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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
169/184

169列車 お約束

 10月31日。これで1005に乗り始めて11日連続となった。帰りは何とか2000形に乗って帰っているので、1005と2000形を交互に乗るようになっている。

「はぁ・・・。今日も1005かぁ。」

「そうだね・・・。今週は1日休みがあるけど、多分変わんないわよねぇ・・・。」

僕と(もえ)は窓の手前にあるポールに腕を置いて、外を眺めていた。

「・・・。何二人で黄昏てるのよ。」

黒崎(くろさき)が話しかけてきた。でも、たそがれたくなる。自分の好きな車両ならともかく乗りたくない車両に10回連続というのは嫌である。

「ねぇ、(あずさ)。吐き気とかしないの。」

(もえ)が逆に聞き返してみた。

「えっ。吐き気って。電車に乗って吐き気する方もどうかと思うけどねぇ。」

「・・・。」

「ナガシィはどう思う。」

「吐き気はしないけどさぁ、いい加減死んでって思う。」

「・・・。今は(あずさ)がうらやましいって正直思うよ。」

(いや、思われても・・・。)

助信(すけのぶ)に来るといつもの通り僕と(もえ)は降りた。黒崎(くろさき)のほうはこの先で降りるから乗ったまま。僕たちは改札に来ると張り紙を見た。

「ああ。百貨店の新館かぁ。もうすぐ完成なんだね。」

「気になるのはそっちじゃないけどな。」

「知ってます・・・。」

張り紙に書いてある時刻を記憶する。それを横目に改札を通り過ぎて、Uターンして踏切のところに来た。

「あれをの書いてある時刻だとさぁ、今からここに来る4連からスタートして、夕方の4連までそのまんまってことだよなぁ。」

「そうね・・・。あっ。そうか。」

(もえ)が思いついたように言った。

「もしかしたら1005にお世話になるのは11月9日までかも。帰りの列車見て気付いてたとは思うけど・・・。」

「ああ。ふつうなら42分は今日ここで見るやつ。そして54分はこれの前についてた2001ってことになるけど、そうなってないってことだろ。」

「やっぱり気づいてたか・・・。」

「ていうか、それお前から教えてもらわなかったっけ。」

「あれ・・・。とにかく変わるというか、一本遅くなるってこと。」

「考えてみればそれが分かると結構簡単かもなぁ。9日に見るこの列車にもし2000形が連結されていたら、その列車が明日の6時52分に自動的になるんだもんなぁ。」

「そこまで簡単かどうかは知らないけどねぇ・・・。ていうか西鹿島(にしかじま)のほうに連結されてるっていう大前提が必要なわけだし。」

「・・・。」

この話をしている間に踏切が鳴った。僕たちは踏切のところで列車が来るのを待っている。来た列車は1002+1004。今日は1004のほうが走るみたいだ。

「・・・。」

「今日は上島(かみじま)1004じゃなかったもんなぁ。」

「その代りに2004っていうのもねぇ・・・。」

「で、16レのほうは1007と1001だったんだろ。それで動く方が1007・・・。今日も2000形は2本ってところだな。」

「・・・。2本残っててもこの次で動く可能性はあるし・・・。」

「・・・。汐留(しおどめ)にでも聞いてみるかなぁ。」

僕は独り言を言って携帯(ケータイ)を出した。汐留(しおどめ)だって鉄研部の一員だ。これぐらい分かるだろう・・・。

「えっ。遠鉄の新浜松(しんはままつ)に行った車両の番号見ればいいんですよねぇ。」

「そう。横に1002とか2001とか書いてある。それで新浜松(しんはままつ)に行くやつだけ見てくれればいいから。分かったら返信して。」

「分かりました。」

それで10分後にあった返信は・・・。

「2002と2003でした。」

「・・・。」

「どっちが新浜松(しんはままつ)側だった。」

「2002のほうが新浜松(しんはままつ)側でした。こんなの聞いてどうするんですか。」

「いやあ、ちょっとした研究を。ありがとう。」

「だってさぁ。どう思う。」

「4分(7時)で来た人全員死ねばいいのに。」

「・・・。これで動く数は3本かぁ。明日もないじゃん。」

「いや、でも4分の場合だけはちょっと違う。乗ってて分かったんだけど、4分にあたる列車全部54分の西鹿島(にしかじま)側ってこと多いじゃない。」

「えっ。そうなの。そっちには気づかなかった。」

「あ。そうなんだ。まぁ、そういうことがあるってだけ。」

これでまた一つ情報を得たことになるが、そうなってもそこで動くのは1002。他のと変わりは全くないわけかぁ・・・。

 それから少し日が経った。6時52分の列車は相変わらず1005のまま。いい加減にしてくれよということは前々から言いたくなっているが、もう爆発してもいいころになった。11月3日は過ぎても1005のままなのだ。11月3日は祝日。このときは4両編成はやらない。4両編成をやらないということは次の日に運転される4両の組み合わせが変わってもおかしくないのだ。

「まぁ、期待はしてなかったけどさぁ・・・。」

「そうだね・・・。」

話す言葉もだんだん少なくなってくる。僕たちは落ち込んでも仕方がない。今日のこれはどうにもならないことだ。仕方がなく乗り込んだ。いつもと同じ。同じすぎるとみるものがなくなる。何を見ていいのかもわからない。ずっと同じ景色しか通り過ぎないから風景を見ることだってとおの昔に飽きている。

「・・・。今日も最悪。1006と1007。」

(もえ)が聞いた内容を僕に言ってきた。

「えっ。1007。1007って昨日動いてたよなぁ。」

「えっ。うん。でも変な運用してるから、何もかもが狂ってるのかも。これの手はおそらくまた上島(かみじま)は2004なんじゃないかなぁ。」

(もえ)の言うとおり上島(かみじま)は2004だった。

 電車を降りて学校に来てみても、宿毛(すくも)永原(ながはら)がいること自体は何も変わらなかった。そのあとはだんだんと教室に人が集まってくる。クラスに集まる男子は僕と宿毛(すくも)だけ。先に集まりきるのはいつも女子だ。しかし、今日は一人だけ違ったから、今日は男子が先に集まった。

木ノ本(きのもと)。お前ばててるぞ。」

「しょうがないだろ・・・はぁ。はぁ。浜松(えき)からチャリぶっ飛ばしてきたんだから。」

「へぇ。また「さくら」か。」

「うん。はぁ。」

木ノ本(きのもと)は自分のカバンから水筒を取り出して、勢いよく中身を流し込んだ。

「半分くらい減っちゃったかなぁ・・・。」

独り言を言って水筒をしまう。

「あっ。永島(ながしま)。「みずほ」廃止になるって知ってる。」

「えっ。」

信じられないという声が出た。「みずほ」。ここで言った「みずほ」は寝台特急のことだ。

「知らないけど・・・。」

「昨日お母さんから聞いた。この頃利用客が落ちてるのも確かって言ってて、来年の3月にはなくなるらしいよ。」

「そうなのかぁ・・・。」

(今年消えるのは100と300だけじゃないんだな・・・。)

昼になると今度は留萌(るもい)が引退話を持ってきた。

「「ゆうづる」も。」

「それに「はくつる」まで・・・。」

「まぁ、「ゆうづる」は仕方ないなぁって思うのよねぇ。原発のあれ。ステップ2がどうの言ってるけど、危険であることにはまだ変わりないじゃん。」

「なるほどなぁ・・・。それでかぁ。そいいやぁ。常磐線(じょうばんせん)ってまだ完全復旧してないんだよなぁ。」

「まっ。今してたらある意味すごいな。「ゆうづる」はもう名前すら残らなくて、「はくつる」のほうは頑張ってはきたけど、もう無理ってことで。24系だってもう歳なのは確かだしね。」

「それで、余った24系はどうなるのよ。・・・14系もそうだけど。」

「多分、インドネシアとかタイのほう。そっちに渡ると思う。」

「そうなるだろうなぁ。あっちじゃあ日本で使ってたキハ58とかもまだ動いてるみたいだし。それにファンかなんかに書いてあったけど、あっちじゃあ日本っていう国が開発したっていうだけでプレミアが付くみたいだぜ。」

「・・・相変わらずいい加減ねぇ。」

今回ばかりは暗い話題しか振れないのだろうか・・・。

 翌日11月5日。土曜日でも今週は授業がある。今日も遠州鉄道(えんてつ)のほうで行くことにした。どうしてもそっちのほうがいいとでも思ったのかは知らないが・・・。さすがに土曜日まで1000形につき合わされるのは嫌であるが、来たのは両方とも1000形。仕方がないから前の1006に乗り込んだ。帰りは2002に乗って戻ってきた。午後は離れに入った。

(「ゆうづる」・・・。「はくつる」・・・。「みずほ」・・・。あいつら走らせるかなぁ・・・。)

今日はEF81を2機。EF66とED76を取り出し、14系と24系も取り出した。取り出して車両基地のほうに並べて、走らせてみた。いつも見ている光景が違うように見えてくる。

(こいつらはここで・・・。他のやつもどこまで持つかなんてわからない・・・。)

彼らは早死にしたなんて思わないだろう。だが、僕としては早すぎるとも思った。まだまだ、これからなのに・・・。そこはどうとるかという問題だが、これから「はくつる」と「みずほ」の乗車率がよくなるのは当然だろう。そんなことを考えているとドアが開く音がした。

「よーす。あっ「みずほ」じゃん。珍しいね・・・。つうかなんで「みずほ」と一緒に「はくつる」が走ってるわけ。おかしいでしょ。」

「・・・。」

(もえ)だっていつかは理由は知るはずだ。今僕から言う必要はないだろう。

「別にいいだろ。少しぐらいウソやっても。」

「それはそうだけどさぁ・・・。じゃあ、5000番(313系)+5000番(313系)やっていいの。」

(もえ)はそう言いながら、履いてきた靴を脱いだ。

「それはやるな。」

「話違わないと思うけど。ナガシィ前やってたし。・・・。電気消す。」

「ああ。消して。」

僕はそういうと席を立った。このままではいけない。雨戸を全部占めて、真っ暗にした。(もえ)の僕もすぐにこの暗闇に慣れた。街に明かりをつけてなかったから、今の模型はゴーストタウンと化している。

「ナガシィ。ちょっとだけ、明かりつけていい。」

「えっ。いいけど、何する気。」

「何もしないけどさぁ、このままだと編成分かりづらいってだけ。」

「なるほどねぇ・・・。いいよ。」

そう言うと部屋の中が明るくなった。313系を並べているのだが、どこをどう考えてもその数が多かった。あれは完全に12両で運転する気だ。(もえ)が12両なら、僕もそう思って隣の車両庫に行った。車両庫のほうは電球の淡い光に照らされている。レイアウトのほうに戻るとすぐに目が慣れないが、こうしないとどれがどれなのかわからないから、仕方ない。

「ナガシィ。」

振り向いてみると(もえ)の姿があった。

「ちょっと。一人にしないでよ。」

「怖いのかよ。」

「ナガシィだって、あの中一人は怖いんじゃないの。」

「別に。走ってるのが模型だと思えば怖くなんかないよ。」

「本当に・・・。」

疑わしい声だった。本当は怖いのだが口が裂けても「俺だって怖いよ」とは言えない。まぁ、こういわなくても気づいているから疑ってかかっているのだろう。僕は何も答えずに223系の箱を探した。普段1000番台のほうしか走らせないから、今日は2000番台のほうを走らせてやろうと思った。

 レイアウトの部屋に戻って、車両このドアを締め切った。確かにそこは真っ暗でお化けでも出そうな感じはする。でも、模型が走っている車内灯を見れば、別にどうってことはない。

「さて、走らせようぜ。」

「・・・。」

コントローラーのところだけは何がどこにあるのかわかるように小さい明かりがついている。それ以外の場所は街の明かりか列車の明かりか信号の明かりしかない。もちろん貨物列車なんて走らせたら、列車の前照灯しかない。

「ナガシィ・・・。この5000番も真ん中電気付くようにしてるわけ。」

「ああ。ほとんどそうなるようにしたと思う。」

「やり過ぎ・・・。」

「だから、313系が223系の真似をしたそうです。見たいなノリで・・・。」

「ノリ関係ないし。」

(もえ)と話して、少しぐらいは廃止の話は心の中から消えたと思う。今回は地震の影響もあったのだ。その影響で「ゆうづる」は消える。そして「はくつる」、「みずほ」は客足が遠のいたことにより消える。300系と100系は古くなったから消える。消える理由には納得できるものとできないものがある。「ゆうづる」のほうは納得ができるけど、他は納得できない。出来れば、もうちょっと乗っておきたかったとも思う。

 (もえ)がここの離れから出てから、僕は車両庫のほうに行った。使っていない工具入れの引き出しを開けてみた。そこには100系のアルバムが入っている。

「本当にさようならかぁ・・・。」

そうつぶやくとどこからともなく声がした。

(そうですねぇ・・・。寂しいです。弟ももうすぐ終わりですからねぇ・・・。)

「えっ。」

あたりを見回してみたが、だれもいない。当然だ。ここには今の今まで(もえ)と僕しかいなかった。そして、(もえ)がここからいなくなれば、ここは僕だけになる。なぜだ・・・。

(本物は消えてもあなたにはまだ模型として、僕を大切にしてくれるみたいだ。これからもよろしくお願いしますよ。僕はいつでも待ってますからね・・・。)

「・・・。」

誰の声・・・。幻聴だったか・・・。幻聴には結構はっきりしたものだったと思う。声の主は誰なのか考えてみたが、わからなかった。言っていることは大体わかったけど・・・。


本編の作った順番を今だからいいますと

高2編の臨地研修が僕の第1作目(73レから82レ)。次は高3編の臨地研修の前の話(138レから144レと146レ147レ)。そして、高1編の臨地研修(30レから39レ)、最後が高3編の臨地研修(148レから157レ)です。

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