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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
141/184

141列車 批判から完璧

6月22日。今日も行き先決定のためのミーティングである。今この時期になっても決まらないというのはこれまであったのだろうか。それとも・・・。

 今日も変わらず、黒板にプランについて書いた。朝熊(あさま)は2日目の自由行動について書いていた。一方北陸はというと何も書いてない状態だった。昨日書いたことで書くことがなくなったようにも見えた。

「あのプラン見てみろよ。」

佐久間(さくま)が僕の隣で耳打ちした。

そのプランを見てみる。朝熊(あさま)がよく言っている道後温泉(どうごおんせん)に行くプランだ。

「どう思う。」

「どうって。」

「だから、あのプランはオヤジが考えるもんだって。」

「・・・。」

何も言えなかった。プランを立てたのは朝熊(あさま)である。僕は朝熊(あさま)のプランを否定するつもりはない。

「俺たちまだ高校生だぜ。あんなオヤジ(くさ)いプランよりこっちの方がいいだろう。」

この声は朝熊(あさま)にも聞こえていたようだった。どっかに行ってしまった。

(今のは・・・。)

佐久間(さくま)、今のはひどいよ・・・。」

「何がひどいんだよ。当然だろ。あんなプランはオヤジになってからでいいじゃん。道後温泉(どうごおんせん)とか、松山城(まつやまじょう)とか。行って何すんだよ。」

朝熊(あさま)っ。」

留萌(るもい)は飛び出していった朝熊(あさま)を追っかけた。

 駐輪場(ちゅうりんじょう)の隣に車1台が通り抜けられる幅の道がある。

「早く終わってくんないかなぁ。」

朝熊(あさま)はそこにあった小石を蹴飛(けと)ばした。

朝熊(あさま)っ。」

声のする方向に目をやる。

「・・・留萌(るもい)先輩(せんぱい)。」

朝熊(あさま)に近づいた。

「ごめんね。佐久間(さくま)はああいう奴だから。人が(きず)つくことなんて何も考えてないんだから・・・。」

「いや、(ぼく)・・・。」

「そんな事ないよ。ああいう風に思ってるのは佐久間(さくま)だけだと思う。あいつ、この頃ひどいんだ。だから、そんな風に思わないで。私は朝熊(あさま)のプラン悪くないと思う。みんなそうだよ。みんな朝熊(あさま)のプランはいいと思ってるよ。もし四国になったら、ああいうのもいいかもって思ってるはずだよ。」

(それは・・・。)

 今日の部活はこんなごたごたもありながら終わった。

「ナガシィ先輩(せんぱい)。一緒に帰りましょう。」

進行方向の同じ2年生集団と朝熊(あさま)が声をかけてきた。

(今は声かけづらいなぁ。)

そう思いながら、自分のカバンを手に取った。

 帰り道は全員朝熊(あさま)のことを気にしていた。

「そんなに気を落とすことないよ。2日目は自由なんだし、どこに行ったっていいって。」

「そうそう、私たちは朝熊(あさま)の考えたやつオヤジ臭いだなんて思ってないよ。」

「むしろ、よく考えたなって感心する。」

「ああ、「しおかぜ」や「いしづち」に乗るなんて。俺じゃ絶対考えられない。」

「・・・。」

黙ったままである。黙ったままの朝熊(あさま)を見ているとかける声もかけづらくなる。

「ていうか。今日の佐久間(さくま)先輩(せんぱい)、本当にひどいですよね。」

「ああ、あれはひどいな。ふつうあんなこと言うか。」

「この(ごろ)、アド先生のことじゃまだとか何とか言ってるけど・・・。」

重い口調で北石(きたいし)が口を開いた。

佐久間(さくま)は俺たちにとって、もう先輩じゃないってことも改めて思った。あんなひでぇ事言う人、先輩なんて思いたくない。」

北石(きたいし)・・・。」

「だってそうだろ。俺もアド先生はいろいろと「うざいなぁ」って思うことあるけど、あっちの言うことの方が(すじ)(とお)ってるだろ。あいつはいつも自分が面倒(めんど)くさいって思うことはやらなくていいって思ってるじゃないか。それに、いつでも自分が正しいと思ってる。」

「・・・。」

「お前らなんで我慢(がまん)できるんだよ。遊び過ぎてる奴がこの部活を動かそうとしてるんだぞ。」

すると声を少し小さくして、

(おれ)、もし行き先が北陸(ほくりく)に決まって「きたぐに」に乗ることになったら・・・臨地研修(りんちけんしゅう)には、行かない。」

「なんでよ。行かないより、行った方が楽しいって・・・。」

「だからなんだよ。部活にはめったに来ないで、来たと思ったら何もしないで・・・。14日のときだってそうじゃないか。(おれ)たちがモジュール(はこ)んでるときに、あの野郎(やろう)部室(ぶしつ)にずっといたんだぞ。それで手伝わなかったか理由を聞けば、「俺忙しいんだよ」ってなんだよ。それで、行き先が四国(しこく)になろうとしたら、死んでも北陸に行かせるように「きたぐに」のプラン立ててきやがって。我慢(がまん)できねぇよ。」

(後輩にもこう思われてるのかぁ。)

「あの野郎。四国行って寺とかには行きたくないとか言ってるけど、それなら寺に行かなきゃいいだけの話じゃないか。やることや見るものが人それぞれ違うだけだろ。なのに、俺たちのプランを真っ向(まっこう)から否定(ひてい)してくる。そんな(やつ)の意見なんか()いてられるか。そんな奴の立てたプランで臨地研修に行きたいか。」

北石(きたいし)の声は文章のたびに大きくなった。

北石先輩(きたいしせんぱい)・・・。」

帰り道で初めて朝熊(あさま)が口を開いた。

「そこまで言わなくても・・・。」

「なんでだよ。俺、言い過ぎだとかってこれっぽっちも思ってないぜ。」

北石(きたいし)の口調は荒いままだった。

「おい、落ち着けって。頭に血が上りすぎだよ。」

「どんなにひどいこと言っても、佐久間(さくま)は俺たちの先輩だ。それがひっくり返ったり、なかったことになるのか。」

 この会話を聞き流していた僕であったが、一ついいことを思いついた。

「アド先生に渡した北陸の案。自由行動を減らせばOK(オーケー)出るんだよな。」

「何言ってるんですか。」

「いやちょっといいプラン考えてみた。これなら、四国の人も納得(まんぞく)するかもしれないプランを・・・。」

強く、そこだけを強調した。

時刻表(じこくひょう)()ってる人いる。」

涼ノ宮(すずのみや)駅に着くと僕は早速そう切り出した。

「時刻表なら、僕が持ってます。」

朝熊(あさま)がカバンからJTB(ジェイティービー)時刻表を取りだした。17時42分発の急行(きゅうこう)鹿島(かしま)行きがあったが、それに乗る気は全くなかった。

「いいプランって、なんですか。」

柊木(ひいらぎ)が興味ありげに聞いた。

「まず1日目。」

僕は考え着いたプランの開設を始めた。

「まず7時06分発の普通で豊橋(とよはし)までいく。そこから・・・。」

米原(まいばら)までの特別快速(とくべつかいそく)米原(まいばら)に9時47分ですね。」

ここまではパターン化されている。北石(きたいし)が続けた。

「そう。それで米原(まいばら)まで行ったら9時49分発の新快速(しんかいそく)大阪(おおさか)までいく。」

「それじゃ、佐久間(さくま)先輩が出したプランと何ら変わってませんよね・・・。」

長い(かみ)()れている潮ノ谷(しおのや)疑問(ぎもん)をぶつけた。

「こっから先を変えるんだ。12時まで(ひる)休憩(きゅうけい)を取る。」

「なんで12時までなんですか・・・。」

「バカだな、(はやぶさ)。11時50分に「トワイライトエクスプレス」が見れる。だから、12時までにしたんですよね。」

「そう。その後に弁天町(べんてんちょう)にある交通(こうつう)博物館(はくぶつかん)に全員で押し掛ける。」

「交通博物館ですか・・・。」

「行くのはいいと思いますけど、交通博物館はもっても2時間くらいが限界(げんかい)ですよね。」

「その後に大阪城(おおさかじょう)に行くのはどう。」

「大阪城。」

「そう。そして、大阪城を出てから自由行動にする。」

「いいと思います。」

後ろから北石(きたいし)の声がした。

「ここからどうするんですか。23時27分の「急行きたぐに」まで待つんですか。」

「いや「きたぐに」は待たない。1日目はもうここで宿泊しちゃうんだ。」

全員の顔を見てみる。顔をうかがい終わると続けた。

「それで2日目。7時45分大阪発(おおさかはつ)新快速(しんかいそく)敦賀(つるが)行きで敦賀(つるが)までいく。」

「それで敦賀(つるが)に着くのが9時50分です。そこから一番早く発車する列車は9時53分発の普通金沢(かなざわ)行きです。これに乗ると金沢(かなざわ)に12時25分に着くことができます。」

朝熊(あさま)が時刻表をおった。柊木(ひいらぎ)が時刻表がのぞきこむ。

金沢(かなざわ)について次に乗り換えるとしたら12時56分発の列車ですね。」

「じゃあ、その待っている間が昼休憩ってことですよね。」

「そうだね。そうしよう。」

「それで富山(とやま)に着くのが13時58分。」

朝熊(あさま)がページをめくる。そして、北陸本線(ほくりくほんせん)富山(とやま)から先の時刻表を出した。

「あっ。」

朝熊(あさま)が小さく声をあげる。

「どうした。」

富山(とやま)に到着して一番最初に直江津(なおえつ)まで行ける列車が15時05分発までありません。」

「そこはしょうがないな。富山(とやま)にはライトレールとかいろいろあるから、それを見たりするってことでいいだろ。」

「そうだね。列車がなんじゃしょうがないね。じゃあそれに乗って直江津(なおえつ)に到着するのは・・・。」

「16時56分です。」

朝熊(あさま)が答える。

「じゃあ、ちょうどいいね。この「はくたか19号」で越後湯沢(えちごゆざわ)まで出て・・・。」

「そこで()まるか、新潟(にいがた)までいくか・・・。」

「たぶん行ける。」

上越線(じょうえつせん)のページを開く。

永島(ながしま)先輩(せんぱい)越後湯沢(えちごゆざわ)で休憩がいいでしょう。ていうか、そうしないとダメですね。」

時刻表を覗き込んだ。

納得(なっとく)。そうだね。」

休憩(きゅうけい)したら18時42分発の普通長岡(ながおか)行きで長岡(ながおか)まで行って20時05分。2分接続(せつぞく)で20時07分発の普通新潟(にいがた)行きに乗れば・・・。」

新潟(にいがた)到着が21時24分。」

「この日は「ムーンライトえちご」に乗ることにしよっか。」

「「ムーンライトえちご」が新潟(にいがた)を発車するのは23時36分。その間何をするのかっていうことは後にして、それで新宿(しんじゅく)に行けばいい。」

「5時10分に新宿(しんじゅく)に着いたら、「北斗星(ほくとせい)」までを団体行動にしよう。その間に上野駅にやってくる「北陸(ほくりく)」「能登(のと)」「あけぼの」「はくつる」を見ればいい。」

完璧(かんぺき)ですね。」

「いえ、完璧(かんぺき)じゃありません。」

朝熊(あさま)潮ノ谷(しおのや)の言い分を否定した。

「「カシオペア」を見てません。」

朝熊(あさま)。見てみろよ。」

時刻表の「カシオペア」の表示に目をやった。

「あっ。」

「そういうわけで、完璧ってこと。」

そのやり取りが終わると、

「後は17時くらいに東京(とうきょう)に集合して、去年(きょねん)のパターンで帰ってくればいいんですよね。」

「うん。」

「いいこと・・・。そうかもしれませんね。」

メール機能に書き続けていたこのプラン。打ち終わると席を立った。

「このプランを、アド先生に送る。これは、北陸と四国の人が考えた、俺たちのプランだ。」

いいながら送信(そうしん)ボタンを押し、端末(たんまつ)を閉じた。


どこまで引っ張りたいんですか。僕。

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