154列車 「しなの」で普通
「発車しちゃいましたね。」
「そんなことよりどうするんですか。このままじゃあ帰りが1時間近く遅くなっちゃうじゃないですか。」
「今は利子がどうの言ってる場合じゃないな・・・。」
15時04分発「しなの13号」長野行き。定刻通りに帰るためには、これしかない。
「翼、朝風。あの15時04分発の「しなの」なら、長野着15時55分で、その後の行動は予定してた通りにとれる。それであの「しなの」を使わなかったら帰りが1時間くらい遅くなる。どうする。」
「でも、ここでカットンじゃうとその後がきついですよねぇ。」
「確かにきつくなるなぁ。」
「て、今そんなこと言ってる場合ですか。この後がきつくても1時間帰りが遅くなるよりはましです。「しなの」で長野まで行っちゃえばこの遅れも元に戻る。そうですよねぇ。」
「そうだけど・・・。二人とも財政的に大丈夫。」
「とりあえず多く持ってきてます。」
「お金の方は大丈夫です。でも、まさかここで「しなの」を使うことになるとはなぁ。」
「俺だって思ってなかったよ。」
(「しなの13号」しかないんだ。これで長野まで行くしかない。)
改札を出て、特急券購入の券売機に足を運んで「しなの」の自由席券を購入する。「しなの」の切符を手に入れてからはまたホームに戻った。「しなの13号」が発車するホームにはE351系「特急スーパーあずさ」が停車していた。またしばらくすると2番線にE257系の「特急あずさ」が停車した。「あずさ」をカメラに収めて、足元に案内されている「しなの」の乗車口に向かった。「特急しなの」の自由席は後ろより。8両で運転される「しなの13号」の自由席は7号車と8号車。どちらに乗りたいかと聞いたところ全員一致で動力車の8号車に乗ることになった。そこまで歩いて行っている間にE351系の基本編成(8両)が車庫に回送され、「しなの13号」が到着する直前になって付属編成(4両)が車庫に回送されていった。
15時03分。3番線に「特急しなの13号」が入線。その車内を確認して、座れそうなところを探した。7号車も8号車もガラガラと言えばガラガラである。その席の中で一つ向い合せになっている席があった。
「あの席取りましょう。」
柊木が言った。
ドアが開くと柊木は2番目に車内に飛び込んだ。すぐさまさっきの席まで行って席を確保した。
「長野まではゆっくりできるな。」
「そうですね。」
外に目をやると「しなの」は小さく揺れて松本を発車していた。
しばらく「しなの」に揺られていると、柊木が前の方を見に行くと言って席をたった。
「永島さんも行ってくればいいじゃないですか。荷物は僕が見張ってますから。」
「そうか。サンキュー。」
6番D席から離れて、柊木を追った。5号車で車内販売のカートが通り過ぎるのを待っている柊木と落ち合って、その先へ向かう。5号車の客室ドアを開けると4号車が傾いている。5号車の貫通路は僕達から見れば直立している。ちょっとそれに驚きながら、さらに前を目指した。1号車のグリーン車まで来ると運転室のすぐ後ろの席まで行った。幸いにもA・B席側は開いている。ちょっとその席に座って前を見てみた。するとトンネルから出てまたトンネルに突っ込んだところだった。ちょっとその迫力に浸ったところで、また席に戻った。
席に戻ってしばらくすると駅に停車。まだ次の篠ノ井ではない。運転停車なのだ。運転停車をしている最中に上りの「しなの」が通過。列車が通過したのちに駅を発車した。その後は山の上から盆地を見下ろすところを走って、山を駆け下りる。山を駆け下りて長野新幹線が並走するようになると篠ノ井に停車。篠ノ井を発車した後、東京行きの「あさま」ともすれ違って、長野に滑り込んだ。
長野では16時11分発の普通直江津行きが既に7番線に停車していた。その115系に乗車して、終点直江津まで向かう。16時11分。信越線の115系は定刻通りに長野を発車。さっき朝風が言った通り特急に乗った後の普通はきつかった。だが、乗っている間手動式で開けるドアで遊んだり、模擬デュエルで遊んだりして、そのきつさを吹っ飛ばした。
今どこを走っているのかというのをふと思う。しばらくすると二本木に停まるというアナウンスがあった。二本木には長野行きの115系も停車している。その115系が発車した後僕達の115系も発車したが、意外な方向へ進み始めた。今まで進んできたのとは逆の方向へ進み始めたのである。しばらく逆走して停車。停車ののち元の進行方向に戻って進み始めた。
「結構予想外な駅ですね。」
「スイッチバックかぁ。あるんだな。」
「スイッチバックねぇ。そう言えば「す」が来たらスイッチバックもありだったんじゃないですか。」
「ああ、今思えばそうだな。」
その後は絵的にも映えそうな駅はなく直江津に到着した。
「で、直江津まで着たら北陸本線の各駅ですか。この後が余計きついですね。」
「確かにきついけど、もうこれだけなんだ。よだれたらして爆睡してってもいいぜ。」
「マジすか。謝っとかないとダメですかねぇ。つうかそれやったのなんの中ですか。」
「大糸線の中。」
「あっ、じゃあ問題ないですね。」
降りたホームの高さが何か気になる。結構な段差を見てホームに降りる。今ついた115系が止まっているホームの対岸には新潟色と呼ばれる塗装の115系が止まっていた。色は緑色である。その隣には特急列車が止まっていた。ヘッドマークから「妙高」ということが分かった。使っている車両は189系。長野新幹線が開通する以前に上の長野間を結んでいた「特急あさま」に使われていた車両である。窓周りの緑は信州の山々を表したものだろうか。同じところを走っていた489系の「特急白山」とは対照的である。
「明日は「妙高」に乗るのか。」
つぶやいた。
「まったく。特急車両使うくらいなら快速運転しろよ。」
柊木が文句を言っている。
「えっ。「妙高」って快速じゃないのか。」
すると、デジカメを突き付けて方向幕を写した写真を見せた。
「このとおりですよ。名前持つくらいなら快速運転すればいいのに。これじゃ朝のEF510(レッドサンダー)と同じですよ。」
指差したところには「普通 妙高号 長野」と書かれている。後に柊木がそう言ったのは189系の余生としてふさわしくないという意味だろうか。それとも普通に使うくらいなら189系を使うなという意味なのだろうか。
189系と115系の撮影が終わった後階段のある方向へ歩いた。直江津にはたくさんの線路が広がっている。その東日本側には工場みたいな建物があり、その傍らに京葉線で活躍していた205系の姿を捉えた。
(205系・・・。なんでこんなところに・・・。)
さっき長野でも京浜東北線で働いていた209系を見た。だが、その姿は何かさびしそうである。走れていない以外にも何か他のさびしさを感じるのだ。
「ナガシィ先輩。あれなんですか。あれ。」
柊木が僕を呼んで、工場の中からチラッと顔だけを見せている車両を指差した。まずその特徴として白いということ。おそらくヘッドライトなどがある部分にも特徴があった。楕円が縦に長いのが2つ内側寄りについていてその外側に大きな楕円があるということ。これが今分かる「謎」の容姿だ。
「分かんないなぁ。留萌に聞けば分かるんじゃないか。」
「さくらさんもそういう意味では万能ですね。」
「それさくら先輩に言ったらしばかれるぞ。」
「まあ今はここに本人がいないんだし大丈夫だろ。つうか1番線に行くぞ。発車番線が変わってるって本当に迷惑な話だ。」
まあ洪水のことを考えれば仕方がないのだろう。でもやっぱり腹が立つ。
到着ホームの変わった17時57分発普通富山行きは直江津の2番線の糸魚川寄りに小さく切り取られたところにある。そこには北陸色に塗装された475系が停車していた。この列車には朝乗った413系とは違って片開きのドアが車両の両端にしかない。電車の構造としてはとても不便であるが、この構造は仕方がないのである。北陸地区で活躍していた、もしくは活躍している475系と419系はもともと優等列車と呼ばれる列車に使われていた車両である。つまり特急・急行として走っていた車両を普通列車用に改造して使っているのだ。また最小限のコストで改造を行ったため419系では一人しか通れる幅しかないドアが2か所にしかついていなかったりと通勤電車などとして使うには最悪である。だが、考え方によればこんな車両でも好評の様である。
車いすを使うには全くお勧めできない高さを越えて車内に乗り込む。客室は行ってすぐのところにあるロングシートを無視して、運転室側から2番目左のボックスシートに腰を下ろした。結構乗車するのかと思っていたが、ボックスシートが全部うまるくらいの乗車(一つのボックスシートに1人か2人程度)で多いとはいえない。この乗車率では・・・。将来第三セクターになるのも分かる気がする。
17時57分。発車時刻になっても発車しない。17時59分。車掌からの案内で下りの「特急はくたか」を待っているとのこと。なら、しばらくの間はこのままである。
18時00分。
「「トワイライト」。」
朝風がふいに声を上げた。さっき電光掲示板はよく見ていなかったが・・・。考えてみればこの時間に「トワイライトエクスプレス」が見れると自分が何度も言っていたことではあるが・・・。
18時04分。2番線に「トワイライトエクスプレス」を隠すようにして「特急はくたか」が停車。その発車を見届けて、18時07分。普通富山行きは10分遅れで直江津を発った。
その後は何もないかと思っていたが、何回かあった。トンネルの中に停車したのだ。それもただの運転停車というたぐいではない。営業停車なのだ。トンネルの壁にある案内板からここは筒石というらしい。浜松では絶対に見ない形の駅である。その珍しい駅をカメラにとり終わると、475系は何もなかったようにまた走り出した。またその走っている最中に何かとすれ違った。475系の窓ぎりぎりの位置に見えたあかの目立つラインが目に飛び込んだ。今のは「はくたか」で間違いないと思うが、こんな時間に設定されている「はくたか」があるのかと思った。次の能生で青一色の475系と会ったため、たぶん「はくたか」だという結論に達した。また糸魚川到着の前には・・・。明るかった車内が急に暗くなった。
「あれ、車内灯消えましたね。」
柊木がつぶやく。すると後ろの方で光を感じた。しばらくすると僕達の方にあった小さな蛍光灯が点灯し、10秒くらいそのままの状態で走った。その後非常灯の蛍光灯が消灯し、正規の蛍光灯が点灯した。有名かは知らないが、死電区間という電気の供給されていない区間である。ここで直流と交流が切り替わる。僕達が走ってきた方向から言えば、直流1500Vから交流20000Vの60Hzに切り替わったのだ。
「死電区間ですね。今は583系でしか拝めないんですよねぇ。」
朝風が名残惜しいように言った。
「今でもあんなところあるんですね。走行中に電気消すっていうのは迷惑ですけど。」
「なあ翼。来る時もこんなところ通って来てるんだよ。」
「えっ。でも来る時は電気消えたりとかしてませんよねぇ。」
「翼さん「はくつる」で徹夜してたんでしょう。その間に電気が消えたところありましたか。」
「いやなかったけど・・・。つうかあれは「カニ」が電気送ってるからだろ。」
「それと同じですよ。今の車両とか521系にはバックアップする電源があって死電区間を走るときだけ起動させてるんです。だから電気が消えることがないんですよ。」
「なるほどね。」
しばらくは黙っていたが・・・、
「ナガシィ先輩やっぱり暇ですよ。なんかしません。」
「何する。しりとりか。」
「いや、またお題みたいなのやりませんか。」
「いいけどなんて出す気。」
「うーん、じゃあ・・・機関車の愛称とか。」
「EF210(桃太郎)、EH500(金太郎)、EF510(レッドサンダー)、EH200(ブルーサンダー)、DF200(レッドベアー)、で終わりだろが。」
「短いですね。じゃあ、これどうでしょう寝台特急・・・さっきやったか。」
「あっ、これならやってない。「スーパー」ってつく特急。まず朝風から。」
「「スーパー・・・あずさ」。」
「今何にするか迷ったよなぁ。」
「意外とたくさんあるもんですね。次翼さんですよ。」
「うーん・・・。確かに考えるなぁ。何を言ってもいいってことは分かってるから「スーパーひたち」。」
「「スーパー雷鳥」。」
その後は「スーパーはくと」、「スーパー北斗」、「スーパーおおぞら」、「スーパーやくも」、「スーパーおき」、「スーパーホワイトアロー」、「スーパーくろしお」、「パノラマスーパー」、「スーパーまつかぜ」、「スーパーにパス」、「ハイパーにパス」という形で流れた。
「意外とたくさんあるって思っても思いつかないですよねぇ。」
「よし、次はもっと幅広げるか。特急の名前。」
「幅広げすぎじゃないんですか。」
「いやこの位しないと暇つぶせない。「はくたか」。」
この後は「サンダーバード」、「東海」、「伊那路」、「しなの」、「ひだ」、「あずさ」、「しらさぎ」、「つばめ」、「こだま」、「うずしお」、「南風」、「しおかぜ」、「スーパーおき」、「スーパーおおぞら」、「わかしお」、「雷鳥」、「ふじかわ」、「やくも」、「成田エクスプレス」、「つばさ」、「あおば」、「さざなみ」、「ラピート」、「はるか」、「きのさき」、「くにびき」、「ソニック」、「きりしま」、「つがる」、「白鳥」、「日光」、「あしずり」と来た。
「永島さん、寝台特急ありですか。」
「ありじゃないだろ。さっきやったし・・・。」
「うん。寝台特急はナシだな。まあ寝台特急の名前でももともと昼のやつだったっていうのはありだけど。」
「じゃあ、「なは」。」
またその後は「はまかぜ」、「宇和海」、「鳥海」、「ライラック」、「おおとり」、「いしづち」、「南紀」、「まいづる」、「スーパーホワイトアロー」、「オーシャンアロー」、「アーバンライナー」、「有明」、「はつかり」、「オホーツク」、「北近畿」、「こうのとり」、「ひばり」、「くまがわ」、「伊勢志摩ライナー」、「サロベツ」、「櫻」、「かいじ」、「やまびこ」、「富士」、「ひゅうが」、「海幸・山幸」、「パス」。これで朝風が脱落した。「さくらライナー」、「かもめ」、「みどり」、「ハウステンボス」、「いなば」、「とかち」、「くろしお」、「スーパーはくと」、「北斗」、「スーパービュー踊り子」、「スーパー宗谷」、「しおさい」、「ゆぅトピア和倉」、「しまんと」、「あやめ」。一人一人のシンキングタイムは長いが、着実に特急を挙げた。一方朝風は特急の名前を出す度にそれもあったかと言っていたりしていた。
「クソッ。」
頭を抱えて悩んでいる。
「ダメです。パス。クソッ。「ハイパーかもめ」とかは列車名じゃなくて愛称だからなぁ。」
「俺も次まわされてたらアウトだった。」
ふと時計を見てみる。時間は19時17分。結構な暇つぶしにはなったみたいだが、まだ40分くらいの工程が残っている。
「残り時間は何しようか。」
「もうそんなこと考えれねぇよ。」
席を立って右隣りのボックスシートに行った。
「あとはゆっくり行こうぜ。」
「そうですね。僕もさっきの特急で結構疲れました。」
「でも挙げてみればあんなにたくさんあるんですね。」
「ありすぎたせいで疲れた。」
「まぁいいじゃないか。後はゆっくり体伸ばしていけばいいし。」
身体を伸ばして、靴を脱いだ。あしを進行方向にあるシートに乗せて、ほぼ寝る体制をとった。柊木も朝風も同じような体制をとっている。まもなく黒部に停まると言うアナウンスを聞いて上げていた足を元に戻す。しかし、黒部に停まっても目立った乗車がない。僕達の乗っていた車両に乗り込んだ若い男女もあいているボックスシートに選んで座っていった。
「次は終点富山、富山です。」
アナウンスを聞いて柊木と朝風に荷物をまとめるように促す。
「ようやっと戻ってきましたね。」
「そうだな。」
「ところで、このペットボトルどうします。網棚に放置します。」
「やめんか。デッキに屑物入れあるからそこに捨ててけ。つうか晩飯どうする。待合室のところにあった立山そばでいいか。」
「どこでもいいですよ。」
「コンビニだろうとなんだろうとどこでもいいですから。まあ食べるのは面倒ですけど。」
「じゃあ、そこにするか。」
19時59分。僕達の乗った列車は定刻に富山に到着。おそらく黒部で抜いて行くはずだった「はくたか」が20分遅れているからだろう。まあ気にすることではないか。改札を出てさっき話していた立山そばを食べてホテルに戻った。
ホテルのフロントでは同じくらいに戻ってきた醒ヶ井班がいた。
「永島先輩。なんか久しぶりに見た気がします。」
汐留に声をかけられる。
「そう。僕には100年ぶりに見た気がするけど。」
「あはは。そうだ、永島先輩達はどこに行って来たんですか。」
「糸魚川から大糸線経由松本、長野方面行き。信越線経由で直江津まで行ってそこから各停で戻ってきたところだよ。」
「つまり電車ばっかに乗っていたと。何か撮れたものでもあるんですか。」
「ああ、松本と南小谷で「あずさ」撮ったな。」
「「あずにゃん」ですか。」
「あーっ。」
僕、柊木、朝風のその呼び方がとても嫌そうな声がそろう。
「すみません。もう言いませんから・・・。」
「そういやあ梓のあだ名「あずにゃん」だったな。」
「気づきませんでしたね。これまでアニメと電車は全くの別物として見てましたから。」
「いや、まったく別物とはいえないんじゃないのか。四国の2000系アンパンマンだし・・・。じゃあ「スーパーあずさ」の方は「スーパーあずさ」かぁ。」
「じゃあ、今日は「あずさ」と「スーパーあずさ」を5回も見てきたってことじゃないですか。」
「「あずさ」。いつの間にそんな姉妹たくさんになったんだよ。」
「多いっていうか大家族ですね。」
(あんたら、違うだろ。それ・・・。)
かぎをもらうと部屋に戻ってさらっと明日出る支度をした。そして、風呂でシャワーを浴びた後はソッコウで寝た。
383系の後継車って空気ばね式の車体傾斜機構装備になるのかなぁ・・・。385系(仮)はどうなるのかという想像。
作中の「特急あずさ」のあだ名は「けいおん」からの引用です。