115列車 小さな旅
鳥峨家を主体にした話です。
2月。この月には11日が建国記念日で休みの日がある。今年は次の土曜日が第2週目だから、授業はない。3連休だ。
(ちょっとあっちの方でも行ってくるかなぁ・・・。)
ふとそんなことを思った。
「鳥峨家。」
ふと顔を上げる。と目の前には友達児島の顔があった。
「何。」
「11日さぁ、みんなでカラオケでもいかない。」
11日かぁ。11日はちょっと自分なりに旅をしようかと思っている日である。
「あっ。ちょうど11日は出かける予定があって。」
「そうなのか。せっかく鳥峨家の歌声聞きたかったのになぁ。」
「俺は音痴だぞ。それも強烈な。」
と言ったけど児島には自分が音痴であることはどうでもいいらしい。ただ歌えればカラオケにはなる。しかし、僕にはどうしてもカラオケに行きたくない理由がある。あの点数評価がウザいのだ。気にしなければいいものなのだが、どうしても気になって悪いと二度と行くかと考えてしまう。
「まあ、用事なら仕方ないな。他当たるよ。」
児島はそう言って諦めていった。
「・・・。」
すぐに考え直した。カラオケに行くことではなく、出かける日である。よくよく考えたら僕は遠州鉄道の解放を見たことがない。平日は朝と夕方に、土曜日は朝のみ4両編成で運転を行っている。その解放のほうだけでも見たいと思ったら祝日はダメである。反対に遠江急行の連結解放のどちらかを見たことがあるかとある。遠江急行の方は簡単でJRのほとんどの車両と同じ連結器を装備している。だから、遠江急行の連結解放はJRを見ているのと同じである。
(・・・。どうするかなぁ・・・。)
児島には悪いと思ったが、11日はそのまま。出かける日を12日にずらすことにした。
2月12日。
今日は家を8時30分ごろに出た。学校に行く時より1時間遅い。自転車をゆっくりこいで芝本に到着。カード読み取り機にナイスパスを当てたところでアナウンスが入り、西鹿島側の踏切が鳴りだした。ここの入れ替えは基本新浜松行きが先に来る。
向こうから姿を現したのは車体番号1005。これには用はないかぁ・・・。いや、用がないと言ったら1005に失礼か。ちょうど新浜松に行く仕業に就いているのだ。そっちではお呼ばれしている。
(こっちは・・・。)
新浜松のほうから来る列車に目をやった。両方ともパンタグラフがシングルである。どちらかが坂口がよくいう1001だと思った。だが、それは大きくいい意味で外れてくれた。
「マジかよ。」
とつぶやいた。補足しよう。僕は鉄研部員ではないので「マジかよ」というときは裏声ではない。来た車両が2003と2004だったからだ。どっちにのろうか一瞬迷った。2003は西鹿島側に近い。だが、その後ろに2004がくっついている。結論はすぐに出て2004のほうに乗ることにした。
2004号に乗り込むと坂口の所定に位置に行った。坂口が乗る列車に居合わせることはよくあるが、話したことはほとんどない。彼女から話しかけてくることもないし、こちらから話しかけることもないからだ。一回だけ話したときはこっちが結構振り回されていたが、今になったらそのうちに少しは分かるようになった。
運転室のほうからブザーが聞こえてきて、ブレーキメーターの黒い指針が0に下がってくる。逆に上がっていくのは圧力計の赤い指針。もう一つは速度計だ。そして、発車と同時に次の駅のアナウンスがされ始める。
この先は言ったことがない。寝過ごしてしまうということがないのだ。それはそれで何ともつまらないものだが、それで不便するのもと思う。次駅岩水寺までは多少距離がある。新浜松行きの列車から見て次駅の小林との間もあるが、こちらも負けていない。長さで言うと芝本~小林のほうが長い。今は仮線のほうを走っているから、メートル単位で少し長くなっているだろう。
終点西鹿島まではわずか4分。あっという間についてしまった。ここで降りたことはほかでもない。ここで行われる列車の解放を見に来たのだ。
「・・・。」
電車に携帯を向けたが、なかなかその時は来ない。それにこれはどうもしてくれないみたいだ。作業員がいつまでたっても来ない。そのうち2003と2004の開いていたドアが閉まる。これから動くからだ。
そのうち上り列車の発車時刻になったが、2004は一向に2003と縁を切らない。これは違うみたいだ。今日2004箱の昼の仕業には就かないのだということを悟った。ついでいうと2003も。そのうちどこからともなくモーターの音がして、2004と2003の向こう側から列車が走っていくのが見えた。パンタグラフがちらっと見えただけで1000形以外のことは分からなかった。
それから2004と2003は縁を切らないまま走ってきた線路を逆走した。それで、2103の先頭が車庫に通じるポイントの向こう側まで行ったところで停車。戻ってきた。そのまま2番線まで戻ってくるとようやっとそこで解放。つながっていた互いの腕を閉まって、ブレーキ的にも電気的にも開放する。最後に縁を切って解放作業は完了だ。
中を作業員が移動するのが見える。作業員は2004の運転室までくるとワンハンドルのレバーを握った。そしてP1に入れただろう。2004はゆっくりと動き出した。いつもでは見れない超ノロノロ運転で本線の隣にある屋根つきの車庫まで走っていく。それを追っていくように2003も超ノロノロ運転で屋根つきの車庫に身を移した。その一部始終は携帯のカメラで数枚写した。
(次来るのはなんだろうなぁ・・・。)
それを思う。今ここで2004と2003がいる。どんな強運があっても2001と2002が手をつないでいるということは95%の確率で考えられないだろう。あるとすれば2001と1000形のどれかか2002と1000形のどれかだ。そして運が悪いことに1001が余っている。両方ともシングルアームパンタグラフでも喜べない。そこまで注意する必要がある。
案の定その組み合わせでやってきた。だが、今回はすぐに喜べることが分かった。前が1001号だったからだ。前が1001号なら後ろのシングルは2000形しかいない。もちろん2001か2002のどちらかに一つだ。車番を調べたところ2002。運がよかったということを感謝するしかあるまい。この2002に乗って新浜松まで身を移した。
浜松駅に来ることは久しぶりである。よく学校の帰りに寄り道してくるのだが、住んでいるところがあっちだから、なかなかそういう機会もない。来れるとすればこういう日しかないのだが、カラオケとかに誘われて結局行く暇がないままでいた。
「・・・。」
今僕がいるのは券売機の前。どこか行こうかとも思ったが、財布はその相談には乗ってくれそうもない。今できることは140円でこの中に入ることだった。
中に入って階段を上がると211系が止まっていた。最近調べて理解したことだが、JR東海が作った211系は首都圏と仕様が違う。そのため5000番台という区分で分けられているのだが、中に6000番台という区分が存在するらしい。もちろんどこがどう違うのかは僕にはわからない。結構細かい違いしかないのだろう。
(後ろがこいつってことは前は当然・・・。)
心の中で思っていたことを確認しに3両向こうまで歩いていく。すると車両が変わった。313系だ。ここら辺で走っている313系は基本2500番台だ。中はロングシートになっている。
「間もなく2番線に当駅どまりの列車が参ります。」
反対側のホームにアナウンスが耳に入ってくる。向こうから来る列車は大体豊橋発。なかには米原・大垣から来る特別快速および新快速が設定されている。
「何が来るんだろう・・・。」
僕は運用のことにはついては無知だ。何が来るのかということは純粋に楽しめる。来た車両は311系だった。僕としてはこっちまで来ることもあるんだぐらいにしか思えないけど、ふつうのことだからなぁ。
1番線には211系が止まっている。とすればこれの後ろが313系だろう。311系に乗ってきた客はここで降りるか、この先に行くかしかない。大体の人はここで降りて、少ないが反対側の列車に乗り換える人もいる。もちろんここからはその様子は見えない。しばらくたって211系が動き出した。その211系の速度に合わせて、顔を進行方向に向ける。そのままの姿勢で211系を見送っていると音が変わった。後ろは思った通りの車両がくっついていた。
それからしばらく風の強いホームにいた。ここに来る車両は大体たかが知れている。時折貨物列車が来るだけで、夜にならないとバライティーに富まない。さすがにそんな時間まではいることができない。ここはいま来る車両で我慢することにしよう。
新幹線に近いホーム4番線の向こうにはもう1本線路がある。ここは何のためにあるのかということはすぐに分かった。その列車がお出まししてくれたのだ。東京方面から黄色のヘッドライトを照らした車両が近づいてくる。僕は最初これは211系か311系だと思った。だが、不思議なことに何の案内もない。
(もしかして・・・。)
携帯をポケットから出して、構えた。これは紛れもなく貨物列車。牽引は99%桃太郎のはずだ。
いいタイミングでシャッターを切ったつもりだったけど、列車が遠すぎた。小ぢんまりと写っているだけになってしまった。
「チェ。」
悔しかった。でもそんなこと悔しがっていたれない。そのあとこの貨物列車が通り過ぎるまでちゃんと見送った。
貨物列車を見送ったらちょうどお昼になっていた。この時間ではどこの店も混んでいるだろうと思いホームから出て、しばらくそこら辺を歩き回っていた。本屋の中にも入って暇つぶしする。自分が興味を持った雑誌に目を通したりしていた。当然だが、本屋には恋愛の本も置いてあったりする。それも手に取ってみてみたけど、これも見て、黒崎とどう進展があるかなんてわからないし。なんてことをやっていたら、お昼も過ぎて、混雑は峠を越えたぐらいの時間になった。
お昼を食べた後、このまま帰るというのも出だった。でも、このまま帰るというのも何となく気が引けた。せっかくここまで来たのだから何かをして帰りたい。でも、何をすればいいのかはわからない。分からないのにここにとどまるというのも変だろう。新浜松のほうまで歩いてきて、新浜松には上がらずにその先のアーケードがある道に来た。ここにきても何もないだろう。そう思いながら店に目を通していた。すると一つ僕の目に留まった。
「・・・。」
僕は何かに導かれるようにこの中に入った。下はプラモデルがいっぱい。その上には鉄道模型がいっぱいおかれていた。
「鉄道って奥が深いんだなぁ・・・。」
分かりきっていることが口から出た。ケースの裏表紙にはこの箱には何というものが入っているということが書いてある。しかし、形式だけ見せられて、僕が分かるのは313系と211系と311系ぐらい。それ以外はほとんどわからない。
結局僕はここにあったものの多さに圧倒されただけで、家のほうに戻った。
駿兄ちゃんが持っている1300t級高速貨物の組成について・・・。
機関車+コキ107、コキ103、コキ102、コキ102、コキ103、コキ104、コキ110、コキ107、コキ104、コキ105、コキ105、コキ106、コキ104、コキ103、コキ102、コキ102、コキ103、コキ106、コキ106、コキ107、コキ105、コキ105、コキ110、コキ104、コキ106、コキ107
以上。
先頭のコキ107の機関車側以外連結器はTNカプラー。ウェザリング(汚し)はしていない。
よく出てくるからということで自分自身にも補足しました。すみません。