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MAIN TRAFFIC1  作者: 浜北の「ひかり」
Ina Junior High School Episode
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1列車 鉄道少年

この小説はフィクションです。

なお、鉄道に興味のある方にはこのことを頭の中に入れて読んでいただければ幸いです。この小説には現実と違う個所がございます。どうかご了承ください。


 僕は静岡県に住んでいるどこにでもいる中学3年生。スポーツは全くダメ、勉強はできるとは思いたくない少年である。そんな自分であるが、一つだけ自分を輝かせることができるものがある。それは鉄道である。

 僕の将来はもう決まっている。それもそこ以外考えてもいない。だが、そこへ行くためには高校をかまさなければ行けないことも分かっている。もちろんその高校生活にも鉄道が絡んだ方が面白いと思っているのは事実。そのためにはどこに行ったらいいものがずっと考え悩んでいるが、めったにパソコンでそんなこと調べていない。だが、暇があると自分の家にある離れにこもって、模型で遊んでしまっている。中学3年生の6月となれば、僕は最悪の中学生(じゅけんせい)かもしれない。いや、そうに違いない。

 と、ここまでは前ふり。ここから本題に入るのだが、まだ自分の名前を言っていなかった。永島智暉(ながしまともき)。これが僕の名前である。

 6月8日。今日は久しぶりにフリーな日だ・・・。久しぶりというのはウソ。本当は毎日フリーなのだ。いつものように離れに行って模型(もけい)を走らせている。言っていなかったが、僕の離れに展開しているのは新幹線(しんかんせん)複々線(ふくふくせん)在来線(ざいらいせん)が走っている鉄道模型。周回の大きさは実物にたとえて10キロぐらいになるというほどの大きさ。車両は別の部屋に置かれている。ここには折りたたみケースに入った鉄道模型が30箱入っている。内訳は22箱が父のもの。3箱が祖父のもの。2箱が従兄(いとこ)のもの。3箱が自分のものだ。レイアウトは大きすぎだし、車両は持ちすぎではと思っているかもしれないが、自分の持っている量などまだひよこ。いや、卵にもなっていないかな・・・。世の中にはそう言う人もいるくらいだ。ここで前述した通りの時に遊んでいる。もちろん、やっていて飽きたことは一度もない。

 遊んでいると離れのドアが開く音がした。顔を上げてみると女の子がそこに立っている。僕と顔つきはよく似ている。

「ナガシィ。6月14日に岸川(きしかわ)っていう高校で文化祭があるんだけど、見に行かない。」

第一声はこれか・・・。彼女は坂口萌(さかぐちもえ)。僕の理解度が一番いい人だ。

「ええー、文化祭。行くの面倒くせぇじゃん。」

「そう言うと思ったよ。・・・でも、これ見たら行くっきゃないでしょってなると思うな。」

「どういう意味だよ。」

聞き返すと(もえ)は何のためらいもなくモジュールを置いている長机の下をくぐった。ためらいがないのは当然だろう。小学校の時はほぼ毎日。中学になってからだと土日はほぼ毎回と多いからだ。僕の近くまで来ると、手に持っていた岸川(きしかわ)高校のパンフレットを差し出した。受け取って中をサラサラっとみてみる。するとあるところが目にとまった。

「でしょ。」

「・・・。」

「ねっ。だから行こうよ。絶対満足できること間違いなしだから。」

確かにそうなのだが。この手の部活があるというのは今初めて知ったことだ。

「よしっ。決めた。行こっか。・・・で、何日だっけ。」

「忘れるの早いねぇ。6月14日。パンフレットの裏に書いてあるけど、遠江急行(こうきゅう)涼ノ宮(すずのみや)遠州鉄道(えんてつ)助信(すけのぶ)から行くのが近いんだって。どうする。」

「じゃあ遠州鉄道(えんてつ)で行って遠江急行(こうきゅう)で帰ってくる。」

「なんでもいいよ。そこは任せる。」

「つうかその文化祭何時から始まるんだよ。」

「あっ、言い忘れてた。9時からだよ。それで終わりが15時。」

「15時終わんのかよ。もうちょっと長くやれよ。」

「まあ、そこ文句言ってもしょうがないし・・・。じゃあ行くってことでいいね。」

言い終わるとグルッと部屋の中を見まわした。ほぼ毎日来ている状態で見るものなんてないはずなのだと思っている人は分かっていない。この部屋にあるのは鉄道模型のモジュールレイアウト。つまり探しているのは・・・。

「ナガシィ。あすこに走ってる寝台特急(ブルトレ)何。「北斗星(ほくとせい)」・・・じゃないか。「さくら」かなぁ。それとも「あさかぜ」。」

目的のものを見つけて僕に問いをした。

「「出雲(いずも)」だよ。」

「えっ、「出雲(いずも)」。」

今度はじっくり見て、走っているものを確認する。その姿がはっきりしてくると、

「あっ、ホントだ。よく見たら24系引っ張ってたのがEF66じゃなくてEF65だった。」

「だろ。EF66とEF65じゃまず見た感じが違うんだから。」

「そう言われればそうでした。EF65は箱っていう感じだもんね。その箱っていう感じで赤いのがEF81だっけ。」

「・・・そんな感じでいいよ。」

立って、長机の下をくぐって車両庫のほうへ歩いて行く。

「えっ、もう車両換えるの。換えるんだったらさぁ「カシオペア」にしてよ。」

「うーん・・・。どうしようかな。」

車両庫の奥に入って従兄の箱を見つけて中身を出す。

(あれは貨物を取ってくるね。高速貨物(かもつ)かな。それともタンク貨物(タキ)。いや、(ワム)・・・。)

 12両編成用の箱を見つけて2つ取りだす。とりあえず中身を確認して、次は機関車を探した。機関車は地元のEF210(桃太郎)をはじめとする機関車を大勢引っ張り出した。機関車の次は機関車に対応する車両を探す。例えば、EF210が貨物列車を牽引している時は313系や223系など東海道本線(とうかいどうほんせん)を走っている車両。EF64が重連(じゅうれん)でタンク貨物を牽引している時は383系「特急しなの」など中央本線(ちゅうおうほんせん)を走っている車両という風にする。その車両を一つか二つ見つけて、戻った。

「やっぱり「カシオペア」は持ってきてくれないんだ。」

「その代わりにもっと面白いもん持って来たぞ。貨物だ。」

「また26両やる気。準備するだけでも疲れない26両って。」

「26両以外走らせる気ないし。それに(もえ)が手伝うからそんなに関係ないじゃん。」

車両の入った箱を(もえ)に渡して、机をくぐる。中に入ると(もえ)はすでに着発線荷役(イーアンドエス)方式の貨物駅にいて車両を並べ始めている。その並べるのに合流して、4両5両と並べていく。その数が26になったところで、その前に機関車を連結する。スタートはDF200(レッドベアー)だ。

「「レッドベアー」だっけ。」

「ああ。」

「「ブルーベアー」とかいないのかな。(かみなり)ものは「レッドサンダー」と「ブルーサンダー」でちゃんといるのに。」

「まあ、作らなかっただけだろ。じゃあ、もうちょっとしたら出発(だす)ぞ。」

今まで走っていた「出雲(いずも)」を駅で止めて、車庫まで回送する。その回送が終わると貨物の番だ。貨物列車が停まっている線路に電気が行くように変えて、コントローラーのブレーキを解除。マスコンを入れて、貨物駅を発車する。発車した後は放っておくだけ。走っていくところを子供のように追いながら、その工程を見守る。やがて貨物列車は新幹線の高架橋(こうかきょう)の下をくぐり、また新幹線の高架橋をくぐる。坂を上って鉄橋を通過(つうか)。次に坂を下ってこのレイアウトの緩行線(かんこうせん)の下をくぐる。緩行線の駅を通過した後また坂を上ってこのモジュールで一番大きい駅を通過。やがてまた元の貨物駅に戻ってくる。しばらくこの動作を繰り返して、EH500(金太郎)にバトンタッチ。また動作を繰り返して次の機関車へとバトンを渡していく。

「そろそろEF210(桃太郎)に変えない。」

「EF210(桃太郎)はまだ。次はEF510の北斗星(ほくとせい)色に引かせるんだから。」

「なんでそこでそれ。EF510の北斗星(ほくとせい)色も貨物引くけど、ED75から引き継ぐっていうことはないでしょ。つうか東北本線(とうほくほんせん)通ってきて常磐線(じょうばんせん)に入る貨物なんてあるの。」

「あるわけねぇだろ。究極にありえない貨物やってんだから。」

「・・・。ねぇ、ナガシィ。気になってはいたんだけどさぁ、日本で一番長い貨物ってどこからどこ結んでて、どこをどう通ってるの。」

「知るか。多分東京(とうきょう)から西鹿児島(にしかごしま)あたりまでじゃない。」

こういう貨物列車もあるだろう。だが、この貨物列車は日本一ではない。日本一は札幌(さっぽろ)貨物(かもつ)福岡(ふくおか)貨物(かもつ)を結んでいる列車。走行路線は札幌から千歳線(ちとせせん)室蘭本線(むろらんほんせん)函館本線(はこだてほんせん)江差線(えさしせん)津軽海峡線(つがるかいきょうせん)奥羽本線(おううほんせん)羽越本線(うえつほんせん)信越本線(しんえつほんせん)北陸本線(ほくりくほんせん)湖西線(こせいせん)東海道本線(とうかいどうほんせん)山陽本線(さんようほんせん)鹿児島本線(かごしまほんせん)の順だ。

「それって「はやぶさ」とごっちゃになってない。」

速攻でツッコまれた。

「そうだな。でも、これって仕方ないんだよなぁ。駿(しゅん)兄ちゃんも貨物マニアじゃないし。分かる人いないんだよなぁ。」

「へぇ。駿(しゅん)兄ちゃん貨物の模型結構持ってるから一見すると貨物マニアって感じするけど、違うんだ。」

「ああ、本人が言ってた。」

「ふぅん・・・。」

お互い走っている車両に目を向ける。今走っている貨物列車は26両のコンテナ貨車にコンテナを満載している。当然ずっと満載では面白くない。

「そろそろ牽引機変えるかぁ。」

「変えるんだったらコンテナ満載もやめない。」

「そうだな。じゃあ、長いタイプのコンテナと載せ替えるか。」

貨物駅に列車を止め、そこまで赴く。まずここまで牽引してきたED75を貨車から切り離し、ケースにしまう。次に後ろに続いているコンテナ貨車のコンテナを必要数外し、20フィートコンテナに載せ替えていく。この20フィートコンテナは1両の貨車に3個載る。載せ方も何パターンかあり、満載。12フィートコンテナを20フィートコンテナで挟む形。その逆。こういった方法。もしくは満載されているコンテナすべてを外し、そのままにするということだってある。僕は26両中18両にそれを施した。そのうち10両を何も載せていない状態にした。編成は満杯から一気にスカスカになった。

「空コキ多いなぁ。」

「なんか別なほうがいいのか。もっと空コキ増やすか。」

「なんでそうするんだよ。もうちょっと空コキ減らすべきだろ。」

常磐線(じょうばんせん)だったらこんな感じなんじゃないの。あれ、EF510の北斗星色(ほくとせいしょく)は。」

(もえ)の手にチラッと青い物体が見えた。真ん中には金色っぽいラインが入っている。

「おい、それ返せよ。」

見つかっているということが分かっていたようなのですぐに応じると思いきや、

「せめて、あと2両増やしてくれないとヤダ。」

「空コキ。」

「違う。コンテナ載せてあるコキ。」

「外すのより載せるほうが面倒くさいんだよ。」

「知るか。載せろ。」

5秒ほどいがみ合って、

「最初はグー。ジャンケンポン。」

チョキとチョキであいこだ。

「あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。」

12回目でようやく決着。

「ヤッター。」

「チェ。」

「ほら、舌打ちしてないで、早く空コキ2両減らしてよ。」

「へいへい。」

貨物駅のコンテナホームに置いたコンテナをランダムに選出。空コキ2両のうち1両に12フィートコンテナを5個。もう1両には30フィートコンテナを真ん中に乗せ12フィートコンテナでそれをはさむ形に積載した。

「あー。ジャンケンになると俺が負ける確率高くなるじゃん。」

「ぶつぶつ言ってないの。思考パターンで私に勝つなんて100年早いわよ。」

「ほら、約束通り2両減らしだぞ。」

「まだまだ。」

「・・・。」

「最初はグー。ジャンケンポン。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。あいこでしょ。」

「はい。それ返せ。」

「えー。」

「ジャンケンに負けたんだから返せよ。プラス空コキは2両減らした。」

「はぁ。分かったよ。」

(もえ)からEF510を受け取り、コキ100形26両の前に連結する。コントローラーに戻って、ブレーキを解除。ゆっくりとしたスピードで貨物駅を発車。また何分か放っといて、EH200(ブルーサンダー)に交代。そして、EF64の重連(じゅうれん)に交代。そして、

「ようやっとEF210(桃太郎)か。」

「そうだな。東海道本線って言ったらEF210(桃太郎)の王道だもんな。」

「その隣は313系。・・・ねぇ、ナガシィ。5000番台(313系)2編成連結して、12両編成やってよ。223系みたいに。」

「気持ち悪い。やめろ。」

「やってよ。面白いじゃん。」

そう言いながら、(もえ)は僕に近づき、わき腹を指でなぞった。

「やめろ。くすぐったいから。」

「ナガシィがやるって言ってくれればやめるよ。」

「お前・・・。」

「ねぇどっち。やってくれるの。」

「はぁ。今日だけだぞ。」

そう言うと(もえ)のくすぐり攻撃は約束通りなくなった。車両庫に行って313系の箱を探す。車両庫には父の313系5000番台と従兄の313系5000番台がある。それを探し出して、車両庫から戻ってくる。

「はいよ。やるとは言ったけど、並べるとは言ってないからな。」

「・・・。並べてくれたっていいじゃん。」

「ダメ。」

この言葉で(もえ)はあきらめたらしい。自分で313系を並べ始めさっき言った通り12両編成にした。並べ終わると(もえ)はコントローラーの位置まで来て、

「外回りは借りるね。言っとくけど、出してる間に貨物がぶつかるってことないようにね。」

「大丈夫だって。さっき貨物駅通過したばっかだから。今鉄橋のところにいるし。」

了解(りょーかい)。」

車両基地のポイントコントローラーで313系が止まっている線路に電気を行かせる。次にコントローラーのつまみを回して、313系の発車を促す。それを確認すると、自分の運転するコントローラーのブレーキを解除。マスコンを入れて、出庫してくる313系を本線に乗せるよう電気をとる。313系が本線に乗るとこう問いてきた。

「ナガシィ。313系、脱線しないよねぇ。」

「知るか。脱線するんだったら、どっちかの編成にモーターぶち込めばいいじゃん。駿(しゅん)兄ちゃんの「スーパー雷鳥(らいちょう)」みたいに。」

「そうだね。もし、脱線したらそういうよ。」

「そういう・・・。まさか、自分じゃやりたくないって思ってない。」

「チェッ。ばれた。」

どうしても(もえ)はそうしてほしかったらしい。舌打ちをした。

「チェッ。ばれたじゃなくて、自分でそれくらいできるだろ。」

「あー。何も聞こえません。」

「ウソつけ。」

このあと30分間ぐらい313系とEF210牽引の高速貨物列車を運転した。

 他にも223系1000番台の12両編成と223系2000番台の12両編成の新快速(しんかいそく)京浜東北線(けいひんとうほくせん)の209系と山手線(やまのてせん)のE231系など。いろんな列車を走らせていたらもう時間は5時。いつも思うことだが、気付くともう夕ごはんの時間だったりする時もある。時間が足らないのだ。

「ヤベ。家帰んないと。ナガシィじゃあね。明日学校でな。」

時間に気付いて(もえ)が離れのドアに向かう。

「6月14日忘れんなよ。」

ドアを半開きにした状態で行った。

「忘れねぇよ。これ見ちゃったんだから。」

パンフレットをかざすと、ニッと笑って帰っていった。

岸川(きしかわ)かぁ・・・。」

裏付ける思いで、つぶやいた。


今回からの登場人物

永島智暉(ながしまともき)  誕生日 1994年3月11日 血液型 O型 身長 161cm

坂口萌(さかぐちもえ)   誕生日 1993年10月3日 血液型 A型 身長 159cm


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