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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
143/184

143列車 また会った

 雷鳥(らいちょう)の車内放送で使われているメロディが鳴った。僕の携帯(ケータイ)の着信音である。

「誰だよ。」

メールに文句があるわけではない。

 From:坂口萌(さかぐちもえ) タイトル 臨地研修(りんちけんしゅう) 内容 行き先北陸(ほくりく)に決まってよかったね。

(なんだ、(もえ)かぁ。)

すぐに返事をした。

 この時、僕はこのメールのことを何も考えなかった。

 18時32分。浜松(はままつ)。ここのメイワンという建物の前に遠州鉄道(えんしゅうてつどう)浜松(はままつ)駅前バス停がある。ここには浜松(はままつ)市を網羅(もうら)するバスのほとんどが集結するのだ。

(こんなに遅くここを通ることは、もうほとんどないのかぁ。)

心の中でつぶやきながら、メイワンと遠鉄百貨店(えんてつひゃっかてん)の間から見える浜松(はままつ)駅1番線をみあげる。

この時間にやってくる列車はない。あるとすれば貨物列車(かもつ)くらいだろう。そんなことを思いながら、肩にかけている撮影用バッグをかけなおした。

ふと顔を上げると、見覚えのある顔が前から歩いてくるのが見えた。一人は知っているが、もう一人の方は知らなかった。

「ごめんな、テストも近いのに。」

「ううん、別に今から勉強してもテストの点数2倍になるわけじゃないから。赤点(あかてん)取らなきゃいいよ。」

「いや、2倍はないと思うけど・・・せめて1点とかあげるくらい思っとけよな。」

一人の女の子が前に目線を向ける。

「あっ、榛名(はるな)。」

目線の先にいる人の名前を呼ぶ。

「よーす。(もえ)。久しぶりだな。」

「知ってる人・・・。」

当然のことだが、(もえ)という女子の隣にいる人は自分が誰だかわからない。すかさず聞いた。

「あっ、岸川高校(きしかわこうこう)に行ってる木ノ本(きのもと)榛名(はるな)さん。鉄道研究部員(てっけんぶいん)なんだ。」

「へぇ。」

(鉄道好きの女子もいるんだなぁ。)

「そいやぁ、(もえ)彼氏(かれし)も岸川で鉄道研究(てっけん)やってるって言ってたよなぁ。」

しばらくして、そう(もえ)に聞いていた。いったいどこまで彼氏がいるという胞子(ほうし)()()らしているのだろうか・・・。

「ねぇ、私立ってるの(つか)れたし、どっか座って話さない・・・。」

(もえ)がそう言ったため、近くにあるファーストフード店に足を運ぼうとした時、

「なぁ、あたし帰っていいか。」

「ええ。本屋一緒に行ったんだから、いてよ。」

「いや、あたしその人知らないし・・・。」

「今知ったでしょ。いるだけでいいからいてよ、(あずさ)。」

「あずさ」。ため息をついてその(あずさ)という女子から目をそむけた。

「どうしたの。」

「いや、この名前を聞くとどうしても183系(あっち)L特急(エルとっきゅう)あずさ)の方が頭の中に出てくる。」

「さすがだな・・・。」

そう言われているのが聞こえた。この後、(もえ)から(あずさ)の紹介があった。本名黒崎梓(くろさきあずさ)だそうだ。

 ファーストフード店に入ると4人がけのテーブルを探し、そこに座った。私と(もえ)対称(たいしょう)位置(いち)に腰を下ろす。

 席に座ると(もえ)が聞いてきた。

「ナガシィ元気(げんき)。」

(自分達のことじゃないのか・・・。)

「元気だけど・・・。」

「そっか・・・。臨地研修(りんちけんしゅう)北陸(ほくりく)に決まってすっごくはしゃいでない・・・。」

「・・・。はしゃいではないけど、喜んでると思うよ。」

「そうだよねぇ。さっきナガシィに送ったメール。返信(へんしん)一言で終わってたから、想像できないくらいに喜んでると思うなぁ。」

(一言で終わってるから、想像できないくらいに喜んでる・・・。)

「どういう意味だよ。」

横で聞いていた黒崎(くろさき)が話しに入ってきた。

「だって北陸にはナガシィがずっと()りたいって言ってた「スノーラビット」も走ってるし、乗りたいって言ってる「トワイライトエクスプレス」だって走ってるから・・・。」

「ちょっ、(もえ)やめろ。」

すかさず止めに入った。素人(しろうと)にこんな話しても分かる人がいない。

「それ私なら分かるけどさぁ、(あずさ)に分かると思う。ふつう、女の子はこういうのに興味持たないって。」

「あっ、ごめん。」

「いや、別にいいけどさぁ・・・。」

「いいわけないだろ。(あずさ)にしてみれば、分からない話を延々(えんえん)とされるんだぞ。話題についていけなくなるって。」

「・・・。」

「で、そのことはたぶん、言葉にできないから一言なんだろうな。」

榛名(はるな)、わかってるねぇ。」

「・・・。」

こう言われるといつも気になっていることがあふれだした。

「なぁ、(もえ)。聞くけどさぁ。」

「何・・・。」

「お前、永島(ながしま)が自分のこともうちょっと・・・いや、もっとかまってくれないのかって思わないのか。」

しばらくの沈黙になるか・・・。(もえ)頬杖(ほおづえ)をついた。

「思うなぁ。」

この問いは即答(そくとう)するようなものではないはずだ。なのに即答される。

「思うのかよ。」

黒崎(くろさき)がツッコミを入れる。

「それなら、なんであまり永島(ながしま)と会ったりしないわけ・・・。」

「お(たが)全力(ぜんりょく)(ゆめ)に打ち込んでるから、会わないだけだけど。」

前も同じようなこと言っていた。お互い全力で夢に打ち込む。そして、一緒になる。なんかのストーリーでよくあるパターンなのだろう。だが、現実で見るとそのすごさに(おどろ)く。

「それがどうかした・・・。」

なんで聞いたのかが気になったらしい。それは前にも言ったと思うが・・・。

「ちょっと気になったから・・・。」

「そう。」

「・・・。あたしもこの話は聞いたけどさぁ、なんでその人のことそんなに信頼できるわけ。いくらメアド持ってるからっていっても学校とか別れれば、多少自分以外(じぶんいがい)彼女(かのじょ)(つく)らないかって心配になるだろ・・・。」

「それは、思ったことないなぁ。」

(ないのかよ・・・。)

(もえ)が目を閉じた。少しばかり、このことを考えているらしい。3秒か4秒くらい()つと目を開け、

()きだからかなぁ。」

とつぶやいた。

「好きだから、彼女(つく)ったりしないのかも。」

(おい・・・。)

「でも、今考えてみると「なんで私こう思ってるのかなぁ」って不思議に思った。好きだから以外理由ないのに・・・。」

(好きだからかぁ・・・。この二人の間の問題すべてを解消しているのがそれだけだとしたら、この関係は誰にも想像できないかも・・・。)

「ふつう、そこまでいかないよなぁ。いくら小学校・中学同じだったっていっても・・・。」

「もつれなかったからここまでいったのかもね。」

(本当にこの関係(かんけい)(おそ)ろしいです・・・。)

 その後はすぐに話すこともなくなり、別れた。

 バス停に向かおうとしている時だった。もっと大切なことを思い出した。

「あっ。(もえ)、あのことちゃんと永島(ながしま)に言ったのかなぁ。」

背後(はいご)にある遠江急行(とおとうみきゅうこう)浜松(はままつ)駅の方に頭が向いた。


汽笛一声新橋を・・・♪。鉄道唱歌


ちょっとものすごい野心を持ってこれのイメージから知っている歌でアニメを想像したところ嵐の「マイガール」がいいところでは。

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