125列車 熱海の砂浜
全員が集合したことを確認して、改札口を通る。今日の引率はシナ先生だ。僕たちが乗る列車は4番線から発車する。
「永島さん。どっちが313系だと思いますか。」
夢前はそう聞いてきた。
「分かるわけないだろ。あいつら共通運用なんだし。」
「それもそうですね。」
階段を上りきって4番線を見てみる。4番線になにもいないのはふつうのこと。まだ発車時刻じゃないからだ。そして、到着時刻でも入線時刻でもないからだ。
「そう言えば、佐久間のほうはどうかしたんですか。」
箕島は今日佐久間が来るということで聞いている。
「どうしたかちょっとメールしてみてくれないか。」
シナ先生からそう受け取って佐久間にメールを打ってみた。その返信は寝坊したから浜松駅に急行中とのことだった。浜松から涼ノ宮は近い。電車で6分しかかからないし、そんなでもないだろう。
しばらくたつと4番線に白のヘッドライトをつけた車両が入線してきた。
「全員後ろに乗りましょう。」
夢前がそれを見て叫ぶ。その理由は上記のとおりだ。後ろも前も関係ないならこんなこという必要はない。だが、僕たちにはその前後ろを気になるものだ。こちら側が313系なら向こう側は当然と言っていいほど211系だ。わざわざ乗りたくないほうに乗ろうという気も起きない。
「大嵐は前行かないのか。」
「うーん。今それを迷ってるんですよ。」
「隼。後ろのほうがいいと思うぜ。」
「もう騙されません。」
と言っている間に313系が僕たちの前に停車した。ドアが開いて、僕たちはその中に入る。まだだれも座っていない。座席はロングシート。ここから熱海方面に向かう編成の鉄則。1枚目から2枚目のドアの間。この両側の座席に腰掛けて、発車を待った。ここに来ないメンツは隣の動力車に行くか、ここの後ろに車掌と同じように車内を眺める形でいる。
「永島さん。またやりませんか。例の決着。」
空河が持ちかけてきた。
「またしりとり。あれ決着つかないじゃん。」
「一度付きましたよねぇ。木ノ本さんが脱落したから。」
「おーい。今なんて言った。」
「何も言ってません。」
「でもあれって、木ノ本に関してだけだよねぇ。俺たち全員の決着がついてないから、また全員でやるか。」
「全員でやるって何をやるんですか。」
朝熊は興味を持ったみたいではなしに入ってくる。
「えっ。鉄道だけに縛ってしりとりをするっていうやつだよ。」
「鉄道だけねぇ・・・。なんか楽しそうですね。」
「だろ。朝熊もやってみないか。」
「できるかなぁ・・・。」
「大丈夫。困ったらヒント出すから。」
(・・・。それじゃないんですか終らない原因。)
「じゃあ。僕も混ぜてください。」
己斐も名乗り出てきた。
「己斐。お前はやんなくていいって。」
すかさず朝熊がそう言った。それになんでと聞き返すと、
「なんでって。お前いたら最強すぎるだろ。大体時刻表の駅名ほとんどいえるやつに勝ち目なんてあるのかよ。」
「一つだけあるかなぁ。ラ行のル。」
確かに。これは何と言ってもネタが少ない。このるから始まる駅は留萌と留辺蘂ぐらいしかない。この二つを言いきってしまったら終了だ。しかし、僕たちがなぜこれだけで終わらなかったのかというと他のものに頼ったから。ルから始まる鉄道に関係する線形を言ってもアウトではない。
その後木ノ本と僕で人を募った。やる人員は少ない。木ノ本、留萌、僕、北石、朝熊、己斐、空河。木ノ本スタートで浜松から始まった。留萌が津幡で来て、僕が考えているときに佐久間が列車の中に飛び込んできた。そして、ドアが閉まる。さっきまで自分が何を考えていたのかわからなくなる。
「えーと。ただったよなぁ・・・。た・・・。た・・・。た・・・。た・・・。・・・。立川。」
「わ・・・。和寒。」
「あっ。使われた。ていうかダメでしょ。和寒っていうときには「わっ、サム。」って言わなきゃ。」
「どういうことだよ。別にお前と俺じゃあネタが競合して当たり前。俺とお前はつぶすかつぶされるかだ。」
「むって言ったら有名なところがあるね。向日町。」
「なるほどカマ関連できたな。ち。知立。」
「「あけぼの」が止まる羽後本荘。」
「「あけぼの」以外も止まるけどねぇ。」
すかさず己斐のツッコミが飛んだ。そのあともこのしりとりを続けていたけど、なんかの拍子に火が消えていった気がする。今誰かというのを気にしないで、外を見ていた。
「おい。永島。らだぞ。」
留萌にそう言われた。まだやっていたようだ。外はいま列車が走って行ったところだった。当然車両は313系と211系。
「ら・・・。「雷鳥」って出た。」
と聞き返すと留萌はうなずいた。他に「「ライラック」出た。」「「ラピート」出た」と聞いても同じ反応が返ってきた。感心していなかったからこれまでのことはほとんど聞いていなかった。自分が知らない間に結構進んでいたようだ。
「じゃあ、近鉄「楽」。」
「「楽」・・・。ああ。あれかぁ。」
留萌には理解できたようだ。北石にくでまわして、また外を見た。
「ここも有名って言ったら有名じゃないのか。黒磯。」
北石がそう言う声が聞こえてきた。有名って言っても鉄の間だけだろう。しばらくたってまた僕に順番が回ってくる。これも切り返して、また外を見る。また順番が回ってくると考えて、切り返して、外を見る。それの繰り返しだった。
「し・・・。し・・・。し・・・。」
「間もなく静岡、静岡です。乗り換えのご案内をいたします。」
「・・・。」
「おい。何車掌割り込みしちゃってんの。」
「やってる間に結構進んできましたね・・・。」
「よし、北石。静岡鉄道で。」
「あっ。でもそのままですね。」
ここで車掌が飛び入り参加してくるとは思わなかった。僕たちは気付かぬ間に静岡までコマを進めてきた。静岡の1番線に入線した列車は、客と乗務員を入れ替えて、発車していった。ここからは運転所の管轄が変わるのだ。列車は床から引っ張られるようにして静岡を発車した。北石と朝熊はこの間に順番を終わらせていた。何を言ったかというと辻堂、宇都宮。この先車掌の割り込みもなかった。
沼津に来るとまた割り込みがあった。今度は車掌の割り込みではなかったのだが、風景が割り込んできてしまった。
「永島さん。あれありですよねぇ。」
今の順番の空河が指差した。そこには青の貨車が大量に止まっている。
「ああ。いいけど・・・。」
「空河。セコイぞ。」
「セコイっていったらさっきの永島さんだってセコイじゃないですか。」
「いや、永島はいいんだって。」
「差別だ。差別だ。」
「確かに。さっきのはセコかったよ。」
ここは僕がセコ手を使ったということを認めておこう。このほうがいいかぁ。
「じゃあ、ワム380000形。」
「結局それかぁ・・・。た・・・。た・・・。」
木ノ本は文句を言ってから他のことを考え始める。木ノ本が高松と答えるときには列車は沼津を発車していた。沼津を出た時点で乗務員は女性に変わっていた。今では珍しいことでもない。逆に珍しいといえるのは車内が暗くなったことだ。
「現在東京電力管内の計画停電に際し、車内の照明を消灯させていただきました。」
車掌からはそういう案内がされていた。この状態で列車は上に道路(実際のところ分からない)の下をくぐると車内が暗くなる。
「暗いなぁ・・・。」
空河がつぶやいた。
「このまま丹那トンネルにツッコんだらどうなるだろう。」
ちょっとそれを想像してみた。丹那トンネルの中は文字通りのところ。車内灯がついていないとこの中は真っ暗。夜になる。
「さすがに丹那トンネルまでこのままはないでしょ。」
留萌がツッコんできた。もちろんその通りになった。箕島を出ると計画停電のほうはどうでもよくなかったのか照明が点灯された。函南を過ぎると次は終点熱海。何度も書いているようでくどいかもしれないが、この間に丹那トンネルがある。
熱海に到着して、僕たちはホームに降り立つ。列車は折り返し普通島田行き。方向幕・・・フルカラーのLEDの表示が変わっていた。フルカラーと言っても普通の場合は全部白文字であらわされているが・・・。ホームから階段を下りて、改札口をぬける。熱海はいま工事をしているみたいだった。いたるところにある柱をクッションらしきものが覆っていた。そこをぬけて、おととしの歓迎旅行で集合場所にされていた蒸気機関車の前までやってくる。
「よし。じゃあ、ここで解散にするけど、また13時にここに戻ってきて。まずはここから自由行動です。」
シナ先生がそう言って、自分のクラスの青海川と牟岐を連れてどこかに消えていった。僕たちはしばらくこの場にとどまっていた。柊木たちも同じだった。
「クッ。」
僕はちょっと声を上げた。誰かが僕の横腹をいじっているようだ。そして、こういうことをするのは空河しかいない。
「永島さん。お昼って食べるんですか。」
「えっ。食べないけど。どうして。」
「あっ。やっぱり食べないんですか。」
空河はそういうとしりとりの続きをやらないかと持ちかけてきたが、今はさすがにそういう気分じゃない。ことわってそのままどこかをうろうろしようかなぁと思っていた。でもどこをどう歩いていいのかわからない。
「ナガシィ先輩。海のほうでも行ってみませんか。」
柊木はそう持ちかけてきたので、柊木についていく状態で行くことにした。
熱海は結構高低差の大きいところであるというのを感じた。前はご飯を食べるぐらいしか時間がなくて、こっちの方など歩いていない。僕は海を見ながら歩いていった。15分か20分ぐらいかかったと思う。その時にはもう海の砂浜にいた。
「ナガシィ先輩あそばないんですか。」
隼はそう言って僕の隣に座ってきた。
「今日は313系のVVVFは聞けたのかよ。」
「はい。・・・。でもあたし動力車がどこなのかいまだによく分からないんですよ。なんかいい方法とかありませんか。」
(いい方法ねぇ・・・。)
はっきり言ってそんなものない。同じことを小6の萌にも聞かれたことがあったけど、その時は僕にも何がなんなのかわからなかった。その時はパンタグラフがついている車両には必ずモーターがあると信じていた人である。
「まぁ、ここら辺で言ったらパンタがついてればモーターがついてるって考えていいかな。」
「ここら辺ってことはここ以外はそうでないこともあるってことですよねぇ。」
「まぁ、そういうことだけど。」
「・・・。ナガシィ先輩って歌のことほとんど知りませんけど、「翼をください」くらいは知ってますよねぇ。」
隼は話題を変えてきた。
「知ってるけど、それが・・・。」
「前瀬戸学の展示の時に前聞かせたじゃないですか。歌の歌詞が駅名になっているやつ。あれの「つばさ」バージョンを覚えたからパッチ状態ですけど小倉から新庄までは行けるようになりました。」
「へぇ、そうなのかぁ・・・。俺は小倉から東京までだったな。」
「・・・。ナガシィ先輩も結構覚えてるんですね。」
砂浜と道路の間は僕たちの腰の高さより少し高いくらいのコンクリがあるそこに座って話していると柊木がこちらによってきた。
「隼。」
「何。」
「お前さっきからパンツ見えてるぜ。」
これを聞いた隼の顔が赤くなってそれを言いにきた柊木を追い回す。それを呆然と見ている北石と潮ノ谷。柊木はちょっとした拍子にこけて、そこを隼に抑えられる。
「ねぇ、北石と潮ノ谷は見たの。見てないの。」
「見てねぇよ。」
「本当は見えてても見えてないって言いたいんじゃないの。みんなエッチだなぁ。」
「おーい。そこは・・・。」
「見たんなら忘れろ。」
(いや、男にそう言うほうが無理だと思う・・・。)
「少なくとも俺は見たぞ。白。」
「言うことないだろ。」
「・・・。」
時計を見てみるともうそろそろ時間だ。
「おーい。そろそろ行くぞ。」
と声をかけた。その声を聞いて、砂浜で遊んでいた柊木たちが僕の周りに戻ってくる。
「ちょっと得した気分。」
「最悪。これからスカートで旅行するのやめよう。」
「翼って結構エロいな。醒ヶ井先輩と同じだな。」
潮ノ谷がそう言うと
「マジかよ。あんなのと一緒かよ。」
そのあとはいていた。僕たちが集合場所に戻ったのは12時55分ごろだった。
モーターのついている車両。どう考えますか。本編以外に先頭には必ずついていると考えますか。
先頭には必ずついているということなんてありません。むしろついていないというほうが多いです。