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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Kishikawa High School Episode:2
106/184

106列車 スタート長丁場

ナガシィの家に行こうと家から出たところで、和田山(わだやま)さんと会った。昨日詰め込んだ車両を乗せたハイエースがそこに止まっている。

和田山(わだやま)さん。」

「おはよう。じゃあ、行きましょうか。」

和田山(わだやま)さんは助手席のドアを開けて、私を車に乗せた。そのあと運転席に乗り込み、

「産業展示館のほうでよろしいですね。」

と聞いた。

「えっ。はい。」

答えると、和田山(わだやま)さんは了解しましたと言って車を走らせ始めた。

 しばらく、外の景色に見入る。今、堤防の上を走っている。その東側には天竜川があって、向こうに見える岸が磐田(いわた)である。今天竜川の水面は太陽に照らされた光が反射して、とてもまぶしくなっている。

 すると電話が鳴った。いきなりだったので驚いた。ビックっとしたが、自分の携帯(ケータイ)が鳴っているということが分かり、手に取る。

「もしもし。」

「あっ。(もえ)。」

電話してきた人はナガシィだった。病院にある公衆電話からかけたから非通知なのだろう。

「ナガシィ。どうしたの。」

「ああ。昨日言えてなかったこと言おうと思って・・・。」

ナガシィはそう言ってから、

「あの。車両走らせるときにルモイっていう人に俺の車両のこと任せて。それだけ頼む。」

(ルモイ・・・。)

前書店で会ったあの人のことだ。

「それと、産業展示館はいるときに表からじゃなくて、裏から入れ。でないと入れないから。そう和田山(わだやま)さんに伝えといて。」

「分かった。それだけ。」

「うん。それだけ。」

「・・・。ナガシィ。大丈夫・・・。」

「おっ。・・・。大丈夫だよ。」

「待っててよ。今日も行くから。ちょっと楽しみにしててね。」

「分かった・・・。」

軽くさよならを言ってから電話を切った。

「あの。和田山(わだやま)さん。」

それからすぐにナガシィから聞いたことを和田山(わだやま)さんに伝えた。

 産業展示館に着くとすぐに展示場に行こうとした。と言ってもその場所が分からない。そのことちゃんとナガシィに聞いとけばよかったとここで後悔した。だが、ぐるっと見回してみて、岸川の制服を着ている人はいない。ということはまだついていないのだろう。

「岸川の人いましたか。」

和田山(わだやま)さんも後ろの搬入口のほうへ来ている。

「まだ。来てないみたい・・・。」

「ちょっと車のほうで待っていますか。」

そう言って和田山(わだやま)さんは置いてきた車のほうに歩いて行った。自分もこのまま待っているのでは寒いので、車のほうに戻った。

 それから数分待った。

「そろそろ来たかなぁ・・・。」

和田山(わだやま)さんはそう言って車を降りた。自分もそれにつられるような形で降りる。

「あっ。私がいるかどうか調べてきます。」

歩いて行こうとする和田山(わだやま)さんに変わって、また自分があの位置に行く。すると今度は岸川の制服を確認することができた。そう伝えようと戻ってくると、もうすでに和田山(わだやま)さんは車両ケースを出してくれていた。

「いたから、運んできますね。」

とことわって、そこまで行った。

榛名(はるな)―。」

木ノ本(きのもと)の名前を呼んだ。

「・・・。(もえ)ちゃん・・・。」

木ノ本(きのもと)のほうからしてみれば、予想外だったみたいだった。

「えっ。それどうしたの。」

鉄研部の人たちが今台車の上に山積みにされている車両ケースの山を見て驚いている。

「これって当然動かせってことだよね。」

木ノ本(きのもと)が確認してきた。

「そうだよ。これ全部走ることは昨日確認したから。問題はないと思う。最終日に・・・。5時だっけ。」

終わる時間が気になったので聞いた。

「4時30分だけど。」

「じゃあ、16時30分に裏口の方から回収に来るね。で、これは留萌(るもい)さんに任せればいいってナガシィが言ってたけど。」

「・・・。さくら。」

留萌(るもい)を呼びつける。

「何。」

「これ永島(ながしま)が走らせてだって。」

「・・・。ああ。分かった。全部中に運び込んでくれない。」

「で。どっから。」

(もえ)ちゃん。そういうことは私たちでやるから・・・。」

「いいよ。慣れてるから。」

(えっ。慣れてる・・・。どういうこと。)

 台車に乗っかっている一番上のケースを取り、中に運んだ。鉄研部の人たちがここから運び込んでくださいと誘導してくれたので、すぐに分かる。そこから中に入った。

 上の机のふたがなくなったところで起き上がると頭を打った。

「・・・。なにこれ。」

黒い棒が走っていることが確認できた。

「ああ。気を付けてくださいよ。」

運転席に座っている柊木(ひいらぎ)が注意した。だが、(もえ)のほうにはこの人が誰なんてことは分かっていない。一つ分かったのはいま注意した人の前には「サウンドコントローラー」が置かれているということだ。

 次に台車のほうを見てみると、6おかれていたケースがなくなっている。

(もえ)ちゃん。ちょっと早く行ってよ。」

後ろで木ノ本(きのもと)の声がしたので、すぐにどく。そして、留萌(るもい)がいる車両基地のほうへ持っていった。

「ごめんね。全部私だけでやるつもりだったんだけど。」

「大丈夫だって。みんな力持ちだもん。」

「・・・。」

「あの。この台車どうすればいいですか。」

「あっ。それは私が片づけるから。そこにおいといて・・・。・・・みんな優しい人ばっかだね。ナガシィゆずり・・・。」

「いや。それは絶対にないと思う。」

「・・・。」

 すぐに展示場の中から出て、

「じゃあ。ナガシィの車両よろしくね。」

と言って台車を持って戻った。

「ねぇ。榛名(はるな)先輩。ナガシィ先輩の彼女ってもしかしてあの人ですか。」

(はやぶさ)が声を潜めて聞いてきた。

「えっ。そうだけど・・・。どうかした。」

「なんか。すごくナガシィ先輩にそっくりだなぁって。」

「・・・。」

それを聞いた瞬間に柊木(ひいらぎ)潮ノ谷(しおのや)空河(そらかわ)朝風(あさかぜ)大嵐(おおぞれ)が手をたたいた。

「そうか。どっかで見たことあると思ったら。」

「ナガシィ先輩にそっくり。」

「じゃなくて。よく展示見に来てる人だ。」

「前の暁フェスタの時も、来てましたよねぇ。」

「・・・。」

「お前らストーカーか。」

「違いますって。永島(ながしま)さんとよく話してるから印象に残りやすいんです。」

「ていうか、永島(ながしま)のやつうらやましいなぁ・・・。あんなにかわいい子が彼女だなんて。」

醒ヶ井(さめがい)の言葉にシーンと静まり返る。

「・・・。」

「何。この部活はロマンスに恵まれない人の集まりみたいなこと言ってるんだよ。そうじゃなくて、永島(ながしま)のためにもやるぞー。」

 10時00分。その5分前に産業展示館内の電気はすべて落とされ、暗くなった。今頼れる光は展示場内にある照明だけ。すぐに中は人であふれた。

醒ヶ井(さめがい)君。放送のほうお願いします。」

アド先生は醒ヶ井(さめがい)にそう指示を出した。

「はい。・・・。留萌(るもい)。今走ってる車両なんだ。」

醒ヶ井(さめがい)にはこういうことは分からない。すかさず留萌(るもい)に聞いた。

「えっ。内が313系(サンイチサン)の5000番台と300番台の新快速(しんかいそく)8両で。外が311系(サンイチイチ)の8両新快速(しんかいそく)。」

「外が313系で内が311系。」

「違う。逆。」

理解力の無さにツッコんだ。醒ヶ井(さめがい)をにらんでから。

「もういい。私がやる。醒ヶ井(さめがい)はそこらへん見回ってて。」

と言って醒ヶ井(さめがい)からスピーカーのハンドマイクを受け取り、

「皆様こんにちは。今日は岸川高校、中学校鉄道研究部の展示にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。」

自分で思ってことをソッコウで言葉にする。

「ただ今皆様の前を走っております車両はJR東海で活躍中の311系通勤電車と313系通勤電車でございます。」

これ以上どういう説明をしていいのだろうか・・・。迷う。だが、鉄研部の概念は迷ったら自分の信じたほうをすればいい。ある意味迷惑なものである。

「みなさんの手前側を走っております311系通勤電車は名古屋(なごや)を中心とする特別快速(とくべつかいそく)新快速(しんかいそく)用として開発された車両で、当初は特別快速(とくべつかいそく)新快速(しんかいそく)として走っておりました。しかし、その後継にあたる313系の開発により311系は次第に特別快速(とくべつかいそく)としての仕事を追われ、現在は名古屋(なごや)を中心に普通列車の仕業に就いております。その隣を走っている313系通勤電車は311系の置き換えを目的とし、かつJR東海すべての路線に対し柔軟に対応できる車両として開発されました。313系は名古屋(なごや)を中心に特別快速(とくべつかいそく)新快速(しんかいそく)と幅広い仕業に就いており、ここ浜松でもその親戚である2500番台という区分の313系が活躍しております。」

(うまいなぁ・・・。)

留萌(るもい)さん。そんなこと言っても、ここに・・・・たちには・か・・いん・・・・いんですか。」

空河(そらかわ)が小声で話しかけてきたが、バックで流れている音楽にかき消されてよく聞こえない。

「何。空河(そらかわ)。」

「だから。詳しいことは分からないんじゃないんですかってことです。」

「じゃあ、逆にどういう説明をしろっていうんだよ。大丈夫だよ。分からなくても。」

「・・・。まぁ、自分たちがレベルを落とした説明をしてもあっちはへぇっていう反応しかならないから結果的に同じってことですか。」

「そういうこと。だって半分そうじゃん。まぁ、マニアいたらお手上げだけどね。」

「大丈夫ですよ。全員で立ち向かえば。ここにいる人ほとんどマニアじゃないですか。」

「・・・。」

空河(そらかわ)はそう言っていた。確かにそうなのだ。自分だって車両の知識のかけてはすごいと思っている。

 それからほとんど何の滞りもなく展示を進めていった。

 15時00分。病院のほうは・・・、

「ナガシィ。大丈夫。」

(もえ)は心配そうに僕の顔を見つめた。

「だから、大丈夫って言ってるだろ。そんなに心配しなくていいって。」

「・・・。ナガシィ。ちょっといいもの持ってきた見る。」

「えっ。見る見る。何。」

「ほら。」

 (もえ)がそう言って取り出したのは去年僕がしまった100系オンリーのアルバムだった。

「それ・・・。持ってきたの。」

「うん。見つかったから。」

「俺が去年見つけてそのあと使って無い引き出しの中に入れたんだけど。」

「・・・。なんだ。ナガシィ見てたんだ。これの中身。」

「ああ・・・。まぁ。」

「じゃあ。それよりこっちのほうがいいかなぁ・・・。」

今度はPFPが僕の前におかれた。

「何。これをやれっていうの。」

「まぁ。そういうこと。」

「・・・。」

 (もえ)はアルバムをしまおうとしたので、

「あっ。ちょっと待って。」

しまわせるのを待ってもらった。取り上げて、いちばん最後の写真を見てみる。

(よかった。裏は見られてないみたいだな・・・。)

「「誕生日おめでとう。」。」

その言葉にドキッとした。

「って書いてあったね。」

「・・・。」

「ふぅ。ビックリさせるなよ。見られたって思ったじゃないか。」

「何を。」

「あっ。いや・・・。その・・・。」

「なんか見られたら恥ずかしいことでも書いてあったわけ。」

「・・・。」

自分から墓穴を掘ってしまった。


機関車の後ろに続くコンテナ貨車。あれは本編でもよく出てくる「コキ」のことです。

形式で言えばコキ50000、コキ250000、コキ350000、コキ100、コキ101、コキ102、コキ103、コキ104、コキ105、コキ106、コキ107、コキ110、コキ200と現役だけでもこれだけの形式が活躍中です。

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