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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
110/184

110列車 ゴール

 翌日。12月26日。キラキラ展最終日。何とも早いものである。これまで展示をやってきて、何も支障がなかったといえばウソになる。「カシオペア」を走らせている時に牽引機のスノープラウが引っ掛かって12両編成の「カシオペア」が全車両脱線して外回りを走る「北斗星(ほくとせい)」の進路をふさいだり、テストをやって走るというはずの車両を持ってきたのだが、ここに来ると走ってくれなかったり、ダイヤ通りに運転できなかったりと、こちらのミスもあるが、電車の都合により遅れるということが多かった。

 今日(もえ)は来ない。昨日そう言って帰っていった。代わりと言っては失礼だが、今日は蒲谷(かまたに)が病室に来ている。

(もえ)の代わりにあたしが来てよかったのかなぁ・・・。」

「そう言うなって。」

僕は今思っていたことが蒲谷(かまたに)の口から出たことに驚いた。

(もえ)は今日忙しいから・・・。別に僕の見張りなんて必要ないんだけどねぇ・・・。」

「そうか。ナガシィ君の場合何するかわからないって(もえ)言ってたぞ。」

「なぁ、あとであいつ殺すって言っといて。」

「おいおい。恋人殺していいわけないだろ。」

「恋人じゃないって・・・。」

「恋人じゃないならなんなんだよ。」

蒲谷(かまたに)が僕に顔を寄せてくる。

「恋人じゃなかったら・・・。」

何と答えていいか自分でもわからない。恋人以外なんて答えたらいいだろう。友達か・・・。自分ではそれではない気がしている。しかし、黙ったままでいるわけにも行かない。(もえ)が言うには僕が黙っているときは図星であることが多いらしい。今この状況で黙ったままでいるというのはイコール(もえ)を恋人と思っているということの証明になるのだ。

「はいはい。そういうことでいいから。」

そういうことにされてしまった。

「間違ってないからいいじゃん。」

(・・・。間違ってないねぇ・・・。)

 しばらく黙ったままになると思った。

(もえ)がナガシィ君のこと好きな理由は分かる気がするけど、ナガシィ君が(もえ)のこと好きな理由って見当がつかないなぁ。どうして。」

というのが聞こえた。

「えっ。好きな理由。」

「そう。(もえ)からしてみれば、鉄友(テツトモ)でしょ。そういうことで親近感がわいてるってことだと思う。だけど、ナガシィ君からしてみればどうなのかなぁってこと。」

「・・・。」

ちょっと考えた。今までそういうことを考えたことがない。鉄道のこともそうなのだが、理由を聞かれるとなぜか答えられなくなる。

「正直言うと自分でもわからない。」

まずそう言って、

「いつの間にか(もえ)のこと好きになってたんだよなぁ・・・。なんでだろう・・・。」

「・・・。」

「きっと雰囲気だよ。(もえ)の持ってる雰囲気にほれたんだ。」

そう言ってこのことは済ませた。

「雰囲気。」

蒲谷(かまたに)のほうが気になるようだ。おうむ返しに言葉が返ってくる。

「そうでなきゃ考えられないっていうのかなぁ。あいつのこと理屈で好きになってるとは思えないんだよ。」

「・・・。」

「そうなんじゃないかなぁ・・・。自分でもよく分かんない。」

と回答した。

 16時30分。今日はいつもと違う時間にキラキラ展は終了する。「トワイライトエクスプレス」の「スイート」部屋の抽選のほうは浜松に住んでいる国道(こくどう)さんという人が当選したということをアナウンスで言っていた。

「それでは、車両のほうを片付けてください。」

アド先生はそうみんなに指示を出した。

「あの。さくら先輩。このナガシィ先輩の車両どうするんですか。」

(はやぶさ)は前からずっと気になっていた。この6箱あるケースをいつ取りに来るのだろうか。当の本人は入院している。

「それ。はじまるときに永島(ながしま)の友達が来たじゃん。その人が回収に来るって。」

「あっ。そうなんですか。」

「おい(はやぶさ)。ぼやぼやしてないでこのモジュール外すの手伝ってくれよ。」

柊木(ひいらぎ)に呼ばれて、そちらに向かう。

(そろそろ行くか・・・。)

台車を押して、館内に入る。岸川が展示をしているところに行って、

榛名(はるな)いる。」

鉄研部の人にそう聞いた。

「えっ。木ノ本(きのもと)先輩は今日は来てませんけど。」

「あっ。そうなの。」

「おい。永島(ながしま)の車両はここにあるよ。」

車両関連のことを任せた留萌(るもい)が呼ぶ。そちらに行って、中にいる留萌(るもい)から車両ケースを受け取り、台車に乗せる。

永島(ながしま)大丈夫か。」

そう聞いた。

「うん。昨日手術やったし、もう問題ないよ。別な意味でもね。」

「・・・。えっ。どういう意味。」

「なんでもない。こっちの話だから。」

「・・・。」

これ以上は話さなかった。まぁ、別な意味でというのは気になったが、話してくれないなら、こちらから聞く必要もない。恐らくその理由は榛名(はるな)しか知らないと思った。

「これで最後だよ。」

「ああ。はい。」

(もえ)はその箱を受け取って中身を確認した。漏れがないかの確認である。すべての中身をチェックして、入れ替わってないことを確認。

「ありがとう。じゃあ、これで引き上げるね。」

そう言っていったのでもう戻ってこないのかと思った。だが、すぐに戻ってきて、

「片づけよかったら手伝うけど。」

と言ってきてくれた。ことわろうと思ったが、そうする前にもうすでに片付けに加わっていた。

「おーい。これはどこに持っていけばいいわけ。」

「あっ。それじゃなくて、まずあっちの気の箱のほう運んでってくださいよ。」

「あっ。ごめん。片付けまでは見てないからごめんね。」

「・・・。」

「手伝います。」

「ありがとう。」

部員はおそらく気づいていると思うが、だれであろうと関係ないらしい。よそ者でも部活の仲間という風にふるまっている。

「・・・。」

「次はこれでいいのかなぁ。」

「はい。それもバンのほうです。」

(はやぶさ)は手伝ってくれている人の反対側を持った。

(この人なんだよなぁ。ナガシィ先輩の彼女って。顔つき似てるし・・・。きょうだいみたい・・・。)

バンに運び込み終わると、

「ねぇ、榛名(はるな)私のこと変な風に言ってない。」

と聞いてきた。

「えっ。言ってないです。」

「・・・本当に。」

顔を寄せた。顔を寄せられる。

「本当に。本当に何も言ってないです。」

「そう。ならいいや。」

「・・・。」

(ナガシィ先輩と違うところもあるんだな・・・。でも、ならいいやで流しちゃうところは同じか・・・。)

 坂口(さかぐち)は終盤まで片づけを手伝い、終わったところで素早く姿を消した。

「あれ。あの手伝ってくれてた人はどこに行ったの。」

アド先生は気になったので聞いてきた。

 それに気づいて全員であたりを見回してみる。彼女の姿はどこにもない。片付けが終わって感謝されるようなことでもないからだろうか。

「・・・。」

「いいんじゃないんですか。感謝されるようなこともないと思ったんじゃないんですか。」

留萌(るもい)はそういておいたが、アド先生と箕島(みしま)はそういうわけにもいかないと言っていた。

 まぁ、それ以上探しても彼女の姿をとらえることはできなかったから、終わるころには二人とも諦めていた。

 翌日。面会時間になるのを見計らい永島(ながしま)がいる病室に行った。

「よーす、永島(ながしま)。」

病室の中をのぞくと(もえ)の姿がある。ここではお互いのことは知らないということだ。(もえ)はアイコンタクトでそう木ノ本(きのもと)に送った。

(・・・分かったよ。)

心の中でつぶやいて、坂口(さかぐち)の隣に座る。

永島(ながしま)。身体大丈夫か。」

「大丈夫だって。気にすんな。」

「気になる人には気になるの。心配かけさせやがって。」

そういうとすぐしまったと思った。彼女の前でこんなことを言ったら勘違いされるだろう。

「ナガシィ。誰よ。もしかして浮気してたわけ。」

「・・・。」

「浮気してないって。部活の人だよ。」

坂口(さかぐち)がうまく演技をして、永島(ながしま)をだます。ウソが嫌いと言っている人によくできるなぁと感心する。

 打ち合わせをしていたわけではないが、坂口(さかぐち)がうまくフォローしてくれたので、永島(ながしま)にはばれてないだろう。永島(ながしま)にこのことがばれるときは坂口(さかぐち)の口から説明する日までない。

「元気そうだから、私はこれでいくね。」

というと、

「ああ、分かった。」

そう聞こえたのですぐに病室を出た。

 それからすぐに永島(ながしま)の病室に向かう箕島(みしま)と会ったので、箕島(みしま)には相変わらずだよと言った。

 (もえ)と僕からしてみれば、ここから先は邪魔だけが多かっただろう。来てくれるのには歓迎だが、なかなか二人だけの時間というのができなかった。

「よく人が来てはなせないね。」

(もえ)は人がいなくなった時を見計らってそう話しかけてきた。

「そうだな。まぁ、これまでキラキラ展やってたんだし、仕方ないと思うけどね。そういえばキラキラ展行ったりした。」

「うん。前売り券使わずに中見てきた。」

「どういう裏ワザ使ってきたんだよ。」

「えっ。ナガシィの車両運び込むときにさぁ・・・。あれってすごいよねぇ。鉄道模型って私Nゲージしか見たことなかったから。あんなにいっぱいあるんだなぁって思わなかった。」

「そうか。別にそう思うようなことじゃないと思うけど。」

「知らないからそう思って当然でしょ。」

怒り気味に答えが返ってきた。

 それから醒ヶ井(さめがい)が病室に来て、

「なぁ、俺に鉄道のこと教えてほしいんだけど。」

いきなりそう頼まれた。

醒ヶ井(さめがい)。頭おかしくなったんじゃないか。」

そう言うと(もえ)は声をひそめて、

「この人ってどれくらい知ってるの。」

と聞いてきた。

「じゃあ、醒ヶ井(さめがい)まず聞くけど東海道本線(とうかいどうほんせん)って東京(とうきょう)からどこまで。」

「えっ。大阪(おおさか)までだろ。」

と答えが返ってくる。

「なっ。」

「確かに。」

「おい。どうなんだよ。教えてくれないのか。」

「教えるには教えるけど、新学期始まってからな。そして、そのどうしようもない知識をどうにかしてくること。これが条件だ。」

「どうしようもない知識をどうにかできたら、教えてって頼まないつうの。」

 そんな感じで退院の日まで過ぎていった。


前回スピード記録について書いたので、今回もスピード記録について書かいたいと思います。


昔フランスとイギリスは蒸気機関車でどちらが速く走れるかということを競っていました。結果はイギリスの勝利だったのですが、その勝因をイギリスはこう語っています。

「フランスにはイギリスほど長い下り坂がないから、勝ったんだ。」

とです。

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