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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:1
16/184

16列車 3Cars or 6Cars

 16時30分ごろ。エスパルスドリームプラザの2階入り口に集合。そこから今度は道を一直線に進んで清水(しみず)に帰る。予定では乗る列車は17時20分発の列車である。帰路。僕、諫早(いさはや)空河(そらかわ)朝風(あさかぜ)はさっさと歩いて一番先頭に立ち、その後ろに木ノ本(きのもと)、さらにその後ろに先輩たちが続く形になった。先輩たちとは距離が離れて、50m(メートル)ぐらいあったと思う。

 しばらく歩いて、長い歩道橋らしく物が見えた。その西側に目を向けると清水(しみず)の駅舎が見える。僕たちの前に現れた歩道橋は自由通路らしく清水(しみず)まで伸びている。中学生たちはすぐにその通路を伝って清水(しみず)まで走っていき、僕はそれを追う形になった。改札を通りに抜けて17時15分。十分間に合う。階段を下りてホームに向かった。ホームにはすでにその列車に乗る人たちの人盛りができていた。

 その頃先輩たちは、

「17時20分。まだ間に合うけど・・・。」

「そうだな。最後の最後ぐらいゆっくり帰らせてくれよだよなぁ。」

「これじゃあ、死んじゃうじゃん。」

「できれば、もうちょっとあったほうがよかったなぁ。」

電光掲示板に書かれている「3両」の表示にため息をついていた。

 17時19分。その列車が入線。そのころには先輩たちもホームに降りてきて、列車を待っていた。

「最後に乗る列車はこいつですね。」

諫早(いさはや)が乗り込み、空河(そらかわ)が乗り込む。僕もそれについて乗り込もうとした時、

「待て、その列車(こいつ)に乗るな。」

サヤ先輩が待ったをかけた。

「おい、諫早(いさはや)空河(そらかわ)。降りろ。」

その声を聴いて、下りるように促す。すぐに反応した二人はホームに降りて、数秒後にドアが閉まった。間一髪である。ドアが閉まった211系はホームから走り去っていった。

「サヤさん。なんで今の列車(やつ)に乗らなかったんですか。」

諫早(いさはや)が下りろといった意味を問いた。

「今のは3両だぞ。あんなん中に放り込まれたいか。」

「いわゆる。混むから乗りたくないってことだ。」

アヤケン先輩が解説する。

「なんですか。それ。今のに乗っていくっていう風になってたじゃないですか。だったらあれに乗るべきでしょ。たとえ1両でも。」

「大丈夫。こんなの日常茶飯事だから。お前たちに今後の部活の予定表渡してあるだろ。あれ。今までなかった日にやることってなかったか。」

善知鳥(うとう)先輩の解説には何となく納得できた。4月の24日以降あった部活は25日、26日、27日、28日、29日。予定されていた日は25日、26日、29日。27日と28日の部活は最初から予定になかった。それをやっているのだ。そして、24日の部活も予定されていなかった。つまり勝手に行われている部活があるのだ。

「だから、予定表なんて気にしちゃいけない。予定表通りにやらないのがこの部活なんだから。諸君。分かったか。」

「こういう部活で、そんなにルーズじゃいけませんよねぇ。」

「いけないんだけどねぇ。でもすぐになれるよ。」

この後聞いた話だが、善知鳥(うとう)先輩たちが入部したときからこの状態だったらしい。ほぼ伝統化してしまっているそうだ。

 次に来る列車は17時37分発。普通浜松(はままつ)行き。これには行先の隣に6両とはいっていた。そのため、この列車に乗って帰ることになり、浜松(はままつ)到着は19時04分となった。

 17時37分の列車は211系を先頭にする6両編成。パンタグラフを見ていたナヨロン先輩の判断では後ろは313系ということだった。

 211系のシートに座って、ボーッと外を眺めていると新幹線の線路が隣に現れた。静岡(しずおか)に着いたのだ。その静岡(しずおか)には長居せずにすぐに発車。この後「ホームライナー」で通過してきたすべての駅に停車しながら、浜松(はままつ)を目指す。その間はどうしても暇になる。

永島(ながしま)。柿ピーでも食べる。」

「おう、食べる、食べる。」

柿ピーがなんなのかは別にして、今は何かしていたほうが暇ではない。そう思って佐久間(さくま)から柿ピーをもらい食べる。

木ノ本(きのもと)も柿ピー食べるか。」

「おやじか。お前は。」

「うるせぇな。いいだろ好きなんだから。」

数分後。

「結局木ノ本(きのもと)も食べるのかよ。」

「そうじゃないって。なんか食べてたほうがましってこと。なんかやることなすこと久しぶりすぎて体がついていけてない。」

「あー、そう。」

「あー、もうこれが夕ご飯でいいや。」

「えっ、柿ピーが。」

「だって、この後夕ご飯のことなんか考えたくないもん。それにお父さんには夕ご飯食べてくるねっていえばそのあとはスルーしてくれるし。」

「なぜお父さんにメール。」

「ああ、うちイクメンだったから。お母さんがJR(ジェイアール)で働いてるって言っただろ。だから、自動的にあたしの世話はお父さんになったわけ。」

「いや、育児休暇(いくじきゅうか)みたいなの取らなかったのかよ。」

「取らなかったらしいよ。お母さんが休んだのは私を出産する間の1年ぐらいで、私を産んだらすぐに職場に戻って運転やったんだって。」

木ノ本(きのもと)の父さんよくそれ了承したよなぁ。」

「今考えてみるとかんなんだよ。お父さん昔よく私を連れて駅とかに出かけてったから。だから、お父さんも鉄道マニアだったんだと思う。だけど理由(わけ)あって、仕事続けられなくなったんだと思う。」

「なんで仕事続けられなくなったんだよ。」

「そんなこと知らないよ。それに小さい時からそんなこと知っちゃったら運転手になりたいなんて思わないって。」

「・・・。」

 掛川(かけがわ)を過ぎると東海道本線は新幹線と並走する。

「なんか来ないかなぁ。」

前の新幹線を見て、木ノ本(きのもと)がつぶやく。

「なんか来てくれるといいな。でも新幹線ってさぁ、なんか来てほしいなぁって思ってる時に来なくて、どうでもいいかって思ってる時に来るんだよなぁ。」

「あっ、それよくある。なんで新幹線ってあんなにKY(ケイワイ)なんだろうなぁ。もうちょっと空気が読めればいいのに。」

「ハハ。空気読めか。・・・なんかわかる。」

すると前を新幹線が通過していった。特徴は鼻の先に光っていたテールライトだった。

N700系(エヌナナ)だな。」

N700系(エヌナナ)だな。はぁ。この頃あいつ多すぎ。」

「これからあの手の車両しかいなくなるんだろうなぁ。私N700系(エヌナナ)あんまり好きじゃないんだよねぇ。まだ700系(カモノハシ)のほうがかわいかったというか。」

「えっ、700系(カモノハシ)かわいいか。俺あれ一番最初に見たときなんじゃこりゃって思った車両(やつ)だけど。」

「なんじゃこりゃか。そこは人それぞれだもんなぁ。・・・永島(ながしま)さぁ、自分が一番好きな車両って何。」

この手の質問には正直困る。それぞれでいちばんがあるためだ。例えばJR(ジェイアール)北海道ならキハ261系「スーパー宗谷(そうや)」。JR(ジェイアール)東日本なら253系「成田(なりた)エクスプレス」など。他にもたくさんある。

「一番か。・・・答えるのに困るなぁ。」

「あっ。じゃあ、新幹線でいちばん何。」

「100系と200系のH(エイチ)編成。俺それが好きだな。」

「100系はどういう顔してるかわかるけどさぁ、200系のH(エイチ)編成ってどんな顔してる。いまいちよくわかんないんだけど。」

H(エイチ)編成って、あの100系の顔した200系だよなぁ。」

佐久間(さくま)が確認してきた。

「そうそれ。」

「あっ、なるほど。・・・じゃあ、永島(ながしま)って「グランドひかり」の100系も好きなのか。」

「「グランドひかり」の100系は好きじゃない。鼻の下にあるひげが・・・。」

「あれって空気取り込み口なんだってなぁ。俺もあんまり好きにはなれないなぁ。」

「あっ。そうなんだ。知らなかった。」

「えっ、永島(ながしま)なら知ってると思ったのに。」

「俺確かに電車には詳しいけど、そういう方面詳しくないんだ。それに今の今まで遠江急行(こうきゅう)の駅と遠州鉄道(えんてつ)の駅全部言えなかったから。山手線の駅は全部言えるけど。」

遠江急行(こうきゅう)遠州鉄道(えんてつ)とは地元を走っている私鉄のことである。

「それふつう逆だろ。」

「だって、そうだったんだから仕方ないだろ。」

「でも、今なら言えるんだろ。」

「いや。まだちょっと怪しいところがあるけどなぁ。順番通りに言える自信ねぇし。」

こんな話をしながら211系に揺られた。浜松(はままつ)到着は19時04分。定刻通りに到着した。


 翌日。5月3日。この間は浜松(はままつ)祭りも絡んで部活はない。毎日のように家の模型で遊んでいる。しかし、今日はちょっと携帯(ケータイ)をいじって遊んでもいた。

「昨日、部活の歓迎旅行で国府津(こうづ)まで行ってきたよ。」

文面をこうして相手に送る。それの返信は、

「ふぅん。ところで、何か珍しい車両とか見た。」

「見てない。」

「そう。じゃあ、100系とかも見てないんだね。ナガシィの好きなやつだけど。」

(見れないけどな・・・。)

「確かに。でも本物見て失神しても困るから。」

「失神じゃないだろ。その前に死ぬだでしょ。うれしすぎて。」

「ハハ。そうかも。」

「でも、ナガシィいいなぁ。いろんなところに行けて。次行くときは何か撮ってきてよね。お土産はいらないから。」

「何がお土産はいらないだよ。いるじゃねぇか。」

「まぁ、いいじゃん。でも、このお土産だったら買う手間ないよね。」

「確かに。次臨地研修が夏にあるから、その時は何か撮って帰るよ。」

「じゃあ、どこ行くかわかったらメールしてよね。予約入れるから。」

「へいへい。」

そう送ってスライド携帯(ケータイ)の端末を閉じた。

「さて、そろそろ貨物にでも変えるかなぁ。」

寝そべった状態から体を起こして、車両子に入る。これを何十回も繰り返してこの日を過ごした。他の日も同じで6日までの暇つぶしには困らなかったが、ゴールデンウィーク中に出された宿題は何もやっていなかった。とりあえず6日の午後に片づけて、次の日からまた部活だ。

 5月7日。宗谷学園では、

「何、安希(あき)。」

赤電(あかでん)って芝本(しばもと)から新浜松(しんはままつ)まで乗るといくらかかる。」

赤電(あかでん)って何。」

「えっ。(もえ)ちゃんそれでも電車詳しいの。」

「分かんないものはわかんないんだから。そもそも赤電(あかでん)って・・・あっ、遠州(えん)鉄道(てつ)のことか。」

ようやっとその意味が分かった。

「400円だよ。」

「400円ね。そのあと名古屋(なごや)まで行きたいんだけど、名古屋(なごや)までいくらかかるかわかる。」

「ごめん。私詳しいの車両だけだから。」

「あっ、そうなんだ。じゃあ、「ひかり」か「こだま」どっちが速い。」

「えっ、「ひかり」だけど・・・。それわかんないってヤバくない。」

「ヤバくないって。これって知ってたほうがいいこと。」

「そういう意味じゃないけど、それくらいふつうじゃないってこと。ってごめん。話が脱線しちゃったね。」

(本当に(もえ)ちゃんって電車のこと好きなんだな。これで、電車が彼氏とか言わないよねぇ。)

安希(あき)はそう思いながら、自分のクラスに戻った。

 クラスに戻ると友達に話しかけた。

「ねぇ、(あずさ)(あずさ)の言うこと本当だったよ。あれってすごいよねぇ。」

「すごいというかすごすぎだよ。前なんか、電車なんか見分けられてふつうみたいなこと言われたから。」

「えっ、電車って違いとかってあるんだ。」

「そうらしいよ。この前なんか電車来たのにあれには乗りたくないとかって言ってたし。」

「へぇ。」

 今度はそのことを萌の中学からの友達に振ってみた。

「そのことだったらあたしたちはどうとも思ってないけど。」

「あれって受け流しとけばいいんだって。(あずさ)安希(あき)も真剣に受け止めようとするからそうなるんだって。聞き流しておけば軽い反応で済むから。」

「萌ちゃんって昔からああいう子だったのか。」

「いや、少なくとも小学校1年生の時はああじゃなかった。」

「小1の時は・・・。つまり小2からああなったっていうわけ。」

「そういうこと。(もえ)よく電車に詳しい男子と休み時間中話してて、本人が言うにはそれだけで覚えちゃったらしい。新幹線のこととかいろいろ。」

「へぇ。」

お弁当を食べ終えて、机にのめっている萌の姿を見る。

「でも、このごろ元気がないんだよなぁ。彼氏と違う学校になったからかなぁ。」

「えっ、あれで。」

「あっ、(あずさ)たちが知ってるのは電車の話するときの萌だけ。中学の時とかもそうだったけど、授業とかになったらあれがふつう。だから、電車の話してる時のほうが生き生きしてるように見えるだろ。」

「・・・。」

「本当はその人のことが死ぬほど好きなんだよ。なのに、何で別の学校に行ったんだかあたしにもわかんない。」

「・・・。」

ところどころ聞こえてくる言葉を背中で受ける。ふと机の中からスライド携帯(ケータイ)を取り出して、端末を開いた。待ち受け画面は阪急8000系。永島(ながしま)が好きな車両の一つである。

「・・・。」

5秒くらいの間8000系を見つめて端末を閉じた。

 一方岸川学園では、

「結局ボイコットするとかみたいなこと言ってたけど、しなかったじゃないか。」

醒ヶ井(さめがい)が呆れたように言った。

「するわけないだろ。1年生のいない歓迎旅行ってなんだよ。まぁ、サヤ先輩がやりそうみたいだったけど。」

善知鳥(うとう)先輩が言ってたけど、サヤ先輩って時間にとってもルーズなんだって。それだから、歓迎旅行の時に「サヤがボイコットした歓迎旅行」だって先輩が言ったんだって。」

「鉄研の部長が時間守れないって死んでるよなぁ。」

「あれで、将来なんになるんだか知らないけどさぁ。」

「ハハハ。」

 その頃3年生のほうは・・・、

「ハックション。」

「食事中にくしゃみするなよな。サヤ。」

「いや、誰かに噂されてる。まったく誰だよ。こんな時間に噂するゴミなやつは。」

「ゴミなやつって。それお前十八番(おはこ)だな。」

「ところで、今日部活あったっけ。」

「ないよ。」

「ないのかよ。ホントゴミだな。」

その頃部室では・・・、

「お・・・お前。のぞきに来たわけじゃないんだから、ハンマー投げることないだろ。ていうか、それで窓が割れたらどうするつもりだったんだよ。」

「そういうときは、のぞきに来たバカタカに弁償してもらうわよ。なんでそんなにあたしの下着姿見たいわけ。」

「見たいわけじゃねぇよ。ちょうど絢乃(あやの)が着替えてることが多いんじゃないか。つうか、そんなに見られるのが嫌なんならあっちの更衣室(こういしつ)に着替えればいいじゃないか。あっちなら見られないんだから。」

「今ちょうど体育でバレーボールやってるんだからしょうがないだろ。あたし教室じゃなくてここでお昼食べてるんだから。」

「一人で食事かよ。さびしい奴だなぁ。」

「別に。教室で食べるとバカタカと一緒に食べないのかって冷やかされるから。」

「教室に帰ってくれば同じだろうが。」

その言動にあきれ閉じた目を開けると、

「何胸見てるんだよ。体育の後は制服が透けて下着の解像度がいいみたいな目で見てるなよ。」

「それ、お前の一方的な考えだ。」

「黙れ、このバカタカ。」

絢乃(あやの)は机の上に置かれている小物入れの引き出しからボンド水を滴下する注射器を取り出した。

「バカやめろ。それはヤバいって。」

「バカタカ。どっちの目に打ってもらいたい。」

「どっちも嫌だわ。」

 とまあ、今日も一日ふつうに過ごしている僕たち鉄道研究部(てつどうけんきゅうぶ)である。


今回からの登場人物

薗田安希(そのだあき)  誕生日 1994年3月10日  血液型 B型 身長 157cm

この小説に出ているほとんどのキャラクターには電車からの由来があるんですよ。

今回の安希も東京~広島間を走っていた「特急安芸(あき)」からきてます。

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