ロストソング
名も知らぬ島で羽ばたく一羽の鸚鵡。
赤と黄色の冠羽をなびかせて、鮮やかな緑の森を飛ぶ。
大海に浮かぶ小島に、仲間は少ないけれど、歌う詩は楽しげで。
猿も、鳥も、虫達も。誰も喋らぬこの島で、鸚鵡は言の葉を歌う。
彼らはバベルの子供。栄華を極めたバベルの子供。
The Babel's parrot sings the lost song
根ざす大地の緑と、貫く天の青さは変わらずに。
変わっているのはただ一つ。風に乗って泳ぐ詩を誰も聞いてはくれない事。
文字にも出来ず、意味もわからない、古に失われたバベルの詩。
語り継いだ鸚鵡たちもその意味はわからない。
彼らはバベルの末裔。天に裂かれた言葉の語り部。
The Babel's parrot sings the lost song
雲にも届く高みで優雅な詩を歌うバベルの民。
籠の中で歌う鸚鵡と楽しそうに歌うのさ。栄華の詩を。
そんな彼らを知らない末裔の鸚鵡は、今日も歌うよ、バベルの詩を。
誰にも届かないとも知らず。失われたバベルの詩を。
彼らは栄光の化石。歴史を歌うバベルの末裔。
The Babel's parrot sings the lost song
ところで、鸚鵡の真似する人語って超世代的に伝染するもんですかね?とか、浅学なまま認めました。
本当は短編用のアイディアだったんです、コレ。
古のバベルの言葉を操る鸚鵡の繰言を通して現代の悩める子供が答えを見出すって話の。
「今も昔も人間の基本的な悩みは変わらないんだよ」ってな感じの寓話にしようとも思って、古今東西悩みと言えばラブじゃろう、とか考えたところで、バベル語じゃ、子供意味わからんやん、となりました。
「失った言葉を喋る鸚鵡」という要素自体にはなんだか哀愁とロマンのような物を感じたので、詩として再生してみたり。
ネタリサイクル。