11列車 バスケと走行テスト
ストーリー中にある批判はあくまでもストーリーの中だけですので。
現実にそうということは一切ありません。
作業は一時中断。部室に戻って、弁当を食べる。
「ナガシィ、ハルナン、サメちゃん、ミッシィ、イサタン、ソラタン、アサタン。バスケットやらない。」
「おお、面白そうじゃん、やろやろ。」
サヤ先輩がそれに乗る。サヤ先輩に次いで、アヤケン先輩も乗った。
「おーい、バカタカとアヤノンはやらないのか。」
「バカタカって呼び方やめてください。つうか、いつから僕のあだ名は変わったんですか。」
「あたしは運動は苦手だからやめときます。一人プレイだったらしますけど。」
「えー、シュートだけ。つまんないじゃん。試合やろうよ。試合。」
「でも、それ下のバスケット部がいなければの話でしょ。」
箕島が当然の質問をした。
「大丈夫。バスケットは午前中だけ。午後はあたしたちの貸切になる。」
弁当を食べ終わって下に行くと、さっき言ったとおりバスケット部はいなかった。
「ほれ、やるぞ。」
体育館のステージから飛び降りて、北の器具庫のほうへ走っていく。中からボールをつく音がして、善知鳥先輩がドリブルしながら、出てきた。
「善知鳥先輩。体操服とか持ってきてませんよ。」
「大丈夫。見られたら見られたでご愛嬌。」
「じゃあ、僕参加します。」
「おお、サメちゃんはすかさず変態を自嘲したぞ。ナガシィたちは参加しないのか。うまくいけば、女の子のパンツが見れるぞ。」
「そういう釣り方やめろつうの。」
「・・・。」
「榛名、参加するなら、あたしの体操服貸すけど。」
「えっ、でも。」
「いいって。どうせあたしは参加しないんだし。それに、モジュールも作ってないし。」
「・・・じゃあ、私も。」
「じゃあ、ちょっと上来て。ハクタカ。もしのぞきにきたら、頭から飛び降りてよ。」
「のぞかねぇよ。」
「ふぅん。あたしの時はのぞきに来るのに。」
「それは。お前の着替えてるタイミングが悪いだけだろ。」
「ねぇ、ナガシィ。本当に参加しない。」
「楽しそうだから、参加します。」
「よーし、4対4でやるか。」
やる人は全員体育館のフローリングに行ってスタンバイする。その姿を見ている人は、
「善知鳥のやつ。ああいっても中にハーフパンツはいてるよなぁ。」
「あれにつられる醒ヶ井って。ただの変態なんじゃないのか。」
「ああ、ただの変態かもなぁ。」
「もう集まってるし。」
「ハルナン。早く、早く。」
「楽しそうなのはいいんだけどなぁ。」
「ハクタカ。今日は珍しくのぞきに来なかったね。」
「だから、のぞいてるんじゃなくて、お前の着替えるタイミングが悪いって言ってるだろ。」
「それ言ったら、ハクタカの来るタイミングが悪いってことになるじゃん。」
「そうかもしれないけど、着替えるタイミングも悪い。」
「ハクタカ言ってることおかしい。だからバカタカって言われるんだよ。」
「いったな。クソアヤ。」
「ナガシィ。パス。」
「いただき。」
「あっ、サヤとるな。」
「申し訳ない。昔バスケットやってて。」
「少しは手を緩めろよ。」
「残念。はいスリーポイント。」
10分後。
「つ・・・疲れた。この頃動いてなかったからな。」
「最後なんか体育苦手な善知鳥にもボールとられてたもんな。」
「うるさい。ああ、暑い。服ぬぎてぇ。」
「脱げばいいじゃん。」
「女子がそんなにさらっと脱げばって言うなよ。」
「サヤ先輩、上から扇風機持ってきますか。」
「ああ、お願い。」
「はぁ、久しぶりにバスケットやったなぁ。1年生以来だっけ。」
「そうだな。猪谷さんがいた時以来だな。昔はバスケットがいないときは製作そっちのけでよくやったな。」
「サヤ先輩たちそんなことしてたんですか。」
「ああ、あのときは俺たちも若かった。」
「若かったって。もう年寄りみたいな言い方ですね。」
「人間18になればおじいちゃんの仲間入りすんの。18になると体が言うこと聞かなくなる。」
「サヤ先輩。そんなこと言わないでくださいね。」
扇風機を持ちに行った楠先輩が言った。
「だってそうなるんだからしょうがないだろ。」
扇風機の前に行って誰もがよくやることを始める。
「だから、サヤとるなって。」
「マジックカード。部長権限を発動。」
「トラップカード。無効を発動。」
「あー、バカたれ。トラップカード。カウンターカウンターを発動。」
「サイクロン。」
何を始めると思えば・・・。
「おいおい、何こんなところでデュエルしてるだよ。」
サヤ先輩と善知鳥先輩がそんなことをしている間に扇風機はナヨロン先輩が占領していた。だが、僕には別のことを思い出していた。萌とよくやったのだ。カードはほぼそのままでモンスターカードだけ電車にしてやったことがある。あれについては自分でもよく考えたものだと感心するところがある。
それはさておき。13時45分から作業再開。
「これ、塗料で塗ったほうがいいよ。」
アド先生に言われて上から筆と塗料の缶を持ってくる。この塗料缶の固まったふたを開けると、中で塗料が固まっていた。カッピカピになっており、乾ききった土のようにひびが入っている。仕方がないので、体育館を突っ切って近くの水道まで歩いていく。水を入れて、筆で押したりすりつぶすようにしながら、水に浸らせていくと塗料が復活。ここまで来てようやっと塗る作業に入った。
発泡スチロールと板の道路と家の部分に塗る作業を施行すると、この先の作業が進まなくなると思ったが大きな間違いだった。塗料は一度塗っただけでは下地が透けてしまうらしい。そのため何べんも塗って色を濃くする。それが完了すると外に持って行って、干す。その間塗料の缶にふたをして、筆を洗う。この部活では筆を洗わなかったら制裁があるという。何ともおかしな風習がある。
筆を洗い終わってもとの位置に返す。これが終わると次は配置すると決めた家の組み立て。Nゲージの家屋は組み立てられ終わっているものからプラモデルのように自分で組み立てるものまで様々。僕たちが使うと決めたものはジオコレという中の数種類。近郊住宅地の全シリーズを網羅してモジュールに配置することにした。これを箱から出すと、地面と壁など数枚のパーツに分かれている。それを組み合わせて、地面となるところにさしていく。これをさし終わるときれいな近郊住宅ができる。このころには塗装した板のインクも乾いており、中に持ってきて、どのように置くか仮置きする。
「その住宅はそこかよ。面倒だから順番に並べちゃおうよ。」
「おいおい、そんな住宅地あるのかよ。」
「醒ヶ井ツッコんだら負けだと思っていいよ。」
「どういう意味だよ。」
「まあ、それでいいだろ。」
「これはこれでいいんだけど、ここどうする。変に余っちゃったけど。」
「工場にでもすればいいだろ。」
「えっ、ちょっと古臭い感じのこれにするのか。」
「いいだろ古臭くても。半分模型だからできることじゃん。」
「そうだな。」
「おい、そっちはもういいよ。こっちはどうするんだよ。そっちばっか決まったって意味ないぜ。」
「そっちどうしようか。」
「コンビニとか。トラックステーションでもいいんじゃないか。」
「えー、トラックステーション。」
「えっ、ヤダ。」
「いいよ、何も思いつかないし。」
「ああ、そう・・・。」
「永島君。他を決める前に線路つけちゃっていいよ。まず電気が通るかどうか確認して。」
アド先生がレールを取り付けていいという。午前中に決めたレールを元通りに直して、幅のある両面テープで張り付けた。レールをつけ終わると、バラストをまく。バラストとはレールの下にひかれている砂利のこと。あれは車輪からかかる重みを少しでも分散させる効果がある。一種のキャタピラなのだ。僕たちの取り扱っているレールは道床という部分があってその道床の部分がバラストの部分である。まかなくてもいいのではあるが、まかないままだと木の板があらわになる。そのために薄くまく必要がある。さっきの両面テープと同じように上からバラスト(カラーパウダー)の入った容器を持ってきて、指でつまみながらまく。地道な作業がツボにもなる。
1枚にバラストをまき終わると板を立てていらないバラストを落とす。滑り台のように駆け下りていったバラストをさらにかき集めて、2枚目に転用。2枚目も同じ作業を行って余った分は3枚目に転用。3枚目で余ったバラストはごみを含まないように容器に戻す。
バラストをまき終わると車両の走行試験。順番が逆なのはご愛嬌。とりあえず、走れば今はOKだ。部室にある名古屋鉄道「パノラマデラックス」とフィーダー、コントローラー、フィーダー線接続用の線路を持ってきて、試した。
コントローラーのコンセントを差し込み、コントローラーのパイロットスイッチが点灯したことを確認する。そして持ってきた「パノラマデラックス」を線路上に置いて、ディレクションスイッチを前進に入れた。そして、コントローラーのつまみをゆっくりと回す。
電気に反応した「パノラマデラックス」の顔が次第に明るくなる。ライトがついているのだ。そして、ピクッと前に動いた。するとぎこちないがゆっくりと動き出し、僕から見て手前側。板の端の線路を完全に走破した。
今度はディレクションを後進にして、同じように走らせる。こちらも良好。「パノラマデラックス」は順調に走った。
走るということが確認されたら今度はフィーダーをさしている線路を変えてテストする。「パノラマデラックス」もそっちへお引越しして、同じ動作を繰り返した。今度もよく走ったいたのだが、2枚目と3枚目を越えるところで、急に止まった。
「あれ、どうかしたの。今までよく走ってたのに。」
見ている全員が異変に気付く。「パノラマデラックス」を覗き込むと、顔がさっきと違って暗いことに気付いた。電気が行っていないのだ。「パノラマデラックス」を走っていた位置まで後退させると「ギュイーン」とモーターが動いた。電気はある位置まではいっている。だが、進むとすぐに止まった。
「これの位置変えてみればいいんじゃないか。」
「いや、それじゃあない。」
今度は「パノラマデラックス」をどかして、走らなくなるところを検証した。すると、2枚目と3枚目の継ぎ目はジョイナーと呼ばれる部位が一つしかないことに気付いた。
「分かった。こいつだ。」
2枚目と3枚目を切り離した。切り離し終わると上に行って、アヤケン先輩に言った。
「アヤケン先輩。このジョイナーってどこにありますか。」
「ジョイナー。ああ、レールの入ってる箱から、ジョイナーのついてるレール出して、あーって取り外せばいいよ。」
なぜ「あー」のところだけ裏声だったのか。それはさておき、レールの入った箱を探す。レールの入っている箱を見つけたが、なかなかジョイナーのはまったものに出くわさない。出くわしてもなかなか外れない。だんだん外れないジョイナーにキレたくなってくる。
「あーっ、もう。なんで外れないんだよ、バカたれ。二つはまったの出てこいや。あったら返事しろーっ。」
全部独り言です。
「すげぇ。永島がどんどん鉄研色に染まってく。」
善知鳥先輩は何か別なところに感心している。
なんとか2つジョイナーのはまった線路を見つけて、持っているレールとつなげる。そしてすぐに外す。すると本来ジョイナーのはまっているほうにジョイナーがはまる。これで問題は解消だ。
そのレールを下に持って行って再びはめる。また走行テストを行うとこの区間もとおるようになった。内側の線路も電気が通ることが確認された。
そして時間は16時。今日の作業はここで終了した。
翌日。4月26日。今日もモジュール製作である。今日はほとんど走ることを楽しむだけ。午前中はほぼそれだけで終わり、昼はまたバスケットボール。午後になって初めて、製作を進めた。今日は2枚目の住宅地づくりである。
「ここも近郊住宅だけだとなんか張り合いないよね。」
「それはないだろ。1枚目で近郊住宅を使っているいじょうそれはできない。どれもこれも同じようになるからなぁ。」
「醒ヶ井って本当にこれだけだよなぁ。」
「うるさいなぁ。」
「あと、変態っていうのもあるよねぇ。」
「だまれっつうの。」
「まぁ、それは置いといて、ここどうする。」
「近郊住宅から田舎に通じるところだろ。ここは結構古臭い建物にしとくのがいいんじゃないか。」
「確かにそれもあるけど、今は田舎から町につながるところって大体新しい家が建ってるだろ。反対に近郊住宅よりも近代的なもの建てたほうが効果的かも。」
「何。2階建てとか、3階建てのやつ。」
「そう。それくらいのほうが自然じゃないかってこと。」
「うーん。」
しばらくどうするか考え込んだ。しかし、何分考えても答えが出そうにないため、
「アヤケン先輩だったらどうするのが一番自然ですか。」
「えっ、自分が思ったとおりにやってくのが一番いいよ。道路配置が決まったら何も考えないでやっても何とかなるよ。」
という回答だった。道路配置が決まるまでは想像力。道路配置が決まったら自分の勘。このつくり方って効果的なのだろうか。それともアヤケン先輩だけに通じることなのだろうか。
結局アヤケン先輩が言ったとおりにやっていくことになって、古臭い建物を配置。実際あるかどうかは別として、その家の隣。2枚目始まってすぐ(1-2)のところに畑を配置。そのあとは一列に家を並べて、反対側の切り出されたところに詰所を配置した。実際のところ、この詰所は郵便局もどきという設定となった。
概略ができたところで、家をベニヤ板に張る作業になった。模型の家を張る作業はいくらでもあるのだろうが、この部活でとっている方法はストラクチャーの地面のふちに両面テープを張って張り付ける方式。こうすれば、確実に接着できる。
上から細い両面テープを持ち出して、裏側に張る。縁から反対側の縁まで行くとテープを適当な長さに切る。それを4回繰り返して、仮置きしたところに置いていく。1枚目の建物はすべて決まっているため、1枚目はすぐに完了。3枚目は設置が決まった建物は貼り付けていった。2枚目使う発泡スチロールと設置する建物を張り付けた。なんかとんとん拍子に進み気味である。
ここまで作業が完了すると醒ヶ井以外は堕落した。僕は中学生のほうの進行状況を見に行った。
「諫早―。どうだ進み具合は。」
「えっ、この山をハゲからモッサモッサにするために植林してるんですよ。」
諫早はアド先生をちらっと見てそう言った。
「なんですか。永島さんもやるんですか。水分たっぷりの山にするために。」
「いや、ただ見に来ただけだよ。ていうか。これ走行テストやった。」
「あー。やり忘れてた。・・・でも、7000番台(223系 網干区)のくそったれだったらふつうに通りますよ。ゴミじゃないから。」
「7000番台。どれかわかんないけど、まぁ大丈夫なんだな。」
「おいおい。それやめてくれよ。」
顔を上げるとナヨロン先輩の顔があった。
「俺が一番最初に作ったのもそうだけど、サヤが作った「安曇川」。Micro Aceの車両が通らないっていうやつもあるし、テストはしとけ。でないとごみを量産することになるから。」
「あの。その二つ今どうなったんですか。」
「んっ。俺のはちょっと前にジェットピストルで破壊して、サヤのやつはギガントジェットピストルで・・・あれ・・・まだ残ってたかなぁ。まぁ、寮に行けばあるかないかわかるよ。」
「・・・。」
「じゃあ、明日7000番台持ってきます。」
「いよ。今調べろ。部室に確か。サヤの際物があったはず。サヤに貸してもらえ。」
諫早はナヨロン先輩に促されて上に行った。上ではスピーカー全開で曲を聴いている。今はやりのEDOとかいうやつだと思う。
「サヤ先輩。」
「んっ。何。」
「モジュールの走行テストやりたいんですけど。」
「ああ、分かった。俺の貸してやるからちょっと待って。」
サヤ先輩はそう言って開拓してはいけないといわれたところのものをどかして、中から車両ケースを取り出した。
「はい、諫早。「ふみさん特急」。」
(間違い方がひどいなぁ。)
「ありがとうございます。」
サヤ先輩がくれたのは富士急行の特急「フジサン特急」の模型であった。それをモジュールに持って行って走行テストを行う。車両はスムーズに走り出し、つなぎ目にある鉄橋も難なくクリア。植林しすぎのように思える崖の部分も何の支障もなく通過した。次に線路を変えて、同じようにテスト。車両はまず僕たちが覗き込んでいる側の線路と別れて、奥に進路をとり、つなぎ目で鉄橋を渡る。そしてトンネルに入り手前側の線路と合流する。トンネルの中もさほど支障はないようだ。
「よーし。行け。「フジサン特急」。」
「諫早。いつまでそんな際物走らせてるんだよ。」
「なぁ、諫早。やめようぜ。横の富士山が気持ち悪い。」
「フジサン特急」の拒絶反応はナヨロン先輩だけではなかった。空河も嫌いのようである。
「気持ち悪すぎて吐き気がする。」
「電車見ただけで吐き気でもすんのかよ。」
「いや、電車は大丈夫。でもこれはダメ。」
イコール好みの問題である。
「確かにそうだな。名寄さんが「際物」っていった意味もわかる。サヤさんってこういうもの好きなんだな。」
「そう。サヤこういうの好きだから。」
「・・・。」
「際物好きで悪かったな。」
目線を後ろに向けるとサヤ先輩が立っていた。いつの間に下に来たのだろう。
「ナヨロンか。俺の際物伝説広げたの。」
「ああ。それがどうかしたか。」
「お・・・お前。」
「ああ、サヤ先輩もナヨロン先輩もなぐり合うんだったら外か向こうでやってくださいね。」
「大丈夫。なぐり合う気はないから。・・・よし、ナヨロン。上で平和的に話し合おうじゃないか。チャカとか、チャカとか、チャカとか。」
「それ絶対に平和的な話じゃないですよねぇ。」
さて、話を進めよう。と言っても今日は終わりまでこんな調子のままであった。そして一番最後に掃除。楠先輩曰く毎回恒例のごみ袋争奪戦も行われて今日の部活は終わった。
作者が後ろ向きなのに後ろ向きじゃないってどうですかねぇ…。
話は変わりますがこれから先さらに濃くなっていきますが、読んでくれる人には感謝。
自分自身のって書いているいじょう面白いもの(多分)できてると思うのでこれからもよろしくお願いします。