10列車 製作
そういう風になったとはいっても僕は作り方を知らない。当然一緒に作ることになった木ノ本も知らない。これでは到底前に進むことはないだろう。
「ナガシィ。何作るの。」
「えっ、留置線のある風景でも作ろうかなぁっと思って。」
「そういうことで分からないことがあったらアヤケンに聞くのが一番だよ。あいつ器用だし。」
「ああ、はい。そうします。」
「おい、善知鳥。そういうところで俺の仕事を増やすな。まだ、あれ出来てないんだから。ナヨロンにでも頼め。あいつは車両だけだけど何も作れないってわけじゃないから。」
「ナヨロンに頼むとろくなことがないじゃん。古墳作るって言い出すかも・・・。」
「そう言ったのはサヤだぞ。それで俺が作ったんじゃないか。結局ごみの一員になったけどな。」
先輩と話していたら余計進まなくなる。とりあえず、家に広がっているレイアウトのことを思い出す。だが、家のレイアウトにはこういう風なものはない。自分たちに与えられているのは板3枚だけ。これが家にあるレイアウトみたいになるのだろうか。そう思った。
「まぁ、まず配線決めるかぁ。」
「そうだな。でも、どうやって配線すればいいわけ。」
「さっきアド先生がやってたみたいにやってけばどうにでもなるだろ。とりあえずポイントと直線レールがあればどうにかなるかぁ・・・。あっそれだけじゃどうにもならねぇ。ゆるくてもいいけどカーブも必要かぁ。」
独り言のようにしゃべっていると、
「ほれ。」
アヤケン先輩がレールを持ってきてくれていた。手に持っているのは248mレール12本。
「線形が単純ならこれだけで足りる。留置線配置するっていうなら、もうちょっとこの直線レールと道床が片方ないレールと124mのポイントレール4番とかっていうふざけたやつが加わるから。」
そのレールはふざけているのだろうか。僕たちが探そうという前にアヤケン先輩はそれも探して持ってきてくれた。さっき言っていたレール。ポイントレールは皆さんお分かりだと思うが、片方道床が欠けているレールというのは見たことがないだろう。見てみるとそのレールは標準の半分くらいの長さで僕たちから見て左側の道床が斜めにカットされている。文字通り片方道床が欠けたレールだ。
「4番ポイントの直線側にこのふざけたレールをつなげて、その片方にR481のカーブを分岐側に組ませる。こうすると両方の線路がつくんだ。もしこの4番ポイントで、道床が欠けてないやつとやると片方ははまってももう片方ははまらなくなる。だからこんなふざけたレールがあるんだよ。」
さっきから聞いていればアヤケン先輩はそのレールのことをずいぶん迷惑がっている。だけど、その理由は問いてはいけないことにも思えた。とてもくだらない理由が返ってきそうだからである。
「お前らに必要なレールはこのくらいかなぁ。後、その直線レール。道床の色何かに揃えとけよ。その中でも茶色のやつは結構古いのだからあんまりあてにしないほうがいいぜ。」
とだけ言って部室に上がっていった。
アヤケン先輩から渡されたレールを使って配線をする。さっきアド先生が言ったとおりにして、直線レールをつなげていく。248mの直線レールを3本つなげたところで、1枚目の板の上に置く。すると、ちょうどぴったりとおさまるのだ。もちろんこのことには種も仕掛けもある。
「とりあえずはなったな。」
木ノ本の隣を見てみるとまだレールが余っている。それもカーブレールとポイントレール。
「お前バカだろ。この中に留置線を配置しなきゃ意味ないだろ。これじゃあ、ただレール並べてはい終わりじゃん。」
「知らないよ。大体留置線はそっちに並べるんじゃないの。こっちには余裕が。」
「あるだろバカ。何のためにこの板があるんだよ。こっちには隙間がないんだよ。どこをどうやったらレールが並べられるんだよ。」
ちなみに今どういう状態でレールが並んでいるかというと、僕のほうはしっかりと板の端を一直線に、木ノ本のほうはそれに並行して仲良く並んでいる。
しばらくどうすればいいかを考える。もちろん方法はいくらでもある。真ん中に留置線を持ってくる、真ん中に留置線を持ってくる。このうち僕たちがとった策は真ん中だ。そのため、木ノ本が敷設した線路にカーブレールを組み込み、1本レールが入るスペースを作る。次に僕の敷設したほうの1枚目の終わりにポイントレールを組み込み、留置線につながる線路を作る。2枚目は3本のレールが並んでいる状態のまま右側まで進んで、2枚目終了直前に留置線が終了。3枚目は1枚目の逆バージョン。ポイントレールが組み込まれていないところだけは1枚目を違うか。その状態で配線が完了した。
配線が完了したところで、僕たちのものをアド先生に見てもらう。アド先生のほうは別にいうこともなかったらしく、配線はこのままでOKということだった。
「よし。じゃあ、ここまで進んだら、罫書きをしてください。」
「けがき。」
「このレールの配置をペンかなんかで板に写し取ってくださいってことです。さぁ、やって。」
いわれるがままそうやる。レールと板の接着しているところにペンを当てて、レールに沿って線を引く。そして、全部の線を引き終わったら次は継ぎ目の部分に今書いた線とは直角に線を引く。これで、どこに継ぎ目が来るのかがわかる。継ぎ目を書くまでが終了したところで、仮置きした線路を板から外す。線路配置が決まったところで次の作業に入る。次の作業とは当然、家などの配置を決めることだ。
「家の位置決めろって言ったって、わかんないよなぁ。どこにどうやっておいていいかわかんないし。」
「こういう時ってどうすればいいんだろう。」
「永島って電車に詳しいよなぁ。こういう方面も詳しくないのか。」
「電車詳しいからってこれも詳しいなんてこたないよ。」
しばらく考え込む。するとさっきの言葉が思い浮かんだ。
「というわけで、聞きに来たんですけど。」
「はいはい。」
僕たちのモジュールのところまで来てもらい、アドバイスをもらう。
「なるほど、線路配置は決まったのね。」
そうつぶやくと、近くにあった家の模型から一つ取り出して、説明を開始した。
「これは、道路の形を想像しながら、建物を配置して組んだ。こういうところはどういう風になってるかなぁっとかってことを想像しながら、家の配置を決めていく。それが難しいなら、先に道路の形を決めちゃったほうがやりやすいよ。」
アヤケン先輩はそう教えてくれた。
アドバイスをもらったところで、家の配置に取り掛かる。まず道路を決めてからとも言ったが、お互い想像力に乏しいわけではない。頭を使って物を作る。
「ここの道路の感じは線路に沿ってずっと続いてるってどう。」
「いいんじゃない。それなら、ずっとこっちに続けていくでいいじゃん。」
「それでもいいけどさぁ、ずっと平坦ってなんかやじゃない。2枚目だけ丘にしちゃうとか。」
「でも、そんな道路あるのか。それだったらなおさらトンネルかなんかだろ。」
「それ言っちゃったら、道路がトンネルで並走してる鉄道がトンネルじゃないっていうところあるのかよ。私の知ってる限りじゃないぞ。」
「わかったよ。じゃあ、2枚目は丘にしちゃうでいいか。」
「丘にするのはいいけど、それだれが作るんだよ。私汚れるの嫌だからね。」
「汚れるのは俺も嫌だけど、それ言ったらものなんて作れないだろ。だったらジャンケンで決めようぜ。」
ジャンケンをやって結果は、
「永島。お前いかさまとかしてないよなぁ。」
「ジャンケンでどうやっていかさまするんだよ。」
「えっ、簡単じゃん。後だしとか、マインドスキャンとか、ジンクスとか。」
「ジンクスはないけど、マインドスキャンって無理だろ。千年眼じゃないんだから。」
プラノコの歯を発泡スチロールに入れる。前後に動かすとキュ、キュっと音を立てる。
「ああ、この音ヤダ。」
「木ノ本、もうちょっと静かにやれないか。」
「あんたはいいよなぁ、耳ふさげて、私はふさげないのよ。ちょっと変わりなさいよ。」
「ヤダよ。」
「変われ。」
「ヤダ。」
すると楠先輩がやってきた。
「あっ、楠先輩。これ変わってください。」
「遠慮しとくね。あたしの専門は物作りじゃないから。」
あっさりと断られた。
次に来た醒ヶ井は、
「あっ、醒ヶ井、これ変わって。」
「おう、いいよ。」
快く引き受けてくれた。
「醒ヶ井君。こんにちは。」
醒ヶ井が来たことに気づいてアド先生が醒ヶ井の後ろからつかみかかる。
「こんにちは。ていうか安曇川先生やめてください。今切ってるところだから。」
そう言っている間にカット終了。
「これだけなら、俺じゃなくて、自分たちできれよな。おれもこの音嫌いだから。・・・ん。木ノ本。もしかしてそのためだけに俺に切らせたのか。」
「うん。思いっきりはまってくれてありがとう。」
何がともあれ、作業が完了したのだ。次は道路の配置だ。
「この発泡をこうやってくと道がふさがるんだよなぁ。また切らなきゃダメじゃん。」
「おい勘弁してくれよ。また俺に切らせるのか。」
「うん、分かってる人は分かってるねぇ。」
「分かりたくないんだけど。」
「大丈夫。おれたちも手伝から。だから、醒ヶ井はこっちのここから下を切り出して。俺と木ノ本で、こっちを坂みたいにするから。」
「おい、そっちそんなに人数いらないだろ。」
「気にしない、気にしない。」
「気にするよ。」
と話していると、
「みなさん。12時ですので。お昼にしてください。」
とアド先生から指示があった。
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いつかまた不定期更新に戻るかも・・・。
そんなのでも読んでくれる人には感謝。