171列車 説明
「よーす。ナガシィ久しぶり。」
(やっぱり・・・。)
案の定だった。善知鳥先輩がついてきていた。逆にアヤケン先輩は来なかった。
「本当はついてこなくていいって言ったのに。」
膳所さんは善知鳥先輩をにらみながら、そう言った。そして、全員に紙を配り始めた。
「これ。今年予定してる文化祭の予定。来る人って言ってもここにいるほとんどの人は来るか・・・。ざっと読んどいて。」
そう言った。確かに文化祭のことについて書いてある。やる部屋はまだ本決まりではないそうだが、この部屋を予定しているらしい。やることも書いてあるが、去年やりに言ったから何をするのかということは分かる。先輩たちがやるのは鉄道模型の展示。僕たちみたいに風景はないが、列車を走らせる。そして、もう一つはプラレール。規模が大きいから、大きな部屋でない限りそれだけで一部屋使ってしまう。僕たちがやることはおなじみ鉄道模型の展示。こっちには先輩たちのものと違って風景がある。そして去年と違ってプラスされていることはアナウンスをすること。アナウンスは誰がやってもいいけど・・・。出来れば・・・。
「ていうか。ナガシィすごいよ。サメちゃんから聞いたけどさぁ、アナウンスやれるんだろ。すごいなぁ・・・。」
(別にすごくないと思う。誰でもやれるし・・・。)
「なんか一つやってみてよ。」
「えっ。」
「おい。善知鳥。そういうことは後に後に。」
「膳所さんつまんない。」
そう言った善知鳥先輩のことを膳所さんはどう思ってるかわからない。まぁ、ふつうにいいとは思っていないだろう。時間が少し経ちアド先生のほうも部室のほうに来た。
「はい。それでは膳所君。お願いします。」
「はい・・・。じゃあ、みんな持ってる紙のほう見てもらえるかなぁ。ここに書いてあることをしてもらうわけだけど、今年は当交通サークルと鉄研部の方で、例年通り展示をしたいと思っていますが、部屋のほうを僕たちの方は3204室。鉄研部のほうを1204室と図書館のほうでしてもらおうと考えてします。えー、まだ部屋のほうは本決まりではないのでそこだけは変更があるかもしれません。それとアナウンスのほうをやってると聞いていますから、それは図書館のほうではなく1204室のほうでやってもらってください。」
それ以外のことは別に何もなかったみたいだ。今はこんな感じだということを触れておきたかったらしい。
「えーと、そんな感じです。なんか質問とかある。ないね。」
「早っ。」
「確認それだけでいいんですか。」
「簡単だよ。質問があったらそれは水流す。」
「流しちゃダメでしょ。」
「ていうのは冗談だ。なんか質問あるか。・・・。ないね。・・・。じゃそういうことで。」
膳所さんはこれを伝えに来ただけだった。伝え終わったらすぐに退散していったが、善知鳥先輩のほうは残っていた。
「ねぇ、ナガシィ。今日はほかの人はどうしたの。ミッシィとか、ユウタンとか、ハルナンとか。後は・・・うーんと・・・。誰だったかなぁ。誰かいたと思ったんだけどなぁ・・・。あっ。思い出した。ミスター透明人間はいないの。」
(透明人間・・・。まさかとは思うけど・・・。)
「あー。ミッシィとユウタンとハルナンは終わったらすぐに帰ったと思う。で、透明人間は死んだ。」
「ウソ。透明人間死んじゃったの・・・。はぁ・・・。」
(当たったのかなぁ。透明人間の正体・・・。今日醒ヶ井死んでたけど・・・。)
「おっと。本題聞いてなかった。なんかやって。アナウンス。」
何なんだよ。この変わりようは・・・。言いたくなった。
「何やってほしいですか。」
「なんでもいいから、早く。」
「・・・。今日もJRをご利用くださいましてありがとうございます。次に8番乗り場に参ります列車は13時ちょうど発。新快速。米原方面、長浜行きです。足元白色。三角印。1番から12番で2列に並んでお待ちください。前より8両、新快速長浜行き。後ろより4両、新快速米原行きです。途中京都・山科にお急ぎのお客様、当列車が先に着きます。みたいな感じで満足ですか。」
「やっぱナガシィすごいよ。」
(だから、すごくないと思う・・・。)
善知鳥先輩は相変わらず鉄道には無知らしい。僕にとってはこんなことすごくないけど、善知鳥先輩からしてみればすごいのだろうか・・・。僕はそんなに長居出来ないと思ったので、すぐに帰った。
駅まで走って戻ったら、萌が不機嫌そうな顔があった。
「ナガシィ。」
「ごめん。今日部活あるってこと忘れてた。」
「ナガシィのおかげで乗り過ごしちゃったじゃないのよ。2004に。」
「えっ。」
予想外だった。次に新浜松に行った列車は1004だったから、これからくるシングルアームパンタグラフをすべて2000形と決めつけることはできない。萌がここで得た情報に乗れば、次に来るのは1002だそうだ。この時間からまって最初に来る2000形は2001らしい。
「いや、でもなんで1時間ぐらいずっと待ってたわけ。」
「ナガシィも早く帰って来るって思ったからよ。そしたらすぐに来ない上に1時間も待たせるなんて。」
「悪かった。」
「悪いなんて思ってないでしょ。もう・・・。」
「・・・。」
「はぁ。仕方ない。今日は1002でもう帰るかぁ。ナガシィのせいだよ。覚えといてよ。」
「覚えとかないって言ったら。」
「簡単、いじる。まぁ、言わなくてもいじるけどねぇ。30分ぐらい覚悟してよ。」
その後すぐに来る1002で帰った。列車を降りて家のほうに帰る。今日は萌は僕の家のほうまでついてきた。離れに行ったら1時間待った仕返しが来た。萌の仕返しが終わったころには僕はしばらくお腹が痛いままだと思った。
(萌のやつ。くすぐり過ぎだ・・・。)
翌日も2000形のまま。乗ったものは2002に変わっていた。その帰りは1002に乗って帰った。もう4回連続で2000形に乗ったんだし、今はこうなってもよかったと思った。
「ナガシィってアパートのほうとか決めてるの。」
「ああ。まだ決めてないけどさぁ、明日親と一緒に見に行くつもり。」
「へぇ。でも、ナガシィって一人暮らしできるの。困ったら私が家事とか食事作ってあげようか。」
「そこまでしてくれなくてもいいよ。自分で料理作るし、家事もする。」
「ダメダメ。ナガシィが料理作ったら絶対焦がす。」
あたっていそうだった。まぁ、本当にどうなるかなんてわからないし・・・。
翌日。11月12日。父さんと母さんと一緒に大阪まで来ている。今日はワンルーム決めだ。緑地公園で降りて、学校に行くように歩いた。学校の前にはボクシー・・・。車はやっぱりわからないけど、そういう車が止まっていた。
「永島様ですか。」
相手のほうから声をかけてきた。この人は今日の案内をしてくれるらしい。
「私ルームインフォメーションの阪上と申します。今日は1日よろしくお願いします。」
その阪上という人がくれた名刺には「阪上晴也」と書かれており、その下に携帯の番号だろう。メールアドレス。いろいろ書いてあった。
「それではお乗りください。」
僕たちを促すように車のドアを開けた。父さん、母さん、僕の順で乗り込んだ。母さんは車の後ろの席に。僕と父さんは真ん中の席に乗った。
「えー、今日はこちらの下坂と二人でご案内させていただきます。それでは永島様からご要望のありました「コスモ」のほうからご案内させていただきます。」
車のエンジンをスタートさせた。車は学校の周りをぐるっと一周するような感じで、回って、脇道に入った。その脇道は結構下っている。自転車を使っていくには労力が必要だろう。その坂が終わるころになって、車は止まった。ドアを開けられて降りてみた。僕の前には今白い建物がたっている。白と言っても真っ白なわけではない。建てられてから結構日もたっているように見えたし、ところどころその白が黒くなっていた。
「えー、こちらがコスモのほうになります。どうぞ、上がってください。」
入り口にはコスモと書かれたプレート。そして住所をあらわす文字が貼られていた。中に入るとまずあったのは階段だった。その階段を上って3階まで来た。
「ちょっとお待ちください。」
阪上さんは隣のドアを開けて、中に入り、しばらくすると戻ってきた。そしてすぐそこのドアを開けた。301と書いてあったからここは301号室のことだ。
「どうぞ。お入りください。」
中に入ってみていちばんの感想は「狭い」。都会だから当たり前のことだが、何と言っても狭い。こんな狭いところに人が住めるというのが僕には信じられないぐらいだが、これからこういうところにしかすまないのだ。
玄関入ってすぐのところがキッチンになっていた。そして、その反対側がユニットバス。その奥は引き戸があって、その中が部屋になっている。ここも狭い。ここにはベッドだけおいたら、もう場所がなくなってしまうのではないかという感じだった。このほかに401号室。404号室。403号室。402号室(すべて南側)を見てみた。同じ部屋しかないというのは当然だが・・・。ここの候補としては402号室を挙げておいた。
次に行ったのは豊中市ではなく、吹田市のアパート。名前はシティだった。ここは玄関から入ってすぐそこにあったのはユニットバス。その奥が部屋になっていて、キッチンと洗濯機を置けるスペースなどがあった。コスモのほうは洗濯機を置くところはベランダだったのに対し、こっちは室内だ。ただ、こっちはさっきみたいに部屋と玄関を仕切るような戸がない。
結果的にさっきのコスモ402号室が僕の部屋になることが決まった。東三国の近くにあるという会社の方まで行った。移動している間に阪上さんもいろんな話をしてくれた。僕たちが新幹線で来たということは相手にもわかっている話である。阪上さんは12時から熊本のほうから来る予定の人とのルーム案内もあるみたいだったが、その新幹線が広島~新岩国間の信号トラブルに見事にはまり、こっちに来るのは2時間ぐらい遅れるということだった。
どこに行っても狭いのは変わらなかった。この会社だってそんな大きさじゃなかった。いや、小さいのはここが地方店だからだろうか・・・。そこでやることを済ませて、僕たちは新大阪のほうに行った。新大阪から新幹線で帰るためだ。
新大阪に行ってみると「のぞみ」は最大1時間55分遅れという表示があった。ここに着いた時もそうだったのだが、新幹線は広島のほうであったトラブルにより、そっちのほうから直通してくる新幹線に遅れが生じているようだ。ホームのほうに上がってみても分かったことで、普段ならとっくにホームにいないはずの「レールスター」が24番線のほうに止まっていた。僕たちの乗る新幹線「ひかり478号」東京行きはその影響は確かに受けていたが、5分遅れとのことだった。
この列車はまだ300系だった。入って来た300系の2号車に乗り込む。300系はすぐに新大阪を発車した。新大阪を発車時に7分の遅れ。京都到着前に6分の遅れ。名古屋到着前に5分の遅れと言っていた。だが、
「ただ今先行いたします「こだま号」が名古屋駅に停車中のため、当列車、しばらくの間停車をいたします。「こだま号」が発車いたしますと列車発車いたします。発車まで少々お待ちください。」
というアナウンスが流れた。僕が眺めているところに当然ホームなんてない。あるのは引き上げ線らしき線路が2本と下り線だ。
「お待たせいたしました。列車発車いたします。」
アナウンスがあって、カクンと前に動く出した。ホームに入ると客を下ろし、ここで乗る客を拾う。拾い終わったらすぐに名古屋を発車した。300系もその後勢いよく飛ばしたのだろうが、豊橋を通過する前にスピードを落とした。今のスピードは190km/hぐらいしか出ていないかもしれない。浜松に到着する前に一度スピードを上げたが、すぐに浜松に停車のためスピードを落とした。
僕たちが浜松に降り立つと、上り本線を勢いよく「のぞみ」が通過した。名古屋で反対側のホームに入って来た「のぞみ」だろう。母さんが言うには僕たちが下りて10秒ぐらいしかたっていなかったとのこと。「ひかり」のすぐ後ろに「のぞみ」が迫っていたようだった。
ルームインフォメーション社員
阪上晴也 誕生日 1968年10月27日 血液型 B型 身長 170cm
下坂茜 誕生日 1972年10月19日 血液型 A型 身長 162cm
言うのが遅れました。300系。お疲れ様です。
登場人物二人合わせて阪神電鉄の青胴車と赤胴車。