。ティントゥーン。」
(えっ。221系で・・・。)
(まぁ、そう固いこと言わないでおきましょう・・・。)
「ご乗車ありがとうございます。今日もJR西日本、ご利用いただきまして、ありがとうございます。この列車は新快速、米原方面、長浜行きです。途中加古川、西明石、明石、神戸、三ノ宮、芦屋、尼崎、大阪の順に止まってまいります。列車は12両編成です。お手洗いのあります車両は前より5号車と後ろより1号車です。前より8両、新快速、長浜行き、後ろより4両、新快速米原行きです。この列車は4号車から5号車の間車内からの通り抜けできません。あらかじめご了承ください。運転手永島、車掌坂口が途中大阪までご案内をいたします。次は加古川、加古川です。加古川を出ますと次は西明石に止まります。」
一呼吸置いたら、
「ご乗車ありがとうございます。この列車は高槻から快速の普通姫路方面、網干行きです。途中高槻までの各駅と茨木、新大阪、大阪、尼崎、西宮、芦屋、住吉、六甲道、三ノ宮、元町、神戸、兵庫、須磨、垂水、舞子、明石、明石から終点網干までの各駅に止まってまいります。次は西大路、西大路です。西大路を出ますと、次は桂川に止まります。」
これは両方とも後はほっといても構わないという考え方で、何回か駅を通過し、数回止まるを繰り返した。お昼ごろになると子供たちも結構集まってきた。途中汐留が全員に差し入れで甘酒を持ってきたのだが・・・、
「ヤバい。永島。これ完全飲酒運転になるかも・・・。」
「おい。やめろよ。飲酒運転。ヤバいの度を越えるぞ。」
「・・・。」
「永島先輩。僕顔赤くなってませんか。」
「そんなにヤバいの。」
「例えばの話です。」
「そうには見えなかったけどなぁ・・・。」
今、内回りにも外回りにも貨物列車が展開している。外の貨物列車は学校のコキ350000+コキ250000+コキ100+コキ101+コキ106の26両。コンテナもカラフルだが、コキまでカラフルだ。内回りはコキ102+コキ103+コキ104+コキ105+コキ106+コキ107+コキ110のコンテナブルーのコキとグレーのコキの26両。2両黄色も含まれているが・・・。牽引はEF200が外。EF210が内を担当している。
「おい。ちょっと見てみ。スゲェ、ナゲェのが走ってるぞ。」
一人の子供がそう言うと、他の子どもたちも集まって貨物列車に見入った。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9・・・・・15、16、17、18・・・・23、24、25、26、27。全部で27両あるよ。これ。」
「スゲェ・・・こっちは。1、2、3、4・・・・・・・・・・・・・・・・・・23、24、25、26、27。こっちも27両ある。どんだけ長いんだよ。」
「貨物列車ってそれぐらいの長さがふつうだったりするんだよ。」
隼がそう言うと、
「もっとつなげて。えーと50両ぐらいに。」
「えっ。」
(50両。)
「引けないことはないですけど、片付けるのも、用意するのも大変ですねぇ。」
「こ・・・これ以上引っ張ると桃太郎が引けないよっていうから、ダメなの。」
(うまく逃げたな。)
確かに。外側を走っているEF200でもコキ100形は32両(1600t級)引ける設計にしかなっていない。しかし、50両引くためにはEF200を重連にすれば64両(3200t級)引けるのではないかという意見が出ても、それは無理というもの。大体現実的ではない。
「・・・50両ならあの黒いワムの集まりだったら行けますよねぇ。」
「行けるけど。今日は黒いワム持ってきてるのか。持ってきてたとしてもあれ本当に50両あるのかっていうのが怪しいぞ。」
「黒いワムあるにはあるんですけど・・・。D51(デゴイチ)でも45両でしたよねぇ。」
「さぁ。D51(デゴイチ)が何両引けるか知らないけど、限度はそれぐらいだな。」
もちろん、子供の言動の嵐はこんなことには収まらない。自殺している人がいるとか、人が倒れてるとか、人よりペンギンが大きいとか。純粋すぎるが上にこっちが困る質問がたくさんある。それ以外に子供はなんでも触りたがるから、模型に触ったり、模型を脱線させたり。おととしも今回もそれはなかったけど・・・。僕はこういうときはひたすら、こういう種類がいるんだよ。とか自殺したいんだよって子供のほうに合わせたほうが疲れないのではないかと思う。
展示が終了すると全員で片づけ。片付け終わったら膳所さんたちと一週間後の文化祭のほうの打ち合わせ。それがすんだら、解散した。
180レで終わらないフラグ・・・。