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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:3
136/184

136列車 認める 認めない

 翌日12日はふつうの日曜日で休み。13日は月曜日だが、11日分の振り替えで休み。次に学校があるのは14日だ。今日は文化祭の片づけを行う。大体文化祭の片づけは2度に分けて行われるのだ。去年はホールの職員昇降口の隣にある倉庫が借りられ、ハイエースに乗りきらない分をそこに置いた。今回そこは借りられなかったものの、準備の時と同様、ホールの北側に並べて置いておくことになっていた。別にホールを使う当てが今日はなかったから、別に迷惑にはなっていないだろう。

 放課後部室に赴いてみる。部室の中には柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)北石(きたいし)汐留(しおどめ)己斐(こい)がすでにいた。朝熊(あさま)は今日死んでいて、潮ノ谷(しおのや)は用事でこれないということだった。他の人はまぁ、これから来るだろう。

「今日は片づけですよねぇ。」

汐留(しおどめ)が確認するように聞いてきた。

「そうだけど。どうかしたのか。」

「いえ、なんでもありません。ただ、そうじゃなかったら困ったなぁという意味で・・・。」

しばらくすると3年生も顔をそろえてきた。木ノ本(きのもと)留萌(るもい)箕島(みしま)佐久間(さくま)。中学生のほうもだんだん集まってくる。大嵐(おおぞれ)新発田(しばた)青海川(おうみがわ)牟岐(むぎ)。中3が集まっていないけど・・・。中3はこのところ出席率が悪い。

「それでは皆さん手伝ってください。」

部室のドアが開いて、アド先生が部室の中に入ってくるとそう言った。そう言ったらすぐに来た道を戻っていく、これからバンを借りてくるのかもしれない。僕たちはその間にホールに行って、ホールからモジュールを運び出すのだ。

「おい。佐久間(さくま)。運びに行くぞ。」

「ああ。鍵は俺があとで閉めてくから安心して。」

箕島(みしま)は簡単にはこの言葉は信じなかった。なんせ前手伝っていなかった人である。そう言って逃げる可能性は高い。

「鍵は俺が閉める。だから、お前も運ぶの手伝ってくれ。」

「ちゃんと俺が閉めるって言ってるだろ。だから、さっさと行けよ。別に誰も盗りに来たりとかしねぇよ。」

(盗りに来ないのはそうかもしれないけど・・・。)

「お前が運ぶのさえ手伝ってくれればいいんだ。」

「いいから早く行けって。お前だってやらなきゃいけないんだろ。」

佐久間(さくま)は立ち上がって箕島(みしま)を突き飛ばした。ドアのところまで突き飛ばしていって、ドアを開けたら箕島(みしま)を抛り出した。

(クソッ。)

立ち上がると佐久間(さくま)のことはどうでもよくなった。これならもう引き上げる必要なんてない。活動意欲さえなくなっているのだから。

 途中スリッパに履き替えて、ホールのほうに向かった。ホールの入り口の前には先に行った人たちバンが来るのを待っている。そのうち数人は入口の外で待っている。

佐久間(さくま)どうしたんだ。」

僕はそう話しかけた。

「ダメだよ。何と言っても来てくれそうもなかった。」

「そうかぁ・・・。」

「ナガシィ先輩来ましたよ。」

柊木(ひいらぎ)はそう言って外から中に戻ってくる。

「よし。運ぶかぁ。どうせ一番最初は「上野駅(うえのえき)」からだから・・・。柊木(ひいらぎ)北石(きたいし)。その気の箱運んでって。おい。他のやつらもやれ。」

外に行っていた人も戻ってきて、運び作業に加わる。僕はそのまま運び作業には加わらずに、

「おい。二人とも本当に休むのが好きだな。」

新発田(しばた)牟岐(むぎ)の間に割って入った。

「手伝ってくれないかなぁ・・・。ずっと先輩たちに任せておくっていうのもどうよ。」

「だって今は大きいものしかないじゃないですか。女の子の力じゃ持ち上がりません。」

「いいから手伝えって。二人なら持ちあがるだろ。」

「持ちあがらないものは持ちあがらないんですよ。あれ重すぎなんだもん。」

「・・・。なぁ、(はやぶさ)。頼んだ。」

「えっ。頼むって何をですか。」

僕はあとのことは(はやぶさ)に任せて、作業に加わった。

永島(ながしま)さん。新発田(しばた)はあんなふうに言っても動きませんよ。」

手伝いに行った時僕の隣にいた大嵐(おおぞれ)がそう話しかけてきた。

「じゃあ、どうすればいいんだよ。」

「簡単に言えば・・・おい。サナブキ。運ぶの手伝ってくんない。それとも運ぶと壊しちゃうのか。不器用だから。」

「あたしはそこまで不器用じゃないってば。」

(よし。一人上がり。)

「コムギコ。お前はパン工場にでも行って、パンにでもなりたいとかって考えてるのか。」

「考えてませんよ。」

大嵐(おおぞれ)が冷かすと二人ともこちらにやってく手運ぶのを手伝ってくれる。先に運び終わっている気の箱はないから、どんどん白いケースを運んで行こうとするのだ。

「ねっ。言ったとおりでしょ。」

「あとでお前どうなっても知らないぞ。」

「大丈夫ですよ。制裁受けるのは僕じゃないんですから。」

大嵐(おおぞれ)の目つきが一瞬変わる。恐らくクラスメイトの内の一人なのだろう。文化祭の時にでもそう言って、新発田(しばた)がその人に怒ったことを知っている。そして大嵐(おおぞれ)は同じクラスメイトだからそれを知っていて当然。自然と矛先はそっちのほうに向くということをよんでいるのだろうか・・・。

「でも、牟岐(むぎ)のほうは知らないぞ。」

「ああ。牟岐(むぎ)のほうはいま思いつきで言っただけですから。そっちは・・・。まぁ、大丈夫ですよ。・・・きっと。」

(ひびき)先輩。」

牟岐(むぎ)の声がしたかと思うと、次の瞬間に大嵐(おおぞれ)の顔の前にモジュールを抜いた白いケースが飛んできた。いや、牟岐(むぎ)が振り回したというほうが正しい。

「この野郎。てめぇやったな。」

「ベーダ。紗奈(さな)先輩が「冷かしが続くのが嫌だから」、言うこと聞いたんですってさっき言ってました。」

「・・・。」

「危なーい。」

今度は新発田(しばた)の声だ。恐らく今手に持っているのはさっき牟岐(むぎ)が振り回した白いケースだろう。それをそう言いながら、大嵐(おおぞれ)の後ろから振り下ろす。いい具合に大嵐(おおぞれ)に直撃したのだ。

「この野郎・・・。ぶっ叩くことねぇだろ。」

「いいじゃん。これで貸し借りはなしよ。」

「貸し借りってなぁ・・・。」

「ふざけてるな。お前ら。ちゃんと仕事しろ。」

北石(きたいし)のその一声で、収まった。この段階では収まってもまたあとで火が付くことになるかぁ。それからは正直になのかどうか知らないが、別に何の文句も言わずにホールの外への運び出しを手伝ってくれた。バンがいっぱいになって汐留(しおどめ)がまず寮に行く。そこまですんだら、しばらくやることがない。その間にもまたさっきの延長戦をやっていた。

 ハイエースが戻ってくると、延長戦どころではない。積み込みを手伝って、または混んでいく。今度は己斐(こい)が寮に行った。またハイエースが戻ってきて、モジュールと車両を寮に運ぶ。積み込みが終了したら、今度はのこった人全員で寮に行く。寮でまた運び込みをやるためだ。当然のことながら、ハイエースが先に寮についていて、汐留(しおどめ)己斐(こい)がモジュールを運び上げていた。それに加わって僕たちも運ぶのを手伝う。

佐久間(さくま)君はどうした。手伝ってくれないのか。」

アド先生モジュールを寮の中に運び込んでいる僕にそう聞いてきた。

「さぁ。」

佐久間(さくま)君は部室に携帯(ケータイ)いじりに来てるだけじゃないだろうなぁ。」

携帯(ケータイ)が私たちの中に入ってきてから、今や暇な時もいじらないというほうが珍しいだろう。だったら、いま何をやっているか。そう考えるのが自然ということになってしまう。僕はこれにもあいまいな回答をした。

 こちらから上に運ぶものがなくなってしばらく上から降りてくる人を待つ。向こうの輸送力過剰なのか今玄関にはモジュールも車両のケースもない。2階へ上がる階段がある方からスリッパをする音がして、柊木(ひいらぎ)が顔を出した。

「もう終わりですか。」

と聞いてきた。僕はそれに終わりだよと答えてから外に出る。上に上がっていった人たちも戻ってきて、はいているスリッパを寮の玄関のわきにある下駄箱において、自分の靴に履き替えて出てくる。そしたら、思い思いに部室に戻るだけである。部室まではゆっくり歩いてもアド先生に先を越されることはない。車は学校の前を通っている大通りに出る。そこには中央分離帯があって、ここから出る車は必然的に左折せざるを得ない。車を運転して、寮から出ていちばん最初に左折できるところがある。そこを左折するといったん丘から降りてしまう。下のバイパスに出る前に一方通行の脇道が左にあって、そこに入って北に向かい、そこの最初の交差点で再び左折。今度は丘に上がって、上に出てくる。ただしこの道も上まで完全に上ることはできない。今度は右折して、学校の北側の道から一本奥に入る。そして、学校前の大通りに出て、学校の門に入ってこなければならない。大回りなのだ。もちろん人はこんなの無視していい。

 部室に戻ってくると案の定だった。佐久間(さくま)携帯(ケータイ)をいじっているだけで終わっていたのかもしれない。ずっとこの部室にいたというのは確かだ。僕たちは佐久間(さくま)と話すこともなく自分の荷物が置いてあるところに行って、座っていた。もちろんアド先生もその場所に現れた。

佐久間(さくま)君。どうして片付けのほうを手伝ってくれなかったか理由を聞こうじゃないか。」

アド先生は部室に入ってきて、さっそくそう切り出した。近くにある椅子を自分のところに引き寄せて、腰掛ける。

「俺今忙しいから。」

佐久間(さくま)からは一言そう言っただけであった。

「忙しいからって、僕には君はそんなに忙しそうには見えないんです。それが理由かもしれないという風には受け止めますけど、今の君のその態度からしてみるとその理由は答えになってないんじゃないかなぁ。」

アド先生の言うとおりだ。忙しいというのはある意味の理由かもしれない。だが、今の状況から言ってその理由は適切ではない。佐久間(さくま)を見るみんなの顔もいつもに増して険しくなっていく。

「俺忙しいって。」

「分かった。忙しいは分かったよ。じゃあ、どうして忙しいんだね。」

「そんなこと聞く必要なんかないでしょ。」

「いや、聞く必要ないってねぇ・・・。僕は一応この鉄道研究部の顧問なんです。なんで今日はだれだれは休むのかっていう具体的理由を知るっていう権利が僕にはあるんですよ。今の君の忙しいっていう理由は聞きました。じゃあ、具体的になんで忙しいのかってことを教えてくれないかなぁ。」

佐久間(さくま)が次の言葉を返すまでの時間が少しあった。

「聞く必要ないって言っただろ。」

(こんなやつに言うことなんて何もない・・・。)

「分かった。じゃあ、その理由も聞かないことにしよう。・・・。でも佐久間(さくま)君。君はさぁ、みんなが働いてるのに、一人だけ休んで自分は手伝わなくてもいいって思ってるのかね。」

(手伝わなくていいなんていったらぶっ飛ばす・・・。今度こそ。)

佐久間(さくま)からは何も言うことがないらしい。そのまま黙っていた。

「そうは思ってほしくないんだよねぇ。君には君のやり方ってものがあることも認めますが、物事には順序ってあるんですよ。前のカラオケの件だってそうですけど、普段部活動に来てないのに、部活動を中止して、みんなでそっちに行こうじゃないかっていうのはどうなんですか。それはもう考え方としておかしいでしょとしか言えないんです。だから、僕の方だって君たちがしっかり片づけをやってくれれば、今日はお疲れ様でしたっていう気になれるんだけどね、一人でもサボってたりするとそういう気っていうのはなくなっちゃうじゃないですか。」

佐久間(さくま)はまだ黙ったままだ。いつまでだんまりを続ける気だろう。アド先生は黙ったままの佐久間(さくま)に対しなにかいい方策はないのかと思ったのか、

「ちょっと、佐久間(さくま)君以外は今日はお疲れ様でした。どうぞ帰ってください。」

「・・・。」

その声を聞いて大嵐(おおぞれ)新発田(しばた)牟岐(むぎ)がまず部室から出て行った。

柊木(ひいらぎ)北石(きたいし)(はやぶさ)。俺たちも行こう。」

僕はそう言ってこの場から去ろうとした。特に今この場所に北石(きたいし)がいるということがまずいだろう。この部室で暴れてくれてもこっちが困る。

「あっ。永島(ながしま)先輩。ちょっと待ってください。僕も一緒に。」

「ああ。分かった。」

一緒に変えるという朝熊(あさま)を少し待った。そして、部室から僕が出た時だった。

「分かった。もういいです。佐久間(さくま)君。君はこれから部室のほうは出入り禁止とします。もう鉄研部員としては認めません。」

アド先生の声が耳を貫いた。

 帰り道、

佐久間(さくま)って何考えてるんだろうなぁ。」

北石(きたいし)がつぶやいた。もはや先輩でも何でもないみたいだ。

「おい。さすがに呼び捨ては・・・。」

「今日さぁ、俺あいつのことまた先輩だなんて思いたくねぇって思った。」

北石(きたいし)はいつでも牙をむけそうな声で淡々続けた。

「・・・。」

「なぁ、柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)。お前らは思いたいのかよ。あいつが先輩って。」

その問いに柊木(ひいらぎ)(はやぶさ)も答えなかった。


展開どうしようかなぁ・・・。このまま落ちていくのか、引き上げられるのか・・・。

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