108列車 覚えて クイズ
本文中に出てくる駅を歌っていくものはネットにあるもの。使わせていただきました。
翌24日。
「それじゃあ、今日も皆さんよろしくお願いします。」
今日来ている部員に声をかけた。
部員からは返事が返ってきたわけでもない。しかし、この部活には意思の疎通が成立している。全員が団結しているのだ。
「箕島さん。言われた通り無線機持ってきましたけど。」
諫早は無線を持ってこいと言った本当の真意を知りたくなった。
「ありがとう。」
しかし、箕島からはそう返ってきただけだった。どうしてもその先が気になるのに・・・。だが、それはすぐに分かった。無線は車両区と運転士の間で執り行われ、列車の入れ替え時分。または車両区からの出庫入庫の指示。それらをするために持ってこさせたのだ。確かにバックに流れている音の大きさは半端ではない。こんな状況ではふつうに話すよりこっちの方が合理的との判断だ。
本番の前に箕島が無線のやり取りについて聞いてきたので分かった。
「なぁ、留萌。」
醒ヶ井は留萌を呼んだ。昨日から思っていることが一つある。
「何。」
向こうはそんなこと知らない。当然の答えが返ってきた。
「なぁ、俺に鉄道のこと詳しく教えてくれないか。どうしても・・・。」
「・・・。」
「昨日お前がアナウンスの代わりを買って出てくれたじゃん。そういう俺が情けない。人なんか頼らずに、俺にできるようになりたいんだ。」
「・・・今回はいいよ。次から出。でも、これの中身覚えるなんて簡単じゃないよ。基礎として、東海道・山陽新幹線の駅名言えるようにならなきゃ。もちろん、順番にね。」
「・・・。いつかそうなる。」
「いつかじゃない。1時間でそうなれ。35しかないんだから、それくらい覚えられなくてどうするのさ。」
(えっ。鉄道知ってる人にとって35ってそんなレベル。)
「まぁ、それぐらい覚えられなきゃ話にならないね。」
「・・・。」
留萌の言葉にははっきり現実を見せつけられた気がした。
一方僕は・・・、
「小倉、門司、下関。幡生、新下関。長府、小月、埴生。厚狭、小野田。・・・宇部、厚東・・・。」
瀬戸学院の展示の時に隼に見せてもらった動画を見ていた。動画をサイトのほうからPFPに落としたのだ。当然病棟内ではそんなことやっていない。寒いが中庭で見ている。
「本由良、嘉川、新山口。四辻、大道、防府、富海、戸田、福川、新南陽。徳山、櫛ヶ浜、下松、光、島田、・・・。」
これに乗せて歌っている板はとてもテンポが速い。こんな呂律回る人がいるのかというテンポで表示されている駅の名前が変わっていく。
最後まで言ったらもう一度仕切り直し。
「小倉、門司、下関。幡生、新下関。長府、小月、埴生。厚狭、小野田。宇部、厚東、本由良、嘉川、新山口。四辻、大道、防府、富海、戸田、福川、新南陽。徳山、櫛ヶ浜、下松、光、島田・・・。♪」
「小倉、門司、下関。幡生、新下関。長府、小月、埴生。厚狭、小野田。宇部、厚東、本由良、嘉川、新山口。四辻、大道、防府、富海、戸田、福川、新南陽。徳山、櫛ヶ浜、下松、光、島田・・・。」
と上の歌に合わせて歌っていったが・・・、
「・・・、海田市、安芸中野。中野東、瀬野、八本松・・・♪。」
「・・・、海田市、安芸中野。中野東、瀬野、・・八本松。」
テンポが遅れた。
(あれ。畜生。さっきまで言えてたのに。)
言葉では言わない怒りが広がる。進んだところまでをリセットして、仕切り直し。
「小倉、門司、下関。幡生、新下関。長府、小月、埴生。厚狭、小野田。宇部、厚東、本由良、嘉川、新山口。四辻、大道、防府、富海、戸田、福川、新南陽。徳山、櫛ヶ浜、下松、光、島田・・・。♪」
「小倉、門司、下関。幡生、新下関。長府、小月、埴生。厚狭、小野田。宇部、厚東、本由良、嘉川、新山口。四辻、大道、防府、富海、戸田、福川、新南陽。徳山、櫛ヶ浜、下松、光、島田・・・。」
また同じところでテンポがずれた。いい加減やってきて腹が立ったので、別のところに移ることにした。次に移った場所は地元の近く。米原から浜松までの駅名。
「米原、醒ヶ井、近江長岡。・・・(伴奏)・・・。柏原、関ケ原、垂井、大垣、穂積、西岐阜、岐阜。木曽川、尾張一宮、稲沢、清洲、枇杷島、名古屋。・・・」
一回聞いたら次は歌う。
「米原、醒ヶ井、近江長岡・・・・・・・・・・。柏原、関ケ原、垂井、大垣、穂積、西岐阜、岐阜。木曽川、尾張一宮、稲沢。清州、枇杷島、名古屋。・・・」
この後順調に言っていたのだが、豊橋まで来たところでテンポがずれてしまった。2回目は注意してやっていたが、またずれた。また腹が立ったので、次のところに移動する。今度は浜松から東京まで。
「浜松、天竜川、豊田町、磐田。・・・。袋井、愛野、掛川、菊川。・・・。金谷、島田、六合、藤枝、西焼津、焼津。用宗、安倍川、静岡、東静岡。・・・。」
今度もずれないで言っていたのだが、結局ずれた。もういいということで、
「姫路、御着、ひめじ別所、曽根、宝殿。加古川、東加古川、土山。魚住、大久保、西明石、明石、朝霧。舞子、垂水、塩屋、須磨。・・・。」
この区間だけは歌にずれることなく歌えるので、ずっとこの区間を練習していた。まぁ、結果的にこのおかげで、小倉から東京までの駅名は順番にすべて言えるようになったのだが・・・。
「新大阪、東淀川、吹田、岸辺。千里丘、茨木、摂津富田。高槻、島本、山崎、長岡京。向日町、桂川、西大路。京都、山科、大津、膳所、石山。瀬田、南草津、草津。栗東、守山、野洲、篠原、近江八幡。安土、能登川、稲枝、河瀬。南彦根、彦根、米原。」
いち早くこの間は曲がなくても口ずさめるようになった。
一方、産業展示館のほうは・・・、
「ただ今外回りを走っております車両はJR九州の787系「特急つばめ号」でございます。「特急つばめ号」は博多と鹿児島県の西鹿児島を結んでいる特急列車でございます。」
留萌が走っている車両のことについてさらっと解説する。本当にさらっとだ。別に深追いしたことは言っていない。
「留萌。ちょっとマイク貸して。」
醒ヶ井が中に手を伸ばす。少し物足りないということも感じていた。
醒ヶ井は少し展示スペースのこの字になっているところまで歩いて、
「突然ですが、今からクイズを始めたいと思います。」
と言った。
「おい。それはどういうことだ。」
お客様のほうではなくて、鉄研部員のほうから声がする。そう言ったのは柊木だ。
醒ヶ井は声を潜め、マイクが音を拾わないように頭を押さえて、
「大丈夫だって。結構簡単な問題だけ出してくれればいい。」
「なら、いいネタあります。」
最初は反論していたのに・・・。柊木にマイクを渡すと、
「それでは、クイズ第一問。フジサンが日本一高い山というくらい常識的問題です。」
と振った。
「東海道新幹線が開業したのは何年でしょう。西暦でお答えください。」
と言った。答えは当然1964年。
すぐに観客の中から声がする。醒ヶ井が今度はマイクを持ってその人のところへ行って、答えを確認する。柊木はそれに正解です。と答えた。
「面白そうなので、第2問。」
どういう理由で振っているのかは置いといて・・・。
「次のうち俗にミニ新幹線と言われているのはどれでしょう。1番。東海道新幹線。2番。東北新幹線。3番。秋田新幹線。4番。羽越新幹線。」
答えは3番。なお、この中にはウソも含まれている。4番の羽越新幹線は存在しない路線。なお、国鉄が制定した整備新幹線計画の内には入っている。
これは選択式にしたので、すぐに正解が出た。もちろん選択式にする必要もなかったと思うが・・・。
「続いて第3問。これまでが簡単すぎたのでハードル上げます。」
「おい。」
醒ヶ井がそれをさせまいという声を上げたが、そんなの気にしない。
「初代新幹線である0系は38次にわたって量産されてきました。その製造量数ですが、何両でしょう。」
答えは・・・・両。この数字はいま現在走っている。もしくは走っていた新幹線車両。1形式においてこれだけの数が量産されたのは0系だけである。
「おい。柊木、難しいところか超難問じゃねぇか。」
「しょうがないなぁ。じゃあ、ヒント出します。」
「ちょっと待って。」
留萌が呼びとめて、マイクが留萌の手に渡る。
「それではヒントです。1番3216両。2番1056両。3番4064両。4番3232両。」
このうち2つはウソ。もう一つはウソではないが0系ではない。
(なんだ・・・。簡単じゃねぇか・・・。ヒント出すまでの問題じゃねぇだろ。)
手を挙げて、マイクを持った人がこちらに来るのを待つ。
「それではお答えをどうぞ。」
「答えは3216両。」
醒ヶ井は留萌のほうを向く。それに留萌は首を縦に振った。
「正解です。おめでとうございます。」
「すみません。ちょっとこちらから問題を出してもいいですか。」
醒ヶ井は再び展示場のほうを見る。それにもオーケイということだろう。中から受けてやるという声がした。
「それでは問題です。次のうち仲間外れはどれですか。DC54形、DD54形、ED54形、C54形。」
(なんのひねりも無しかよ・・・。)
これの答えはDC54形。他のは機関車であるのに対し、これは気動車である。
「それではこちらも第2問。次のうち事故を理由に欠番になったのはどれですか。1番5418M。2番824レ。3番2047D。4番4B。」
「・・・。」
これの答えはインターネットで欠番で検索。理由が分かります。
一方・・・、
「東京、神田、秋葉原。御徒町、上野、鶯谷。日暮里、西日暮里、田端。駒込、巣鴨、大塚。池袋、目白、高田馬場。新大久保、新宿、代々木。原宿、渋谷、恵比寿、目黒、五反田、大崎。品川、田町、浜松町、新橋、有楽町、東京。・・・。」
エンドレスで山手線の駅を歌っていくものである。これはネットの中の人が作ったものではなくある番組でやっていたものだ。
「ナガシィ。」
言っている最中に呼ばれる。すかさず、声を消した。
「歌ってるところ久しぶりに見たなぁ。」
相手がこういっているということはすぐそこにいるのか。振り向けば当然の人がそこにいた。
「萌・・・。」
「聞いちゃいけなかったかなぁ・・・。ナガシィがその歌うたってるのは久しぶりだなぁ・・・。」
「・・・。」
「駅名でも覚えてたわけ。」
「違うけど・・・。まぁ、午前中と午後の時間使って結構覚えたけど。」
「へぇ。進歩はあったわけ。」
「まぁ・・・。」
「どうなったのか見せてくれないかなぁ・・・。それともヤダ。」
「・・・。」
今話しているのは当然中庭。僕たちの間には冷たい空気がある。それを通して萌の声が僕の耳に入ってくる。
「・・・。正直言うとヤダだな。」
「そう。なら、またこれやってくれない。」
「はっ。」
「おいおい。落ち着け。またやってくれればいいだけだからさぁ。後、今日はふざけていいから。」
そう言った意味は最初分からなかった。
「おい。なんだ。この点数。」
「いや、「関空快速」で60km/hでゆっくりゆっくり行ってたら痛い目見た。」
(・・・。だからふざけていいってことか・・・。これなら14万は行かなきゃいけないけど、5万しか行ってないからな・・・。)
そのあと萌には伝えなければいけないことを伝えて、このゲームに没頭した。
「ナガシィ。きのう言ってたあれの意味わかったよ。」
途中で萌のそういう声が聞こえた。
「えっ。」
「駿兄ちゃんって私たちを冷やかしたいだけなのかなぁ・・・。」
「・・・。」
(見たんだな。「将来の結婚相手。」って書いてあったところ。)
またPFPのディスプレイに目線を合わせたときには乗客の満足度が一つ減っていることに気が付いた。減点された理由はすぐに分かったが、ムカついた、
僕も駅を覚えようとしたのですが、今のところ宗谷本線、根室本線、函館本線、身延線、東海道本線、東北本線(旧東北本線を含む)、山陽本線、学研都市線、福知山線、北陸本線、津軽海峡線、鹿児島本線(八代~門司港)、千歳線、室蘭本線(沼ノ端~室蘭)、日高本線、江差線は言えるようになりました。山手線は基本中の基本と思っているため、ここには加えませんが・・・。