156列車 形式バトル
6番線に入ってきた「しなの」を撮影して、次は7番線の電車が停まるであろう位置に戻ろうとみんなを促す。だが、一つだけ思ったことがあった。さっきDE10が行った方向に停まっていて、ずっとヘッドライトを点灯している115系。あれがここから乗る車両なのだろうか。だが、来てみると本当だったらしい。7番線の陰から現れたのは115系。しかもなんかの折り返しではなかった。多分車両はさっきからヘッドライトをつけっぱなしにしていた115系だろう。
アド先生の隣で115系が停まりきるのを待つ。となると115系は「プシュー」という音だけをたてた。ふつうならこの音とともにドアが開くと考えるのがふつうだろう。しかし、それは都会的な考え方にすぎない。中にはこういうところもあるのだ。ドアは手動式だったり、1日目みたいにドア横についている開閉ボタンを押さなければならないというところもあるのだ。ちなみにアド先生はこの音が鳴るとドアが自動で開くと思っていたようで何も動こうとしなかった。僕がドアを手動で開けて中に入る。それに続いてアド先生や他の乗客が乗り込んだ。
列車に乗ると最後尾の車両に向かった。僕から見て右側一番むこうのボックスシートには柊木、潮ノ谷、夢前、青海川が座っておりその後ろのシートには朝風が大きな荷物と一緒に席を取っていた。どうやら座れる場所は底ぐらいしかないようだ。座っていいかと断って腰を下ろした。車両的には悪くない115系ではあるが、この車両には一つだけゴミなところがあった。席右側のポールとポールの間にはパネルが張られていて、座ったままドアを操作することができない。ドアで遊べないというは誠に残念なことである。
この列車に揺られて篠ノ井を過ぎると昨日「しなの」で下った坂を上る。姨捨到着直前に昨日「しなの」であったアナウンスが流れる。ここ姨捨から望む風景は根室本線狩勝峠と肥薩線矢岳に並ぶ日本三大車窓の一つに数えられ、国が指定する名勝の一つでもあるらしい。昨日の逆再生を楽しんでいるとさっきの二本木を同様駅でない所で停車。するとすぐに逆走して、駅に進入。ここがさっきから言っている姨捨駅である。しばらく停車して、姨捨を発車。発車後はこの絶景からも離れて松本へと舵をきって行った。
トンネルの連続する区間。だんだん瞼が重くなって来る。
「ああ、寝ちゃいそう。」
「じゃあ寝ればいいじゃないですか。」
「いや、寝たら死ぬ。」
「寝たら死ぬって。榛名先輩がやってるみたいに10分おきに起こしましょうか。」
柊木が話しに入ってきた。
「あのなぁ。それ木ノ本だからできることだぜ。まず俺と木ノ本は体のつくりが違う。」
「そうですかねぇ。同じ人間だから、みんなやろうと思えばできると思いますけど。」
「同じ人間でもできないものはできないんだ。」
またしばらくすると明科に停車。明科ではちょっと長い時間停車したままでさっき長野の6番線に停車していた383系「特急しなの」が抜いて行った。
ここ明科を過ぎると降車駅松本はすぐそこ。松本で115系から降りて14時30分発の中津川行きを待つため5番線に場所を移した。
「おっ、「あずさ」だ。」
「「あずにゃん」って・・・。たしかにE257とE351の名前「あずさ」だけどさぁ、こいつらに「あずにゃん」は合わないよ。」
「じゃあ、留萌は何だったら「あずにゃん」っていう呼び方があってんだよ。」
「183系のあずさ色。あれだったら可愛いし、「あずにゃん」って呼んでも違和感ないかも。」
「ナガシィ先輩。簡易運転台の「あずさ」来ましたよ。」
「おおっ。簡易運転台の「あずさ」。」
「ダメダメ。簡易運転台で「あずさ」っていう呼び方全然合ってない無骨すぎるから。」
「あんたら、その呼び方やめい。」
14時15分。僕達の乗る普通中津川行きが5番線に313系のダブルパンタ車が入線。昨日も見た地元の懐かしい車両である。違うところは2両編成でとても身軽なところとダブルパンタというところだ。
(313系に2時間揺られるのかぁ。きついなぁ。)
と思いながら車内に乗り込む。車内は緑を基調としたセミクロスシート。どうなっているのかということを簡単に説明すると、ドア付近はロングシート、窓の部分はクロスシートとなっている。この構造のことをセミクロスシートというのだ。その進行方向右側のクロスシートに腰をかけた。ドアで遊ぼうかとも思っていたが、先が長すぎて、とてもじゃないがそんなことやっている場合じゃない。
14時30分。松本を発車。途中の塩尻までは暇ではなかったのだが、塩尻から中央本線の山のド真ん中に入ると暇になる。
「永島。なんかしないか。」
「なんかするって言っても何するんだよ。」
「ナガシィ先輩。またあのお題でやりませんか。」
「お題。」
「はい。誰か一人が問題を出して、それに沿った答えを順番に出し合うんです。」
「・・・またっていうことは昨日もやったってことか。」
「ああ、昨日は「スーパー」ってつく特急の名前とか、そういう制限なしで自分の知ってる特急の名前とか、EFってつく機関車の形式とか、新幹線の愛称とか、東海道・山陽新幹線全駅言うとかいろいろやったな。」
「ふぅん。結構やってんだな。・・・面白そうじゃん。皆でやろう。」
「いやちょっと待て。皆でやると誰かが最強になっちゃうお題がいくつもある。」
「そうそう。特に己斐さんとか最強じゃないですか。」
「そう言うこと言ってたら、怖くてできないだろ。」
その後木ノ本が適当に人を集めた。結果やると行った人は僕、木ノ本、留萌、柊木、隼、北石、朝熊、空河、朝風、大嵐、青海川である。
「じゃあ、何から始めようか。昨日やったのって特急の名前と「スーパー」ってつく特急と、新幹線の駅と愛称と、|機関車(EF)だったよね。」
「ああ。」
しばらくみんなで考えて考えついた人からそれでやっていくことにした。まず一番最初のお題は電車ディーゼルの車両形式だった。順番は僕、柊木、空河、朝風、隼、木ノ本、留萌、朝熊、大嵐、北石、青海川の順である。
「じゃあ、311系。」
「115系。」
「E231系。」
「285系。」
「211系。」
その後は313系、123系、489系、521系、キハ80、283系とまずは一周目。223系、113系、2000系、E233系、京浜急行2100系、583系、キハ25、189系、117系、キハ281、683系、681系、485系、キハ283系、783系、787系、789系、481系、キハ56形、遠州鉄道1000系、キハ58、373系、207系、119系(消防署)、キハ181系、パス。まず朝風が脱落。続いて隼、木ノ本も脱落してしまった。キハ185、8000系、813系、キハ10、キハ187系、321系、パス。これで柊木も脱落。キハ201、クモル145形、165系、パス。大嵐も脱落。701系、125系、キハ183、キハ40、E491系、パス。朝熊脱落。キハ57形、パス。青海川脱落。815系、キハE130、209系、キハ65型、253系、251系、121系、103系、キハ261、パス。空河脱落。185系、キロ65形、483系、151系、キハ48形、651系、E653系、キハ47形、811系、キハE120形、キハ120、キハ85、303系、371系、E217系、455系、キヤ95(ドクター東海)、5000系、クモヤ143形、パス。北石脱落。419系(食パン)、E657系、225系、101系、E501系、72系、215系、155系(修学旅行)、183系、421系、157系、451系、781系、413系、785系、E331系、169系、381系、287系、711系、E259系、717系、キハ35、213系、453系、281系、E531系、203系、415系。
「クソッ。留萌まだ持ちネタあるのかよ。あれほど考えた意味ないじゃん。」
「私に車両ネタで勝とうなんて100年早いわよ。」
「うーん・・・。255系。」
「HB-E300。」
「・・・。」
「そろそろパスすれば。もう私の一人勝ちは変わらないんだし。」
まだまだ余裕の表情である。僕にはもう持ちネタがない。
「・・・留萌最強すぎるな・・・。パス。」
「はぁ。ようやっと終わった。あれ考えるのはっきり大変なんだからな。」
「じゃあ、なんであんなにポンポンポンポン出てくるんだよ。」
「そんなの永島が考えてる間に考えてるからに決まってんじゃん。」
「つうか、これ面白いけど・・・、大変じゃない。やっぱしりとりする。」
「私はそんなことより座らして。今ので疲れた。」
留萌はそう言って荷物を置いたままにしていた席に戻った。木ノ本以外の他のメンツはゲームが終わる前に自分の席に戻ったり、寝入ったりしたため、今僕の前に立っているのは木ノ本だけである。
「永島。なんかやらない。」
「もう勘弁してくれ。少しはボーっとさせて。」
誘いを断って外を見た。木曽福島のあたりからは雨も降りだして、山々をしずくの中にかすませていった。
考えるのに相当の労力を使いました。