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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
147/184

147列車 散々

うーん。行くところに嫌われてるのかなぁ・・・。

 7月27日。岸川(きしかわ)の1学期は25日で終了し、待ちに待った夏休みをのんびりと過ごしている。まあ、待ちに待ったという言い方は受験生にとってふさわしくないだろう。

「ナガシィ好きだねぇ。ここ。」

「いいだろ。」

「今走らせてるのは何。「さくら」。」

机に手をつき模型に目線を合わせた(もえ)の前を模型(もけい)寝台特急(しんだいとっきゅう)が通り過ぎていく。

「さすがに書いてあれば、どんなバカでも(わか)るかぁ。」

机の下をくぐってレイアウトの外に出る。外に出ると立ちあがっているパソコンのインターネットを開いて調べ物をした。

北越急行(ほくえつきゅうこう)。」

画面を(もえ)がのぞきこむ。

「北越急行って「はくたか」が160km/hで走る線路だよねぇ。」

素人(しろうと)には分からないことかもしれない。(もえ)がどうしてこのようなことを知っているかというと僕と話すことで覚えたらしい。僕の知る範囲(はんい)では100系新幹線以外は基礎(きそ)レベル(多分)くらいのことを知っている。

「北越急行って線路じゃなくて、会社の名前だけどなぁ。」

(あやま)りを訂正(ていせい)して目的のページを開く。

「うわっ、何これ。」

めまいのする表だろうか。8月分の「はくたか」の運用表で(もえ)が顔をひきつらせた。

(スノーラビットが連結されてるのは・・・。)

携帯を手に取り、テキストメモを開いてメモる。

(17号は「スノーラビット」オンリー。19号は基本編成が「スノーラビット」。21号は19号の逆で、23号は683系の「スノーラビット」。上りは8号が基本編成。10号と14号は「ホワイトウィング」で関係ない。12号が683系の「スノーラビット」オンリーか。こりゃ12時45分発で行かなきゃだめってことだな。)

そう思ってマウスを閉じるボタンに動かす。

「終わった。」

インターネットを閉じると(もえ)が声をかけてきた。

「うん。」

軽く返事をして、今度はレイアウトの中に入る。

「ねえ、ナガシィ。笹子(ささご)のオープンキャンパスに行かない。」

「オープンキャンパス。」

オウム返しに聞くと、

「ナガシィ、それでも狙ってる学校。」

前にも同じことを言われた記憶がある。

「オープンキャンパスには行くよ。」

「じゃあ、一緒に行かない。ナガシィは研修で使う18切符があるから、それで行けばいいし。」

「うーん。分かったよ。」

 7月30日。今日は臨地研修に行く2日前。何もないため家でのんびり過ごすことにしていた。

「ナガシィいますか。」

「ああ、離れの方にいらっしゃいます。ご案内しますか。」

「あっ、いいです。分かりますから。」

そう断って、離れの方に行く。

 離れに着くと、ノックもなしにドアを開いた。

「ナガシィ。」

「おーう。何、(もえ)。」

「何じゃないよ。駿台(すんだい)のオープンキャンパスいつ行くんだよ。」

「ああ、そういえば決めてなかったねぇ。」

それまで持っていたPFPをコントローラーを置いている机の上に置く。

「いつでもいいけど、4、5、7、19はやめてよね。」

「はいはい。」

(もえ)はこの日はダメとかっていうことないの。」

「いつでもいいよ。部活とかやってないし。」

と言って、模型(モジュール)を置いている机の下を通って、僕のところまで来た。すると、持ってきたパンフレットを僕に見せながら、

「21日とかどう。特待生(とくたいせい)のガイダンスあるみたいだし。」

「21日。」

「うん、どうせナガシィだって特待生で受けるだろ。」

「それもそうか。じゃあ、21日で申し込んどくから・・・。」

「今申しこめよ。ナガシィの場合、先送りとかして、いつ申し込むか分からないもん。」

「ハハ、分かってる人は本当に分かってるな。」

本当のことを衝かれて、苦笑いする。その表情を見ると、

「はぁ、いいよ。ナガシィの分も私が申し込んどくから。」

「えっ、でも・・・。」

「いいって。ナガシィは大阪(おおさか)までどうやって行くか考えといて。さすがにそこまでは手が回らないし、分かんないから。」

(ウソつけ。)

「分かったよ。じゃあ、米原(まいばら)まで「こだま」で行って、その後新快速(しんかいそく)でいいか。」

行く方法はもうすでに考えてある。いや、考えなくてもできているのだ。

「なんで、米原(まいばら)までなんだよ。どうせなら、新幹線(しんかんせん)大阪(おおさか)まで行っちゃえば・・・あっ、見たい車両(やつ)でもあるのか。」

「それと、223に乗りたいからもある。」

「ふうん。見る車両っていうのは「トワイライトエクスプレス」。臨地研修でも見れるのに。」

「いいじゃねぇかよ。」

「分かったよ。」

と言うとしばらく(だま)っていた。

「6日からかぁ。」

とつぶやいているのが聞こえた。

「えっ。」

「あっ、臨地研修(りんちけんしゅう)6日からだったなぁってこと。」

「うん。「サンダーバード」とかいろんな車両(やつ)の写真()って来るから。」

「楽しみに待ってるけどさぁ、はしゃぎ過ぎてヘマ外さないようにな。」

「そんなにはしゃがねぇよ。」

「ふうん。どうかなぁ。ナガシィの場合そこが分かんないからなぁ。」

「どういう意味だよ。」

こう言われるのは初めてな気がする。顔を上げた。すると(もえ)は僕の顔に指を当て、

「高校2年生(2ねんせい)の修学旅行(しゅうがくりょこう)の時だっけ、100系に「()きだ」って(さけ)んだのは、どこの誰だっけ。」

「えっ。」

声が()れた。確かに、学校の修学旅行で博多(はかた)に行った最終日、僕は100系にそれをした。でも、なぜそれを(もえ)が知っているのかということが気になった。なぜ知っているのか。それを(さぐ)るために頭の中を整理(せいり)してみる。すると、

木ノ本(きのもと)だろ。木ノ本(きのもと)からそれ聞いただろ。」

「さぁ、どうだろうね。」

笑いながら言っている。これは間違いなく木ノ本(きのもと)からの情報だ。

木ノ本(きのもと)のやつ。そういうことベラベラしゃべるなよな。」

顔と目線を(もえ)からそらした。そらすと、寄ってきて、また、顔に手を当てられる。

「顔赤い。まさか、恥ずかしいの。」

「やっ・・・やめろって。」

「ハハ。カワイイなぁ。そういうとこ(まった)く変わってないんだから。」

「ちょっ。やめろっ。やめろって。」

結局、このことで30分ばかりの間萌(もえ)にいじられる羽目になった。小学校、中学とこれまでずっと恥ずかしいなんて感じなかったのに。なんで今になってこうなったのだろう。そこだけが引っ掛かった。

 数日後。

「ナガ・・・。」

今日もまた(もえ)が僕の家に来た。だが、前と違うことが一つある。いつもなら、だれ来たか確認するために顔を上げるのだが、今回はそれもなかった。

「ああ、(もえ)。全く雨ホントにゴミだよ。新潟(にいがた)の大雨の影響で「トワイライトエクスプレス」が走らないだの、「はくたか」が「ほくほく線」に入線しないだの、もう散々だよ。」

声も肩も落としている。

「てことは・・・、ナガシィ達帰ってこれないじゃん。」

「ルートはまだいっぱいあるからそっちはどうでもいいんだよ。「トワイライト」が(おが)めないっていうのが一番イタイ。」

永島(ながしま)が寝がえりを打ったときその傍らにある一枚の紙を見つけた。なんなのかと思い目を通してみる。すると、3日目の工程が書かれていた。

「でも、「妙高(なんて)」読みか分からないけど、珍しい列車(やつ)にも乗れるじゃん・・・。」

少しは慰めになるかと思ったが、すぐにそうでもないということが解った。2日目に行く工程をほぼ逆走する状態なのだ。これなら、永島(ながしま)が再起不能なのが理解できる。

(でも、ナガシィなら大丈夫か。どんな状態でも楽しみ見つけて帰って来るかぁ。)

結論はこれだが、自分としても「トワイライトエクスプレス」が見れないというのは惜しい。


本当なら「はくたか」の160km/h。体験できるはずだったのに・・・。憎き天災。

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