便意のエース
便意◎
「夏の甲子園も決勝まで来た。これもエースのおかげだ。1年生だけど本当によく抑えてくれる。
決勝、絶対に勝とう!」
キャプテンの言葉に、俺らは『おうっ!』と大きな声で返す。
エース、と呼ばれる俺はクールにマウンドへ向かう。
走らず、歩いて。
お尻を引き締めるようにし、絶対走らないように。
サイレンが鳴る。
夏の甲子園大会、決勝が始まる。
俺は強く決める。
『1回表が終わったらトイレに行こう!』
便意がヤバい。
ここで漏らしたら絶対一生ネタにされる。
『アイツ甲子園決勝で大便しやがった』
冷静な表情で、キャッチャーにうなずく。
そして、1球目、投げる。
『ファール』
いいぞ、ストライクだ。あと2回ストライク取ればワンアウト。トイレが近くなる。
サインに、うなずく。
『ファール』
…。
なんかヤバいな。
こいつ、アレか? ファールを取りまくって、打ちやすい球が来たら打ってヒットにするっていう。
ふざけんなよ? マジ今便意ヤバいんだよ、出そうなんだよ。
意識をしたら出かかる。慌ててお尻をキュッと締める。
『次の球で仕留めるぞ、エース』
キャッチャーの意図に気付き、うなずく。
冷静に、あくまでも冷静に。
冷静で絶対的なエースだから。
次で、仕留める。
投げる。
『ファール』
…。
何真面目な顔してんねん、バッター。マジで便意ヤバいんだよ。
あー、あー。
キュッ。
「よく抑えた、流石エース」
「まだ1回すから」
ベンチに帰り、監督と会話をする。
真面目で、厳しい監督。指示も上手い。
1回表、終了。
よっしゃあ! トイレ行って出せる!
さっさと行ってさっさと出してこよう。絶対優勝だ。
トイレに行こうとする俺。
すると監督が、
「おい、どこ行く」
「はい?」
「1年生なんだからな、これからのために、よく攻撃を観察しておけ」
「…あー」
死んだかもな、コレ。




