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夜になずむ

 日が暮れると、一日の終わりが始まる。沈みゆく太陽に別れを告げ、昼間の世界に別れを告げ、家路を歩く。


 昼と夜の間の黄昏時。街が染まる。橙の光に。夕餉の香りに。疲れ、慌て、肩をなでおろすようなひといきれ。


 ――カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン


 一日を終えた人たちをたくさん載せた電車が、街を横切る。


 ――ゴウゴウガタンガタンゴウゴウガタンガタン


 明滅する警告の光が踏切に落ちる。薄めの赤。橙の夕暮れのアスファルトに映える。


 自転車の前かごに買い物袋を載せて。後ろの座席に幼子を乗せて。車輪が枕木を超える。


 ガラス張りのスーパー。人の波に開かれた自動ドア。光と音と活気と匂いが漏れる。カレーの材料の詰まった袋。煮魚の材料の詰まった袋。生姜焼きの材料の詰まった袋。


 昼から夜へ。陽から灯へ。日常から日常へ。歩を進めながら移ろっていくもの。次第に暗くなる景色の中で、きつく正された襟を緩めて。めかした貌を明日に投げて。


 一歩一歩刻一刻。広がり続ける暗がりに、昼間の自分を捨てて。夕暮れの装いの街。夜の少し手前。


 憧憬を誘う夕暮れに背中を押されて、住処へ帰る。


 ドアを開ければ夜が迎えた。


 夕餉も、灯もない、真っ暗な夜。


 昼間の自分を捨てて、何もない、誰もいない夜に。


 ただいまと投げ、おかえりの返らぬ夜に。

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