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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
163/184

163列車 誕生日プレゼント

 10月8日。僕は笹子から来た集合時間を記した紙を手に新幹線に乗り込んだ。9時38分発の「ひかり」13号車C席。C席なのは仕方がないだろう。これを予約したのはほんの数日前だからだ。(もえ)もこの日に受験で同じ新幹線に乗っているそうだが、乗っているのは12号車。たった90分だ。後で話せるし今行く必要もないだろう。

 新大阪(しんおおさか)に到着。いつもの通り御堂筋線(みどうすじせん)に乗り換えて緑地公園(りょくちこうえん)まで。そこについたのは11時20分ごろ。校舎の中に入るのはまだ早いということでちょっとそこで待つことにした。

「ナガシィ勉強する。ちょっと時間あるし。」

(もえ)が切りだしてきた。

「分かったよ。」

最後の詰めという感じで勉強道具を出す。2年生の3学期頃から始まった一般常識の問題集。まぁ役には立つだろうと思って持ってきた。だが、あとあとになって答えをなくしてしまったから、最後のほうだけ答え合わせができていない。その意味では役に立っていないかぁ・・・。

 11時30分ごろ。そろそろ行こうと言って学校の中に入った。エレベーターから降りてくる人ともうこの中で待っている人の姿はあった。しかし、どれも女子。男子はいなかった。男子は恐らく僕だけだろう。こういう学校は女子高で男子からしてみれば一種のハーレム状態だということだろう。まぁ、僕が入ろうと思っているコースは逆ハーになることは見えているが・・・。

 集合時間までの間に午前中受けていた人が5人ぐらいの塊になって2回くらい降りてきた。その中に男子は2㋷。8人は女子だった。受けてる人はいてもという状態かぁ・・・。その数分後。午後の受け付けが始まり、2階のロビーにいた人たちはだんだんと上に上がっていった。

 上に上がるといかにも会議室っぽい部屋に通された。机は横5列縦4列に並んでいる。そこの真ん中のほうに僕は座らされた。(もえ)はその後ろに座らされた。それから数分経つと僕たちより後に来た受験生がポツリポツリと部屋に入ってきた。その中にも男子の姿はいない。代わりにいたのは木ノ本(きのもと)留萌(るもい)の姿だった。集合時間までに来た男子の数は僕を含め二人。50人ぐらいいたと思われる受験生の48人は女子ということだ。まぁ、これだけの女子が受けるというのは別に驚くことではないだろう。大体ここは男子が来るような学科が少ない。

 それから1時間かけて筆記。4・5人一組になって面接20分。筆記テストのほうはダメだったということはすぐに実感したが、その気でいたためか面接のほうも奮わなかった気がする。そして、帰り際のエレベーターの中。

「みんなさぁ本当は同じ学科の人たちと面接するのかと思ったのに全員違ったね。」

僕と一緒に面接を受けた女子の一人がそう言う。試験が終わればみんなそんな感じで口々に意外に思ったことを話していたが、僕はそういう気になれなかった。

 しかし、この人が言ったことは当たっている。僕は鉄道学科。残り4人の女子はそれぞれ外国語学科。エアライン学科。ホテル学科。ブライダル学科だった。それに面接の一番最初に自己紹介をしたのだが、面接を受けた人の中には熊本(くまもと)から受験しに来ている人もいた。鳥取(とっとり)という人もいれば、徳島(とくしま)というと、そして大分(おおいた)という人もいた。熊本(くまもと)なら新幹線の「みずほ」か「さくら」で来た以外ないだろう。鳥取(とっとり)なら「スーパーはくと」。徳島(とくしま)なら岡山(おかやま)まで新幹線でその先は「マリンライナー」か「うずしお」。大分(おおいた)なら小倉(こくら)まで新幹線でそこから「ソニック」で帰るという感じだろうなぁ。ということを試験中に思っていた。

 面接試験を終えたら流れ解散。僕は外に出て(もえ)が終わってくるのを待とうとした。

「ナガシィ。お待たせ。」

「早いなぁ。ていうかもう終わったのかよ。俺が終わった時には終わってなかったのに。」

「ナガシィがエレベーターに乗ることぐらいに終わったと思う。」

「・・・。さて、帰るかぁ。」

僕は歩き出した。

「ナガシィ。時には300系に乗りたくない。」

「今日は最初からそのつもり。って言ってもまだ相当時間あるなぁ14時40分の浜松に止まる「ひかり」は違うって言ってるから、その次だろうなぁ。」

時計はまだ14時03分を指している。新大阪(しんおおさか)まで御堂筋線(みどうすじせん)で7分。14時40分の列車には十分間に合う。

「前来た時さぁ、部活に時刻表に詳しい人がいるって言ってたじゃん。その人に300系のこと聞いてみれば。」

「・・・。」

携帯(ケータイ)を開いて、己斐(こい)にメールを打ってみた。

「15時40分の「ひかり」以外300系で運転されるのってある。」

「無いです。それ逃したら本当に遅くなりますっていうか。そのあとの「ひかり」は全部カモノハシです。」

700系(カモノハシ)かぁ・・・。)

「15時40分の「ひかり」は300。それ以外は700系(カモノハシ)だと。」

御堂筋線(みどうすじせん)の車両の中で僕は(もえ)に答えを言った。

「無いんだ。やっぱり。・・・。それに乗って帰るんでしょ。それまでの間何してるつもり。大阪(おおさか)で電車でも撮ってる。」

「バカ。そんなことしてたら余計目立つ。少なくとも今日はそれなしな。」

「じゃあ、普段着だったらありなんだ。」

「もちろん。めったに撮れないし。」

「まぁ、それはそれでいいとして。新大阪(しんおおさか)のホームで待ってるっていうのも骨じゃない。だってずっといるんでしょ。」

「・・・。ねぇ。(もえ)。お前帰りの新幹線ってもう切符買ってあるのか。」

「えっ。かってあるよ。自由席の。・・・。何心配になったわけ。」

「ちょっとね。」

「ナガシィって本当にバカだなぁって思う。帰り何時に終わるかわかんないのに指定取るわけがないじゃない。」

「・・・。」

ここは素直に自分はバカということを認めておこう。ていうか僕はバカだと思っている。

「ああ。そうかもしれないな。俺あすこ落ちたかも。」

「えっ。ナガシィそう言わないでよ。そんなこと言ったら私が受かれないじゃん。」

「お前もひどかったのか。」

「ひどかったもなにもなかったよ。ひどすぎ。もうちょっと勉強しとくべきだったかなぁ。でも、落ちてるはないと思う。」

「そう考えれるってうらやましいなぁ・・・。俺は落ちたっていう考えしか浮かばない。」

「・・・。そうネガティブになるなって。受けたばっかりなんだし、そういうこと忘れちゃおうよ。」

忘れちゃいたくても忘れられないことってあると思う。今これがそう言う状況になっている。

 新大阪(しんおおさか)までコマを進めてきた。御堂筋線(みどうすじせん)から降りて、わざとゆっくり歩く。改札をぬけて、新幹線のホームのほうへ歩いていく。新幹線の改札をぬけて、中に入った。そのまま15時40分の「ひかり」が出るであろう25・26番線に行った。新大阪(しんおおさか)駅は今改良工事中である。いたるところにそういうことをしているということが見受けられる。26番線の隣には白い鉄骨が建物の骨組みのように設置されている。

「あれって新しいホームかなぁ。27番線まで作っちゃう気かなぁ。」

「・・・。そうかもなぁ。」

僕たちはほかのところに見ぬ帰せずに2号車のほうまで向かった。新大阪(しんおおさか)では大概の人が降りちゃうから自由席でも混んでいるということはないだろう。2号車近くのベンチに腰を下ろした。

「ナガシィ。今あっちに「レールスター」止まってたけど。」

「・・・。発車しちゃうかなぁ。」

「さぁ、よく分かんない。まだ違うみたいだけど、移動してる間に行っちゃうかもね。」

「・・・。」

もし行動していたら案の定という結果だった。「レールスター」はすぐに回送されていった。次に僕たちのホームに来るのは14時40分の「ひかり」。東京(とうきょう)行き。これは700系だから、僕たちは見向きもしないつもりでいる。その時間になるとその新幹線が入線してきた。確かに700系だ。数分停車してすぐに発車。あわただしいものである。次に発車する「こだま」の「ひかり」が発車した後に入線。これも700系。

700系(カモノハシ)多いなぁ。」

「そうだな。」

「ナガシィは100系のほうがいいなぁって思ってるんじゃないの。」

「そりゃ思ってるけどさぁ・・・。」

「私もそのほうがいいなぁ。」

「えっ。(もえ)って100系のこと好きだったっけ。」

「100系。好きでも嫌いでもないけど、私は100系見て大喜びしてるナガシィのほうが好きだなぁ。」

「・・・。」

しばらく言葉を発することができなかった。

「何。それだけなの。」

「えっ。いいじゃん。ナガシィの100系見てなごんでる顔を大好きだし。あっ。そうそう。ナガシィって当然「リニア館」も行ってると思うから見てきたんでしょ。100系。」

「ああ。」

携帯(ケータイ)の中に100系の写真ある。」

「えっ。あるけど。」

「送って。待ち受けにする。」

「・・・。」

まぁ、待ち受けように撮った写真が1枚あるし、それを送ればいいかぁ。でも、今僕の待ち受けは223系1000番台。

(もえ)。100系送ってもお揃いにはならないよ。今俺の携帯(ケータイ)1000番台(223系)だから。」

「じゃあ、それ送ってよ。」

「・・・。」

「こっちなんかずっと8000系(阪急)だったんだよ。」

そのあと僕の待ち受けになっている223系と100系を送った。

「やっぱりナガシィって写真撮るのうまいでしょ。写るのは嫌いだけど。」

「うるさいなぁ・・・。」

「でも、事実じゃないの。」

(確かに・・・。)

雑談をしながらでも結構な時間がつぶれたと思う。そして、この後更なるプレゼントが僕たちの前にやってきた。目の前でなかったことが惜しかったが・・・。

 26番線に到着した「のぞみ」が発車しようとしているとき、ここで非常停止ボタン(詳細不明)が押されて、新大阪(しんおおさか)に発着する新幹線は4分ばかり足踏みを強いられていた。それが解消されるとまたすべての新幹線が何もなかったようにホームに進入してきた。僕たちの前25番線には何もいない。24番線には引退の時期が迫ってきている300系新幹線が体を横たえている。その向こうにはおそらく何もいない。300系の窓から向こう側の小さい景色が見える。

(あれ。)

お互いハモったと思う。(もえ)の身体をピクッと動いた。300系の先に何か列車が入ってきた。もちろんふつうのやつだったら敏感に反応することはない。

「「ドクターイエロー」じゃない。」

(もえ)が口を開いた。だが、(もえ)がそう言った前には僕の頭の中にはそれが「ドクターイエロー」だというのが裏付けられた。

「おい。300系邪魔だな。どけよ。」

そう言うと300系は発車時刻になったらしく東京(とうきょう)に向かって走り出していった。視界に「ドクターイエロー」の姿をしっかりととらえることができた。止まっているホームは23番線。今ここから走って撮りに行くことも可能かもしれない。しかし、この制服姿で撮影しに行くというのには抵抗がある。

「遠くだけどここから撮るかぁ。」

「あっ。健ちゃん。「ドクターイエロー」止まってるよ。」

後ろの子連れの母親がそう言う。その人はカメラを取り出して、23番線に止まっている「ドクターイエロー」を写真に収めていた。僕もそうしたが、遠くからとあって近くからのギャラリーが邪魔である。だが、今はそんな文句も言っていられない。僕は写真に収めると、(もえ)に見せた。

「もう撮ったよ。」

「撮ったのかよ・・・。」

「・・・。ちょっと遅かったけどいい誕生日プレゼントになったよ。ナガシィ。」

「・・・。マグレだよなぁ。俺だって今日ここに「ドクチャン」が来るとは知らなかったから。」

「マグレだからいいじゃん。」

「・・・。」

「それより、さっきから岸川の制服着た人が二人向こうのホームにいるんだけど・・・。」

僕もその方向を見てみた。100%木ノ本(きのもと)留萌(るもい)だ。それ以外考えられない。

(あいつら・・・。こういう時でもただじゃ帰らないんだなぁ・・・。)

 15時38分。新大阪(しんおおさか)25番線に300系の「ひかり478号」東京(とうきょう)雪だ。この列車には早いうちに乗りおさめておこうと思っている人もいた。300系の入線時にはカメラを300系に向けているおじさんの姿もあった。いったいこの列車に何人そう言う気持ちで乗る人がいるだろう。少なくとも5人はそういう人が乗るのだ。ドアが開いて(もえ)が一番に車内に入った。それに僕が続く。木ノ本(きのもと)留萌(るもい)はそれから数人後に乗り込んでくる位置に並んでいた。(もえ)は19番のEとD席を取った。息は通路側だったから帰りはお互い窓側で帰りたい。それがぶつかり合って、どっちに座るかをジャンケンで決めた。結果は(もえ)が窓側。

 15時40分。300系は前にカクンと揺れた。今の700系・N700系では味わえない。

「キィィィィィィン。プォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ。」

受験した後にこういう表現するのはあれかもしれないけど・・・。300系はすべるように走って行く。景色は人がたくさんいる階段口を通り過ぎて、ホームは後ろに過ぎ去った。

「ナガシィと乗る300系も乗りおさめだよねぇ。」

「そうだろうなぁ・・・。」

これに乗ったことは・・・。中学の修学旅行の時はバスだったから新幹線には乗ってない。新幹線に乗った回数は指折りで数えられるほどではないが、(もえ)と新幹線に。それも300系に乗ったことは指折りで数えられる。これも誕生日プレゼントの代わりにでもしようか・・・。300系に揺られること85分。浜松(はままつ)駅に到着した。あたりは暗くなりかけてはいるがまだ明るい。

(もえ)。ちょっと向こう行こうぜ。」

誘って16号車のほうまで歩いていった。先頭に到着してすぐに発車時刻になり、300系はドアを閉めた。新幹線特有の音の中に高い声が混じる。

「ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ。」

スピードを上げて、加速する。パンタグラフが架線と擦れていく。加速する。擦れていく。そして、音が小さくなる。僕と(もえ)は同時に300系が走って行った方向に顔を向けた。しばらく300系を見送る。300系がポイントを越えたところで、

(もえ)。そろそろ行こうか。」

「・・・。」

(もえ)からは300系がもうちょっと小さくなるまで回答がなかった。

「はぁ・・・。テストはボロボロ。受かる可能性低いけど・・・。「ドクターイエロー」は見れたし、300系には乗れたし・・・。」

(もえ)・・・。」

「よし。行こう。」

僕は(もえ)がそう言ったので、振り向いて階段のあるほうに歩いた。(もえ)はそのあとに黙ってついてきた。


「ドクターイエロー」。いい誕生日プレゼントだと確信してます。見れたら「幸せの黄色い新幹線」ですからね。

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