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鬼鏡

 誰かを傷つける人が居た。


 あいつは気に食わない。あいつは俺の嫌いなものを美味そうに食べる。あいつは俺の知らない事を知ってる。


 そうボヤいては拳を振り回して、好き放題、人を傷つけた。


 いつの日にか、そいつは醜い姿になっていった。誰かを傷つけた分だけ醜くなっていた。


 牙が生え、角が生え、刺が生え、皮膚は瘤だらけで固くなり、両の眼はぎょろりと飛び出て真っ赤に染まって。


 鬼がそこに居た。


 鬼を近くで見ている人がいた。


 あいつは傍若無人だ。理不尽に暴力を振るう。性根が捻じ曲がっているからあんなことをするんだ。ろくな考えを持っていない獣だ。


 そう決めつけては醜さを喧伝して、罵詈雑言を並べ続けた。


 いつの日にかそいつも醜い姿になっていた。鬼を恨み続けた分だけ醜くなっていた。


 牙が生え、角が生え、刺が生え、皮膚は瘤だらけで固くなり、両の眼はぎょろりと飛び出て真っ赤に染まって。


 鬼がそこに居た。


 鬼の話を聞いていた人がいた。


 何が不愉快だとか、何が醜いだとか、わざわざそんなことを喧伝して回るなんて、それ自体が不愉快で醜いことだ。

 

 どっちも醜い鬼ではないか。互いにいがみ合ってて反吐が出る。


 いつの日にかそいつも醜い姿になっていた。人を醜いと決めつけた分だけ醜くなっていた。


 牙が生え、角が生え、刺が生え、皮膚は瘤だらけで固くなり、両の眼はぎょろりと飛び出て真っ赤に染まって。


 鬼がそこに居た。


 鬼を無視した人が居た。


 暴力を振るう鬼が居ようが、罵詈雑言を並べ立てる鬼が居ようが、鬼を見下す底意地の悪い鬼が居ようが、知ったことか。


 自分には関係無い。そう決めつけて、醜さから目を反らし続けた。


 いつの日にかそいつも醜い姿になっていた。自分だけは醜くないと決めつけた分だけ醜くなっていた。

 

 牙が生え、角が生え、刺が生え、皮膚は瘤だらけで固くなり、両の眼はぎょろりと飛び出て真っ赤に染まって。


 鬼がそこに居た。


 鬼を知らない人が居た。


 暴力を振るう鬼のことも知らない。鬼をけなして回る鬼のことも知らない。どちらも見下して自分は賢いと思っている鬼のことも知らない。それを無視して自分だけ関係ない振りをしている鬼も、みんな知らなかった。


 だから、その人だけは醜くならなかった。醜さから無縁だった。黒く艶やかな髪に、白い肌。すらりと長い手足。透明な瞳の中に鬼は居なかった。


 綺麗な綺麗な姿。鬼ばかりの世界で、それは異形だった。穢れを知らない美しさは、輝いていた。まるでその世界にあるのが許されていない不自然な異物のように。

書いてて、

多分私は3番目だと思うから by綾波

とか思ったり。

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