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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
146/184

146列車 自由行動

 7月4日。今日から定期(ていき)テストだ。

「今回は負けないからな。」

宿毛(すくも)からは一番最初に宣戦布告(せんせんふこく)された。

「おー。」

まともにやる気があるのか・・・。そういう返事をしておいた。

7月7日。テストが終了する。この日から一番近い活動日は7月12日。この日に今回の臨地研修(りんちけんしゅう)でかかる費用(ひよう)集金(しゅうきん)する。そして、1日目と2日目の自由行動について行動を決定し、それをアド先生に提出する。それがこの日からの作業だ。

(つばさ)朝風(あさかぜ)。今年はどうしようか・・・。」

今年も柊木(ひいらぎ)と一緒に組むことになった。朝風(あさかぜ)と組むのは博多に行って以来である。他の班がどうなったのかというとこうなった。木ノ本(きのもと)留萌(るもい)(はやぶさ)班。箕島(みしま)空河(そらかわ)班。潮ノ谷(しおのや)新発田(しばた)牟岐(むぎ)班。醒ヶ井(さめがい)汐留(しおどめ)夢前(ゆめさき)班。北石(きたいし)朝熊(あさま)大嵐(おおぞれ)班。そして、己斐(こい)諫早(いさはや)班となった。

「そうですねぇ・・・。1日目は「精神的(せいしんてき)()む」でいいでしょ。」

「いや、それはそれでいいけど・・・。」

朝風(あさかぜ)の様子をうかがってみた。

「僕はいいですよ。「精神的に病む」のはこの3年間で()れましたから。」

「あっ・・・、そう。」

「んじゃあ、1日目は「みんなで精神的に病む」でいいな。」

説明(せつめい)しよう。この部活での「精神的に病む」とは、ほとんどの時間をホームで、もしくは電車内で過ごすことである。木ノ本(きのもと)柊木(ひいらぎ)はこれを月に何回も経験している。そのため、()には思っていないらしい。むしろ万々(ばんばんざい)のである。

「はい。」

強く返事をしたのは柊木(ひいらぎ)だ。

「「スノーラビット」のためですから。」

(「スノーラビット」のためかぁ・・・。「スノーラビット」に、「スノーラビット」に会えるんだなぁ・・・。)

子供の感情が起きた。

「それじゃあ一つ言っとくけど、」

(まぶた)を閉じて、腕組(うでぐみ)をする。

「今から立てる計画通りには絶対ならないと思っとけ。」

目を開け、二人の顔を見た。

「それはよくわかってます。」

柊木(ひいらぎ)は去年が去年だったためにあっさりと言った。

「まぁ、そういう部活ですからね。」

朝風(あさかぜ)の方も経験はしていたのでそう言っていた。

「まあ、そこが分かってるならいいや・・・。」

バックからいらない紙を取り出し、シャープペンを持った。

「いいか、まず見る「はくたか」を決める。」

(はやぶさ)、時刻表くれ。」

木ノ本(きのもと)達と計画を立てている(はやぶさ)柊木(ひいらぎ)が声をかける。

「はい。(つばさ)。」

「どうせ考えてることは私達と同じだろ。」

時刻表を持ってきた(はやぶさ)が計画を書いている紙を(のぞ)()んだ。

「考えてることは同じって・・・。まあ、そうだろうな。(はやぶさ)の班は木ノ本(きのもと)留萌(るもい)がいるんだもんなぁ。」

「どうせなら、また一緒に行動すればいいじゃないですか。」

「計画書出せばわかるって。」

そうは言っても、結果は知れているだろう。

「そうですか。たぶん1日目はそんなに変わらないと思いますけどねぇ・・・。」

(はやぶさ)はそう言って木ノ本(きのもと)達に合流していった。

「まずは見る「はくたか」ですね。」

柊木(ひいらぎ)が時刻表のブルーのページを開く。ここには各新幹線(かくしんかんせん)特急(とっきゅう)時刻(じこく)、新幹線と特急の接続状態(せつぞく)がのっている。ということは、ここを見れば一発で見ることのできる「はくたか」を知ることができるのだ。

「12時45分福井発(ふくいはつ)の列車が金沢(かなざわ)に到着するのが14時09分。これなら下りの「はくたか」は「17号」「19号」「21号」「23号」・・・で、上りの「はくたか」は「8号」「10号」「12号」「14号」・・・を見ることができます。」

柊木(ひいらぎ)が自分の指で追いながら、見れる「はくたか」の番号(ばんごう)()げた。

「それは、12時45分発で行った場合だろ。」

「はい。だから13時42分発の列車で行くと・・・「17号」と「8号」、「19号」と・・・。ああ、「10号」も微妙ですねぇ。その列車が金沢(かなざわ)に着くのが15時16分。「10号」の金沢(かなざわ)到着が15時16分。見ることはできても、入線してくるところは見れませんね。」

「数十秒差でも無理かぁ。」

「いくらなんでもきつすぎますって。まず、「はくたか」が何番線(なんばんせん)にくるのか分からないし、きて何分(なんぷん)金沢(かなざわ)()まっているかもわからない。それに乗る列車が何番線にいくのかもわからない・・・。(はな)れてたら最悪(サイアク)ですよ。」

時刻表を足の上に広げたまま柊木(ひいらぎ)が頭を抱え込んだ。

「離れてたら最悪かぁ・・・。」

すると己斐(こい)が話しかけてきた。

「たぶんその列車でしたら、15時25分発の福井(ふくい)行きで折り返す(もどる)と思いますから、1・2・3・5番線のどれかに停まるんじゃないんですか。」

「えっ。」

いきなりディープな話をされたので面喰(めんくら)った。

「あっ、あまり本気(ほんき)に聞かないでください。曖昧(あいまい)なところもありますから・・・。」

己斐(こい)はそう言ってから、遠慮(えんりょ)がちになってこう教えてくれた。

金沢駅(かなざわえき)の1・2・3・5番線は北陸本線(ほくりくほんせん)福井方面(ふくいほうめん)に行く列車がよく発車するホームなんです。だから13時42分発の列車が金沢(かなざわ)に着いて折り返す時に一番最初に折り返せる列車が、15時25分発の福井(ふくい)行きなんです。だから停まるなららそのホームのどれかだと思います。」

「それで「はくたか」が止まるホームは。」

「近いと思います。まあ、何番線に停まるかまでは行ったことないんで分かりませんけど・・・。」

「そっか。ありがと。」

「い・・・今言ったのは、上りの「はくたか」のホームですからね。」

「それだけ分かればいいよ。後は電光掲示板(でんこうけいじばん)と自分の眼を頼るよ。」

己斐(こい)に礼を言って自分達の計画に戻る。

「で、どうします。どれから見るんですか。」

朝風(あさかぜ)が疑問をぶつけた。

「とりあえず、12時45分発の普通で金沢(かなざわ)に行くってことにしといて・・・。」

「それじゃあ、お昼はどうするんですか。」

「お昼なんて、キオスクでいいだろ。」

「いや、敦賀(つるが)で調達することにしよう。」

「えっ。」

「いや、もしそうなったらの場合だよ。もし、ほかの「はくたか」に北越急行(ほくえつきゅうこう)の「スノーラビット」が連結されてるなら、13時42分発のやつでのんびり行っていい。だけど「8号」、「17号」、「19号」に連結されてて、ほかの「はくたか」に連結されてなかったら、敦賀(つるが)のコンビニだかどっかで(ひる)御飯(ごはん)を調達しとく。それで車内で食べる。それで金沢(かなざわ)に着いたら、すぐ撮影態勢(さつえいたいせい)に入ればいい。」

「そうですね。その方がいいかもしれません。」

「少なくとも、敦賀(つるが)構内(こうない)売店(キオスク)はなかった。だから、改札を出る必要があるけど、こんなに時間もあるし、大丈夫だろう。」

「もし遠くにあったらどうするんですか。」

「そんときは昼抜きでいいだろ。」

「ええ、それでいいです。」

昼ごはんのことはこれで終わった。

「昼飯のことは終わった。」

木ノ本(きのもと)に聞かれる。

「ああ、終わり。」

「なあ、永島(ながしま)。1日目は一緒に行動しないか。さっき結香(ゆうか)が言った通り考えてることは同じみたいだし。」

「また、一緒に行動すんのか。」

「別に、嫌じゃないだろ。」

しばらく沈黙する。

「で、私達の方は「はくたか」を見ることプラス「雷鳥(らいちょう)」も見たいって思ってるんだよ。」

「ああ、「雷鳥(らいちょう)」か。」

「「雷鳥(らいちょう)」のパノラマグリーンですよね。待ってください。今調べ・・・。」

「それくらい調べなくても分かりますよ。」

己斐(こい)の声が柊木(ひいらぎ)を止めた。

「何時の列車で行くってことで考えますか。」

「じゃあ、12時45分発の列車で考えてくれる。」

「12時45分。福井発(ふくいはつ)ですね。」

復唱してから、

「下りは16時04分金沢(かなざわ)着の「雷鳥(らいちょう)23号」で、上りは14時13分金沢(かなざわ)発の「雷鳥(らいちょう)30号」と17時13分発の「雷鳥(らいちょう)42号」です。」

(時刻表を見ないで言える己斐(こい)は神だ・・・。)

「そんなに少ないのか。もっとあるだろ。」

「他にも「雷鳥(らいちょう)」はありますけど、パノラマグリーンじゃないんですよ。パノラマグリーンじゃないのでもいいなら他のも教えますけど・・・。」

「ならいいや。己斐(こい)、ありがと。」

「いえ、これくらいふつうですから。」

(いや、それはふつうじゃない。)

「まあ、これで「雷鳥(らいちょう)」も決まったな。」

「「雷鳥(らいちょう)23号」が16時04分ってことは、13時42分発の普通で行っても十分間に合いますね。」

留萌(るもい)の後ろで(はやぶさ)がつぶやく。

「お前、バカかよ。すべては「はくたか」にかかってんだぞ。「雷鳥(らいちょう)」だけで判断すんなよ。」

(つばさ)、私よりバカなくせに・・・。」

(つばさ)結香(ゆうか)もやめなよ。」

「まあ、全部は7月の25日ぐらいになれば分かるよ。」

そうすべてはその頃決まる。

永島君(ながしまくん)。」

「なーに。」

アド先生に呼ばれる。その受け答えはとても()れ馴れしいだろう。

北陸(むこう)でまだ「食パン」って走ってるかねぇ。」

「「食パン」。」

僕はこの「食パン」と言うのをはじめて聞いた。なんだか(わか)らないので聞き返す。

「あの、583系(ゴハサン)を改造したね。」

ここまで言われてその「食パン」の意味が解った。今「食パン」と呼ばれていたのは419系という車両の先頭車化(せんとうしゃか)改造(かいぞう)が行われた車両のことである。言われてみれば、鋼鉄(こうてつ)の食べれない食パンだ。

「あれだったら運用終了(うんようしゅうりょう)ってなってましたけど・・・。」

「あっ、引退(いんたい)しちゃったの。そうか・・・。引退しちゃったのかぁ・・・。」

いかにも乗りたかったという感じである。

「あのう、419系ってどんな車両(やつ)ですか。」

「んっ。419系っていうのは・・・。」

チョークを握って419系の概略を描く。真ん中よりちょっと上に細長い(まど)()きいれ、左右対称に近い位置になるようにヘッドライトとテールライトを縦に描きこむ。

「で、これの本が・・・。」

今度はその隣に419系と同じ輪郭(りんかく)を描き、その真ん中に長方形を縦に描きこんだ。そして、最初に書いた方の下に「after」、次に書いた方に「before」と書いた。

大改造(だいかいぞう)劇的(げきてき)、ビフォアフター。」

僕の知っている番組の名前とともにチョークで指した。

「えー。これがこうなったんですか。」

「そう。これがこうなったんだよ。」

「改造前からじゃ想像できませんね。」

「つうか、「食パン」って。」

「解らなくはないな。」

「あれ「食パン」っていうんだ。初知り。」

ずいぶん話が脱線いたが、まだ線路に戻すつもりはない。

「なあ、醒ヶ井(さめがい)。お前食パン好きか。」

「えっ。別に好きも嫌いもないけど。」

「じゃあ、北陸行ったら「食パン」食いにいっか。」

「うーん、いいかも。」

「でも食ったら(おく)単位(たんい)で金がとんでくけどね。」

「はっ。なんで。」

醒ヶ井(さめがい)の目が点になっている。それはそうだろう。僕だってそんな食パンは見たことがない。

「んっ。鉄分たっぷりの「食パン」だからさ。」

「・・・。」

さて、

「で、2日目どうする。どっか行きたいところある。」

柊木(ひいらぎ)朝風(あさかぜ)に聞いた。

「僕は「ライトレール」とかに乗りたいですね。」

まず朝風(あさかぜ)から回答がある。

柊木(ひいらぎ)は。」

「僕はどこでもいいですけど・・・」

足に置いている時刻表のページを少しめくって、

「8時01分に富山(とやま)に来る上りの「トワイライトエクスプレス」を(おが)んどきたいですね。」

「「トワイライトエクスプレス」かぁ。」

「「トワイライト」見るのはいいけど、それで18切符で入っちゃうなら、「ライトレール」には乗らずに、どこかに行った方がいいんじゃないかな。」

「ですよねぇ。」

「あっ、18切符でどこかに行くも別にいいですよ。」

朝風(あさかぜ)が手を広げて、「ライトレール」案に「待った」を言う。

「行くっていうのはいいけど、どっか行きたいところあるの。」

肝心(かんじん)なところを()かれて、答えられなくなる。僕達はしばらく考え込んだ。

「あっ、これどうかな。」

考案の女神(かんがえるずのう)降臨(こうりん)する。

北陸本線(ほくりくほんせん)旧線跡(きゅうせんあと)見に行くっていうの。」

「旧線跡ですか。」

ちょっとびっくりした。また、己斐(こい)が話に割り込んでくる。

「北陸本線の旧線はサイクリングロードになっていますから、レンタルして走ってくるっていうのも手じゃないんですか。」

己斐(こい)さん。あんたはそっちの班じゃないでしょ。」

「あっ、まだ説明してる途中なのに。」

諫早(いさはや)とのやり取りを見てから、本題に戻る。

「じゃあ、糸魚川(いといがわ)より東に出ればいいですね。」

時刻表を1ページめくる。

「あっ。こりゃゴミだ。」

ゴミという単語が()れる。時刻表をのぞきこむと、柊木(ひいらぎ)の言う通り。これはゴミだ。

「ないんですね。ちょうど・・・。」

なら北陸本線(ほくりくほんせん)旧線探訪(きゅうせんたんぼう)はナシである。他を考えなければならない。

「そいやあ、糸魚川(いといがわ)からのびてるのって何線。」

「ちょっと待ってください。・・・大糸線(おおいとせん)です。」

「じゃあ、それに乗って回ってくるっていうのは。」

「回ってくるって・・・。糸魚川(いといがわ)まで行って、大糸線(おおいとせん)松本(まつもと)まで行って、篠ノ井線(しののいせん)長野(ながの)まで行って、信越線(しんえつせん)直江津(なおえつ)まで行ってきて、富山(とやま)に戻って来るんですか。」

発想を読んだのか、柊木(ひいらぎ)が指で地図上の線路をなぞった。すると、ページをつぶやいて北陸本線の乗っているページを出す。

「8時23分で行くと9時36分。」

次は大糸線(おおいとせん)。時間をつぶやきながら、指で列車の時間を追う。開いた大糸線のページに指をはさみこみ篠ノ井線(しののいせん)のページを出す。同じ動作を何回か繰り返して、顔を上げた。

「回ってこれます。8時01分の「トワイライトエクスプレス」を見た後、8時23分の列車で糸魚川(いといがわ)まで行く。あいた時間を利用して、「はくたか5号」と「はくたか4号」を車撮(しゃさつ)する。この間に昼ごはんも調達しておいて、10時43分に糸魚川を出る列車に乗る。終点の南小谷(みなみこたに)に到着するのが11時44分。その2分前に到着する「あずさ3号」を車撮。12時04分の松本行きで、松本に到着するのが14時19分。乗り換えをして、14時26分に松本(まつもと)を発車する列車で長野(ながの)まで行く。それで長野に15時41分。そして、またこの間に時間があるから、晩御飯の調達と「しなの13号」車撮する。それで、16時11分に長野(ながの)を発車して、終点直江津(なおえつ)に到着するのが17時46分。17時57分発の富山(とやま)行きに乗って、富山(とやま)到着が19時59分です。」

柊木(ひいらぎ)の強い声が頭の中に響く。

「よし、それでいい。これで、自由行動は完璧(かんぺき)だ。」

強く机をたたいた。


北陸本線の普通は1時間に1本ぐらいですが、世の中には2時間経たないと列車が来ないとかっていうところもありますよ。他に、普通列車なのに駅を通過するものもあります。

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