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熱溜まり

 襟を掴んでパタパタと扇ぐ。肌にこすれる布の感触で汗を感じる。

 

 蝉が鳴く。黄色く鳴く。満月の下で。

 

 部屋の端から端へ、風がプロペラに乗って駆ける。尖った光で地面を照らし、夜にまで顔を覗かせる太陽が、僕を後ろから覗いている。

 

 ぼんやりと暑さに濁った空気を吸い込むと、肺を回って、脳にまわる。神経細胞の光が、湯気を浴びた様に曇って、言葉が強さを失う。


 暑いと言う言葉もぼんやりと、本当は、赤くて、黄色くて、尖っていて、湿り気粘り気を持って、頭を内側から叩くのに。湯気を浴びたように曇る。


 音も、曇る。


 キーストロークの浅いキーボード。いつもはカシャカシャと鳴るのに、カはカとクの間の音に。シャはチャとキャの間の音に。


 耳と音の間に、ぼんやりとやわらかな厚さが挟まれて。音が曇るのか、耳が曇るのか。それとも僕の頭が曇るのか。


 頭の中で生まれては消える言葉も意味も曇って、輪郭をなくしたまま何処かへ溶けていく。暑さは、そうやって、溶け出した熱がどこかに漂っているからかもしれない。


 前からやって来て、すれ違っていくもの。いつも背中しか見えないそれも、今は掴めるかもしれない。

それも、道に迷ってるかのように、踊り場に迷い込んで居るように、カチカチと音を立てて、さまよっているのかもしれない。


 誰しもが、何もが、暑さに迷う夜。

 

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