航海者
つかまり立ちを覚えてから、果たしてどれ位の間、支えていてもらえるのだろうか。
飛ばされも、流されもしない、そんな安心から、けれどいつかは出て行かなければいけない。
飛び出したそこは、青くて、広くて、どこまででもいけそうだけど。
休む事無き航海者。
今だけは振り返って、その目に刻め。
また大地を踏めるのは、大海を泳ぎきった時だけなのだから。
青い自由は潮と風と渦が待つ。必死に棹を差したとて、切れる舵は僅かだろう。
気づけば朝も夜も過ぎていき、照らす太陽と水面だけの景色で途方にくれる。
一月が一日で過ぎ、一年が一月で過ぎる海で、僕らは何処に向かうのだろうか。
止まる事無き航海者。
とにかくもがき続けて、空を見ろ。
誰しもが、沈む恐怖には勝てないのだから。
迷いも擦り切れた大海の果てに、彼岸を見るだろう。大地の温もりに涙を流し、最後の力を振り絞る。
その大地の名など知らずとも、今はただ安堵にすがって、船を降りろ。
見知らぬ大地の土の香りに抱かれて、揺れぬ寝床で夢を見る。
渡りきった航海者。
望んだ大地で無かろうと、今は眠りの喜びを知れ。
海を渡った誇りだけは、誰にも汚せぬのだから。
夢を見ている航海者。
幸せに満ちた夢の世界で喜びを知れ。
それだけが、航海者が得られる、祝福なのだから。
安らかな眠りに、永久に、抱かれて。
これを読んで、皆さんは何を想像するんですかね?
こういうのの喩えの加減というのがよくわかりません。どんだけ元のものから離せばいいのか、とか。
まぁ、とにかく、あんま明るいお話じゃないですねぇ。