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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
162/184

162列車 長短と演習

 僕は面接練習の紙に頭を待やませた。なんて書いていいのか。言いたいことは分かっているのだが、なかなか言葉にして書けないということが続いた。

 10月1日。午後。今日も午前中授業で午後から離れにこもって模型をいじりながら、面接のことを考えた。・・・そんなわけないか。考えることができなくなるかぁ。それに陥らないようにする感じで(もえ)は僕の家に来た。

「本当に面接のこと考えてるのか。もう一週間しかないのよ。」

「分かってるってば。ちょっとは一人にさせてよ。」

「一人にさせたらどうするかわかんないから来てるんじゃない。(とも)君。」

「・・・。変な呼び方するな。ナガシィでいいよ。」

「で、今日私がここに来たのは私の面接練習の相手してほしいんだよねぇ。」

「先生にしてもらえ。俺にしてもらうなよ。」

「じゃあ、ナガシィもちょっと考えてくれないかなぁ。これのこと。」

(もえ)は自分のシャープペンで長所・短所のところを指した。なぜだ。これぐらいは自分で分かるものだろう。なぜ僕に聞くのだろう。

「自分でも分かんない所ってあるじゃない。それを人に聞いてどうなんかなぁって。」

「短所はすぐに浮かんでくるじゃん。子供。」

(もえ)はこの回答どう思ったのかすぐに分かった。(もえ)は僕に気付かれないように僕の後ろに回るとくすぐってきた。

「何が子供ですって。私は子供じゃないわよ。」

「そ・・・そう言う・・ところが子供なんだ・・・って。」

「私は子供じゃない。お分かり。」

「お分かりじゃない。」

「・・・まぁ、それはいいから。ちゃんと考えてよ。どうしてもわかんないんだから。」

(もえ)はそういうと机にその紙を広げて、頭を抱えた。僕も(もえ)の反対側に座って紙を広げた。どうしても自分でも分かんないところがあるのだ。

「ナガシィはほとんど埋まってるねぇ。」

「人のことより自分のことだろ。早く埋めちゃったらどうなんだよ。」

「だから、分かんないだってば。何が長所なのか。短所はいっぱい思いつくんだけどさぁ。」

「何。子供ですって。」

「ナガシィ。後でシバクよ。子供とかそういうことじゃなくて、正直に自分のことを言えないというか・・・。」

「いえてるな。運転手になりたいって事3年以上黙ってたんだからな。」

「そんなこと掘り返さなくてもいいじゃん。」

「ヤダね。掘り返したくなるもん。」

「子供。」

「うるさい。」

そういうこと言いあっても仕方がない。自分だった何が長所で何が短所なのかわかりづらいというのは確か。こういう時になるとこのことをどう書いていいのかということが分からなくなる。自分は積極的とか絶対的に言えない。ならこれは短所の内だろう。消極的を書いてしまえば済むことだけど、なんかこれ以外にもある気がする。お互いなかなか進まないまま時間だけが過ぎていった。

「なぁ、(もえ)。ちょっと遊ばない。なんかやって。」

「何って何やる気。電車でGO!はきりがなくなるし、特に模型はなしね。」

「デュエモでいいじゃん。」

「それだってきりがなくならない。それに今日私はPFP持ってきてないんですけど。今日はやるつもりなかったし。」

そのとおりだ。(もえ)はここに来るときPFPは絶対に持って来ない。

「・・・。結局やることなしかぁ。」

「もうちょっとこっち考えてよ。」

「考えるって言っても俺はこのままいい考えが浮かぶとは思えないんだよねぇ。」

「いえる。ナガシィバカだもんね。」

「確かに俺バカだけど・・・バカは余計。」

「自分でバカって認めるんなら余計なわけないじゃん。何が余計なの。」

「・・・。」

「やっぱりバカでいいじゃん。余計なものなんて何もないじゃん。バーカ。バーカ。」

「バカにすんな。」

今日はこのまま時間がただ過ぎて行くだけで終わった。いつもは時間を気にしないのだが、今日はやたらと時間が気になった。それだけこっちに割いた時間のほうが長かったということで取っていいのだろう。翌日も同じように考えた。だが、一つだけ違うのは気晴らしできるようにPFPをお互い持ってきていたことだろう。

「はぁ。なかなか思い浮かばない。デュエモでもやらない。」

(もえ)のほうから切り出した。

「いいよ。」

僕も浮かびそうになかったので、(もえ)と一緒にデュエモをやった。デュエモをやってる時間はあっという間に流れていった。5連戦やって僕は2勝3敗。(もえ)のほうが勝ち越した。累計での勝敗は僕が256勝294敗2引き分け。ここでも僕は(もえ)におくれを取っている。まぁ、(もえ)のほうがデュエモをやっていた時間が長いから少しは当然という結果が出ている。

「はぁ。気晴らししてもなかなか思い浮かばねぇ。」

「・・・。ねぇ。ナガシィ。私の長所って面倒見がいいところかなぁ。」

(もえ)は考えるような態度でそう言った。

「えっ。面倒見がいい。」

「だってナガシィみたいな子供のことも好きだけど、それって基本面倒見がいいってことじゃないかなぁ。」

「それはそうとして、何でおれは結局子供なのさ。」

「だってこれで大人だったらある意味ドン引きじゃない。」

「それ言ったらお前も同じってところあるぞ。」

「どんな。」

「うーん。俺をやたらめったらいじりたがることかなぁ。ふつうさぁ、大人はそういうことあまりしないって。子供だからいじりたがるんじゃないかなぁ。」

「それはどうかなぁ。高校生でもいじられキャラで生まれてきた人は今でもいじられるし、いじる側の人はいま高校生でもいじってると思うけど。」

「・・・。」

「ナガシィは何か思い浮かんだ。」

「やっぱり俺で思い浮かぶことって言ったらさぁ、明るいことかなぁってことしか・・・。」

(やっぱりナガシィは子供だ・・・。)

「光かぁ・・・。ひかり・・・。「ひかり」・・・。「ひかり」・・・。「100系(ひかり)」・・・。」

「・・・。それでいいんじゃない。私もナガシィのいいところは明るくて、嫌なこと何にもなさそうにしてる感じだと思うなぁ。」

「それは正直に受け取っていいのか。」

「正直に受け取っていいに決まってるじゃん。まぁ、それほどナガシィが純粋ってことじゃないの。」

「純粋ねぇ・・・。」

(もえ)の言っていることは当たっていると思った。確かに僕は嫌なことを何でもかんでも忘れようとして、そういうこと全く考えていないような感じだろう。これは長所とは違うと思うが、そういう風にふるまえるというのはある意味すごいのか・・・。今日お互いに何とかこのところを埋めて、日が流れていった。

 翌日10月3日。鳥栖(とす)先生にこの紙を提出した。今日から放課後を利用して面接の特訓だ。鳥栖(とす)先生は物理を教えている。そのため僕たちのクラスの授業はない。放課後物理準備室に行ってその特訓を受けた。僕としては落ち着きを払っていたつもりだった。だが、なかなか思ったようにはいかず、すべてではなかったもののダメ出しをくらった。それが終わってから(もえ)と合流。(もえ)は僕が駅にくるのが遅かったみたいで待っていたようだった。なんでかという理由を言うと、

「へぇ。ナガシィ熱心だね。」

(熱心・・・。僕の長所って変に真剣なことか・・・。)

ふとそんな考えが生まれた。

 翌日10月4日も面接の練習。昨日ダメだしされたところは何とか改善してきたが、完全ではなかった。10月5日の特訓も同じ。なかなかうまくいかないものなのだ。そう言うことを一気に忘れられる時が遠州鉄道に乗っているときだったが、降りてしまえば、ダメだったところをどうすれば改善できるか考えてしまう。そういうことはいいことなのではあるが、自分としてはなかなか考えたくなくなってしまって・・・。このままではいけないのだが。その日このごろ3日から言ってなかった離れに行った。この中であそんでいるほうが自分としては一番の気晴らしになるのかもしれない。

(自分が運転手になりたいってことを一面に出すかぁ・・・。誰でもいうようなことを言ってちゃダメだよなぁ・・・。)

ふとそんなことを考えた。これではいじっていない時と同じである。どうにかそういうときとは別にしたい。そういうところからどうにか切り離したいのだ。

「ナガシィ。」

離れのドアが開いて(もえ)の声がする。平日来るとは。2学期になったら珍しいことだ。

「どうしたんだよ。」

「私も面接練習やってもらったんだけどさぁ、なかなかうまくいかなくて。ナガシィのほうはうまくいってる。」

「うまくいってるわけねぇだろ。あんなの練習してなんぼじゃないよ。」

(もえ)も練習してるんだ。少しでも受かろうとする努力をしている。ここで僕がへこたれるわけにはいかないけど、3回も練習していて、ダメだしされる部分があるとさすがにへこみたくなる。ため息をついた。

「受験まであとほんのちょっとっていうのにさぁ・・・。」

「・・・。そこを考えても仕方ないよ。いつかは来るんだから。ていうか今日は特待生の筆記のほうでも勉強しない。」

「あんなのできるよ。多分勉強しなくてもねぇ。」

「ナガシィ。痛い目見ても知らないよ。少しはやっておいたほうがいいんじゃない。」

「大丈夫だって。変なことしなきゃ特待生は行ける。まぁ、特待になって授業料減免されるならそれが一番いいけど。」

「だから、勉強しようって言ってるじゃん。」

「・・・。」

結局その日も勉強をしなかった。いつものことだと(もえ)も半分あきらめていたけど・・・。

 翌日。今日も面接の練習をしてもらった。もう後がないと言ってもいいくらいの時背水の陣になっている。その日はうまくいって鳥栖(とす)先生も昨日よりはいい評価をしていた。翌日10月7日。心配になったから再び鳥栖(とす)先生のところで面接練習をしてもらう。詰めの調整までしてくれたことを今は感謝するだけだろう。

「受験。明日かぁ。頑張ってこいよ。」

「はい。」

「・・・。まぁ、特待性で落ちたら、それは周りに自分よりもレベルの高い人がたくさんいたってことだ。そう受け取っていいぐらいの気持ちでいけ。」

「・・・。」

周りに自分よりもレベルの高い人かぁ・・・。高をくくっているわけではないから、どういう結果でも後悔はしないと多分思える。

 そしてその10月8日。運命を分ける合戦の日が来た。


腹がへっては戦はできぬ。

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