140列車 降臨「きたぐに」
笑いが止まらなくなった。5・6時間目の授業を受けて、話し合いの場1年4組に向かった。
教室に入ると、四国を推している朝熊が四国プランについて書いていた。
「あんなプランより、こっちの方がいいだろう。」
先に来ていた佐久間が僕の肩をたたいた。
「ああ。」
自信満々(じしんまんまん)で答えた。
(・・・でも、四国のプランも悪くない。)
自分が悪くないと思う四国のプランはこうだ。
まず浜松7時06分発。普通豊橋行きに乗る。これに乗ると豊橋に7時42分に到着する。そこから7時45分発。特別快速米原行きに乗る。それで行くと終点米原に9時47分。米原9時49分発。新快速姫路行きで途中の大阪まで行く。この列車で行くと大阪に11時13分に到着する。その後14時45分までの自由行動を経て、15時00分大阪発。新快速播州赤穂行きに乗る。これで、途中の相生に16時22分に到着。そこから16時25分発。普通岡山行きに乗り終点岡山到着は17時30分である。そして、12分の乗り換えを経て17時42分発。快速マリンライナー51号で本州から四国にわたる。終点高松の到着は18時41分である。そして高松のホテルに宿泊。2日目は自由行動でどこへ行ってもいい。また高松のホテルに戻ってきて3日目に浜松まで戻ってくる。
このプランは悪くない。それしか思っていなかった。2日目の自由行動でJR四国を支えている特急車両8000系や2000系を撮って本州に渡り、伯備線の381系「特急やくも」とディーゼル特急「スーパーいなば」を見てまた四国に戻ってくる。もし行き先が四国になった時の自分なりの楽しみ方も考えてあるのだ。
これに対する佐久間の案はこうだ。
まず浜松7時06分発。普通豊橋行きで豊橋まで出る。そうと分かれば後はおわかりだろう。大阪までは四国のプランと何ら変わりはない。大阪まで行った後、大阪で自由行動をする。この自由行動をする時間が長いのだ。長い自由行動を経た後23時27分大阪発。「急行きたぐに」新潟行きに乗車する。この「きたぐに」に乗ると終点新潟には8時29分。そこからまた自由行動である。2日目の自由行動を経て、新潟に集合する。2日目に団体で乗る列車は23時36分新潟発。「快速ムーンライトえちご」。この列車で新宿まで出る。終点新宿到着は5時10分。新宿に到着したら、ある程度団体行動を取り、17時00分東京に集合する。東京に集合して浜松への帰路につく。17時16分。東京を発車する普通熱海行きに乗車。19時04分に終点熱海に到着する。そこから19時08分発の普通島田行きに乗車し途中の沼津で降りる。沼津からは去年もお世話になった20時00分発。「ホームライナー浜松5号」で終点浜松に21時37分に戻ってくる。
これがプランの全容である。
しばらくするとアド先生がやってきた。アド先生は机に座ると、
「永島君。今のところ四国の方に潮ノ谷君が加わって、今四国の方がリードしています。」
と言った。別に驚くようなことではない。
「アド先生言ってましたよね。いいプランを提示した方に全員で飛びつくって。まだ、完全に決まったわけじゃありません。」
「そう。人が多い方を打ち負かすための手段ってもんがこっちにはあるんですよ。」
(確かに、打ち負かす手段かもしれない。)
「それなら、どんなプランかを黒板に書いてください。」
アド先生に言われ、黒板に書こうと思った。
「待て。」
佐久間が僕を呼びとめた。
「あのプランはあくまでも最終兵器なんだ。だから、今このプランを書くべきじゃない。ほかの人が考えてきたプランを書くべきだ。それでもだめならってことでこれを召喚するんだよ。」
耳打ちをするように言った。
「・・・分かった・・・。」
「己斐。お前何かプラン考えてきた。」
「えっ。まあとりあえず。」
「じゃあ、それ黒板に書いて。」
佐久間は己斐にプランを書くように促した。
己斐のプランがあさまのプランに横に書き足されていく。これだけを見るなら、どちらにそんなに大差はない。だが、何かかけたような気もしていた。「急行きたぐに」以外の何かが欠けた。
「どっちもいいんじゃないかな。」
アド先生はそんなことを言っていた。僕たちはそのアド先生を横目に最終兵器のプランをつめていた。
「永島君。北陸、他にプランがあるならここに書いてください。」
「あっ、はい。」
「まだだ。まだ書く必要はないぞ。」
数分後。中学生が部活に合流する。箕島も授業が終わりここに駆け付けてきた。
箕島は黒板に書かれたプランに目を通した。
「どっちも悪くないけど・・・。」
「あっ、箕島先輩。」
朝熊が箕島を呼んだ。
「2日目の自由行動ですけど・・・。」
あっちは自由行動の打ち合わせの様である。
「佐久間先輩。これ完璧ですって。」
青海川は「きたぐに」のプランと四国プランを見比べた。
「だろ。俺はこういうときにしか動かないからな。」
話を進めていると牟岐が話に加わってきた。
「青海川君。こっちはなに話してるの。」
「こらー。部外者は見てはならん。」
佐久間がノートの前に仁王立ちした。
「いいじゃないですか。情報盗みに来たわけじゃないんですよ。」
「牟岐。部活終わった後か、明日話すから・・・。」
「分かったよ。」
「謙矢君。この内容を話してはいけません。」
(別にそんなことどうでもいいじゃん・・・。)
そんなことを思いながらも、このプランの話を進めた。
何分たっただろうか。
「永島君。時間切れです。」
アド先生がプランの締め切りを言った。
「待ってください。青海川、途中でいいからそれ貸せ。」
僕は青海川のノートを取り上げアド先生の前に広げた。
全員がノートの周りに集まった。
「「きたぐに」ですか。考えましたね。」
誰が言ったかは分からない。
「電車3段寝台が目的ですね。」
夢前がつぶやく。
「「きたぐに」って。」
「牟岐には分からないだろうな。」
「583系を召喚するとは・・・。」
空河が腕組をする。
(「きたぐに」・・・)
(勝った・・・。)
アド先生はしばらくそのプランを眺めていた。
「このプランには自由行動が多すぎるねぇ。」
(自由行動が多すぎる・・・。)
確かにこのプランには自由行動が多すぎる。
「もし、北陸になったとして、これでOKが出るとは思えないけどねぇ。」
そうかもしれない。いや、これでOKが出る方が奇跡だろう。
「それじゃあ、自由行動の時間を減らせばいいんですね。」
アド先生がこちらを向く。
「自由行動の時間を減らせば・・・。自由行動を減らせばOKが出る・・・。そう受け取っていいんですよね・・・。」
「うーん。」
アド先生が考え込む。
「まぁ、そう受け取ってもかまわないけど・・・このプランのままじゃ、自分たちで行って来いって言われるなぁ。」
今日のミーティングはここで終わった。
夜行列車の肩がどんどん狭くなって寂しいです。楽しむことに意味があるっていう考え方の人が少なくなった表われですか。