清く正しく美しく
誰もが望むんだ。綺麗な体で居たいって。
膝から流した血だって、立ち上る汗の香りだって。
伸びた髪も髭も、全身に媚びりついた垢だって。
全部、全部流してしまいたい。
汚濁は醜いことだから。潔白は美しいことだから。
昨日から、今日になって、明日もきっと。僕らは食べて、寝て、起きて、そして汚れていく。
朝日を見て、雲を仰いで、雨に濡れて、夕日を見送って、月に抱かれて。
命が生きて死ぬように。リンゴが木から落ちるように。一と一を合わせて二になるように。
息を吸って吐くのと一緒に、汚れをまとっていく。
飲み込んだ命の数だけ。流してしまった涙の数だけ。嫌なことに背を向けた数だけ。
誰もが望むんだ。綺麗な体で居たいって。
知っているから。生きている限り汚れてしまうことを。
だから望むんだ。綺麗な体で居たいって。
見るんだ。鏡に写った醜く汚れた自分を。
流すんだ。遠くの泉が讃えるわずかに澄んだ水で。
洗うんだ。身を削るような痛みが時に襲っても。
そして。だけど。振り返らないんだ。
君から流れ落ちて溜まった肌の垢も、ばらばらと散った髪も髭も、足元にこびり付いた心の膿も。
鏡からは消えた、どこにもいかない汚れを。